FIND【349】
「 ...気休めだな...ないよりはいいか」
小さくなっていくウリエルとアリアを観ていてギーガが呟いた。
「ダメモト気休めは船長の声じゃないか。偶然サジ出来たとして
偶然聞こえるかもだからラギしてみろ、彼女に意識合わせて」
何だと?とギーガは言ったミュラーを睨んだが―やってみた。
谷底から細長く雨雲に垂れ込めた大空に向かって名を叫んだ。
「 ...返事なんかあるか。遣り方もわからなくて」
「いいから繰り返せ。気休めは必要だ」
言いながらミュラーは川下に向かってどかどかと歩いて行った。
取り残されたギーガにアランが、済みません。と言った。
「お前のせいではない。行こう。足で探す!」
クリスティーナは水中にいた。
遠退く意識の中―自分の名前を誰か知らない男の人が呼んだ。
ハッとして目を覚ますと視界は流れ速い泥水。
なっ...?!
慌て水面浮上したが、速い流れに抵抗出来ず流されて行く。
諦めて―どうなるのかどうしようか考えられなくなった。
そしてまた名前を呼ばれた―同じ男の人の声。
「! ―誰っだれっ?!」
濁流水面から顔を上げて速いスピードで動く景色と留まったままの灰色の空を見上げ、頬に激しい水滴を受けながら見回した。
人なんてどこにもない―木々の緑と枯木と雪景色。
流されるまま流れていると、ガツっ、と何かに頭を打って、痛っ。と身を屈めたとき、クリスティーナの身体は岩と岩の間の水溜りに嵌り込んで流れから解放された。
わ...止まった...けど...。
辺りを見回しても攀じ登れそうな陸地はない。
しかし、少し離れたところに雪さえ積もってない緑地が見えた。
水面から出ている岩を手で伝うなら何とか行けるかもしれない。
けど、留まるより川下まで行った方がいい?でも、川の
中に居てがつんごつんは痛いばっかりだし...御免だわっ。
岩を伝って平地まで辿り着いて自分の姿にびっくりした。
スキーウェアが忽然と消えていた―素っ裸。
陸地に着いて直ぐ、アランに連絡!心配してるっ。と思って
いたのにSPも財布も身につけていたもの全て無くなっていた。
唯一サファイアのネックレスだけが残っていた。
激しい流れの中で衣服は障害物に接触して破れてSPも
何もかも流されて、ネックレスだけが残ったと思った。
どうしようっそんなことよりっこれじゃあ...どうしようっ。
まさか原始人みたいに葉っぱとか編んで身に付けろって?
いいわ。濡れた服なんか着てたら低体温症で死んじゃう。
だから脱いだ!てことにしよう。とさっき
イアルから教えて貰ったことを自分に導入。
けどダメ。陸地に上がってもこんなところに居ては発見
して貰えない。も1度川の中に入って流れた方がマシ!
川に飛び込もうとしたとき、あんたっ!と怒鳴られた。
人?!
振り返ると、どろどろに汚れた衣服…作業服のようなので観光客や登山客ではない、この辺りの人だろう、若い女性が顔も泥だらけになってクリスティーナの腕を掴んで止めていた。
「何してっ川なんて自殺する気?!この川で人が流されて
溶けて行くのを!木を入れてみたら溶けたの!どこから」
溶け...人が溶けた?!
「あ...上から転げ落ちてきて気が着いたらここで... 」
「よかった、川まで勢いついてなくてよかったね!おいで!」
彼女はメリー―年は30くらいの彼女に案内されて平地
続いて木々茂る中、雪が溶けている地面が見えて来た。
激しくなった雨とガスのせいで気温が上がって溶けたのかと思ったら煌々と光る炎が見えて来た。
10人ほどの人が緑の葉の着いた枝を傘にして焚き火を囲んでいるのが遠目にわかった。
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