【甘露雨響宴】 The idle ultimate weapon

かんろあめひびきわたるうたげ 長編涅槃活劇[100禁]

FIND【233】執事のSP

2009-10-11 | 3-3 FIND




 FIND【233】 


何で投げるのよ...そんなことするロータスじゃなかったのに?
私が少し怪我しただけで心配して優しくしてくれたじゃない!
今はそうしてくれないの?怪我した私を放って行くなんてっ!

私、可哀相っ!信じらんないっ!手を挙げるとか...!!

.......本気なの?...本気で怒ったの?

大声を上げて泣き出したクリスティーナに執事が駆けつけたが、クリスティーナは、放っておいて!と叫んでまたわっと泣き出した。

クリスティーナのそんな状態を初めて見た執事は直ぐにロータスに電話をして、何があったのですか?と訊いた。

『ソレイユ』にいたロータスはクリスティーナが泣いていると聞いて少し気が引けたが、声に気持ちの乱れを乗せることなく平然と、叱っただけだ。放っといていい。と言った。

『しかし、お嬢様のことですから頑なに1日中食事も、』

「甘やかさなくていい。そう言うならそうしていい。もって1日
 お腹が空いたら自分から出てくる。篭っていても心配いらない」

言われて納得して執事は、はい。と言った。

『旦那様はいつお帰りに?...数日戻られないのですか?』

「ちゃんと戻る」

優しく宥めるように話して来た執事にそうは言ったが、ロータスは戻らない方向に気が堕ちていた。

相性が良くて何が遭っても仲良くて一緒に居て楽しくて好きで好きで堪らなくてこの人意外はいない!と思える相手は実は自分が作り上げていた虚像幻想だったということは往々にしてよくある。

恋人や夫婦に一番大切はバランス―釣り合ってると思えること。

どちらかに引目と高慢あっては本当のところで成立しない。

そんな気持ちを失くせと言っても簡単になくなるものではない。

明確じゃないか...クリスティーナは、彼 を選んでいた。

クリスティーナを愛してるから彼女の元に戻るなんて無理だ。






ロータスの知るクリスティーナは健在で、午前中を散々泣き明かし
昼過ぎにはお腹が空いて―ダイニングに来て食事をした。

そこで執事はホッとしたが、ロータスから聴いたことは神妙な顔をしたまま顔にも口にも出さなかった。

「お嬢様、具合が悪いのでしたら...先生を呼びましょうか」

「医者なんかいらないわ.......あ、病気なら戻ってくるかしら」

後半を独言のように言ったので聞こえなかった執事が訊くと
クリスティーナは、え、何でもないわ。と言って席を立った。

「どちらに」

「部屋に戻るの。私のことはいいからいつもどおりにして」

クリスティーナは走るように急いで寝室に戻った。

そして、ロータスに電話した。

だが、どれだけ長く待ってもロータスは出なかった。

意地になって何度も掛け直したが、全く反応なし。

あったま来た!

クリスティーナは寝室を出て執事を呼びつけ、執事のSPを借りて寝室に篭るとロータスに電話した。

すると直ぐロータスが出て、どうした?と言ったので、何で出ないのよっ!と言った。

ロータスは途端、無言になったが、電話は切らなかった。

『執事の電話か...その方法...懐かしいな』

ロータスのバックから沢山の人の賑わう声が微かに聞こえる。

「そうよ!ロータスのアイディアを思い出したわ。出てくれない
 からっそれにそれに私熱あるのよ!具合悪いの!戻って来て!」

『それだけ元気なら大丈夫だ。家には皆がいる。寝てればいい
 死にそうになったら医者を...なあ、今はひとりにさせてくれ』

そして直ぐ、電話は勝手に切れた。

ロータスの誤解よ、どうして私が...何を反省したら良いのよっ?

浮気してない、その前にもう直ぐ20歳なのに女性として相手に
されてないっ。ロータスの方が余程嫌疑いっぱいじゃないっ!

...何よ。冷たい.......戻って来て。

クリスティーナはその場、床にヘタり込んで考え込んだ。

暫くして―扉から執事の、SPを。が聞こえてハッとした。

執事はそれを理由に、クリスティーナの様子を見ようとした
が、扉が少し開けられて隙間からSPを持った手だけ出て来た。

「お嬢様、お行儀の悪い」

「わかってる。ごめんなさい。酷い顔してる。早く受け取って
 ありがとう。もうしないわ...またロータスに怒られたの... 」






FINDもくじ FIND【234】につづく。





コメント    この記事についてブログを書く
« FIND【232】波動で現実の見える | トップ | FIND【234】庶民珈琲店『ソレ... »

コメントを投稿