故郷は地球

みなさんは突然、日本から、世界から見捨てられてしまったらどんな気持ちになりますか？

今回は、ウルトラマンの中で最も可哀想な怪獣と呼ばれる「ジャミラ」の登場回「故郷は地球」の感想を書かせて頂きます。

【ネタバレを含みます】





























ジャミラとは

元々は、宇宙開発競争の時代に某国が打ち上げた人間衛星に乗っていた宇宙飛行士「ジャミラ」であり、正真正銘の地球人であった。事故によって水のない惑星に不時着し、救助を待つ間にその惑星の環境に適応して体が変異し、怪獣の姿になった。母国が国際批判を恐れて事実を隠蔽し、救助を出さなかったために見捨てられたことを恨み、最終的には自らの手で宇宙船を修理・改造して、復讐のために地球に帰ってきた。自由に姿を消す宇宙船を操縦し、要人を乗せた旅客機を次々と墜落させるが、科学特捜隊に宇宙船の位置を見破られて撃墜され、その姿を現す。最大の武器は、口から吐く100万度の高熱火炎。

皮膚が粘土質に変化しており、そのため火には強いが、皮肉にもずっと欲していた水が最大の弱点となっている。「ジャミラが元は人間だったという事実を公表せず、あくまでも『怪獣』として葬り去れ」というパリ本部からの命令を受けた科学特捜隊による人工降雨弾攻撃には苦しみながらも耐えるが、ウルトラマンのウルトラ水流には耐えられず、這いつくばって国際会議場の万国旗を潰し、赤ん坊の泣き声に似た断末魔の叫びを発して絶命する。

死体は科学特捜隊が埋葬し墓標を建てるが、イデ隊員はこの墓標を犠牲者（ジャミラ）に対する人間のエゴにすぎないと吐露している。
(Wikipediaより引用)


と、このようにウルトラシリーズ50年の長い歴史の中で、未だに「考えさせる」、「かわいそう」といった声が多く上がっているのがこの「ジャミラ」です。

しかし、ジャミラがかわいそうと言えばかわいそうだが、復讐の為に多くの関係の無い一般人までもを殺害している為、一概に同情できるとは思えない。といった声も挙がっています。
実際にも、ジャミラが村を炎で焼いている時、イデ隊員が
「ジャミラてめぇ！ 人間らしい心はもうなくなっちまったのかよ！」
と言うシーンがあり、そのシーンでは。
ジャミラが、自分の行った惨劇を見て少し動きが止まる、という演出がされています。ジャミラにはまだ、人間の心が残っていたんです。

最終的には、ウルトラマンのウルトラ水流に耐え切れず国際平和会議の会場を目の前にして絶命。
壮絶な最後を迎えました。


私はこのジャミラのストーリーだけでは無く、演出や演技にも心を打たれました。
ジャミラの、正体を話すシーンではわざと顔を見せないように逆光から撮影していたり。
また、最後のシーンでイデ以外の科特隊のメンバーはジャミラの墓標から離れてしまい、国際平和会議にやってきた人々はジャミラの墓標に目もくれず通り過ぎる。この事件に、どれだけの人が無神経か。という、今でもある問題に真正面から言っているような気がします。

また、ジャミラのスーツアクターさん(荒垣輝雄氏)の迫真の演技も、更にこのストーリーの悲痛さを物語っていました。
私は前に、初代ウルトラマンのスーツアクターである「古谷敏」氏の著書を読みましたが、そこで荒垣氏との会話で、荒垣氏は「ジャミラになったけど人間に戻りたい」という思いで演技をしたそうです。自分を見捨てた人間への憎しみとどうしようもない怒りを地面に叩き付け、ウルトラ水流に苦しんでいる姿をこれと言いようもない程の素晴らしい演技をしていらっしゃいました。
話さなくても、ジャミラがどんな思いをしたのか。それが分かったような気がしました。




確かに、ジャミラが行った事は決して許されるべき事ではありません。
しかし、人間が人間を犠牲にする。
そのような自体があってはいけません。科学の発展のため、人類の栄誉の為に死ねる。というのは素晴らしいことだと言えるか、と問われたら私は「そうは思えない」と答えます。
現代社会でも、これは言える事だと思います。

「ジャミラ、許してくれ…。だけどいいだろう。こうして地球の土になれたんだから。 
お前の故郷、地球の土だよ。」 

ムラマツキャップは、こうジャミラに言っています。

一人墓標に立ち尽くすイデ。

そして、この回はイデの一言によって終を迎えました。

「犠牲者はいつもこうだ。文句だけは美しいけれど。」

イデを呼ぶ科特隊の声、それを聞かずして物語は終わる。


人間の起こした、人間の悲劇を2度と起こさない。
ジャミラのストーリーは、現代社会にも同じ事が言える作品だと思います。