店内に入ってみるとちらほら空席があるのだ。
オレ様はすぐに座れた。
行列は牛丼弁当を求めるお客さんたちの列だったようだ。
忙しさにやや半ギレの店員さんに
「並と玉子と味噌汁ください。あと、牛丼弁当も」
とオーダーすると
「弁当をお求めの方は、あの列に並びなおしてください」
と言われたー!
ヤバい。
並と玉子と味噌汁を喰ってる間に牛丼完売しちゃうかもしれないじゃないデスカー!
オレ様だけ一日に2回も牛丼を喰って、隊長殿に
「牛丼売り切れでしたよ、あははー」
などとはとても言えない。
申し訳なさすぎる。
良心が痛みすぎる。
あ、オレ様にもいちおう良心とかあるんです。
あんまりおっきくはないんですけど。
そんな思ってる間に、いまたのんだ並と玉子と味噌汁が配膳されてきたよオイ!
これを放置したまま列に並んでいたらせっかくのホカホカ牛丼が冷めてしまう。
それは牛丼に対する「冒涜」である。
あ、「ぼうとく」って読むんですよ。
並びながら立ち食いしてみようかとも考えたが、それはいかにもヘンな人だ。
さすがにオレ様の行動範囲の限界を超える。
すでに並んでる人に、
「オレ様の分も買ってくれ」
とお願いしようかとも思ったが、続々と列の後につく人たちのことを考えると、それは倫理的に非常に問題があると思われる。
ていうか、見ず知らずの坊主アタマ野郎にそんなこと突然たのまれたらびちくりされちゃうかも、なのだ。
ううむ、葛藤。
や、葛藤してる暇はナイのだ。
答えはひとつ。
大急ぎで並と玉子と味噌汁を喰うのだ。
んじゃ、いただきます!
あつぅ!
牛丼も味噌汁も熱々である。
しかし、ひるんでる場合じゃナイ。
はふはふ言いながらかっこむオレ様である。
かっこみつつもシッカリ味わう心を忘れてはならない。
それが牛丼に対する愛である。
ましてや、残すだなんてもってのほか、なのだ。
はふはふ。
んまんま。
はふはふ。
そんなわけでキッチリ完食し、会計を済ませて弁当の列の最後尾に並ぶ。
すでに並んでる人たちや、まだ席で食べている人たちに「ちょっと変わった人を見る目」をされたが気にしないのだ。
そんなことより、オレ様が弁当を無事手に入れられるかどうかが問題なのだ。
次第に店員さんたちの動きがあわただしくなってくる。
行列の人数と牛丼の残りを確認しているようだ。
だいじょぶかな。
どきどき。
なかなか列は進まない。
ウダウダ。
オレ様より前に並んでた人たちが順々にオーダーしている。
今日は限定復活日ということで、ひとり4個までしか買うことが出来ない。
「並4個!」
「大盛り4個!」
皆さんメイッパイ注文なさる。
お気持ちはよーくわかるだけに恨んだりしませんけど。
でも・・・うぅ!
そんなかんじでウダウダうぅうぅ思っていたら、ようやく、やっと、ついに、オレ様の番デスヨー!
「並2個くださいぃ!!」
あ、1個はオレ様の夜食です。
あーよかったぁ。
無事隊長殿の牛丼弁当を手に入れることができそうなのだ。
そのとき、厨房から店員さんの声が聞こえた。
「あと40でストップでーす」
オゥ!あぶねかったー。
舌をなかば火傷しながら熱い味噌汁を飲み干したかいがあった、てぇもんなのだ。
ガッチリ牛丼弁当×2を受け取り、そのあと隊長殿にお会いし、牛丼弁当をギュッと召し上がっていただき、おうちに帰ったオレ様であった。
隊長殿は満足されたご様子であった。
そしてオレ様の夜食はまた牛丼♪、っと。
こんなかんじで、牛丼にはじまり牛丼におわったハッピィな一日なのでありました。
ありがとう吉野家さん、なのでした。
マル。