にわか日ハムファンのブログ記念館

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【北海道・東日本パスの旅】(31)南リアス線

2014-01-12 08:05:30 | さすらいブロガー旅情編
 カメラの不安、というより、絶望感と後悔を抱えながら、ともあれどうできるわけでもなく、三陸鉄道の列車に乗り込む。幸いスマートフォンの充電は十分に残っている。いよいよとなって、何の代替手段もないではないのだ。
 1両だけのディーゼルカーは、釜石の手前、吉浜に向けて出発した。車内は研修にでも来たのだろうか、スーツ姿の若い男女で妙に盛り上がっている。



 列車は途中の恋し浜に停車した。ここで数分停車するので、ホームに出る。いやむしろ、ホームを見るよう案内されたというべきか。
 ここはもともと同じ読みの「小石浜」駅だったが、観光用のアピールか、駅名を変更したらしい。
 駅にはいかにもな鐘が設置されている。この鐘がどういうものか、だいたい想像がつく方は、読者諸氏の中にも少なからずいることであろう。カップルが一緒につくと幸せになれるという、あれである。



 その近くには、ホタテに願い事を書いて奉納すると叶うという、これまたリア充のお約束的的なものがあり、ホタテが所狭しと結び付けられている。運転士氏の話によれば、中には有名な芸能人によるものもあるらしい。
 と、ここで運転士氏がわざわざ説明に出てきたことにはいささか驚いた。この列車は観光用の臨時列車でも何でもない。普通に定期運転されている、一般向けの列車である。
 だいたい、この駅では列車の行き違いも何もない。現時点でピストン輸送なので、行き違いはないはずだし、そもそもこの駅では不可能だ。そんな駅に分単位で停車すること自体、そうそうあることではない。
 なのにわざわざ長く停車して、運転士氏まで乗客の案内に出てきたということは、この列車自体が観光客を意識してダイヤを組んで走っているのだろう。とすれば、三陸鉄道側の狙いも大したものだが、運転士氏もその狙いを十分理解している。



 その後恋し浜を出た列車は、さらに北を目指す。三陸鉄道はトンネルが多く、思っているほど海のそばを走る区間は多くない。それでも時折車窓に映る浜辺の景色から、大震災の後を見ることは難しくない。


 
 列車は三陸駅に着いた。ここで再び数分停車。こちらは恋し浜と違って列車の行き違いは可能だが、現時点でそのようなダイヤは組まれていない。
 遠くの浜辺は更地となり、工事が行われている。



 運転士氏が降りてきた。大震災でのこの街の被害について語った後、かつての街の写真を見せてくれた。そこから、今となって、この街がどう変わったのかを、物語ってくれた。
 若い人たちも、私も、その語りをただ受け止めることしかできなかった。



 駅舎まで降りて見てくるといいというので、遠慮も何もなく向かっていく。
 駅には大震災前からであろう、観光センターが併設されていて、土産物店も入っている。観光客を意識していることは、駅前に大きな観光マップがあることからも伺える。



 その地図に記された簡単な言葉に、揺さぶられ、突き飛ばされ、刺される。



 ただ、だからこそ、この大きな横断幕に救われる。


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