既にお気づきの方も多いと思いますが、お盆休みに小豆島に帰省してきました。
今年は3年に1度の「瀬戸内国際芸術祭」開催の年。小豆島をはじめ、瀬戸内の島々でさまざまな国のアーティストが展示を行っています。
私もそのうちの1つ、香川県小豆郡小豆島町福田に位置する小豆島I4エリアの展示を観てきました。
姫路からのフェリーで100分、福田港に着くと、I4エリアの拠点「福武ハウス」の大きな案内板が出ています。
福田は姫路へのフェリーによって本州と結ばれており、島内を走るバスの東のターミナルにもなっている交通の要衝で、小豆島町北部随一の集落です。
しかし、観光業の停滞もあってか、私が子どもの頃と比べても、フェリー乗り場の活気は衰えているようです。この看板が掲げられているのも、廃業した土産物屋の跡。隣の建物も、レストランと土産物屋の跡です。
福田港から西北に少し歩くと、福武ハウスが右手に見えてきます。
芸術祭と福武ハウスの横断幕。その下には子どもたちが描いた絵があります。ハウスっていうか学校じゃないか、と思われた方は鋭い。実際、これらの絵は小学校の卒業生の手によるものです。
福武ハウスそばにある、集落唯一の信号のある交差点。ハウスへはここを曲がって入ります。
こちらが福武ハウス。そうです。学校の建物がアートスペースになっているのです。
いや、正確には学校「跡」なんですが。
福田はかつて単独の村であり、小学校と中学校が置かれていました。しかし、昭和の大合併で内海町に編入されると、その後は多聞に漏れず過疎化、高齢化が進みます。
私が生まれた頃には既に中学校がなくなっていましたが、その後も少子化の中で小学校の児童数は減少、最後は1学年数名程度の児童しかいなくなり、ついに閉校に至ったのです。
福田村が編入された内海町も、平成の大合併で消滅し、今はありません。かつての村の中心地は、いまや人口1,000人にも満たない集落となっています。
小学校の跡地は閉校後もしばらくそのまま置かれていましたが、その後建築家の西島立衛氏の手によって、今年7月20日、国際的なプラットフォーム「福武ハウス」として生まれ変わったのです。
とはいえ、外観はあくまでも学校(跡)です。どう変わったのかを見るには内部の方が分かりやすいのですが、当然ながら作品があるので、教室等は撮影禁止。詳しくは実際に見ていただくほかありません。
旧校舎がアートスペースになっている一方で、体育館の跡は「福田アジア食堂」というレストランになっています。
旧校舎から食堂へ行くには、校門をいったん出ることになります。真夏の日差しが降り注ぐ中ですが、日陰に入ると途端に涼しさを感じます。
かつての体育館入口、今は福田アジア食堂のエントランス。
メイン料理は「ふくだ定食」と「アジア定食」の2つ。ほかにも、小鉢やドリンクなどがいくつかあります。瀬戸内の過疎の集落が、いまやアジアの食と結びついたのです。
小学校の隣、福田の中心に位置する葺田八幡宮の境内にある、「葺田パヴィリオン」。
境内の樹を切り除くのではなく、それすら取り込む作品。
境内に帆布を掛けたような、吹き抜けの不思議な空間が生まれています。
8月の太陽を避け、パヴィリオンで憩う人々。
パヴィリオンの天窓(?)から顔を出して眺めた葺田八幡宮。幼いころから見慣れた光景ですが、やはりどうしても違って見えます。
福田の歴史を見守ってきた葺田八幡宮に、芸術祭の幟が並んでいます。
今回目にすることになった現代アートの競演。それぞれの作品が持つコンセプトの深さは分かりましたが、では作品自体を理解できたかというと、正直なところかなり怪しいと言わざるを得ません。
ただ、長らく衰えるに任せてきたコミュニティが、日本ばかりかアジアのアーティストと結びつきつつある。
このことこそが、島にルーツを持つ私にとっては、非常に勇気づけられることなのです。
加えて、福田では昨年から、隣の吉田集落とともに地域の魅力を発信する「あきゃきゃクラブ」を結成。
昨年夏からウェブでの情報発信活動を続けているほか、今年の盆踊りでは福田グッズの販売も行っていました。
過疎、高齢化、少子化、産業の衰退、地域交通の弱体化……日本の農山漁村が抱える様々な問題を同じように背負い込んできた集落が、現代アートも巻き込んで、その存在を国内外にアピールしている。
そして、そこを拠点として、そこに住む人々をも巻き込みながら、自らのアートを発信するアーティストがいる。
あり得ない共同作業が、今進んでいこうとしているのです。
彼らの挑戦がこれからどんな実を結んでいくのか。静かな、しかし抑えられない興奮とともに、これからもぜひ見守っていきたいものです。
「瀬戸内国際芸術祭2013」は、夏期間が9月1日までの開催。その後、10月5日から11月4日にかけて、秋期間が開催されます。
詳細は芸術祭および福武ハウスの公式ウェブサイトをご覧いただき、ぜひ一度足を運んでいただければ嬉しいです。
※ 勝手にエンディングテーマ:四国フェリー社歌
今年は3年に1度の「瀬戸内国際芸術祭」開催の年。小豆島をはじめ、瀬戸内の島々でさまざまな国のアーティストが展示を行っています。
私もそのうちの1つ、香川県小豆郡小豆島町福田に位置する小豆島I4エリアの展示を観てきました。
姫路からのフェリーで100分、福田港に着くと、I4エリアの拠点「福武ハウス」の大きな案内板が出ています。
福田は姫路へのフェリーによって本州と結ばれており、島内を走るバスの東のターミナルにもなっている交通の要衝で、小豆島町北部随一の集落です。
しかし、観光業の停滞もあってか、私が子どもの頃と比べても、フェリー乗り場の活気は衰えているようです。この看板が掲げられているのも、廃業した土産物屋の跡。隣の建物も、レストランと土産物屋の跡です。
福田港から西北に少し歩くと、福武ハウスが右手に見えてきます。
芸術祭と福武ハウスの横断幕。その下には子どもたちが描いた絵があります。ハウスっていうか学校じゃないか、と思われた方は鋭い。実際、これらの絵は小学校の卒業生の手によるものです。
福武ハウスそばにある、集落唯一の信号のある交差点。ハウスへはここを曲がって入ります。
こちらが福武ハウス。そうです。学校の建物がアートスペースになっているのです。
いや、正確には学校「跡」なんですが。
福田はかつて単独の村であり、小学校と中学校が置かれていました。しかし、昭和の大合併で内海町に編入されると、その後は多聞に漏れず過疎化、高齢化が進みます。
私が生まれた頃には既に中学校がなくなっていましたが、その後も少子化の中で小学校の児童数は減少、最後は1学年数名程度の児童しかいなくなり、ついに閉校に至ったのです。
福田村が編入された内海町も、平成の大合併で消滅し、今はありません。かつての村の中心地は、いまや人口1,000人にも満たない集落となっています。
小学校の跡地は閉校後もしばらくそのまま置かれていましたが、その後建築家の西島立衛氏の手によって、今年7月20日、国際的なプラットフォーム「福武ハウス」として生まれ変わったのです。
とはいえ、外観はあくまでも学校(跡)です。どう変わったのかを見るには内部の方が分かりやすいのですが、当然ながら作品があるので、教室等は撮影禁止。詳しくは実際に見ていただくほかありません。
旧校舎がアートスペースになっている一方で、体育館の跡は「福田アジア食堂」というレストランになっています。
旧校舎から食堂へ行くには、校門をいったん出ることになります。真夏の日差しが降り注ぐ中ですが、日陰に入ると途端に涼しさを感じます。
かつての体育館入口、今は福田アジア食堂のエントランス。
メイン料理は「ふくだ定食」と「アジア定食」の2つ。ほかにも、小鉢やドリンクなどがいくつかあります。瀬戸内の過疎の集落が、いまやアジアの食と結びついたのです。
小学校の隣、福田の中心に位置する葺田八幡宮の境内にある、「葺田パヴィリオン」。
境内の樹を切り除くのではなく、それすら取り込む作品。
境内に帆布を掛けたような、吹き抜けの不思議な空間が生まれています。
8月の太陽を避け、パヴィリオンで憩う人々。
パヴィリオンの天窓(?)から顔を出して眺めた葺田八幡宮。幼いころから見慣れた光景ですが、やはりどうしても違って見えます。
福田の歴史を見守ってきた葺田八幡宮に、芸術祭の幟が並んでいます。
今回目にすることになった現代アートの競演。それぞれの作品が持つコンセプトの深さは分かりましたが、では作品自体を理解できたかというと、正直なところかなり怪しいと言わざるを得ません。
ただ、長らく衰えるに任せてきたコミュニティが、日本ばかりかアジアのアーティストと結びつきつつある。
このことこそが、島にルーツを持つ私にとっては、非常に勇気づけられることなのです。
加えて、福田では昨年から、隣の吉田集落とともに地域の魅力を発信する「あきゃきゃクラブ」を結成。
昨年夏からウェブでの情報発信活動を続けているほか、今年の盆踊りでは福田グッズの販売も行っていました。
過疎、高齢化、少子化、産業の衰退、地域交通の弱体化……日本の農山漁村が抱える様々な問題を同じように背負い込んできた集落が、現代アートも巻き込んで、その存在を国内外にアピールしている。
そして、そこを拠点として、そこに住む人々をも巻き込みながら、自らのアートを発信するアーティストがいる。
あり得ない共同作業が、今進んでいこうとしているのです。
彼らの挑戦がこれからどんな実を結んでいくのか。静かな、しかし抑えられない興奮とともに、これからもぜひ見守っていきたいものです。
「瀬戸内国際芸術祭2013」は、夏期間が9月1日までの開催。その後、10月5日から11月4日にかけて、秋期間が開催されます。
詳細は芸術祭および福武ハウスの公式ウェブサイトをご覧いただき、ぜひ一度足を運んでいただければ嬉しいです。
※ 勝手にエンディングテーマ:四国フェリー社歌