春に思うこと

2013-03-29 08:18:57 | 日々思うこと
あの春の桜は せつなく感じらた

埼京線の いや あの頃は京浜東北線だったか・・・
あの駅前の桜並木を車で走り抜ける さわやかな 春
今年のような気の早い桜ではなく
四月を待ってゆっくりと咲く桜だった
病院の庭のそめいよしのの淡い桃色が本当にきれいだった

でも病院の中に入れば 祖母のいた部屋は
独特のどんよりした空気が流れていた
声もなく 動きもなく 深く重たく沈んでいるその部屋の中には
ベッドがいくつも並んでいて 白い塊のように多くのお年寄りが横になっていた
時折 廊下から看護婦さんの足音や医療器具の運ばれる音が響いていた

祖母は三か月くらいそこにいただろうか
はじめの頃は かろうじて声が出せていたように思う
でも 次第に反応がゆっくりになり 
桜の咲くころには 言葉もなくただ眠っているだけのようだった

私の心の中の思いだったのか 祖母から発せられた言葉だったのか
今となっては もうわからなくなってしまったのだけれど
もう死にたいのよ と涙を浮かべながら か弱つぶやいた祖母が
いまでも映画の一コマのように私の心に焼き付いている
人生の最後に なんでこんな思いをしなければいけないのだろう
その時 悲しいというよりも怒りに似た気持ちがわいたのを覚えている

今のように介護制度がなく お年寄りの厳しい入院状況があった時代だ
人として扱われていないような そんな感じを受けてしまうような病室だった

会話もなくなすすべもなく 数分でお見舞いを終え病室を後にして
重たい気持ちを抱えながら見上げた空の青さと桜の美しさが 心にまぶしかった
春の明るさが 重たく心にのしかかってきた

人が満開の桜をめでその散り際をこんなにも愛するのは
きっと 自分の人生や命を重ね合わせるからなのだろう
冬を終え春には桜が咲き やがて季節は廻ってゆくだろう
人もまた 時間に逆らうことなく自然の大きな節理の中にある
死は誰しも避けられないものだ・・・でもせめて
この人生でよかったと安らかな気持ちでその時を迎えたい
祖母にも安らかな時間を感じてもらいたかった

桜を眺めていたら 病室で感じた怒り消えて
せつなさがしみわたってきた

桜の花びらが 静かに舞い降りた・・・・


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