らば~そうる “IN MY LIFE”

旅、音楽、そしてスポーツのこと。過去、現在、そして未来のこと・・・「考えるブログ」。

585.ビートルズ・コーラス

2007-06-13 | 12.THE BEATLES
【THE BEATLES 1963】

 ビートルズが来日した1966年当時、故淡谷のり子先生がこんなコメ
ントを残されました。

 ビートルズというのは、若い人たちの欲求不満の叫びを聞いている
ようで、あまりピンときません。第一、頭を何とか刈りあげて欲しい
ですよ。でも、一人一人はいやですけれど、四人がよくハーモニーし
ていると思いました。

 う~む。さすがは淡谷先生。厳しいながらも、ビートルズの「ツボ」
をおさえていらっしゃるのはさすがです。物真似番組の清水アキラ氏
を審査していたときと同様、愛情を感じます。

 なんて、冗談はさておき、今回はビートルズのコーラスに着目して
みます。

 あなたは、ビートルズの曲を、とくにデビュー当時から順に聴いた
ときにどんなところに大きなインパクトを感じましたか。わたしは、
コーラス・ワークです。ヴォーカル単体ではなく、‘Love Me Do’の
ような「2声によるハーモニー」、‘She Loves You ’のような「掛
け合い」、そして‘Please Please Me’や‘Nowhere Man ’のような
どのパートが主旋律だかわからないほどの「ぶ厚い多声法」・・・。
コーラスといっても、いろいろなヴァリエーションを有していた点が
彼らのすごいところです。

 なぜ4人は「コーラス」を導入したのでしょうか。その理由はいろ
いろとあると思いますが、いちばん大きな理由は「彼らがライヴ・パ
フォーマー」であったからでしょう。従ってデビュー当時の4人は、
「ライヴで再現可能な形態で、いかに聴き手の心に響く音を演奏する
ことができるのか」。いわゆる「バンドとしてどのような機能分担」
をすればよいのかを追求しました。その解として、ロック・バンドと
しての基本的な楽器編成「ドラムス・ベース・ギター2本」の上に、
単純にヴォーカルだけを演奏するだけではなく、他のメンバーがヴォ
ーカルの効果を引き出すべく「コーラス」を採用したのだと考えられ
ます。

 いっぽう、そのような「ライヴ・パフォーマー」の楽曲をどのよう
にレコーディングすれば、その演奏が重厚なものになるのでしょうか。
そんなことを当時、ジョージ・マーティン氏は考えていたのではない
でしょうか。「バンドとしてのライヴ・パフォーマンス」を重視して
いたデビュー当時の4人にとって、様々な制約条件の下でその演奏を
できる限り重厚な音に仕上げるために、彼らは「コーラス」を採用し
たのではないでしょうか。

 録音機材の事情も考えられます。2トラックの時代では、最初から
音源を多くしてレコーディングしなければなりません。そのために、
一人ひとりがいろいろなことを一度に同時にやる必要があったのです。
そこで彼らは楽器を演奏しながら「自分の楽器」を使って音を発する
ことができる「コーラス」を採用したのです。

 時代は移り、1966年。ビートルズの音楽は成長を遂げました。

 録音機材の進化とともに、マルチ・トラック化が進んだ結果、他の
メンバーが担当しているパートを別のメンバーが担当することも可能
になりました。「バンドとしての機能」の崩壊が始まったのです。

 次に「ライヴ・パフォーマー」であった彼らでしたが、コンサート
活動への熱意が薄れ、ついには活動を中止してしまいました。ライヴ
演奏での制約を考えずに、自由にアートの世界、録音音楽に集中する
道を選択したわけです。コンサート活動を中止する直前に発表された
‘Rain’や“REVOLVER”のあたりから、「一体感のあるコーラス」が
初期に比べ減少しています。

 そして、音を厚くする音源や録音技術に関する選択肢が多様になり
ました。従って「チーム」ではなく「個人」でも重厚な音を創出する
ことができるようになったのです。キーボードの導入、4トラック・
テープ・レコーダーの導入と機材の直列接続、テープ・ループの採用
テープの回転速度の調節、そしてADTの考案・・・。「チーム」と
して協調しながら「音」を創り出すのではなく、「個人」がその作品
の中で、自分のヴォーカルの存在感を主張していくことができる環境
が整ったのです。

 ビートルズは常に成長し続けることを考えていました。「コーラス」
についても、進んで導入を減少させたのではなく「上のグレード」を
目指すべく他の手法を積極的に取り入れた結果、「コーラス」による
表現が減少したのだと解釈できるのではないでしょうか。


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6 Comments

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すてきなダンス (レノン&マッカートニー)
2007-06-13 22:54:51
おっしゃるとおりビートルズの最大の魅力はコーラスですね。
彼らのコーラス、ハーモニーがなかったらここまでどっぷり浸かることはなかったと思います。
リード・ボーカルもさることながら、コーラスだけでも十分楽しめますからね。
そういう意味では本当に彼らは凄い。
特に「すてきなダンス」のコーラスのかっこよさは文句なし。しびれました。
返信する
奇跡! (らば~そうる)
2007-06-15 00:24:07
to:レノン&マッカートニーさん

2人、3人のコーラスは、本当に溶け合っています。
これも神様の引き合わせなのでしょうか。
奇跡です♪
返信する
私も‘Nowhere Man ’が好き (みの)
2008-01-27 23:44:22
66年当時‘Nowhere Man ’を年の離れたいとこのところで聞いた時は別に気にならなかったのですが(聞いたのが多分モノだったからかも)70年代にはいって改めてじっくり聞いたら大好きになりました。

ただそのころは左右のバランスがとれた楽曲を聴きなれていたせいかあのリミックスに、「なんでこんな演奏とボーカルが左右に偏った曲に仕上げたんだろ、コーラスの素晴らしい曲なのに、片チャンネルに無理やり分けてる感じ。HELPの頃はまだまともなのに。。」って聴くたびに思ってました。

でも「ソングトラック」が出て新リミックス聞いたら、、、やっぱコーラスがよみがえった!

この頃は4トラック録音でも曲によってはボーカル、コーラスは2トラック以上使われている訳ですから是非とも新リミックスで発表して欲しいところです。(ブート音源も少ないし、、)MICHELLE、IN MY LIFE、GIRLとかもなんとかならないでしょうかEMIさん。。。
返信する
NOWHERE MAN♪ (らば~そうる)
2008-01-28 23:40:39
to:みのさん

‘NOWHERE MAN’。
ビートルズの中でいちばん好きな曲です♪ 

LPの‘NOWHERE MAN’は本当に左右見事に分離
していますね。
カラオケで楽しみました♪
CDのそれはいくぶん定位が中央に寄せられていますね。 
返信する
Unknown (Unknown)
2009-01-29 23:58:05
地味ですが・・・
You Won't See Me のジョンとジョージの「うーらららっ」のコーラスが味があって好きです。
返信する
“RUBBER SOUL” (らば~そうる)
2009-02-02 01:06:26
to:unknownさん

‘You Won't See Me’をはじめ
“RUBBER SOUL”はギターのサウンドと
コーラスが秀逸なナンバーが多いですね。
返信する

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