からだの内なる統合を求めて…

ロルフィング施術者日記
by『ロルフィング岡山』
http://www.rolfingjoy.com

足の細分化

2009-05-23 | ロルフィング
今回は膝から下の構造の細分化について取り上げます。前回までは、differentiationという英語の訳として区別化という言葉を使っていましたが、ばらばらに切り離すようなイメージがあるので、ここでは細分化と呼ぶことにします。より細かい関節の動きに気づいてもらい、身体感覚をより豊かにすることによって、しなやかな動きを誘導しようとすることですが、実際のロルフィングの施術では、手技によって筋膜組織の制限を解放して、可動性を回復させることも含んでいます。

それでは、下腿と足の骨の構造を見てみましょう。人間では前腕と同様に、足首につながる骨は2本で構成されています。脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)によって踵の骨(距骨)が挟まれていて、内くるぶしの骨に相当するのが脛骨、外くるぶしの骨が腓骨です。脛骨に対して腓骨がわずかに上下前後斜めに動いて、足首の回旋や、内返し/外返しなどの運動が起こります。ちなみに牛や馬などでは、下腿の2本の骨は1本に癒合して、足首の回旋ができないようになっていて、前への推進力を得ることに特化されています。


   


では、これら2本の骨の動きを感じてみましょう。ふくらはぎの外側を膝関節の外側に向かってなでてみると、こつんと腓骨頭に当たります。この腓骨頭と脛骨の内側を手で握り、かかとを中心につま先をワイパーのように動かします。足首に連動して腓骨が動いているのがわかるでしょう。このように、足の機能はすねから始まっているいるのです。





以前書いたように、足の骨は2階建ての構造をしています。1階の外側のアーチ(外側縦足弓)の上に、脛骨と腓骨に挟まれた2階の内側のアーチ(内側縦足弓)がのっています。強靭な靭帯で結ばれたこのアーチがバネのような働きをしてくれるおかげで、着地の衝撃が離陸のエネルギーに変換されるのです。歩く時にこの構造を最大限に生かすためには、かかとの骨(踵骨)が前に転がりながら、アーチが広がるように着地することが大切です(「大腰筋でウォーキング(2)」を参照してください)。


   


足底の傾きを変え、アーチの支持に関与する筋肉群には以下のような組み合わせがあります。これらの筋肉は脛骨と腓骨や、2本の骨の間に拡がる丈夫な筋膜(骨間膜)に付着していて、アーチ構造を足の両側から吊り上げる働きをしています。


      


例えば偏平足の人では、かかとの骨が内側に倒れるように傾いて、その上にのる内側のアーチがずり落ちている傾向があります。そこで、足底のアーチの健康のためには、下腿の筋肉の活性化とバランスが重要です。


   


次に、足の関節を見てみましょう。足は26個の骨(足根骨:7、中足骨:5、趾骨:14)で構成されているので、これらのすべての間には可動性があることになります。強靭な靭帯でつながった足根骨どうしの可動性はわずかですが、1つのかたまった骨ではないことで、全体が変形しながら衝撃を受け止めることができるのです。

また、足底を縦方向に曲げた時に折れ曲がる関節は、以下の通りです。

1)かかとの骨のすぐ前(横足根関節)
かかとを構成する踵骨・距骨と、その前にある足底骨との間の関節で、体重がかかとの骨から前のアーチに移行した時に、ほんのすこし伸ばされる感じがする部分です。

2)中足骨の付け根(足根中足関節)
足の指はすでに土ふまずのあたりから5本の中足骨に分かれています。足の裏を土ふまずにむかって、閉じたり開いたりして動きを感じてみてください。

3)足の指の付け根(中足趾関節)
つま先立つ時には、たいていこの関節を折り曲げるでしょう。

4)足の指の関節(趾節間関節)
手と同じく親指(母趾)には1つ、その他の足趾には2つあります。


    


以上をふまえて、実際に足の骨の動きを感じてみましょう。両足で楽に立ち、床に着いているかかとの骨を感じます。次に、体重を前後左右にシフトさせてみましょう。
足底の傾きに連動して、下腿の2本の骨にも動きが起きていますか?
かかとの骨の前のアーチに移行する時、横足根関節の弾力性を感じることができますか?
内側のアーチ(2階)と外側のアーチ(1階)の感じの違いを感じられますか?(足の目は2つのアーチの頂点あたりにあります⇒「大腰筋でウォーキング(2)」を参照してください)
これができたら、かかとからつま先まで少しづつ折り曲げるように、各関節の動きを感じましょう。
この他にも、握ったり、開いたり…、様々な動きを試してみましょう。


       


可動範囲は小さいですが、足は手と同じくらいのさまざまな動かし方ができるでしょう。歩く時も、ただ地面を踏みしめるだけではなく、地面を触るように感触を楽しんでみましょう。固い路面や柔らかい土など、味わうことはたくさんあります。さらに足底だけでなく、膝、股関節、腹でも地面を感じることができるかもしれません。このように足の感覚が豊かになった時、楽にしなやかに歩いていることでしょう




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2 コメント

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トニック・ファンクションについて (rolfingjoy)
2009-06-05 21:06:16
ヒットさん、ブログを読んでいただき、ありがとうございます。またテニスや民族舞踊について教えていただき、ありがとうございます。
今のところ自分は、歩く、持ち上げるなどの単純な基本動作における、腹横筋・多裂筋を中心としたトニック・ファンクションを扱っていて、テニスなどの複雑な動きは、まだ未開の領域です。

日本的な体の使い方については、ようやく科学的な光が当たり始めてきたところだと思いますが、先入観なしに、何が起きているか見ることができたらよいなと思っています。ロルフィングのインストラクターにHubert Godardという、パリ大学のバレエ教師養成課程の先生がいるのですが、合気道の動きなどについて、日本人では見逃してしまうような、科学的なものの見方をしています。

トニック・ファンクションについては、まだまだ説明不足だと感じています。動作の際には、他の筋肉に先立ってトニック・マッスルが作動することが大切なのですが、そのためには動きの前段階(pre-movement)で、どのような知覚情報の処理が行われているかが重要になります。これらについても、いずれ取り上げてみたいと思っています。
思いどおりにならない体 (ヒット)
2009-06-03 09:38:49
私は手や足にもトニックファンクションの、考え方が応用できるのでないかとおもいと思います。例えばテニスのラケットを握る時、手のひら側の腕の筋肉だけでなく、甲側の筋肉も収縮しなければなりません。なぜぜならラケットを振る時、手首を固定しなければならないからです。手首を固定するのは、手首のじん帯などを保護するだけの意味だけでなく、小手先の動きを抑える意味もあるのです。良く野球などで良くないスウィングを腕振りといいますが、その原因は手を動かしてバットを扱ってしまうことです。それを抑えるためにも手首を固定する必要があります。
この手首をの動きを抑える、固定する筋の使い方が、トニックファンクションではないでしょうか?そうすることにより、体幹部の筋肉の力を引き出すきっかけになります。足首も同じで歩く時、足首を動かす筋肉を歩行運動に関与させないことにより、脚が体幹とつながるのではないか。
民族舞踊では膝下の使い方にかぎ足というものがあります。脛から足をL字に固定して動く方法です。また習字の墨をするとき、茶道で抹茶をたてる時、やはり手首を固定します。
そのほかにも日本の伝統文化の中には、さまざまなトニックファンクション的な体使いがあります。西洋的な体の使い方とは異なりますが、日本には和の合理的な体使いがあります。忘れたくないですね。

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