レビュー:
こんな点数は付けたくないのですが
私は基本的に自作レビューがあった時か週末に出てくると思ってください。「香典返し」ということですね。どこかで見たような文体だと思ったら、先にレビューした方のようです。実は大学の財政学の先生だとか。ただ「財政学」という言葉自体、これは文部科学省の都合による命名でしかなく、その実は大学ごと、教官ごとにかなり違う内容があるというのはご存じの方はご存じです。この辺は著者も憤懣やるかたないものが実はあるのではと思いますので、これは自作レビューかHPで熱く語ってもらいましょう。
私もいろいろと縁があり、実は大学時代、2つか3つの「財政学」の講義を受けたことがあります。内容はひとまとめにするには実は先生ごとに「相当」幅があったので、私も一言で言い表すことはできないのですが、要は「国の財政と一般経済との関わりを論ずる学問」です。
例えば「子供手当て」、結構な額の公的支出があるのですが、これは果たして投資の増大=税収の増大に繋がるでしょうか、繋がらなかったとすれば、それは単なる慈善事業であって、「無駄な支出である=赤字国債が増大する→国家に無用の損害を与える」ということになり、これは避けるべきという結論になります。著書の最初にニュートン力学の説明がありますが、これはマクロ経済学と言い換えてしまって良いでしょう。Y(G+1)-Y(G)=何それ(プラス・政策を推進すべき、マイナス・止めた方が良い)、こんな感じの公式です。式自体は微分法の導関数の導き方に似ていますね。ただ、著者はこれでは飽き足りておらず、ここで出てくるのが少し前に流行した議論で、こんなんじゃダメだと言いたげな複雑系の話。有名な本はポール・クルーグマン著「自己組織化の経済学」クルーグマン・北村訳 1997年東洋経済がありますが、この本については本でも「ちょっぴり」触れています。
これは地方大学のアカデミズムの香り漂う優雅な内容から、東大あたりでやるような公務員試験向けバリバリの理論づくしの内容まで実に幅広いのですが、全部同じ「財政学」です。ブキャナンだリカードだなどと答案に書かねばならないのは後者です。どちらが本格的で正しいということは無いと思います。
複雑系については読み飛ばし可でしょう。この著者の真骨頂は財政学で、この部分は長くはないのですが、説明はすごく良いと思います。複雑系については、この本を読んでも分からないし、たぶん他の説明を読んでも分からないでしょう。体験的に覚えるには、まずパソコンの電源を切って、街を歩いてみてください。どんなに大きな街でも、あるいは小さな街でも(都市の方が分かりやすい)、実はいくつかの繁華街あるいは集落の組み合わせであることに気づくはずです。2キロも歩けば分かります。東京を例に挙げるなら、新宿、池袋、品川、丸の内、上野・秋葉原、どれも重要なビジネス上の中心です。それは賃金や距離などが影響し、自律的に形成されたものですが、最も経済効率的と思える丸の内を中心とした同心円には決してなっていません。複雑系とは、それを説明する学問です。
地方自治の下りは、やっぱりこれは定石的かつ大上段に「財政民主(立憲)主義とは」とやってしまった方が、ラストの著者の結論を考えるには分かりやすかったかもしれません。
※専門内容を含む(一般向け)本を書く専門家の皆さんへのご注意。
私も時折参照しますが、以前私がレビューした「君達は憲法を~ないっ!」の著者の方も指摘していたこととして、ちょっと現在の高中等教育体系は複雑です。高校で大学である科目を履修するのに体の良い予習になるような科目をやらずに入学してしまう。たぶん、大学法学部や経済学部で専門科目を学んだ人の90%くらいは、高等学校の「倫理・政経」を受講していないし、良い教師にも出会っていないと思います。ですが、この辺の教科書は見くびったものではありません。著書をモノする前に、やっぱり基礎中の基礎の基本教養として、これらの本に何が書かれているか、関連する部分を一度目を通しておくことをお勧めします。でないと内容がなまじ本格的であるために、軟弱地盤の基礎倒れみたいな本になってしまうと思います。そういう点、この辺一歩下がって検討しておけば、惜しい、と、思える本がいくつかありました。
今回は★2ではなく★3です。著者御自身には★5を付けても構いませんし、研究に一定の敬意も払いますが、論述のバランス、レベル、フォーマットの体裁等、まだまだ見直すべき点が多々あるように見受けられます。著者に含むところはありませんが、これはやむを得ません。
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