六角オセロ & 右・石田流 & 目くらまし戦法

六角オセロ と 六角碁 と 将棋の浮き飛車めくらまし戦法 の考案者です

夜の若宮大路

2021-03-30 20:29:43 | Weblog
SF傷だらけの天使 55話



ドームハウスに着き、公園に来ると、篠原英子がベンチに座っていた。
「ひでちゃん、どうしたの?」
「なんでもない。ちょっと疲れただけ」
あゆみが、よう子の真似をして尋ねた。
「ひでちゃん、どうしたの?」
「この子は?」
「ちょっと預かっているんです」
「ひでちゃん、どうしたの?」
「こいつ~~~、なまいきな!」
「へへへ~~」
「預かってるって、ひょっとして、この子、あゆみちゃんですか?」
「はい、そうです!ひでちゃん、どうして知っているの?」
「実は、この子の母親が、わたしの家にいるんです」
「ええ~~~え!」
「あゆみちゃん、涌井あゆみって言うんだよね」
「はい、そうです!」
「お母さんの名前は、涌井いづみでしょう?」
「はい、そうです!」
「やっぱり、そうだ!」
「ママ、どこにいるんですか?」
「わたしの家よ」
「どこにあるんですか?」
「今、連れて行ったあげるわ」
あゆみは、今にも泣きだしそうな目をしていた。
「よう子さんも来てください」
「はい」
・・
「あゆみ~~~!
「ママ~~~!」
「ごめんね、あゆみ!」
「ママ、どこに行っていたの?」
「ごめんね、あゆみ。行けなかったんだよ」
あゆみは泣き出して、母にしがみついた。
「ママ~~~~~!」
英子が、よう子に説明した。
「実は、昨日お昼過ぎ、この方が、瞑想道場の門のところで、うずくまっていたんです」
よう子は黙って聴いていた。
「それで、道場の人と、高野山病院までリアカーで運びました。それで、今日の三時過ぎまで、点滴を受けていました」
「病気だったんですか?」
「疲労と、栄養状態だったそうです。それで、先ほど迎えに行き、軽い食事をしてから、一緒に帰って来ました」
「それは、大変だったですねえ」
「ママ、だいじょうぶ?」
「大丈夫だよ、あゆみ」
「鎌倉に帰ろうよ」
「そうだね、帰ろうね」
「鎌倉で、おいしいラーメン食べたら、また元気になるよ」
「そうだね、あゆみ」
よう子が質問した。
「ラーメン、好きなんですか?」
「はい」
英子
「よう子さん、涌井さん親子は、わたしが一日預かります。安心してください」
「そうですか」
「はい」
よう子は尋ねた。
「あゆみちゃん、ママと一緒がいいよね」
「うん!」
「じゃあ、よろしくおねがいします」
「はい」
「あっ、そうだ。後で、あゆみちゃんの下着と歯ブラシを持って来ます」
よう子は、ショーケンとアキラに報告に行った。
・・
「それは良かった!」
「鎌倉の人か~~、懐かしいなあ~~、鶴岡八幡宮、鎌倉海岸、江ノ電、若宮大路、鎌倉ハムのハムカツ」
「おまえ、好きだったもんなあ~~、夜の若宮大路」
「うん。なんかロマンチックなんだよね~~」
「わたしも大好き!江ノ電も大好き!」
「江ノ電、いいよな~~。情緒があって!」
よう子
「誰か、ロマンチックな人でもいたの?」
「いたんですよ~~、ひでちゃんに似た人がね」
「で?」
「裏切りの街角になっちまったけどね」
「失恋ってこと?」
「そう」


05甲斐バンド LIVE in 薬師寺 裏切りの街角

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道案内犬ゴン

2021-03-30 19:10:10 | Weblog
SF傷だらけの天使 28話




「ごめんなすって、ごめんなすって!」と言いながら、平行二輪のセグウェイ道案内ロボットが通行していた。後に外国人の観光客が歩かされていた。
「ゴンだわ!」
「道案内ロボット、名前をゴンって言うの」
「なんで、ゴンなの?」
「以前、ゴンと言う名の道案内犬がいたんです」
「道案内犬?」
「九度山の慈尊院から高野山に行く、弘法大師が歩いていたという山道があります。その道を案内する犬がいたんです。その犬の名前が、ゴン」
「そんな犬がいたんだ?」
「野良犬だったゴンを、慈尊院が飼って、それから案内するようになったんです」
「不思議な犬だねえ~~」
「弘法大師も、犬に案内されたということです。その犬の生まれ変わりではないかと言われています」
「山道は、くねくねと山道は、迷う人が多かったんです」
「だから、案内してたんだ?」
「そうです。道案内したゴンは、一人で、慈尊院に戻って来るんです」
「偉い犬だなあ~~」
「その犬が死んだら、慈尊院は、弘法大師像の横に、ゴンの石像を建てたんです」
「いつのはなし?」
「昭和六十年頃のはなしです。本にもなっています」
「どんな犬だったか見てみたいな~~」
「この犬です」
よう子は、携帯の待ち受け画像を見せた。白い犬だった。
「柴犬かな?」
アキラも、携帯の待ち受け画像を見せた。
「僕のは、よう子ちゃんにそっくりの、関根恵子」
「わたしって、こんなに美人かしら?」
よう子は笑った。
冷たい風が吹いていた。
「まだ秋なのに、高野山は寒いねえ」
「高野山は、和歌山の北海道と呼ばれているんですよ」
「そうなんだ」
「転軸山は、冬になると、スキー場になるんですよ」
「えええ~~~、そうなの!」
「はい」
「どえらいところに来ちまったなあ」
「寒いの嫌いですか?」
「大嫌い」
「そんなに?」
「なんかねえ、うつになっちゃうの」
「わたしはねえ、気圧が低くなると憂鬱になるんですよ」
「へ~~え、そうなんだ」
ショーケンが答えた。
「そういうの、気圧病って言うんだって」

買い物は終わった。
「よう子ちゃんは、帰ったら、いつも何してるの?」
「テレビでニュースを見て、インターネットをやって、ときどき、外に出て宇宙人と交信しています」
「宇宙人と交信?」
「はい。音楽を聴きながら、テレパシーで」
「宇宙人、いるの?」
「まだ、応答はありませんけど、いつかは来ると思ってます」
「ロマンチストだねえ~~」
「ロマンじゃあなくって、高野山には、けっこうUFOも目撃されているんですよ」
「へ~~え、そうなんだ」
「アキラさんも、どうですか?」
「じゃあ、今度やってみるかな」
ショーケンが言った。
「高野山だから、あの世の人が出て来るんじゃないのか?」
「怖いこと言わないでよ、兄貴~~」
「あの世の人が、あのよ~~!って出てくんだよ」
「あ~~~あ、兄貴も高野山の駄洒落病になっちゃった」
三人は笑っていた。カラスも、カッ、カッ、カッ~~と笑うように鳴いていた。山の香りの風が吹いていた。

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甲斐よしひろ この夜にさよなら

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