Dear You

Seriously:fou you

あなただったわたしへー過去世の不浄霊だったわたしにー

2013-01-12 | 
不思議な川辺を見ていた瞳は同じだった。小石を投げつけた水面の、ひろがる波紋のようなわたしの影に重なっていたあなたの霊魂。それは、まぎれもなくあなただったわたしが、波紋を濁らせていた。聴こえていたのに、あなたであったことを置き去りにした場所を、わたしに生まれ変わることで憶い出すことができずにいた。あなただったわたしは、なりたかったわたしを呼んでいた。生まれる前のわたしが、わたしを探す声に木霊のように返事をしながら、うつろに、生まれ変わったわたしの水脈(みお)に宿っていた。
わたしが今のわたしの形象(かたち)を持つまえから、あなたはわたしが生まれることを待っていた。あなただった過去世に、わたしがあなた抱きしめることを予感した唄を、白い夢に残して―― 死の自覚をしたくなかったのは、わたしだった。あなたを苦しめていたのは、水底よりも深いところに沈んでしまったあなたではなくて、あなたの言葉を知っていながら、あなたの言葉に深く漂うことのなかったわたしだった。ほんの少し気づいていながら、鉛の洞窟に眠らせた数々の旋律の鍵を開ける勇気が持てるまで、わたしはわたしの無数の転生を水に流していた。
あなたが書き記した言葉の引き換えに、わたしが此処に在ると言っても過言ではない。あなたが見ていた川辺の向こうには、数え切れないほどの茨が迷いの森のように覆っていた。だから、たいていの人は前世の自分には逢いにいけない。それでも幽界で彷徨うあなただったわたしを迎えに行けるのは、わたしでしかなかった。あなたが待ち望んでいた光になれるまで、無我夢中に茨を切り裂き、傷痕を棄てて、行く手が火を浴びる煉獄だったとしても、あなたの見た不思議な川辺を、あなたの瞳を通してではなく、わたしのこの眼で見ることで、あなたの死が浄化されていくと分かったから、わたしのなかでもう一度生きることを、わたしもあなたに呼びかけた。あなたの書き記した言霊のように、わたしは別の涙を流しながら、あなたを抱きしめていた。涙は、わたしのものではなく、あなたのものだった。
真綿色のオーロラのなかに、いくつもの煌めく粒子が輝いて、そこに太陽の光を受けると、プリズムのように乱反射した稲妻のような虹の閃光が明滅している。それが、あなたとわたしの霊的なエネルギー。純白の魂になるほど、あたたかくなる。そのぬくもりから、あなたは明るい調和の緑を発光して、わたしに答えていた。ほとばしる光のしらべは、あなたであり、わたしであり、虹色の水晶を解き放つ足跡を創作するために、あなたとわたしは地球の呼吸がこぼれ落ちる場所へと昇華していく。
不思議な川辺には、もう誰もいなかった。









コールサック74号 投稿作品 掲載をありがとうございました。

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ルビンの壷

 絵のなかの、両側の顔を見ると壷は空間になり、壷にみると両側の顔が空間になります。壷と両側の顔とを同時に見ることはできているのですが、同時に両側の顔と、中心の壷を見えことはできない、と何かに書かれていました。確かにその通りで、顔に見ると壷は見えないし、壷を見ると顔は見えなくなります。
 しかし、オーラを見る訓練をしてから、このルビンの壷の絵の、両側の顔と中央の壷を同時に見えるようになりました。同時に見えると言うことは、同時に壷は壷であり、顔は顔であるという認識ができるということです。
 その秘密は網膜にあります。網膜の錘状体と桿状態(かんじょうたい)と呼ばれるところは筋肉で、この筋肉を鍛えることにより、人は機微な光の放射よりいっそう感知できるようになります。目の筋肉は想像以上に視覚をコントロールするのに役に立っています。また、この筋肉を鍛えると、平面図が立体的に見えるようになってきます。輪郭の影をくっきりと鮮明に映し出すような感じで見え、背景が後方に見えるようになってきます。
 その鍛えた筋肉でルビンの壷を見ると、両側の顔の輪郭は後方になり、中央の壷の輪郭が前方に飛び出してくるため、壷と見詰め合った顔とが、同時に認識できるようになります。
 このルビンの壷が立体的に見えてくるのは、ひとつの発見でした。オーラを見るとき、光が飛び出すように現れてくるのですが、それは、この空間には次元がいくつも重なっているからなのだと改めて認識することができました。人のオーラはこの空間では見えないのは、アストラル界で輝いているからなのです。目の筋肉の状態を、ルビンの壷を立体的に見るような状態にしていると、アストラル界から光が飛び出すようにオーラが現れてきます。この光が完全に見えるようになるまで、わたしは訓練したいと思っています。
 目の筋肉だけを鍛えても、必ずしもアストラル界からオーラが飛び出すように見えるとは限りません。第7チャクラ(頭頂のチャクラ)が開いてなければ見えないのです。アストラル界が視界の全体に入ってくればいいのですが、今のところ飛び出す絵本のように突然、残照だけがしゃぼん玉のようにふわりと浮かんできます。視界の全体にアストラル界が入ってくるまで、もう少し訓練が必要のようです。
 オーラを見ると人それぞれの生き方や感情まで分かるようになってきます。それは、見える人のものではなく、あくまで他者のものなので、他者のオーラからの情報を見ても口外せずに秘密を
守る義務があります。他者のすみずみまで解かってしまうため、オーラを見るというのは、神さまの領域に入っていくことにもなります。オーラを見る力は決して悪用できないようになっているのです。悪用すると、第7チャクラが閉じて、オーラを見る力は無くなってしまいます。オーラは神さまの信頼のもとで、見える力が与えられているのでしょう。この力は、他者の幸福への願いのために使っていきたいと思っています。






かくれんぼ

2013-01-06 | 
まぁだだよ

鬼のいないかくれんぼ 
どこかの森の奥深くの遊園地 
幻の回転木馬をふたたび廻すため 
息をひそめて身をちぢめ
頬を寄せて影にかくれていた 
天使の少年と少女 
ふたりして

もぅいいかい?

鬼の代わりにたずねていたのは 
ながく伸びた影法師 
幻の回転木馬はいつ歌う? 
ちいさなちいさな木霊の声が 
風に漂い耳をなでていた

遠い日に蓋をした曇りガラス
閉じ込めてしまった寂しさに
月と星の光を見せてあげたくて
見つけていけないものなど
どこにもないと探し歩く 
まわりっぱなしの時の果てに 
見つかるものが愛おしく 
幻の回転木馬は錆から目覚めていた

逢魔ヶ刻のあわいで
沈みかけた夕陽に約束していた
少年が少女を見つけたら
少女が少年を見つけたら
たがいの翼を千切って交換するよと
こゆびを結んでいた

きみよ、かならず想い出すよ
出逢って ぼくたちはたがいの
分身になるんだよ

それまで曲がり角の鬼に惑わされ
くねくね道は銀の光を育てている
見つけるためのものを 
見つけられるように仕舞っていた 
おぼろ雲の向こう側 

独りでいることが孤独ではなくて 
独りだと思うことが孤独なのだと分かったから

もぅいいよ

返事しているのは
木の実を食べてる回転木馬 
翼の契りを交わすふたりを待っている 
永遠は命ではなく魂にかくれている
なな色の月の光から糸を曳き
差し出すもう一枚の翼に編みこむ
少年と少女

出逢ったら誰にも内緒で
約束は果たされる
天使の記憶を消されて
にんげんのまま 
うつつにかくれる夢と 
夢にかくれるうつつの 
かくれんぼ

まぁだだよ
もぅいいかい?
もぅいいよ

今なら言葉にできる 
ずっと伝えたくて秘めていたけれど
泡に溶けてしまいそうで 
声に出せなかったこと
少年と少女がおなじ時刻に
おなじ時空間で話していた
物語のこと
そう
今なら

みぃつけた
数え切れない寂しさを
数えてはいけなかったこと

まわりはじめた回転木馬 
だぁれもいなくても 
なぁんにも見えなくても
かさなる少年と少女 
天空の手のひらから舞い上がる 
なな色のひかりの翼 
ふたりのさいごの言葉を届けるため
もう一度

みぃつけた











コールサック74号 掲載をありがとうございました。
今回、アップしたものは、加筆・訂正した作品です。







わたつみの夢語り

2013-01-05 | 
そこに海が生まれるまえから
風は知っていた
誕生はいつも異変から
奇跡のように起こりうる
まっ赤なマグマは
激しく荒れて夢を見たのだろう
炎から水になることを望み
風の灼熱の想いは
水の惑星になることだった

やがて渇く夢の予知を覆すために
風の声は聞き入れられた
微惑星が衝突しなくなり
解熱した大気から流れ出た汗の
無数のひとつぶが
天に昇り灰色の雨雲となり
如何なる障害も物ともしない
強い思念のように豪雨が降り続けていた
生み出すためにもっとも必要としていた
情熱に満ちた三百度の雫たち
蒸発しながらも湧き溢れる
一瞬のような永劫を重ねて冷ましながら
いつのまにか大海原になっていた

あれから四十億年が流れても
波立ちは止むことなく
声のない記憶を印している
それは宇宙の秘話のほんのひとかけら
月の引力に導かれて海水は
人知れず転生を繰り返す
忘却という浄化が溢れているから
海のルーツに終わりはない

今、眺めている海には
もう二度と逢うことはないのだと
告げる潮騒はざわめきながら泡になる
それを儚く想うヒトの琴線
命のふるさとと魂のふるさとは
違う時空間であったことを想い出す
見知らぬ過去も磯の薫りに漂っていた
別の命でありながら同じ魂は憶えている











コールサック74号掲載作品 ありがとうございました。
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「銀の三角」   萩尾 望都

 変動値の高い音楽を聴くと、そのシンガーや奏者を殺害するようにプログラムされたマーリー。変動値の高い音楽とは、そのような旋律なのだろう?きっと神々しい波動であり、誰の心も癒す美しい音楽なんだと思えた。マーリー自身が、その旋律に心地よさを感じながらも、それを抹殺してしまわなけばならないというマーリーの矛盾は、闇よりも深い谷底のような哀しみを感じる。
 マーリーほど極端な矛盾は、物語上、設定されているのだろうが、誰の心の中にも大なり小なり矛盾があり、マーリーの生きる使命の過酷さに心が震えるようであった。
 謎の楽師であり吟遊詩人であるラグトーリン。彼女は、エロキュスという変動値の高い歌を歌う歌手の前では少年として現れ、それ以外では女性として登場している。星や風やすべての魂の声を聞く楽師。6年に一度しか朝の来ない惑星で、超能力を持ったミューパントーという種族の最後の生きのこりを救うために、時空を移動しながら歳をとらない不思議な存在に心惹かれる。ラグトーリンの迷路、というタイトルがつけられている章があったが、迷路を作ったのは、ラグトーリンだろうか?最後まで謎の多い物語だった。
 このミューパントーは辺境地の王国で、たまたま生まれてしまう。王は不吉な子が生まれたとして、何度もミューパントーを殺すがミューパントーは殺害される前の時空に瞬間移動できるため、死ぬことはない。永遠の命ではないのだが、短命のために死を予知することができ、死を回避できるのだった。ミューパントーの残酷な運命にも心が痛んだ。
 この物語は、さまざまな方向からいろんな解釈ができるので、読者の感性を深めるお薦めの一冊です。萩尾望都さんの絵も美しく、ながいながい巻物を広げてみるような壮大さがありました。




音無しの瀧

2013-01-03 | 
水の勢いは
山肌の夢から溢れ出す
流れ落ちて
岩盤と対話する飛沫の瞬き
清らかな静寂をなぐさめている
水面を包む木立の葉が
耳を澄まして
音の伝える夢語りを
風に揺れながら大気に放つ

遥かなその昔
歌い人の稽古の声明に
この瀧の音は消えたと云う
一体化した音と音の
辿り着いたところは
無になること

瀧の音を聴き入り
声のない対話を
繰り返しているふたりがいる
人同士の一体化とは
黙っていても聴こえていること
音と音の重なりは
空無に響き合う
傾聴の重なりは
無辺に木霊する

水の無はなにも消さない
なにかを生むための無になり
無限の響きが
音無しの音になる
瀧のほとばしる旋律は
訪れる人に知らせていた
無になる愛を








☆詩人会議2013 2月号 掲載作品 ありがとうございました。
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 夕方頃から降り続いた雪のため、外は白い夜になってしまいました。
楽勝樹の枝に雪が積もり、花のように咲いているのを「花ぼうろ」と呼ばれている地域もあります。
花ぼうろに太陽の光があたると、真っ青な空に真綿色の枝はとても美しく映えます。
雪の白さに厳かなものを感じます。降り続けると、見る見るうちに積もり、
車をすぐに真っ白に埋めてしまいます。駐車場に並んだ車は、誰のものか分からなくなるときもあります。
そんな時、雪は何かを隠すために降り続くのではないかと思えてなりません。
隠すためなのか? 伝えるためなのか? きっと、どちらも雪の使命なのでしょう。
雪のひと粒ひと粒に精霊が宿っているから、ひと粒ひと粒違う結晶で舞い落ちてくるように思います。
雪は静寂です。吹雪いていても、風の音ばかり。
けれど、雪にはとても透明な音色があるように思います。
耳を澄ましていても聴こえないかもしれません。
誰かの幸せを願ったときに、雪は誰にも聴こえないように
そっと、願った人にだけ、水琴窟よりも透明感のあるやさしい音色で語りかけてくれます。
誰かの幸せのために生きたいと想った人にだけ、風の弦をポロンポロンと奏でています。
今夜の雪はやさしく唄っています。






ふたつの炎/他、2篇

2013-01-02 | ショートポエム
ふたつの炎     

たよりあうことではなく
分かりあうことでもない

支えあうこと 
それはおたがいの光に
耳をかたむけあうこと

ことばが分からなくても
炎は心の音をそっと聴いている





つぼみ

かならず ひらくから
そんなふうに信じてみたくなり
瞳をとじてみる

だって 瞳をあけていると
映るものしか信じられなくなってしまうから

まぶたのうちがわなら 
はなびらが空に輪をえがいている
知らない明日を見ることができるわ

見たことのない時の訪れを
とじた瞳は知っているのよ

風はなまえを呼んでいたの
つぼみに 希望と







たそがれの置手紙

はやく夜になぁれとだれかが零す
黒いインクの一滴がにじみながら
すこぅしずつ夕焼けを冷まして
黄昏は祝福されたように此岸から遠ざかる

できるだけ さみしいほうがいい 
おぼろ雲にかくれる星を探しにいけるから

憂いからあふれる熱い雫を送る 
ケータイをひらいてみると
こぼれ落ちていた
あなたの一番星




 





PO147号 掲載作品