水なすさんは近ごろすっごく忙しいみたいで、「ベルばら二週間も読んでない!」て一人で騒いでたよ。
パソコンの前には座ってるみたいだけど、絵はぜんぜん描いてないみたい。
「ベルばらサイトも見にいけやしない!」んだって。
お金にならない仕事だとかなんとかブツブツ言ってたなあ・・・。
あ、こんな話つまらないから、写真の僕のお話をするね。
まず、お洋服のことからしゃべるよ?
僕は水なすさんちに来てからさ、ずっと赤いセーターを着てた。
だけど、それはとっても古くて、おまけにお洗濯も何度もしてもらってたから、もうよれよれになってたんだ。
それと、僕が履いてたスカート…あ、僕は男の子なのに、スカートを履かされてたんだよ。
おかしいでしょ。
それはね、初めて水なすさんちに来たときに、
「おまえは男だけど女の子として生きなさい。名前はクマオよ。いい?」
って言われてしまったせいなんだ…。
とっても悲しかった。
それからずっと僕はがまんしてスカートを履いてる。
それだけでもひどいのに、そのうえサイズも合ってない。
「ちょうどいいのが売ってないからガマンしなさい。男の子でしょ!」
って。そんなの無いと思う!
「痩せれば?」
も、ひどいと思う!
プペちゃんていうお人形の女の子…巻き毛で緑のドレスを着た可愛い子なんだけど…その子も「あたしの靴下、合ってないの」って泣いてたよ。
ほんとにひどくって、いいかげんな人なんだ。水なすさんって。
こないだ、とうとう我慢できなくなって、
「僕のお洋服、新調してよ!新調してくれなきゃ出てっちゃうから!」
て、じたばたしながら必死に頼んでみた。そしたら、水なすさんはやっとしぶしぶ立ち上がってくれたんだ!
「わかった」って、あわててどっかに電話をしてるみたいだった。
それから数日後のある日のことなんだ。
僕はYさんのおうちへ連れて行かれた。
Yさんはね、水なすさんのお弟子ちゃんのママだよ。
そこで、とっても嬉しいことが起こったんだよ!!
まず、Yさんに赤いセーターとスカートを優しく脱がされて、体のサイズを測られた。
何が始まるのか僕は知ってたから、本当はわくわくしてた。でも男の子だから、ぽーかーフェイスにしてようと思った。
転がされたりさわられたり、されるがままにおとなしくしてたら、Yさんったらすごいよ!あっという間に上の写真みたいなかっこいいのを作ってくれたんだから!
写真はYさんが水なすさんに送ってくれた写メールだよ。
僕、いけないことだけど、こっそりYさんの携帯電話をのぞいちゃった…えへ。
上の写真メールには「まずはズボンから。こんなの出来ましたいかがですか?」
って書いてあった。
次のこれには
「ボタンを付けたら、シャツが完成です!!」
また次のこれには
「完成です!今度娘に持っていかせます」
感激だよ!僕、かわいいでしょ?
それからだいぶ後になって、またYさんが送ってくれた写真だよ。
「大変!息子がクマオ君を死ぬほど愛しております…」
水なすさん、あわてたかなあ。
それにしても、「Yさんって洋裁の天才!」って、いっつも言ってたから、無理にお願いしたみたいだけど、ちゃんとお礼はしてくれるのかな?
それに、こういうの、しょっけんらンよう、とか言うんじゃないのかなあ。
あのひと、お裁縫まるでダメみたいだけどさあ、やっぱり女の人って、こういうことが出来ないと、って、僕はクマだけど思うよ。
お洋服も作ってくれるし、ボクちゃんも僕をすっごく可愛がってくれるし…。
僕、Yさんもボクちゃんも大好きだよ。
水なすさんちに帰ったら、Yさんちの子になるって言って、ビックリさせてみようかなあ。えへっ。