(以下、結構なネタバレ、かなり勝手な解釈が在ります)
とても安定して観る事ができた作品でした。
『ケメコ・デラックス』のようなエキセントリックな作品で手腕が光る水島監督は、オーソドックスな「青春スポーツもの」でも軽々と完成度の高さを見せてくれます。脱帽です。
もちろん、ひぐち氏の原作・黒田氏の脚本共々完成度が高いです。
それをキチンと「アニメ」で魅せてくれるのが、水島監督の力量だと思います。
最終回は、驚くほど何も起きません。でも、面白い。
県大会に破れた直後の西浦ナインが、次の目標に向けて動き出す・・・というシチュエーション。もっとみんな「負け」を引きずっててもいいのに・・・というくらい、みんな「サバサバ」してるというか、「負け」にちゃんと向き合って自分達の事も客観的に見つめなおしてます。みんな、強いんです。 ・・・また、そこが「健気」でもあります。
何も起きない最終回ですが、きっちりと個々の「ドラマ」は描かれてます。
一見まったりしてる「西浦ナイン」でも、異なる個性と思惑が交差することで(ぶつからないのがミソ)、「葛藤」が生じてます。重厚な脚本です。
で、今作のシリーズ・テーマは何かというと・・・なんだろう?
とても出来が良くて面白いのに、テーマが表に見えてこない・・・これも、高度な脚本力。
間違いを承知で考えると・・・「自信の欠落」=「父・先輩の欠落」でしょうか。
「西浦」の戦力は結構スペシャルです。
三橋の抜群のコントロール。阿部のデータ野球。田島の打撃力と気配りなどなど。他校より突出した部分が多々あり、新設校ながら強豪にも勝っていけたのもうなずけます。
でも、美丞戦では善戦しつつも負けてしまいました。
美丞にあって西浦に無いもの・・・それは厚い選手層の先輩達。OBの監督・コーチ。つまり、大人の男としての先輩たちです。幾多の修羅場を潜り抜け、切磋琢磨してきた先輩達の経験と助言が、美丞にアドバンテージを与えていたのです。
もちろん、西浦の百枝監督は優れた指導者です。リーダーとしての資質と安定感もあります。選手たちからの信頼も厚い。采配も的確。でも「男」じゃないのです。
これは、決して「男女差別」では無く、高校生男子が心の中に色々抱え込んでるモノを、的確に理解し、共感し、アドバイスしてやれるかどうか・・・という事なのです。
その意味で、美丞の監督やOB、先輩達は、厳しいながらも後輩達を理解し、指導し、勝つために一丸となっていました。これが、西浦には欠けていたのです。新設校ゆえのどうしようもない弱点でした。
母親たちは色々協力してくれてますし、応援団も出来ましたが、勝負に関するアドバイスができる「先輩・大人の男性」が皆無。唯一、阿部の父親は「投手とのコミュニケーション」について、息子の行動は間違っているのではないかとアドバイスしてくれました。でも、この時は阿部が聞く耳を持ってなかったので、試合に活かす事ができませんでした。阿部が自分の過ちに気づくのは、自分が怪我して退場し、試合に負けた後だったのです。
三橋や田島も、自分に足りなかった事を、試合中・試合後に気づきます。
間違いに自分で気づくのは素晴らしい事ですが、信頼できる先輩から的確なアドバイスがあれば、もっと早くに改善できた可能性もありました。これが、西浦の弱点だったのです。
三橋たちは来年・再来年のために、ゼロから積み上げていくというハンデを背負っています。これは彼らにとって「大きな試練」ですが、報われる時が来ると信じて、彼らは進んでいく事でしょう。
という形で、事件らしい事件は起きないまま、淡々と最終回が終わりました。
でも、次の試合に向けて、西浦ナインは心身共に成長していくという希望が見えるラストでした。
見た後に「気持ちが良い余韻」に浸れるアニメは貴重です。
第3期も期待大です。
P.S.
最終回のエンド・ロール、作画監督が2人に作画監督補佐が9人の計11人体制。
制作スケジュール、めちゃくちゃ厳しかったみたいですね・・・
水島監督ほかスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。
とても安定して観る事ができた作品でした。
『ケメコ・デラックス』のようなエキセントリックな作品で手腕が光る水島監督は、オーソドックスな「青春スポーツもの」でも軽々と完成度の高さを見せてくれます。脱帽です。
もちろん、ひぐち氏の原作・黒田氏の脚本共々完成度が高いです。
それをキチンと「アニメ」で魅せてくれるのが、水島監督の力量だと思います。
最終回は、驚くほど何も起きません。でも、面白い。
県大会に破れた直後の西浦ナインが、次の目標に向けて動き出す・・・というシチュエーション。もっとみんな「負け」を引きずっててもいいのに・・・というくらい、みんな「サバサバ」してるというか、「負け」にちゃんと向き合って自分達の事も客観的に見つめなおしてます。みんな、強いんです。 ・・・また、そこが「健気」でもあります。
何も起きない最終回ですが、きっちりと個々の「ドラマ」は描かれてます。
一見まったりしてる「西浦ナイン」でも、異なる個性と思惑が交差することで(ぶつからないのがミソ)、「葛藤」が生じてます。重厚な脚本です。
で、今作のシリーズ・テーマは何かというと・・・なんだろう?
とても出来が良くて面白いのに、テーマが表に見えてこない・・・これも、高度な脚本力。
間違いを承知で考えると・・・「自信の欠落」=「父・先輩の欠落」でしょうか。
「西浦」の戦力は結構スペシャルです。
三橋の抜群のコントロール。阿部のデータ野球。田島の打撃力と気配りなどなど。他校より突出した部分が多々あり、新設校ながら強豪にも勝っていけたのもうなずけます。
でも、美丞戦では善戦しつつも負けてしまいました。
美丞にあって西浦に無いもの・・・それは厚い選手層の先輩達。OBの監督・コーチ。つまり、大人の男としての先輩たちです。幾多の修羅場を潜り抜け、切磋琢磨してきた先輩達の経験と助言が、美丞にアドバンテージを与えていたのです。
もちろん、西浦の百枝監督は優れた指導者です。リーダーとしての資質と安定感もあります。選手たちからの信頼も厚い。采配も的確。でも「男」じゃないのです。
これは、決して「男女差別」では無く、高校生男子が心の中に色々抱え込んでるモノを、的確に理解し、共感し、アドバイスしてやれるかどうか・・・という事なのです。
その意味で、美丞の監督やOB、先輩達は、厳しいながらも後輩達を理解し、指導し、勝つために一丸となっていました。これが、西浦には欠けていたのです。新設校ゆえのどうしようもない弱点でした。
母親たちは色々協力してくれてますし、応援団も出来ましたが、勝負に関するアドバイスができる「先輩・大人の男性」が皆無。唯一、阿部の父親は「投手とのコミュニケーション」について、息子の行動は間違っているのではないかとアドバイスしてくれました。でも、この時は阿部が聞く耳を持ってなかったので、試合に活かす事ができませんでした。阿部が自分の過ちに気づくのは、自分が怪我して退場し、試合に負けた後だったのです。
三橋や田島も、自分に足りなかった事を、試合中・試合後に気づきます。
間違いに自分で気づくのは素晴らしい事ですが、信頼できる先輩から的確なアドバイスがあれば、もっと早くに改善できた可能性もありました。これが、西浦の弱点だったのです。
三橋たちは来年・再来年のために、ゼロから積み上げていくというハンデを背負っています。これは彼らにとって「大きな試練」ですが、報われる時が来ると信じて、彼らは進んでいく事でしょう。
という形で、事件らしい事件は起きないまま、淡々と最終回が終わりました。
でも、次の試合に向けて、西浦ナインは心身共に成長していくという希望が見えるラストでした。
見た後に「気持ちが良い余韻」に浸れるアニメは貴重です。
第3期も期待大です。
P.S.
最終回のエンド・ロール、作画監督が2人に作画監督補佐が9人の計11人体制。
制作スケジュール、めちゃくちゃ厳しかったみたいですね・・・
水島監督ほかスタッフの皆様、本当にお疲れ様でした。