Dr.レビンと生徒たち

絵を描く私の日常の他、生徒と私の対話の形を借りたシナリオ風エッセイを載せていきます。記事には必ず私の絵がありますよ。

ハロー効果....オンリーワンを磨く

2015-02-18 00:06:55 | ある日教室で
N:ハロー効果についてもっと詳しく教えてください。
T:えっ?
N:HRで話してたやつです。得意科目がどうのという・・。
S:ああ、それ知ってるよ。授業の時にもっと詳しく聞いたから。ポジティブハローとネガティブハロー・・ですよね、先生。
T:ああ、そうだね。人間は他人をどう評価するかという話でね。
N:わかりやすくお願いしますよ、専門用語なしで。
T:じゃぁ、具体例でいこう。
S:あ、はいはい。
T:あるクラスに大人しくて目立たない子がいた。いつもひとりぼっちで本を読んでいたが、勉強もそんなにできるわけでもなく、運動も不得意だった。

S:私みたい・・。
N:Sのどこが大人しいの?
T:そんな彼女があるときを境にすっかり変わるんだ。それは国語の授業で、誰も書けなかった蕾という漢字をみんなの前で書けた瞬間から。先生の出す難しい漢字をことごとく正解し漢字博士というあだ名をもらった。
S:うん、うん。
T:その日からみんなの彼女を見る目が変わったんだ。彼女の全てが素晴らしく見えるようで、友達も一気に増えた。彼女自身も、よく勉強するようになって成績はぐんぐん伸び、友達の評価がますます上がり、いつの間にかクラスの代表として活躍するまでになった。
N:へぇー。でもありそうな話。
T:これがポジティブハロー効果。
N:どう考えればいいんですか?
T:ひとつの素晴らしいものを持っていると、その人間の全てが素晴らしく見えるようになること。そして、その評価は自分にも返ってきて全てが素晴らしくなるように努力し変容していくこと。
S:なるほど!
N:なるほどって、Sはちゃんと知ってたんだろう?
T:で、ネガティブハロー効果はこの逆だ。
N:ネガティブって否定的な意味ですよね。
T:あるクラスに、勉強も運動も良くでき、人気ものの男の子がいた。ところが、あるときこの男の子が、ある女子にひどい意地悪をした。その噂は誇張されてたちまち広がりあいつは悪い奴という評判が広がった。その男の子はやがて服装も乱れ、意地になったように悪いことをすようになった。当然、勉強もできなくなりやがて学校を去った。
S:それはちょっと...。
N:でも、ありそうな話。
T:ネガティブハロー効果とは、ひとつの問題点が明らかになると、その人間そのものが駄目に見えてしまうこと。その評価はその人間の中に入り込み、自信を失なわせてますます駄目になるような行動をすることになる。
S:なるほど。
T:自分がどう他人に見えるかと言うことは重要で、それが自分の生き方を規定している事意外と多い。
N:何とかならないんですか、そのネガティブハローは?
T:ネガティブな自分を修正してポジディブな自分をつくることだね。ポジティブハローは自分で演出できるんだ。
N:はぁ・・。
T:君は自分のどんな美点で輝くか?考えてみることだね。
N:そうか、ナンバーワンになろうとするより、オンリーワンになること?...か!
S:頑張ります。
N:こら、横から返事するなよ。

※ 写真は「雄叫び」 陶器の面・・・白土に織部の釉薬を薄がけして焼いたもの。私の作品です。

好きなのに反抗する?・・・しつけと虐待の狭間

2015-02-04 22:09:33 | ある日教室で

S:3才の子を殴って意識不明の重体。同居の男を逮捕って、
Y:ああ、新聞で見た見た。カップラーメンを黙って食べたからとか、ばっかじゃないの。
T:数日前の新聞には、7才の女の子を3日間椅子に縛り付けて両手首と両足首に3週間のけがをさせた容疑で母親と、同居の男を逮捕ってのもあったよ。
S:なんでこんな事が起こるんですか?
T:いずれの事件も、加害者側の言い分はいつも同じでね。「しつけのためにやりました」。
Y:しつけのためでも、やり過ぎです。
S:えっ、やりすぎなければ良いって事?
Y:そりゃぁ、しつけは必要でしょ。
T;まあ、まあ。
S:先生、躾ってどんなふうにやるべきなんですか。

T:躾って「易しそうで難しく、難しそうで易しい」んだ。
  先ほどの事件は子どもの虐待に当たり、もちろん躾なんてもんじゃないが、
Y:はぁ・・?????。
T:私の娘の長男が3才の時に弟が生まれてね...。
S:要するに孫ですね。先生の。
T:で、その長男は弟が出来てから母親の言うことをきかなくなった。怒られても怒られても言うことをきかない。娘はその理由が分からず相当悩んでいたな。君、なぜだと思う?
Y:弟ばかりを可愛がるから、怒っている? ですか?
S:恨んでる・・かも。
T:うーん。いいせんいってるよ。弟に着目したのは素晴らしい。でもね、彼は母親がこの世で一番好きな事には変わりないんだ。恨んじゃいない。
Y:好きなのに、反抗するんですか? どうして!!
S:じらさないで、教えてください。
T:彼は・・・実は楽しんでいたんだ。
Y:えっ?
T:怒られる不愉快より、母親と交流する時間を確保することを優先していたのさ。弟が生まれてから母親は弟につきっきり、自分が母親の気に入らないことをして怒られている時間だけが母親を独占できる時間だった。
S:うわっ、けなげで悲しい。
T:動物王国で有名な畑正憲って知っている?
Y:テレビで見たことあります。熊とかオオカミとか犬とか狸とかたくさん飼っているヘンなおじいさんですよね。
T:ライオンとも親しくなれるという、動物の飼育にかけては、一流の人物だ。
S:はぁ
T:彼が、躾について語っている新聞記事をちょっと思い出したよ。「躾とは可愛がることだ」。愛して愛して、徹底して可愛がることが出来たら、どんな動物もその人を信頼する。信頼が成立したときだけ躾も成立すると彼は述べていた。
Y:どうしてですか。
T:好きだから受け入れるのさ。嫌いなら恐怖感しか生まれない。躾は支配とは違うんだ。
S:虐待事件はすべて、躾ではなく支配のためにやっていた。
T:だから成立するはずはなく、暴力はエスカレートした。
Y:先生の娘さんの場合はどうなったんですか。
T:もっと抱きしめてやりなさい。それが私のアドバイスだった。うまくいったよ。

※ 絵は「初めての晴れ着」油彩画 F4