Dr.レビンと生徒たち

絵を描く私の日常の他、生徒と私の対話の形を借りたシナリオ風エッセイを載せていきます。記事には必ず私の絵がありますよ。

「有珠山より見下ろす」 油彩画 F4 80%

2015-05-31 15:57:06 | 油彩画
有珠山外輪山から有珠の農村地帯を見下ろす風景です。噴火湾が湖のような色合い、遠くの山々は青くかすんで美しく、スッキリした気分になります。


哲学?

2015-05-24 23:33:33 | ある日教室で
T:ぶつ、ぶつ・・・・・。
F:何をぶつぶつ言ってるんですか?
T:オレオレ詐欺の受け子に高校生、現実感も罪の意識もなく・・・・
Y:新聞の切り抜きですね、今朝のHRで言っていた。
T:修学旅行で集団万引き・・・・、その場の雰囲気で・・・・。
F:それもありましたね最近。悪いですよね最近の高校生...って僕らも高校生ですけど。

T:これはそう単純な話ではないぞ。君らにも彼らと同じような思考回路の落とし穴がないとはいえない。
Y:まさか、そんなことはないです。
T:君ら高校生の常識は自分で考えたのではなく周囲から与えられたものでできている。だから簡単に支配されたり流されたりしやすい。
Y:はあ。
T:高校生の時期は、自分の思想的な物差しを作るために哲学すべきなんだ。
F:哲学?
T:そう、哲学だよ。物事の根本を思索によって解き明かすことさ。
Y:ふーん。
F:哲学なんてしなくても人をだますのは悪い、盗みも悪い、悪い物は悪い。で良いんじゃないですか。
T:ほう。
F:私は、新品のちょっと高い傘を買ったその日に学校の玄関で盗まれたことあるんです。
T:ふんふん。
F:悔しくて、悔しくて、もう頭に来ました。お母さんにまた買ってとはいえないし。
T:そりゃそうだ。
F:ところがです。もっと悔しいことに、その傘が数ヶ月後に見つかったんです。
T:ほう? もっと悔しいって、どう言うこと?
F:自分のクラスの同級生だったんですよ、持っていたやつが。
T:返してもらえばいいじゃないか。
F:言えません。同級生ですよ。お前が盗んだのかって言えますか。
T:私なら言うけど。
F:でも、その時からあの人を許せません。絶対に許しません。30年後の同窓会になったってきっと覚えていて、心から笑えませんね。
T:そうか。
F:考える必要もなく、感情が許しません。盗みなんて・・。だから哲学なんて必要ありません。
T:ふん、そうかな。
F:そうです。
T:平成16年、史上最大の水害に見舞われた福井県の水害対策本部に2億円の宝くじの当たり券が寄付された。
F:いきなり話題を変えないで下さいよ。宝くじの話ですか?
T:君は、この寄付をした人の心を理解できる?
Y:すごいと思うけど、理解できません。
T:何が理解できないの?
Y:2億円あったら何でもできるじゃないですか。家を建てて、車を買って、海外旅行をして・・・。それを、寄付しちゃうだなんて?
T:私はよく理解できるね。彼は2億円を自分の金とは認めなかったんだよ。それを盗まれた金としてあつかった。誰かから盗んだわけではないが、少なくとも自分の働いて得た金ではないのだから。
Y:宝くじに当たったお金と盗んだお金を一緒にしないで下さいよ。
T:それを同じと考えるのが哲学さ。
F:はぁ??
T:人間が生きていくには、誇りが必要だ。その誇りのひとつに、「自分の汗で得たものだけで俺は生きているんだ」という自律の誇りがある。
Y:校訓3番、うん? 
F:校歌の3番にもありますね。「自律の心持ていざ進まん・・。♪」
T:この自立の誇りの考えを広げていけば、自分の汗で得た物以外は、拾った金も、宝くじで当選した金も手を付けるべきではない。誇りを傷つけるからね。災害で困っている人がいるなら使ってもらおう!!2億円を寄付した人の心意気さ。
F:本当ですか?
T:さあね。何せ匿名での寄付だから。
Y:でも、何で匿名だったんです。名乗っても良かったのに。どんな人か、先生の言うとおりの気持ちだったのか絶対に聞きたいですよ、その人に。
T:多分、家族や親類に知れることを恐れたんだろうね。君のような感覚でその金に群がるかも知れないだろ?
Y:あっ、その言い方ひどい。僕は人の当たった金なんて狙いません。
T:当たったのが父親でもかい?
Y:うっ!
T:哲学のないやつに知らせるのは危険なのさ。だいたい、宝くじが当たって労働意欲を失い一家離散なんて話もあるくらいだ。
F:........。
T:私は当たるのがいやだから、そもそも宝くじを買わないがね。
F:ちょっと奥が深いですね。哲学って。
T:そういう哲学で構築された価値観は揺るがない。君らも揺るがぬ価値観を構築すべきだ。

絵画2人展 無事終了

2015-05-19 16:35:13 | 油彩画

5月18日15時を持ちまして「久井康夫・飯村博 絵画二人展」終了しました。
5日間の来場者890名、記名された方約400名、感想・メッセージをお寄せいただいた方は57名でした。お互いに次の飛躍への課題が見つかった大成功の展覧会だったと総括しています。ご来場頂いた方や二人展を様々な形で支えて頂いた多くの方々に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。


頑張って生きているオタマジャクシたち

2015-05-02 00:26:26 | ある日教室で

D:先生、実験室にカエルがいるって本当ですか?
T:オタマジャクシだけどね。3年生の実験に使うんだ。
D:オタマジャクシの解剖?
T:いや、黒色素胞と血流の観察だよ。
D:黒色・・・(??)、で、どこで取ってきたんですか?
T:学校の裏の、ハルカラモイに抜ける道の途中にある小さな沢に生み付けられていたんだ。エゾアカガエルとエゾサンショウウオの卵がね。
H:へぇー、そんなところに。

T:カエルの方が先に孵っていてね、サンショウウオのひも状の卵塊のかんてんをさかんにつついて食べていたよ。
D:カ、カエルがサンショウウオを食べるんですか。
T:まぁ、サンショウウオが孵化するまでの間だけだろうけどね。
H:サンショウウオが孵化するとどうなるんです。
T:今度は、サンショウウオがオタマジャクシを食べる番さ。
H:うわっ、弱肉強食!
T:こうして、成体なるまでに、食いつ食われつどんどん数を減らしていく。成体になってからも、ネズミに食われたり、鳥に捕まったり・・・・。
D:かわいそう。
T:一匹の雌親が生涯に3000個の卵を産んだとして、その卵の何個が次の世代として卵を産める雌親にまで成長できると思う?
H:10個ぐらいですか。
D:いや、100個は成長できるんじゃない。
T:もし、10個が雌親になったら次の世代で生まれる卵の数は10倍になる。その比率で10年後には1匹の雌ガエルが何匹の雌ガエルに増えることになるかね?
H:10×10×10×10×10×10×10×10×10×10=10,000,000,000。100億!! 100億倍に増えるんだ!
D:地球がカエルだらけになる。むりむり!!
H:あっ、そうか。一匹の雌親からは一匹の雌親ができれば現状維持なんだ。答えは・・、
D:1個!!!!
H:おい、答えの横取りすんなよ!
T:うん、そういうことだ。とするとね、カエルは3000個の卵の中から雄雌が一匹づつ生き残ればいい。2998個は途中で何者かに食べられることが想定されていると言うことだ。
D:かわいそう。まるで食われるために生まれてくるみたいですね。
T:その通り。しかもけっこう危うい確率だ。3000個の卵が全力で生き残る努力をしていかないと、食われすぎて絶滅へと傾くかもしれない。
H:それを食べているサンショウウオも同じ事情ですよね。
D:そっか。サンショウウオもカエルも必死で今を生きているんだ。
T:人類だって、核戦争やら少子化やらでいつも絶滅の危機をしょっているんだ。君らも頑張ってね。人類のために。
H:うーん。
D:当然、頑張ります!