脳科学研究センター-脳研究の最前線

脳の研究を総合的に行うべく、脳科学総合研究センタが1997年に設立された。

家族性アルツハイマー病と孤発性アルツハイマー病

2024-07-26 18:47:45 | 脳科学
アルツハイマー病は、早期発症型と晩期発症型に分類されます。早期発症型は、20代後半から60歳までに発病します。60歳以降の発症は、晩期発症型と定義されます(研究者によっては65歳以降とする場合もあり、私もその方が妥当だと思いますが、ここでは60歳とします)。患者数において晩期発症が圧倒的に多いので、医療経済学的には最も重要な標的です。早期発症型は少なく、かなりの割合で「常染色体優性遺伝」に関する家族性アルツハイマー病です。
「常染色体優性遺伝」は、性別に関係なく一対の染色体の片側に遺伝子変異が存在するだけで発症するということを意味します。両親の一人が家族性アルツハイマー病であれば、子供は二分の一の確率で発症することになります。将来、私は家族性病も予防・治療可能になるという信念があります。家族性アルツハイマー病患者は、正常に成長し成人に達した後に、30歳頃から60歳頃にかけて発症します。生まれる前から原因遺伝子変異を有するわけですから、潜伏期間が30年以上あることになります。この長期間にわたるプロセスを科学的・蓋然的に捕捉することは大変重要であると同時に困難な課題です。
一方、明確な遺伝性のないものを孤発性アルツハイマー病と呼び、晩期発症型の大半が、これに相当します。孤発性アルツハイマー病は85歳を過ぎると罹患率が急増します。家族性アルツハイマー病のタイムスケールに基づいて類推すると、原因は50歳代頃あるいはそれ以前からすでに始まっていることになります。親近者にアルツハイマー病気患者がいても、明確な遺伝性が認められない限りはあくまで孤発性アルツハイマー病です。今のところ、劣性遺伝する家族性アルツハイマー病は見いだされてはいません。


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