先週、ピアノのレッスン前に練習をしていたカホの音が、微妙におかしな跳ね方をしていた。
強弱があべこべなうえに規則性がない。
スタッカートも綺麗じゃないし、時々音も抜ける。
普段から、カホがやりがちなミスばかりだけれど、これは何かおかしい。
と、思いながらもレッスンへ。
教室までは車で10分ほど。
そのわずかな時間の間に、カホが
「指がぴりぴりする」
「腕がしびれる」
「痛い」
「背中も痛い」
「首が痛い」
「体に力が入らない」
と、どんどんおかしくなっていく。
教室について、指導者の友人に「ごめん、病院に連れて行く」と断り。
そのまま引き返して病院に。
バネ指の、関節の肥大した場所に、神経が挟まってしまってるんじゃないかと私は疑った。
以前、専門医に聞いていた状況に似ていたし。
けれどなにしろ私は受診することさけて、逃げ続けて3年。
もはやカホは専門医のクランケではない。
ここはいったん、地元の整形外科に行くしかなかった。
初診だったので、小児母指バネ指(強健母指)の診断を大学病院でされていることを伝え、手術が必要な状態だけど逃げているということもちゃんと話した問診の後に、レントゲン撮影。
結果が出て、診察室に呼ばれるのをずっと、どきどきしながら待っていた。
ああ、このまま緊急手術とかになったらどうしよう。
明日はタクミの運動会だけど、どうにかなるかな(金曜日のお話です)。
旦那がこっちに帰ってきてるときで良かった。
もし最悪の状況になったら、しばらく有給とってもらって、体勢を整えて・・・
いろいろいろいろ、考えが駆け巡った。
やがて、カホの名前が呼ばれて。
私もお世話になったことのある、お爺ちゃん先生がにっこりしていらして。
「今日、跳び箱とか、やらなかった??」
と、カホにお聞きになられた。
・・・・。
あれ??
するとカホはあっさり「うん!」と元気よく返事。
お爺ちゃん先生は「そうかそうか」と満足そうにうなずいて、それから私に
「跳び箱が原因!」
と言い放たれた。
ええー!!!!!
なんでも、カホは手首とか肘とか肩とか、関節がすべて普通の状態よりも柔らかい体質らしく。
(たしかに右手で右手首がつかめる)
そのせいで衝撃が強く伝わるのだとか。
やわらかいバネは、吸収性がなくて、増幅するのだとか。
カホが跳び箱を飛ぶ瞬間に、「えい!」と両手を突くその衝撃が、何倍にもなって首に伝達していく。
それは体重の何倍もになるそうで。
だから筋力のないカホは、神経の麻痺とか痺れとか痛みを訴えるのだそうだ。
えええええええええー!!!
びっくり。
そんなこと、あるんだ。
へぇ~っと感心する私に「だから器械体操とか、向いてないからね。習わせないでね」って。
「もちろんです」と、まだびっくりしている私に、お爺ちゃん先生は続けた。
「それからね、バネ指なんだけど」
一瞬で、私の背筋がピンとした。
「まだ硬いけど、これくらいなら放置しても良いよ」
ん??
聞き間違いかな?
今、センセイ、何て言った?
身を乗り出した私の前で、お爺ちゃん先生がカホの右の親指を触ってた。
「手術とかね、必要ないから」
「で、でもセンセイ。右が重度で、左が軽度って・・・」
「うん?左はほぼ消失。右は軽度だねぇ」
「え、手術しろ!しろ!って、すっごく強く言われて・・・」
「うん?とりあえず今は、必要ないねぇ。日常生活に支障はある?」
「多少はありますが、工夫して何とか・・・」
「じゃあ、支障が出たり、痛みが発生しない限り、様子見で良いよ」
「え・・・・・」
「バネ指はね、小学校入学前に手術をすることが多くてね。でもそれはその段階での選択だからねぇ」
「成長して、良い方向へきているってことですか?」
「そうそう。そう考えて良いよ。これから筋肉がついてきたら、もっと改善するかもしれないし。うちにもバネ指で受診している2歳の子が居るけど、その子と比べても、今の状況はかなりいいよ」
診察室を出て、支払いを済ませて。
車に戻ったら、笑いながら涙が出た。
「すごいねカホ!!」って言ったら、カホは「奈良の大仏さんのところでお願いした仏様や、京都の縁切りのお寺さんのおかげかな!!」って、ありがたそうに親指を見てた。
家に帰って、旦那や両親に報告して、翌日に義母にも報告して。
一緒に喜び合った。
もちろんピアノを教えてくれる友人にもその日のうちに報告した。
「ピアノをきちんと教えてくれてるおかげだよ!ありがとう!」って。
まだ、正常ではないらしいけれど、状況は一気に打開。
「手術が必要」
から
「様子見程度で、受診も必要ない」
に。
私の罪悪感も、一気に消失。
「子どもに手術を受けさせることの出来ない意気地なしで、しかも自分の気持ち優先で医者にもかかってない駄目母」
から、救われた。
だから。
これにて、カホと私のバネ指との戦いは、いったん終了。
新たにカテゴリーを作りました。
もしも、このキーワードで検索して訪問する方がいらっしゃったときに、役立つと思って。
お子さんのバネ指に悩んでここへ来た方へ。
私たち親子の例は、きっと特殊です。
ピアノを習ったからって、バネ指が治るわけではありません。
第一、筋肉と関節と筋を正しく使うことを教えてくれるピアノ指導者は、残念ながら数少ないと思います。
また、受診からボイコットすることを奨励しているわけでもありません。
手術を闇雲に否定しているわけでもありません。
小学校に入学してからも、バネ指のせいで苦労することは多くありました。
決して、楽な時間ではありませんでした。
私たちは、たまたま、です。
バネ指は、まだまだ研究の進んでいない病気です。
もしかしたらいくつかのタイプがあって、カホのものは「成長したら消える」タイプだったのかもしれません。
何も、分かりません。
子どものバネ指を向き合うのは、とてもつらいです。
疲れます。
その気持ちは、同じです。
無理だけは、しちゃいけません。
強弱があべこべなうえに規則性がない。
スタッカートも綺麗じゃないし、時々音も抜ける。
普段から、カホがやりがちなミスばかりだけれど、これは何かおかしい。
と、思いながらもレッスンへ。
教室までは車で10分ほど。
そのわずかな時間の間に、カホが
「指がぴりぴりする」
「腕がしびれる」
「痛い」
「背中も痛い」
「首が痛い」
「体に力が入らない」
と、どんどんおかしくなっていく。
教室について、指導者の友人に「ごめん、病院に連れて行く」と断り。
そのまま引き返して病院に。
バネ指の、関節の肥大した場所に、神経が挟まってしまってるんじゃないかと私は疑った。
以前、専門医に聞いていた状況に似ていたし。
けれどなにしろ私は受診することさけて、逃げ続けて3年。
もはやカホは専門医のクランケではない。
ここはいったん、地元の整形外科に行くしかなかった。
初診だったので、小児母指バネ指(強健母指)の診断を大学病院でされていることを伝え、手術が必要な状態だけど逃げているということもちゃんと話した問診の後に、レントゲン撮影。
結果が出て、診察室に呼ばれるのをずっと、どきどきしながら待っていた。
ああ、このまま緊急手術とかになったらどうしよう。
明日はタクミの運動会だけど、どうにかなるかな(金曜日のお話です)。
旦那がこっちに帰ってきてるときで良かった。
もし最悪の状況になったら、しばらく有給とってもらって、体勢を整えて・・・
いろいろいろいろ、考えが駆け巡った。
やがて、カホの名前が呼ばれて。
私もお世話になったことのある、お爺ちゃん先生がにっこりしていらして。
「今日、跳び箱とか、やらなかった??」
と、カホにお聞きになられた。
・・・・。
あれ??
するとカホはあっさり「うん!」と元気よく返事。
お爺ちゃん先生は「そうかそうか」と満足そうにうなずいて、それから私に
「跳び箱が原因!」
と言い放たれた。
ええー!!!!!
なんでも、カホは手首とか肘とか肩とか、関節がすべて普通の状態よりも柔らかい体質らしく。
(たしかに右手で右手首がつかめる)
そのせいで衝撃が強く伝わるのだとか。
やわらかいバネは、吸収性がなくて、増幅するのだとか。
カホが跳び箱を飛ぶ瞬間に、「えい!」と両手を突くその衝撃が、何倍にもなって首に伝達していく。
それは体重の何倍もになるそうで。
だから筋力のないカホは、神経の麻痺とか痺れとか痛みを訴えるのだそうだ。
えええええええええー!!!
びっくり。
そんなこと、あるんだ。
へぇ~っと感心する私に「だから器械体操とか、向いてないからね。習わせないでね」って。
「もちろんです」と、まだびっくりしている私に、お爺ちゃん先生は続けた。
「それからね、バネ指なんだけど」
一瞬で、私の背筋がピンとした。
「まだ硬いけど、これくらいなら放置しても良いよ」
ん??
聞き間違いかな?
今、センセイ、何て言った?
身を乗り出した私の前で、お爺ちゃん先生がカホの右の親指を触ってた。
「手術とかね、必要ないから」
「で、でもセンセイ。右が重度で、左が軽度って・・・」
「うん?左はほぼ消失。右は軽度だねぇ」
「え、手術しろ!しろ!って、すっごく強く言われて・・・」
「うん?とりあえず今は、必要ないねぇ。日常生活に支障はある?」
「多少はありますが、工夫して何とか・・・」
「じゃあ、支障が出たり、痛みが発生しない限り、様子見で良いよ」
「え・・・・・」
「バネ指はね、小学校入学前に手術をすることが多くてね。でもそれはその段階での選択だからねぇ」
「成長して、良い方向へきているってことですか?」
「そうそう。そう考えて良いよ。これから筋肉がついてきたら、もっと改善するかもしれないし。うちにもバネ指で受診している2歳の子が居るけど、その子と比べても、今の状況はかなりいいよ」
診察室を出て、支払いを済ませて。
車に戻ったら、笑いながら涙が出た。
「すごいねカホ!!」って言ったら、カホは「奈良の大仏さんのところでお願いした仏様や、京都の縁切りのお寺さんのおかげかな!!」って、ありがたそうに親指を見てた。
家に帰って、旦那や両親に報告して、翌日に義母にも報告して。
一緒に喜び合った。
もちろんピアノを教えてくれる友人にもその日のうちに報告した。
「ピアノをきちんと教えてくれてるおかげだよ!ありがとう!」って。
まだ、正常ではないらしいけれど、状況は一気に打開。
「手術が必要」
から
「様子見程度で、受診も必要ない」
に。
私の罪悪感も、一気に消失。
「子どもに手術を受けさせることの出来ない意気地なしで、しかも自分の気持ち優先で医者にもかかってない駄目母」
から、救われた。
だから。
これにて、カホと私のバネ指との戦いは、いったん終了。
新たにカテゴリーを作りました。
もしも、このキーワードで検索して訪問する方がいらっしゃったときに、役立つと思って。
お子さんのバネ指に悩んでここへ来た方へ。
私たち親子の例は、きっと特殊です。
ピアノを習ったからって、バネ指が治るわけではありません。
第一、筋肉と関節と筋を正しく使うことを教えてくれるピアノ指導者は、残念ながら数少ないと思います。
また、受診からボイコットすることを奨励しているわけでもありません。
手術を闇雲に否定しているわけでもありません。
小学校に入学してからも、バネ指のせいで苦労することは多くありました。
決して、楽な時間ではありませんでした。
私たちは、たまたま、です。
バネ指は、まだまだ研究の進んでいない病気です。
もしかしたらいくつかのタイプがあって、カホのものは「成長したら消える」タイプだったのかもしれません。
何も、分かりません。
子どものバネ指を向き合うのは、とてもつらいです。
疲れます。
その気持ちは、同じです。
無理だけは、しちゃいけません。