
毎年この時期にグラミー賞と年間チャートの発表があるけど、
いつもグラミー賞の発表には何らかの大きな不満を抱いていたから、
後の年間チャートの発表で「こっちは期待を裏切らないから良い」ってなっていた。
でも、今年のグラミー賞は大きな不満がなかったどころかかなり良かったため、
色々準備してるのに年間チャートがあんまり楽しみにならない。
11月の全米チャートの中心人物を6人ピックアップし、彼らのチャート・アクションを振り返りつつ11月のチャートも振り返ります。
1.リアーナ
サントラという形でですが、約6年振りの復帰ですね。リアーナの新曲のチャート・アクションを見るのは初めてです。自分が本格的にチャートを見始めたころは "Love On The Brain" (2016年の『アンチ』収録)が大ヒットしていましたが、『アンチ』ブームのピークは明らかにその前年でした。それ以降、DJキャレドの "Wild Thoughts feat. リアーナ & ブライソン・ティラー" などフィーチャリング参加したシングルがヒットしたことはあったものの、自身のシングル・リリースはゼロ(参照)。SNSでは音楽引退説もありましたね。しかし、その不安を一蹴して、プロだな~と思わざるを得ないバラード "Lift Me Up" で彼女は今月チャートに復帰しました。初登場3位。安定ヒットになるかどうか確実なことは言えませんが、個人的には90%くらいの確率でなると思います。また、やっぱり今年はサントラが強いな~とも思いました、Top20以上ですでに6曲も新しくヒットしていますから。🎥
2.ルイ・トムリンソン
ワン・ダイレクションからソロ・デビューして早6年、ルイ・トムリンソンさんです。2017~2018年リリースの、後にデビュー・アルバム『ウォールズ』(2020) に収録されることになるシングル群はよく聴いていましたが、正直それ以降は追っていませんでした。『ウォールズ』の全米最高位は9位、比較ばかり良くないとも思うのですが、他のメンバーのソロ・デビューに比べると彼のデビューは一番地味だったな、と思っていました(もちろん全米Top10入り自体は超すごいことなのですが)。その『ウォールズ』から2年、新作『フェイス・イン・ザ・フューチャー』がリリースされましたが、まさかそれが前作を上回る5位を記録するとは思いませんでした。失礼な話ですが、ソロ・デビューは最初のインパクトにかかっているイメージがあったからです。初週売り上げは前作のそれをはっきり超えていて、気持ちいい結果になりました。本当に今年は男性ポップ・アーティストの勢力がすごいですね。🏳🌈
3.テイラー・スウィフト
日本でも報道されていたみたいなので言わずもがなかもしれませんが、今月全米Top10を一時的に完全独占した人です。10thアルバム『ミッドナイツ』のリリースに伴って起こったことで、もちろん史上初の出来事でした。...もちろん、チャートに現れるさまざまな曲を楽しむことを趣味にしている自分からすればまったく嬉しくない出来事ですが、史上初ということで快挙は快挙です。11月のシングル・チャートは、正直「テイラーさんがすごかった」だけで説明できるかもしれません。...それにしても、テイラー・スウィフトが?とはなりましたね。確かに国民的アーティストで、これまでも新アルバムのリリースごとに中~大規模なチャート・アクションを起こしてきましたが、それらは今回ほどではなく、具体的にTop10の半分を独占したことすらありませんでした。「急に」感がいがめませんでしたね、完全独占が達成されることがあるとしたらそれはドレイクやケンドリック・ラマーなどの人気ラッパーによってだと思っていましたが、まさか。
4.デヴィッド・ゲッタ
世界各国で大ヒット中の "I'm Good ( Blue ) feat. ビービー・レクサ" が、アメリカでもようやくTop10入りしました。本当はもう少し早く入っていてもおかしくなかったのに、チャート荒らしが連続して起こってランクアップが阻害されたため、やっとです。ビルボードによると、曲自体は5年前にはもうできていて、デヴィッドさんはライブでよくプレイしていたそうですね。未発表ではあったものの、ファンがライブの映像をリークしたことで曲の存在が全世界に知れ渡ってしまい、それが未発表のまま TikTok や YouTube で流行ってしまったので正式に発表せざるを得なくなったのかもしれません。大ヒット・EDMソングの典型みたいなすごい曲なので、ひとたび大衆に見つかったらもう必然的にヒットになってしまう。そんな印象で、正式リリースの時期を選べなかったデヴィッドさんにとっては不本意のリリースだったかもしれません(あくまで憶測です)が、ファンは「こんなにすごい曲、なんでこんなに長く未発表にしてたの!?」という意見が強いでしょう。🔷
5.コダック・ブラック
2022年2枚目の新作『Kutthroat Bill : Vol.1』がリリースされ、2作連続の全米Top10入りを達成しましたが、個人的にアルバムのタイトルが気になったのでそれに関連して彼のキャリアをまとめます。彼は2017年に "Tunnel Vision" とそれを収録したデビュー・アルバム『ペインティング・ピクチャーズ』が大ヒットし、メジャー・デビューを果たします。前者がシングル・チャート6位、後者がアルバム・チャート3位でした。ミックステープなのにアルバム・チャート2位とデビュー・アルバム以上の成績を残した同年のミックステープ『プロジェクト・ベイビー2』を挟み、翌年には早くもセカンド・アルバム『ダイイング・トゥ・リヴ』をリリース。先行シングル "ZEZE feat. オフセット & トラヴィス・スコット" が全米2位の大ヒットになったこともあり、アルバムはついに全米1位を獲得しました。ところが2020年に発表したサード・アルバム『Bill Israel』は一気に全米Top10落ち(Top10に入らなかった)、シングルもまったくヒットしませんでした。これを受けて彼はメインストリームの厳しさを実感したと思われます。今年 "Super Gremlin" という曲が全米3位の大ヒットになったことで彼は人気を回復しますが、曲中に「俺たちの時代は終わった。これからは俺たちは頂点から落ちていくだけだ」という歌詞があり、当時の彼の気持ちがここに表れています。ただ、復活は復活なので同曲を収録した今年のフォース・アルバムのタイトルは『バック・フォー・エヴリシング』、喜ばしい復活をそのままタイトルにしていました(変遷の速さに対する皮肉もこめていたかもしれませんが)。アルバム・チャートでは2位と本当に大復活です。しかし、同アルバムからは "Super Gremlin" に続くシングル・ヒットが出ず、新曲も出したはいいものの不発の連続。やはりチャートは厳しいと実感したのでしょう、それら新曲を収録した今年2枚目のフィフス・アルバムのタイトルは『Kutthroat Bill : Vol.1』。これは「非情なビルボード(・チャート)」という意味だと推測されます(※)。彼は何度も逮捕されている問題児ラッパーですが、こういう感情にはちょっと同情します。変遷の速さは本当に異常だと思うので。
※ "Kutthroat" は「厳しい、残酷な」という意味の Cutthroat をもじったものと思われます。コダック・ブラックは Kodak Black なので、頭文字をわざとKに置き換えたものとみられます。
6.ザ・ウィークエンド
2016年のアルバム『スターボーイ』から "Die For You" が現在スリーパー・ヒット中ですが、最新のチャートで一気にTop20入りしてきて驚きました。一気に12位ですね。一聴しましたが、ウィークエンドらしい不穏が満載で、確かにさすが、と思える高質さでしたがこれが TikTok で流行っていると聞くと変な感じもする曲です。最新のチャートで新しくTop20入りした曲にクリス・ブラウンの "Under The Influence" もあるのですが、これも2019年の過去曲がスリーパー・ヒットしている形。さらに、両者ほどの勢いはありませんがシーアの2016年の "Unstoppable" も同じ理由でチャートを上昇していて、これは2022年後半期の新たな傾向だといえるでしょう。今後これらがさらにランクアップしていく可能性大です。💤
シングル・チャート → チャート荒らしによる超不安定期! & そんな中過去曲が勢いよく上昇中!
アルバム・チャート → テイラー・スウィフトが絶好調! & ルイ・トムリンソンらも新作のTop10維持に成功!
うん...11月はドレイクと21サヴェージの大規模なチャート・アクションもあったけど、
まだ受け入れきれてなくて、少なくとも冷静にはなれなそうだった。
...というか、テイラー・スウィフトのそれもまだ受け入れきれてない。
テイクオフの事件でそれどころじゃなかった、というのもあるけど、どっちみちチャートからすれば大事件。
🦌 ...以上です!読んでくださった方ありがとうございました! 🦌