星の上の馬鹿者

これは放浪記です。いろんなところに行っています。

過去からの悪魔

2022-09-19 23:06:19 | 日記

9月19日

 

台風は、私の住んでいる与論島を尻目に進んでいき、ついには本州の方へとその巨大な渦を上陸させた模様です。

しかしここ与論島では、その台風の尻切れのような風がいまだに吹いており、ビーチは閉鎖されたままです。空は晴れているのにも関わらず、しつこい台風の気候は終わらないままとなっております。それでも、雨の中でびしょ濡れになりながらの仕事はもう勘弁なので、風が強いくらいならば大したものもありません。

今日はホテルの施設内のゴミ拾いなどをしていました。ホテルはたくさんのペンションやレストラン、プールなどがある広々としたものです。台風が去った今、たくさんのゴミがそこら中に散らばっており、それら全てを片付けるというわけにはいきませんが、ある程度は箒で落ち葉なんかを集めたり、倒れた小木をノコギリで細かくしてやったりという作業をしていたのでした。

のどかなビーチの見えるホテルで、島ののんびりとした気候は、仕事をしているのにも関わらず、嫌な緊張感は一切なく、同僚の人たちと世間話でもしながら作業をしていました。日差しの照り返しが秋を感じさせないほどに強く、夏の色が強い与論島ですが、そんな暑さも不思議と不愉快なものではなかったりします。

ヒートアイランドと化した大阪などのアスファルトから感じる熱気とか、京都の盆地ならではの蒸し暑さと比べたら、与論島はカラッとした空気に汗もそう滴ることもなく、日陰にいくとすぐに涼むことができます。

ここは何もない島だと、住人の方達はこぞってそんなことを言います。それは確かに事実としてあるかもしれません。時には住み慣れた京都や大阪などが恋しいような気持ちにもなります。以前働いた米子や佐世保などの便利な田舎の住み心地を求めたくもなります。旅行で行った札幌の涼しさや食べ物や、那覇のガヤガヤとした南国の賑わいが欲しくもなるわけです。

それでも、ここは与論島です。何を求めようが、何を恋しがろうが、与論島なのです。そしてここに来ると決めたのは、他の誰でもなく、自分自身です。

もちろんその選択が間違っていたなんて思いません。しかし人なんて愚かですし、その愚かの類に自分も当然ながら含まれているわけでして、自分はたまに発生するような悪魔が、囁きを声窄めて耳元に語りかけることもあるのです。

その囁きはいわゆる、ないものねだりというものです。この島にないものを、過去の幻影から前例を抽出して、他のところへの憧憬を大きなものにするのです。

そんな悪魔は、いつ何時現れるかもわからないものですが、大抵はないものねだりの連続でしかなく、よく俯瞰してその気持ちを見つめると、いたって大したものではなかったりします。しばらくするとその悪魔も声をフェードアウトしていき、ついには消えていくのです。

しかしこれは一時の安心でしかありません。人として愚かでなくして生きていくのは至難です。ゆえに自分はこれからもその悪魔を、潜在された本能の部分が氷山の一角のように突き出るその時に、幻として認知するのかもしれません。

 

私はこの与論島生活で、何度その悪魔と対峙しなければならないのでしょうか。

 



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