今週の『天保異聞 妖奇士』第十七話。
前回に引き続き,アビがメインの回。
気砲を使った幕僚連続狙撃未遂事件に絡んでいると思われる山崎屋の思惑と,そこに姉がいると知ったアビの”暴走”に近い行動を描いた今回のエピソード。
ここ1・2箇月では珍しい「3部作」の中篇という位置付けになっているようですが,前回謎とされた事の種明かし的なエピソードとしても受け取れる感じがしました。
まず,山崎屋は蘭学というよりは国学に影響を受け,そこで思想的な考えとしてある「この世を八百万の神の世界」にする為,山の民・海の民・喜の民を使って鳥居耀蔵の暗殺を目論んでいる(そのため,彼らの身近に接している妖夷を飼っている)という事。
要は,行過ぎた改革の締め付けが悪と見なして「幕府転覆」という目的で動いているのですが,その事を用心棒として雇われている当の本人たちも十分承知してのことでしょう。
(または,妖夷の肉で餌付けしていると考えても,可なのではないかと。)
アビの姉・ニナイが異界にいたのは本人の意思のようですが,漢神を使用できる様に以前から持っていたものなのか,妖夷・於偶(おうぐ)と行動するようになって以降なのかは判りませんが,次週で決着がつくことでしょう―。
さて,今回は江戸元の芸達者ぶりが一番の見所だったように思います。
妖夷の肉を食事に出された時とか,閉じ込められて山崎屋と取引を交わす時など,あくまで妖夷の事を知らない振りをしていたりとか,『古事記伝』を題材に語りだす山崎屋に対しては「神官に神を問うのか」と小声で話しているものの,不服である素振りを見せずに演技するなど,宰蔵一人ではおそらく生真面目さゆえの正直さから確かめられなかったであろう,山城屋の真意を見事に探るといった老獪さが目立っていたように思います。
これで,江戸元がメイン回になったときがちょっと楽しみになりましたが,裏表が著しい江戸元に相応しい内面的なエピソードだったらちょっと面白いのかもしれませんね。
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