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彩賀の徒然なるままに…

徒然なるままに,種々様々な事を記す控帳(TB&Comenntは表紙1番目の記事をご参照を。)

【SAW】スプラッターものとして敬遠してました。が…(ネタバレあり)。

2007-01-02 23:18:00 | 映画(邦・米・欧・韓・華など)
正月初日にこの映画,『SAW ソウ』を見ておりました。

角川エンタテインメント
SAW ソウ DTSエディション

行川 渉, James Wan, Leigh Whannell, ジェームズ ワン, リー ワネル
ソウ―SAW

「なんで,こんな年の初めになんてものを見ているんだ?」という声がありそうですが,前々から興味があったものの,時間が取れなくてなかなか見られなかったんですよね。

それが偶々正月元旦だった―という,バットタイミングだったという事で…。

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【ストーリー】

老朽化した古い浴室。
その浴室の対角線上に鎖で脚を繋がれた二人の男がいた。

一人はカメラマンの若者・アダム。
もう一人は裕福で妻と娘との幸せな生活を送っている外科医・ゴードン。

彼らの間には,拳銃自殺によって頭から血を流れた男の死体があった。
その死体にはカセットレコーダと,弾丸が装填されていない拳銃が握られている。

二人に渡されたものは,二本の鋸,一個の弾丸,タバコ2本,着信専用にセッティングされた携帯電話,そして8㎜テープレコーダー。

そのテープレコーダーにはあるメッセージが吹き込まれていた。

  ”6時までに目の前に居る男を殺せ。さもなくば二人とも殺す。”

そんな犯人(通称:ジグソウ)によって監禁された,二人の「死のデッドラインに抗う,決死の謎解き」が始まった…。

【スタッフ】

監督:ジェームス・ワン
脚本:リー・ワネル
撮影:デイヴィッド・アームストロング
音楽:チャーリー・クロウザー

【キャスト】

Dr.ローレンス・ゴードン:ケイリー・エルウィス
アダム:リー・ワネル(脚本担当の同氏)

デイヴィッド・タップ刑事:ダニー・グローヴァー
スティーブ・シン刑事:ケン・レオン
ケリー刑事:ダイナー・メイヤー
アリソン・ゴードン:モニカ・ポッター
ダイアナ・ゴードン:マッケンジー・べガ

アマンダ:ショウニー・スミス
ゼップ・ヒンドル:マイケル・エマーソン

ジグソウ:???

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うん,ストーリーをこう書くと,なかなかサスペンスタッチの物語…という感じがしなくともないですね(微笑)。

この作品,サイコスリラーものといったほうがいいのかもしれません。あくまでも私見,ですが。

ただ,時間軸がかなり交錯しているかのように並行して複数のエピソードで表現されている為に,ちょっとした眩暈を感じてしまうのかもしれませんね。

goo の映画コンテンツでの本作の紹介は粗筋で「思いっきりクライマックスまでネタバレ」しているので,未見の方はリンク先の内容を見ないほうがいいのかもしれません。

ということで,これ以降の分はネタバレ含む感想です。
未見の方は,以降のこの記事の閲覧にご注意下さい。






































では,ネタバレ込の感想を。

結果的に,先の男性二人はジグソウの仕掛けられた”ゲーム”をクリアする事が出来ず,一人=Dr.ゴードンは自分の家族が殺害されると判った辺りから,当初の冷静さを欠いてしまい,結果,自分の脚を鋸で切断する羽目になってしまい,(止血措置をしていても,応急措置のため)出血多量でいずれは死亡さざるを得ない羽目になってしまう。

もう片方=アダムはもっと悲惨で,結果を踏まえてみた場合,そもそも何故彼がこのゲームに参加する羽目になったのかが判り難いのが,この作品をドラマとして見た場合,難点だと言えます。

元々ジグソウの目論みは,彼から見ればターゲットが「幸せの渦中にありながら,その幸せに満足していない上に,自分からその幸せをぶち壊す」為に怒りを覚えているというような主旨で犯行に走ったのであって,自殺癖の男には剃刀を仕込んだ金網に放り込み(結果,出血多量で死亡),放火魔の男には踏み場を無くすようにガラスの破片を散りばめ,かつ,発火性のジェルを体中に塗りたくり(結果,全身火傷で死亡),麻薬中毒の女には顎を粉砕するマスクをかぶせ(結果,マスクを外す鍵を飲み込まされた男を間接的に殺害した後,生還)…といった様に,無理難題を吹っかけて対象者を死に至らしめる(直接手を下していない為,殺人罪には問えない)という,後味が悪く納得も理解も出来ないという,非常に嫌な気持ちにさせられます。

Dr.ゴードンの場合は,自分の主治医でありながらマトモに診察をして貰えず(というように見られる),妻子がありながら別の女と浮気する―といった,彼にしてみれば非常に許しがたい存在だったのでしょう。

そんな中でもアダムは,そんな彼の思惑にひょんな所から「特別席で見学する」位置付けをされたに過ぎない存在であって,彼自身が何かをしたのかというのは劇中では窺うことが出来ず(ジグソウ自身はアダムを「人のプライバシーを覗き見する割には,無気力で無関心を装っている」と断じていましたが,そのくらいの位置付けでしかない存在であり,ジグソウがこれまでターゲットにしていた人物達とは根本的に違って,彼のゲーム対象から著しく逸脱しているともいえる),なぜ「彼がターゲットに?」というのが最後になっても全く判りませんでした。

劇中から考えるとすると,ジグソウのアダム評の通り「アダムは無気力で無関心」という理由からなのでしょうが,それにしては痛烈な皮肉と言うか,それ以前に度が過ぎている―といってもいいのかもしれません。

そもそもジグソウのアダムへのメッセージには,アダムが生きるチャンスというか条件が全く与えられなかった訳ですしね。

アダムを観客自身となぞらえると,最後まで傍目の立場であった事への怨みというべきなのか,助けてもらえないというブラックジョーク的なモノを感じ,最初から彼にはゲームクリアが出来ないようにしたのではないか,と穿ってしまいます。

尤も,鎖の鍵は彼がバスタブに半身を付けられいた時に入っていて,彼が窒息しそうになった時にもがいた結果,バスタブの栓が抜けて鍵が流されてしまった為に,最初から鍵を外す事が不可能で,鋸で自分の足を切断せざるを得なかったともいえますが,ジグソウから見れば,アダムにはゲームの最後まで積極的に生の渇望感を感じられなかった為に,”ゲームオーバー”として浴室に閉じ込めた―ともいえますね。

またこの作品が面白いのは,ジグソウの犠牲者になったのは全て男性で,女性は何らかの形で生還しているか被害に遭っていないかのどちらかという結果になっているんですよね。

そういった意味では,ホラーモノの定石を踏んでいるのかもしれません。

それにしても,ジグソウが最前列で観客になってゲームを見ている―なんて,最前列の場所が意表をついた描き方になっていたのにはちょっと面白かったもかもしれません。

自分が死体になりすましてその内容を間近に見ているのなら,確かに監視室で見る必要はないし,その事自体がフェイクになることでしょうしね。
毒性に犯された(といった)死体の為に,ゲームの対象者が(血が滴っている)死体に触れることすらしようとしない状況を作ってしまった事には,かなり状況を練っていると思いましたが…。

文庫版もDVDと同じ様に店頭で見ることがあるので,後日,ちょっと映画との違いを確かめたい事もあって購入して読んでみようか―と思っております。

または,『SAW2』を先に見ることになるかもしれませんが…。

※追記:2006/01/04
ノベライズ版『SAW』を読み,ある程度の疑問が氷解した―という箇所がありました。

タップ&シンの両刑事がジグソウのアジトに踏み込んだ時,最初にタップがシートで隠してあったモノを取り払うと何かが出てきましたが,映像でははっきり見られなかった”あれ”は,”あの浴室”の精巧なミニチュア模型だった(ご丁寧に対角線上に鎖で繋がれたゲームのプレイヤーと,部屋の中心に拳銃自殺した人間のフィギュアまである!)というもの。

確かにジグソウのことを劇中では「かなり手先の器用なヤツ」と評していましたから無理もないんですが,結構,マメな人なんだねぇ~―という印象もアリ(微笑)。

次にタップが警察をクビになったわけをきっちりと書いている事。

映画版でもゴードンが「しつこく付きまとっていた」と言っているように,刑事沙汰スレスレの行動を取った結果,おそらくは裁判沙汰→タップの敗訴&警察クビ―というようになっちゃった訳ですね。
ゴードン先生には,敏腕そうな弁護士が居ましたから民事訴訟ものだったのかもしれません。

で,気になったのはラストの改変。

著者の行川渉氏があとがきで書いているように,登場キャラクターの一部を延命させたいが為の理由云々と書いてあったと思うんですが,これが結果として,

  ジグソウの犯行美学から著しく逸脱している

描写になったのがちょっとマイナスポイント―という感じがしますね。

どういうことかというと,実行犯たる僕のゼップの死後,彼を追いかけてあの浴室に入って来たタップ(映画版ではその途中でゼップによって射殺される)をジグソウ自身が射殺している―という描写に変えているんですね。

余談ですが,同時にゴードンも生死不明の状態にしている(映画版では這いずってあの浴室から出て行きましたが,ノベライズ版ではあの浴室でショックで倒れてしまう)という風に変更している。
『SAW2』ではジグソウ自身は,お前にやっているのは殺人じゃないかという問いかけに対して,「決して自分から手を下さない。対象者が自分から選んだ行動だ」という事を主張しているのに,これをやってしまったら自分の犯行美学から逸脱している結果になり,矛盾を生じるんですよ。

やっちゃいけない改変だった様に当方には思えました。

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