Luna's “The Humanities for Economics”

もはや世界はカジノだ。人間が生きるための明日を探そう。純粋経済学の欺瞞に気づき、政治経済学に帰ろう。

地方財源改革:財務省VS総務省・自治体、交付税で対立激化 税源移譲後に大幅削減?

2008年04月29日 | Weblog

 地方財源改革をめぐる財務省と総務省・自治体とのさや当てが早くも始まっている。秋の税制抜本改革の論議をにらんだもので、財務省は一段の税源移譲を認める場合には、その代わりに国が一般会計から地方に配分する地方交付税の大幅削減に道筋をつけたい考えだ。しかし、交付税削減の既成事実化を警戒する総務省・自治体側は「(都市と地方の税収格差を調整する機能を持つ)交付税の削減論議が先行するのは本末転倒」(総務事務次官)と反発。税制改革論議に向けて主導権争いが激化しそうだ。

 財務省は4月中旬、国から地方へ7兆円程度の税源を移譲し、国と地方の税収割合を現在の6対4から将来は5対5にする試算を財政制度等審議会(財務相の諮問機関)に提示した。同省は「地方分権と地域間格差是正を両立しつつ、国民負担を抑制することが必要」との立場。地域間の財政力格差は、主に東京都など財政の豊かな自治体から財政力の劣る自治体に地方消費税や地方譲与税を回す形でカバーし、それで埋めきれない分を国が地方交付税で支援する設計になっている。これに基づけば、「国が使える税収」は維持したまま、交付税額は現在の半分程度に圧縮できる計算だ。

 国から地方への税源移譲では、消費税率5%のうち、現在1%となっている地方消費税を増額することなどを念頭にしている。ただ、厳しい国の財政状況を考えれば、地方消費税の増額は消費税率引き上げがなければ難しい。

 このため、総務省や自治体は「財務省の真の狙いは08年度予算で3年ぶりに増額された交付税の削減に布石を打つことでは」と疑心暗鬼になっている。一方、財務省は「『地方分権』を錦の御旗(みはた)に税源移譲も交付税増額も、と勝手な主張をすることは許されない」(幹部)と強調している。【清水憲司】




毎日新聞 2008年4月29日 東京朝刊


円安はビョ-キだ=三連星

2008年04月29日 | Weblog

 金持ちは存外、カネを持たないのではあるまいか。調べたことはないが、大体欲しいモノは持っているし、買い物があれば信用で売ってくれる。キャッシュ欲しさに消費者金融を利用するのはカネのない人ばかりだ。

 また、金持ちはカネばなれがよい。執着心がないから、入れば右から左に、である。金持ちがケチでは渋滞する。ムダ遣いをしろとは言わないが、消費は一種の義務かもしれない。

 国の場合も同じだ。カネがありそうなのは資源国のサウジアラビアか南アだが、外貨準備は思ったより少ない。現金で持つより誰もが欲しがる原油か金鉱、ウラニウム鉱の形の方がはるかに安定している。

 米国が外貨準備を持たないのは基軸通貨国のメリットだが、同時に弱点でもある。たとえてみれば試験がない大学生のようなもので「双生児の赤字」に歯止めがきかぬ。

 ドルは止めどもなく下落する。それは世界経済全般をインフレに引きずり込みかねない恐れがある。G7の絶好のテーマと思うのだが、誰も遠慮してか言い出さぬ。

 この根本問題に次いで頭痛のタネは日本と中国の巨額な外貨準備の行方だ。日本1兆ドル、中国1兆7000億ドルと推計されるが、両国とも依然として輸出優先の姿勢を変えない。

 円、人民元ともに実勢より安いのではないかと批判されながら意識的に現水準を切り上げようとしない。円高=株安、円安=株高の定型的な構図はウンザリするくらい続いた。あまり続いたものだから、「おかしいではないか」と考えなくなっている。

 成熟国が成熟国ではなく、金持ちがケチぶりを続けているといつかシッペ返しを食う。1兆ドルの外貨準備がムダになる時がくる。(三連星)




毎日新聞 2008年4月29日 東京朝刊


食糧危機の原因=耳順

2008年04月29日 | Weblog

 今年に入って、多くの国際会議の焦点が気候変動から食糧危機に変わってしまった。先日のワシントンの開発委員会でも、議論の9割が食糧危機をめぐるものだったようだ。

 食糧危機の状況を一番よく示しているのが国際米価の動きである。5年がかりで2倍になり、昨年末にトン当たり380ドル程度に達したものが、今年になってあっという間に500ドルを突破し、いまや1000ドルに接近している。

 こうした急激な米価高騰の一因が輸入国の買い急ぎと輸出国の売り惜しみにあることは否めない。すでに、インド、ベトナムなどが米の輸出を禁止しており、世界最大の米輸出国のタイが輸出を制限すれば、市場はパニックに陥るだろう。

 米だけでなく、小麦、とうもろこし、大豆などが軒並み高騰している。背景には、単なる売り惜しみや投機だけではなく、根本的な原因が潜んでいる。

 第一に、中国など新興市場国の食糧への需要増加がある。とくに、所得の上昇に伴って肉食が増えると、同じカロリーを摂取するのに6、7倍の穀類を飼料として必要とするといわれており、爆発的に需要が増えてしまうのである。

 第二には、バイオ燃料の生産急増だ。すでに米国では、とうもろこしの3分の1がエタノール生産に充てられている。ブラジルはサトウキビから大量のエタノールを生産している。

 第三に、気候変動のせいか、オーストラリアの記録的な干ばつ、中国南部とベトナム北部の寒波などによって、穀類や肉類の生産が影響を受けた。

 さらに、現在の農業は石油を大量に使用しているので、石油高騰がコストを上昇させている。これらの要因は当面変化しそうになく、食糧危機は長引く恐れがある。(耳順)




毎日新聞 2008年4月25日 東京朝刊


時価評価の調整=猷

2008年04月29日 | Weblog

 サブプライムローン問題で一番の痛手を受けたと見られるシティグループが1~3月の決算で更に160億ドルの評価損を計上し、累計損失は460億ドルとなった。しかし、NY株式市場はこれを好感し、株価は反転した。予想に比して追加損失が少なかったからだという。

 関連して留意したいのはこのところの「時価会計」に関する論議である。FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は再々「時価会計」への不安を表明してきた。また、G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で呼ばれた世界の大銀行の首脳は「時価会計」を厳密に適用することのリスクを口をそろえて語ったという。

 G7は表向き「時価会計」の調整に踏み込まなかったが、一方でSEC(米証券取引委員会)は市場取引が少なく、時価での評価が適切でないと思われる場合の指針を出している。このこととシティの決算とは関連があると見るべきだろう。

 元々サブプライムローンを組み入れた証券のAAA格の時価が額面相当額の5割、BBB格では2割というのは、市場機能が事実上停止していることの表れで、実態を反映しているとは思えない。その評価方法で欠損を計上し、そのすべてを増資でカバーすることには無理がある。一方ではBIS(国際決済銀行)の自己資本規制があり、これを守るとするなら大幅な信用収縮にならざるを得ない。結局は現実重視の裁断に迫られたということだろう。

 しかし、このようなゲームのルールの修正も、要は対症療法である。なぜ「市場」の健全性がこれほど損なわれたのか。その意味は何なのか、にはメスが入っていない。住宅価格の下落など実態面での米国経済の課題はなお重く、楽観はできない。(猷)




毎日新聞 2008年4月24日 東京朝刊


原油先物相場:NY 120ドル目前 欧州中銀理事、利上げ示唆

2008年04月23日 | Weblog

 【ワシントン斉藤信宏】22日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、指標である米国産標準油種(WTI)の5月渡しが一時、1バレル=119・90ドルをつけるなど史上最高値をつけた。前日終値比2・42ドル高で、史上最高値の更新は7営業日連続。終値でも同1・89ドル高の119・37ドルと最高値を3営業日連続で更新した。ユーロなど主要通貨に対してドル安が進んだため、投機資金が原油市場に流入し急伸した。

 外国為替市場で、ユーロがドルに対して一時、1ユーロ=1・6020ドルをつけるなど、初めて1・6ドル台までドル安・ユーロ高が進んだことで、ドル建てで取引される原油の割安感が強まった。

 ノワイエ・仏中銀総裁が「インフレ率を抑制するため、必要であれば金利を動かすだろう」と述べるなど、欧州中央銀行(ECB)理事から利上げを示唆する発言が相次いだ。低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題による景気後退懸念が強まる米国は、追加利下げを模索しており、欧米間の金利差が拡大するとの警戒感から、一気にユーロ高が進んだ。

 ドル建てで受け取る原油代金の目減りが続き、産油国には原油価格上昇を容認する空気が根強い。市場では「ユーロ高と原油高が相互に作用しながら上昇していく流れができつつある」(アナリスト)との声も出ている。




毎日新聞 2008年4月23日 東京夕刊


貿易統計:黒字13.4%増 2年連続対米減、アジア好調--昨年度

2008年04月23日 | Weblog

 財務省が23日発表した07年度の貿易統計(速報)によると、輸出額から輸入額を引いた貿易黒字は、アジア向け輸出が堅調だったことから前年度比13・4%増の10兆2246億円となり、2年連続で増加した。各国別実績では、米国向け輸出が同3・1%減の16兆6010億円と4年ぶりに減少した。対米は貿易額(輸出と輸入額の合計)も4年ぶりに前年実績を割り込んだ。

 一方、中国との貿易額は同10・2%増の28兆257億円と大きく伸び、中国が2年連続で日本の最大の貿易相手国となった。日本の景気拡大を下支えする外需の主役が米国から中国などアジアにシフトしていることを一段と鮮明にした。ただ、同時発表された3月単月の貿易統計では、低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題の深刻化による景気悪化で、対米輸出が前年同月比11・0%減と4年4カ月ぶりの2ケタ減に落ち込む一方、対アジア輸出の伸びも同1・9%増と2年10カ月ぶりの低水準になった。

 07年度の輸出入額はともに6年連続で過去最高を更新。輸出は前年度比9・9%増の85兆1177億円。原油高の恩恵を受けるロシア・中東向けの自動車輸出などが好調だった。輸入は同9・4%増の74兆8931億円だった。原油輸入価格上昇が輸入額全体を押し上げた。

 対米貿易はサブプライム問題を背景とした昨秋以降の景気減速で、自動車などの輸出が落ち込んだ。小麦などの価格高騰で米国からの穀物輸入が増えたことも影響し、対米黒字は同9・0%減と8兆2750億円と4年ぶりに減少した。【清水憲司】




毎日新聞 2008年4月23日 東京夕刊


老人の会計学=迪

2008年04月23日 | Weblog

 日本のバブル崩壊で一番割を食ったのは老人だろう。何しろ、ゼロ金利政策で銀行や産業界に巨額な利息分を所得移転させられた(いまも)。貯蓄や退職金で年金をカバーしてくれると思っていたが、当てがはずれ、老後の生活設計では乏しい年金だけに頼る人が大半であろう。

 これら老人をさらに追い打ちしたのは月数千円の天引き介護保険料である。これを導入した厚生官僚の使命感は壮たるものとしよう。だがそのモデルになった北欧は国情が違う。財政も国民負担率がおよそ70%で日本の30%後半とは格段の違いだ。消費税に当たる付加価値税が20%以上の国と、それが5%の国の財布の中身を無視して一気に理想的な介護保険を持ち込んだのだからたまらない。

 「老人は必ずしも貧者ではなく、むしろ富者が多い」というキャンペーンもいま思えば陰謀のにおいがする。年齢別のごく単純な貯蓄統計をTVの画面で見せられてうなずいていたのだ。その結果3年ほど前から所得税の老人控除が廃止され、公的年金の老年者控除もなくなった。その上世界にもまれな後期高齢者健康保険の天引きが始まったのだからたまらない。75歳以上の平均年金は夫婦で割ったらスズメの涙だろう。

 しかし、だからけしからん!だけで済むのなら野党やTVのコメンテーターと同じ論旨になるのであえて対案を出そう。それは数%の消費税率アップだ。これまで消費税は老人など弱者いじめだというのが定説だった。だが税率の引き上げで老人の負担を救い、お釣りがくるという計算も成り立つ。老人医療と年金で財政危機に陥ったドイツは付加価値税を16%から19%へ3%増税した最近の具体例もある。医療費の削減だけではなく消費税からも「老人会計」を見直す時期にきている。(迪)




毎日新聞 2008年4月23日 東京朝刊


サマになりすぎる=三連星

2008年04月23日 | Weblog

 「位は人をつくる」と言うが、白川日銀総裁、まったくサマになっている。辞令をもらって、慌ただしく出席したワシントンのG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)でも旧知のメンバーから祝福や再会の喜びを述べられてまんざらでもなかった。

 「こんなことなら初めから」という気もするが、それは後講釈。本命は武藤副総裁だったのだから、ねじれ国会の副産物かもしれぬ。

 私個人としては小沢民主党代表の「天下りは原則として承認できぬ」とする原理主義的なガンコさに共感する。特に国庫は火の車。最大の借金王である。ゼロ金利で最も助かっているのは国であり超低利で国債を発行し続けているのも国である。

 低利債券は金利上昇期に大暴落するから(ロクイチ国債暴落の前例)銀行は敬遠するのが良識だが、日銀買いオペレーションで流動化を支えている。

 なんのことはない、表面は市中消化を装いながら実質は日銀引き受けと変わりない。日銀資産の肥大化、劣化が雄弁だ。

 財政と金融が連携しているより癒着しているのである。そんな時に財務省(旧大蔵省)次官を総裁とすることに抵抗を感じない方がおかしい。

 ただし、公平を期するため、天下りでなければいいのか、日銀生え抜きなら問題はないのか、にも疑問を呈したい。

 大学を出て日銀に入行し地方支店長、本店部局長、理事などを歴任しトップの座につくことは「雑音にわずらわされることなく」純粋な政策マンとして培養された特殊人間である。「日銀の独立性」を本当に実現するためには、その純粋性が「世間知らず」となり、与党に当たりの良い人間がつくられるのではないか。福井、白川と純粋組が2代続く。これがまた、良いかね、だ。(三連星)




毎日新聞 2008年4月22日 東京朝刊


第二の応仁の乱=大三

2008年04月23日 | Weblog

 昨年安倍内閣が倒れた後に突如として浮上した大連立構想に、これだとばかり賛同した。

 ドイツの左右両党が大連立を組んで、付加価値税を3%上げて財政節度を取り戻し、単独では実行できなかった政策を次々と実現した結果、ドイツが欧州連合(EU)諸国の中で一番順調に成長しているのを見て「ドイツにならえ」と思っていたからだ。

 しかしその後の与野党の動きを見ていると、大連立を組んでも何も動かず、大連立内閣は三月(みつき)ともたなかっただろうと、思い知らされた。いたずらに政局混迷を招くだけだったのだから、大連立に冷ややかだった世論の方が正解だったのだろう。

 それにしても民主党に政権を託したら、どんなことが起きるか--と思うと、不安でたまらなくなる。

 まず小沢一郎代表が、自己の進退を含め、言うことがコロコロ変わるのが心配だ。国の命運を託す人は、何よりも定見のあることが不可欠だ。人事や選挙対策などの党内事情を優先することは、絶対に許されない。

 昨今は政治家も政治評論家も、すぐ解散だと言うが、解散して与党の衆院の議席が3分の2を割ったら、国政が止まるのではないか。その時点で発生する政治的、社会的、経済的大混乱にどのように対応するかも考えないで、短絡的に解散だという人は、民主党員でなくても危険このうえない。

 せめて来年の衆院任期切れまでの間に、民主党は政権担当能力を身につけてもらいたい。

 政局混迷は長期化する。第二の応仁の乱が始まったのだから、10年は続くとの説もある。その間に日本はボロボロになって、落ち目の国の標本になりかねない。(大三)




毎日新聞 2008年4月18日 東京朝刊


あの時の選択が…=中村秀明(編集局)

2008年04月18日 | Weblog

 流通業界が思い切ったリストラ策に走り出す。

 イオンは、向こう3年間でスーパー約100店を閉鎖または業態転換する。セブン&アイ・ホールディングスもスーパー数店、ファミリーレストランの「デニーズ」約130店、コンビニ600店などを閉じていく。「ジャスコ」「マイカル」の4分の1が消え、デニーズは2割が店をたたむことになる。

 イオンの岡田元也社長は「地元の反対もあるだろうが、旧態依然とした売り場から決別する」と語った。人口減少や高齢化、原材料価格の上昇などで、消費の形や消費者の行動が劇的に変化しているせいだ。一方で、イオンは海外投資を増やし中国などアジアの店舗網を200店近くにし、セブン&アイは中国でのスーパー出店を加速するという。このため、「地域の商店を駆逐しておいて、もうけが見込めなくなったらさっさと引き払い、海外の新天地に進出か」と社会的責任を問う声も起きている。

 ただ、こうした状況は消費者の選択の結果とも言える。20年以上前、ある地方都市でスーパー出店が議論になったことを思い出す。商店経営者ら一部を除けば、多くの人が「こんな大きな店ができてうれしい。1カ所で何でもそろう」と歓迎した。そして、八百屋を、魚屋を見限り、近所の定食屋に足を運ばなくなった。商店街はシャッター通りになり、さびれた。

 今、スーパーやファミレスが消えかかり、どこで買い物を、食事をすればいいのか途方に暮れる。そして、考え込む。自分で自分の首を絞めるとは、このことなのか。




毎日新聞 2008年4月18日 0時01分

政治の機能不全=猷

2008年04月18日 | Weblog

 米国のサブプライムローン問題に端を発する金融市場の混迷で欧米大手銀行の資産の目減りが激しく、信用収縮の影響は実体経済に影を落としつつある。

 先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でも特段具体的な対策の進展は見られず、銀行の自己資本補強の前途には厳しいものがある。「時価評価の一時停止」というような緊急措置では合意が見られなかった。

 しかし、今後なお必要と見られる巨額の資本の補てんが円滑に進むとも考え難い。結局は時価に代わる評価方式を導入するか、または自己資本比率に関するBIS(国際決済銀行)規制の緩和をするかの選択を迫られるのではないか。思い切った政策対応が遅れる中で米国の景気後退は現実味を帯び、その影響は世界に及んでゆく。

 日本では当面特に円高の急伸が注目され、それが株価の下落にもつながっているが、ドル以外の通貨に対してはそれほどの円高ではない。

 むしろ為替よりは、中国、インドなどの新興諸国の成長鈍化がどの程度におさまるか、また産油国、資源国にシフトした所得が世界にどういう経路で資金や需要として還流してくるかの方が大きい。後者については政治、外交面での働きが特に重要と思われるが、現実には政局にらみで与野党ともそこへの関心は低い。それをどう転換するかが日本の未来を左右する鍵の一つだと思われる。

 また欧州では既にスタグフレーションが現実の大きな課題となっている。日本でも生活物価の上昇が目立ち、低い賃上げ率と相まって消費を圧迫してゆく方向にある。税制も活用し、企業の業績を働き手に還元して良循環を起こしてゆくような政策が必要と思われ、政治の機能不全の解決は特に切実である。(猷)




毎日新聞 2008年4月17日 東京朝刊

追加取得中止勧告 ルールの明確化が必要だ

2008年04月18日 | Weblog

 Jパワー(電源開発)について政府は、同社株の追加取得を計画している英投資ファンドに、投資内容の変更・中止を勧告した。

 この問題で関税・外国為替等審議会(外為審)は「送電線をはじめとする基幹設備の運用や維持、原子力政策に不測の影響が及ぶ可能性を否定することはできない」という判断を示している。

 現在の9・9%から20%までの買い増しを政府に申請している英投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド」(TCI)が勧告に従わない場合、政府は変更・中止命令を出すことになる。

 空港運営会社に対する外資規制を導入しようとした国土交通省が、結論の先送りを余儀なくされたように、外資規制についての論議は大きく分かれている。

 電力会社は外為法で外資規制の対象となっており、政府の勧告はこれに基づいている。しかし、外国人投資家の日本市場離れを加速すると、批判も強い。

 株式市場で外国人投資家が売買の主体となっているのは確かだ。しかし、これは、膨大な貯蓄が国内にありながら、それが株式市場に向かわないため生じた現象でもある。

 株安と外資規制を単純に結びつけるのは、一面しか見ていない論議だ。市場の不振の原因について責めを負っている人たちが、その言い訳としているような感もある。

 外資規制について外為審が判断したのは、初のケースだ。Jパワーは本州と北海道、四国、九州を結ぶ送電線網を持ち、原子力発電所の建設計画も進めている。高効率の石炭利用技術を持ち、今後の環境外交の観点からも重要な会社だ。

 しかし、外為審が指摘する問題点は、外資に限ったことではない。短期的な収益を狙った株の大量取得が問題なら、国内のファンドなども規制対象にしないと筋が通らない。

 また、経済産業省の一転した対応ぶりも、日本の行政運営に対する不信を増幅している。外資規制緩和の旗振り役で、Jパワーの民営化の際にも競争促進に傾斜していたからだ。

 海外からの投資促進による日本経済の活性化をめざし規制緩和を進めたわけだが、その進め方に問題がなかったのか、検証する必要がある。

 ただし、投資促進とはいえ、安全保障への配慮も含め公益性の高い企業に対する買収規制は、どこの国でも行っている。問題は、その場しのぎではなく、ルールを明確にし、透明性の高い運用が行われているかだろう。

 いずれにしても、日本にとって最もマイナスなのは、外資規制で国内が揺れるたびに、それが海外で報じられ、日本市場の閉鎖性がやり玉にあがることだ。

 その繰り返しを断ち切ることが必要だ。





毎日新聞 2008年4月17日 東京朝刊

さらば新自由主義

2008年04月16日 | Weblog

◎さらば新自由主義/投機マネーの暴走/1/原油高倒産が急増

しんぶん赤旗

 「投機マネーがどうなろうが、庶民には関係ないと思っていた」という「しんぶん赤旗」の男性読者=神奈川県厚木市在住=から、次のような便りが寄せられました。「原油市場や穀物市場に影響し、灯油や食料品をはじめとした値上げラッシュが押し寄せて…投機マネーや金融のことは、わからないではすまされないと思うようになってきました」。シリーズ企画「さらば新自由主義」の第1弾では「投機マネーの暴走」について考えます。
 「シンナー(溶剤)の値段が六割も上がっているんですよ」と顔を曇らせるのは、東京都大田区で塗装業を営む永田保さん。
 塗装業の場合、ペンキ塗料や周辺に塗料がつかないように覆うポリエチレンなど、ほとんどが石油製品。平均して一割以上、価格が上がっています。シンナーは、吹き付け塗装では塗料を半分に薄めたり、清掃や道具の手入れなどで多用するもの。使わないわけにはいきません。

転嫁は難しい

 塗装業は、請負代金に塗料などの材料代も含まれる「複合単価」のため、その高騰は直接、業者の稼ぎにひびきます。
 建設不況で、零細業者の間では、不渡りの危険がある手形取引が避けられるほどです。ところが単価は、ゼネコンや工務店が一方的に決める「指し値」。このころようやく低下がゆるやかになってきたにすぎず、材料値上げ分の転嫁は困難な状況です。
 永田さんはいいます。
 「マネーゲームのせいで石油に限らず金属なども値段が上がっているのは許せないね。政治の責任。だけど、〝先物〟なんていわれても、よくわからないなというのが実感」
 民間調査会社の帝国データバンクによると、原油や金属をはじめ資源高によって倒産した企業の数は、二〇〇五年の七十八件から、〇六年に百四十件、〇七年に二百二十九件に増加。このうち原油高によるものは、〇五年の三十一件から〇六年に九十九件、〇七年に百四十二件に急増しています。
 〇七年には、〝原油価格高騰分を価格に転嫁できず〟(東京都・化粧品向けプラスチック容器製造)、〝受注単価抑制で収益が確保できなかった〟(埼玉県・アルミダイカスト製造)、〝需要の低迷に加え、資源価格高騰、建築基準法改正が追い打ち〟(島根県・かわら製造)など、業況悪化に原材料の価格高騰が加わり、倒産に追い込まれる事例が目立ちます。

努力だけでは

 原油高の影響が大きい運輸・倉庫業でも、値上がりがほとんど転嫁できていない(0―20%)とするのは72・5%、建設業では70・6%にのぼります。
 帝国データバンク情報部の中森貴和課長は、「〇四年ごろからの資源高の影響がタイムラグ(時間差)をもって現れています。資源高は中小・零細企業への打撃が大きい。ただでさえ状況のよくないところに原油高が追い打ちをかけ、経営努力では支えきれなくなっています。この傾向は、たとえ原油が一バレル=五〇㌦から七〇㌦に戻っても、半年から一年は続くと思います」といいます。
 (つづく)
新自由主義
 日本共産党第二十四回大会決議(二〇〇六年一月)は「アメリカ政府は、IMF(国際通貨基金)、世界銀行などとともに、経済の『グローバル化』の名のもとに、『新自由主義』にもとづく『構造改革』を、世界の多くの地域におしつけてきた」と指摘。日本で自民・公明政権が「構造改革」としてすすめてきた「新自由主義」の経済路線を「大企業の利潤追求を最優先にし、規制緩和万能、市場原理主義、弱肉強食をすすめる経済路線」と特徴づけています。
(2月11日付)

◎さらば新自由主義/投機マネーの暴走/2/原油「ペーパー取引」急増

 ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で取引初日の一月二日、WTI(西テキサス産中質原油)の価格が歴史上はじめて、一バレル(百五十九㍑)当たり百㌦をつけました。投機資金の流入によるものです。その後も九十㌦前後の高止まりが続いています。
 ニューヨーク商業取引所にWTIが上場されたのは一九八三年。原油を必要としないのに、投機による利益を目的とする業者が参入し、実際には原油が流通しない「ペーパー取引」が急増することになります。
 WTIの生産量は一日三十万バレルほどで世界の数%にすぎませんが、WTIだけで先物を中心に一日にのべ約六千万バレルが取引されています。世界の原油需要は一日約八千五百万バレルですから、原油の取引が実際の需要に基づいていないことが分かります。

実需では50ドル

 WTIの取引が世界から大量の資金を集めるため、その価格は、中東産原油の価格をも主導するようになりました。OPEC(石油輸出国機構)の価格決定力は弱まり、原油価格はコントロールの難しい市場まかせの時代に突入しました。
 アメリカの低信用層向け高金利型(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き急増がもとで、金融市場の混乱が深まった二〇〇七年後半には、金融市場から逃げ出した投機資金が高騰を続ける原油市場に流入し、WTI価格は一年間でさらに六割以上も上昇。WTIの取引残高が約千四百億㌦であるのに対し、ヘッジファンドなどの約二兆㌦の短期投機資金が動いたと推計されています。
 石油連盟広報グループ長の田中英樹さんは、「イラク戦争前の原油価格の水準は一バレル=三十㌦程度でしたが、その後は中国やインドでの需要の急増があって、そこから考えると実際の原油需給にもとづく原油価格は五十㌦ぐらいになると思います。それ以上は中東地域の地政学的なリスクや投機により押し上げられたものと考えられます」といいます。
 日本で使われる原油は主に、中東産油国との長期契約ですが、その価格もWTI価格に連動。円ベースでみた輸入原油価格は、第二次オイルショック以来の高水準となっています。

規制をなくす

 しかし、石油の需給調整を定めた石油業法が二〇〇二年に廃止されました。規制を緩和し、市場原理を活用して石油の安定供給を確保するというふれこみでした。しかし、政府による規制がなくなったため、今日のような原油高に対しても対応策がなく、「需給調整は基本的にできない」(経済産業省の担当者)という状況です。
 一方、世界では、シェブロン、BP、シェル、エクソン・モービルの「スーパーメジャー」とよばれる石油大企業は、原油高騰の中で総収入を二倍近くにまであげ、ばく大な利益をあげています。

(2月13日付)


◎さらば新自由主義/投機マネーの暴走/3/飼料高騰が酪農を直撃

 トウモロコシ、大豆、小麦など穀物価格の高騰が、国民の暮らしを直撃しています。飼料代の急激な値上がりに苦しむ酪農の現場では―。
 「このままエサ代が上がり続けたら、農家の半分がつぶされる」。千葉県睦沢町で酪農を営む中村種良さん(56)は窮状を訴えます。



時給は200円台

 中村さんは、乳牛五十頭(うち搾乳牛三十頭)を飼育しています。トウモロコシが中心の配合飼料の価格は、一昨年末時点で一㌧当たり三万八千円だったのが、一年で四万五千円に跳ね上がりました。牧草なども加えた飼料代は、一頭当たりで一日四百円近くの上昇だといいます。
 配合飼料価格の高騰分は、配合飼料価格安定制度によって、農家に補てんされるため、負担はなんとか低く抑えられています。しかし、飼料を混ぜる機械に使う軽油などの燃料の値上げも重なり、農家には負担増がズシリとのしかかります。
 加えて乳価の下落です。「乳価を下支えする政府の機能も弱まり、価格は安定していない」(中村さん)といいます。一月に乳価は引き上げられましたが、飼料代などの値上がり分に見合っていません。
 収入は、時給に換算すると「二百円台」にしかなりません。「どの農家も、みんな青息吐息の状態。廃業も相次いでおり、経営難から自殺する人も出ている」と中村さん。最盛期に、百二十戸ほどあった町の酪農家も、現在では九戸に減りました。「牛の数を今の倍にしたいけれど、先の見通しが立たないのでできそうにない」と声を落とします。
 飼料高騰の背景には、石油代替燃料になるバイオエタノールの増産でトウモロコシの需給がひっ迫したことや、投機資金の流入が国際的な穀物相場を押し上げたことなどがあります。
 日本の飼料自給率は25%。トウモロコシの97%をアメリカから、小麦の80%をカナダからの輸入に頼っています。世界的な穀物相場の変動の影響をまともに受けます。
 飼料販売会社のゼンケイによると、二年で倍以上に値上がりした飼料もあります。特に、昨年の秋ごろから急騰しています。トウモロコシを主原料にした飼料を使う養鶏農家などは、いっそう大変な状況といいます。「取引農家からは悲鳴に近い声を聞く」と同社の担当者。「この状態が続けば、生産すればするほど赤字という悪循環に陥ってしまう」と心配します。


給食費値上げ

 穀物価格高騰の影響がこんなところにも波及しています。
 給食食材を調達している東京都学校給食会は小学校など約千八百校への小麦製品の売り渡し価格を二〇〇八年度から引き上げることを検討しています。パンの原価割れが続いているためとしています。これを受け、千代田区教委は、一食二百七十二円(小学校高学年)などの給食費を引き上げる方向で動きだしています。
 値上げに踏み切った自治体もあります。兵庫県加古川市。四月から、市内二十八の小学校で実施している給食費を一食当たり二十円引き上げます。年間負担増は小学校で三千六百円にのぼります。
 現在、小麦の国際価格は一年前の約二倍の高水準で推移しています。これに連動し、政府は製粉会社に売り渡す輸入小麦価格を四月から約30%引き上げる方針。春以降も食品などの値上げ連鎖は避けられそうにない情勢です。


 
(2月14日付)


よくわからない話=童

2008年04月16日 | Weblog

 このところよくわからない話が多い。例えば、ガソリン税の暫定税率をめぐっては、世論調査では6割以上が廃止賛成となっているが、自民党は、「国民生活」が混乱すると称して、再議決によって暫定税率を維持したいと言っている。また新銀行東京をめぐる議論では、都民の7割が追加出資反対と言っていたし、識者にもこれを疑問とする声が多かったにもかかわらず、都議会は、賛成多数であった。

 前者については、私自身必ずしも廃止したままで良いとも思っていないが、なぜ「国民生活」を持ち出すのか。庶民の立場で言えば、下がったままの方が混乱しないということにならないか。もっと率直に、大きな財政赤字を抱えている現状からみて急に廃止しては対応が難しいとか、地球温暖化問題への対応が迫られているときに単純に廃止するだけでよいのかということを主な論点にして理解を得るべきではないか。

 一方、新銀行東京をめぐる議論は、さらにわかりにくい。都の主張は、今整理すると1000億円以上かかるが、400億円さえ出資すれば立派な銀行として存続できるというように聞こえた。しかし、議論されるべきは、この銀行が都民のために本当に必要なのかどうかということではなかったか。加えて、過去の経験からしても、この銀行の救済が果たして400億円で済むのかが疑問である一方、今整理するとすれば、預金保険機構を使えるはずで、金融庁は嫌がるとは思うが、都の負担はそれほど大きくない可能性すらあるように思う。

 都議会は、かつて2信組問題で資金負担を拒否した経緯があるが、このときとの差はどこにあったのか。いずれにせよ、もう少し本筋に沿った議論をしていかないと政治不信が高まるだけとなりかねない。(童)




毎日新聞 2008年4月16日 東京朝刊


Jパワー株買い増し:英投資ファンドに初の中止勧告

2008年04月16日 | Weblog

 経済産業省と財務省は16日、電力卸大手、Jパワー(電源開発)の株買い増しを申請している英投資ファンド「ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド」(TCI)に対し、「公の秩序を妨げる恐れがある」として、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づく初の中止勧告を出した。TCIが10日以内に勧告に応じなければ、株買い増しの中止命令を出す見通し。TCIアジア代表のジョン・ホー氏は会見で「時間をかけて考える」と述べ、今後の対応について明確な態度を示さなかった。

 TCIは1月、9.9%を保有するJパワー株を20%まで買い増すことを申請。外為法は、外資が電力会社などに10%以上の投資をする場合に事前の届け出を義務づけ、「公の秩序」などに影響を与える恐れがある場合は変更や中止を勧告することができる。

 両省は中止勧告の理由として、投資先企業の経営陣の交代を求めるなどTCIの過去の投資事例を挙げ、「Jパワーの経営に一定の影響を及ぼす可能性がある」と認定。また、TCIがJパワーの経営目標を示しながら具体的な実現方法を示していないとして、「電気の安定供給や原子力に関する我が国の政策に影響を与える恐れを払しょくできない」と判断した。

 一方で両省は、「日本政府の対日投資を促進する姿勢は変わらない」とする大臣名のコメントを発表した。

 甘利明経産相は「われわれは国民生活に責任を持たなければならず、国の安全や公の秩序が保たれるために勧告した」と述べた。一方、ホー代表は「日本にとって悲しい日。長期的投資から遠ざけられ、日本経済に大きな影響を及ぼすだろう」と批判した。【平地修】




毎日新聞 2008年4月16日 21時20分(最終更新 4月16日 21時33分)