Luna's “The Humanities for Economics”

もはや世界はカジノだ。人間が生きるための明日を探そう。純粋経済学の欺瞞に気づき、政治経済学に帰ろう。

自民党が仕かける、労働権なき労働への危機感

2013年07月18日 | Weblog







「アベノミクス」の成否を握るのは、働き手への成果の還元、と言われてきた。だが、自民党の参院選公約を見ても、この問いへの答えは見えてこない。6月下旬に廃案になった「生活困窮者自立支援法案」の柱のひとつ、「中間的就労」のつくりも、そんな懸念を抱かせる。
 
「中間的就労」とは、生活保護を受ける前の「自立支援策」として、企業やNPO、社会福祉法人などが働く場を設けて生活困窮者に実地の職業訓練を行う「職場つき職業訓練」だ。自治体首長が認定すれば、初期経費の助成や税の優遇を受けられる。
 
グローバル化で製造業が低賃金の国々へ出てゆく産業構造の転換が進み、高い技能がないひとや対人サービスが苦手なひと、障害があるひとができる仕事が減り続けている。そんな人びとが働ける場を通じて、新しい技能や働く自信を身につけられる場づくりが、「中間就労」の趣旨だ。
 
だが、今回の案は、その趣旨と逆行しかねない危うさを含んでいる。清掃やリサイクル、農作業などの「簡易な作業」等の機会を提供する場合、申請して認められれば最低賃金以下でもかまわない「特例」が設けられているからだ。参加の場所を提供することが大切、という論理のようだが、…これはどこかで見た光景だ。
 
…そう、「外国人研修制度」だ。
 
外国人研修生は「労働ではなく研修」という名目で最低賃金の対象から外され、「時給300円の労働者」として問題になった。「中間的就労」も、「労働ではなく、福祉、訓練」を名目にして、この二の舞となりかねない。
 
最低賃金を守ることを原則に、野宿者の就労支援を行っている企業組合「あうん」の中村光男さんは、「最低賃金外しは、そのひとを労働者として認めない、ということ。労使交渉などの基本的労働権や失業手当てなどの、働き手の安全ネット外しにつながりかねない」、と心配する。

みずほ情報総研の調査では、すでに働く施設を持って、中間的就労を実施している支援団体の64%が労働契約を結んでいない。そこへ、国が最低賃金外しにお墨つきを与える、となると、その影響は大きい。というのは、一般の最低賃金制度にも穴があく怖れがあるからだ。そもそも、最低賃金も払えない働き方を前提にして経済的自立への態勢がほんとうに作れるだろうか。
 

 

2009年、英国で就職困難者をバスの運転手として育てて就職させる社会的企業を取材した。スタッフが受講者を励ましながら大型免許を取らせ、同社が運行する路線で運転手として働かせ、「経験者」としてバス会社に売り込む。行政からの職業訓練委託費も利用し、訓練段階から最低賃金は保障される。
 
そう、必要なのは、最低賃金外し、ではない。公的な仕事を優先的に発注するなどして、行政が最低賃金を固守することだ。
 

 

身体を壊すような長時間労働と、働いても生活できない低賃金の非正規労働の増加で、ふつうの働き手が労働市場に参加できる余地そのものが減っている。これを問わないままでの今回の案は、労働権から除外された働き手を囲い込んで見えなくする「社会からの追い出し部屋」としても機能しかねない。
 
7月22日には日本弁護士連合会が「中間的就労」をめぐるシンポジウムを開く。参院選での自民圧勝で困窮者に、より厳しい法案提出も予想される今、「中間的就労」の枠組みをめぐる再議論が必要だ。
 

 


竹信三恵子・和光大学教授/ 「週刊金曜日」2013-07-12号より転載
 

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小泉政権以降、大多数の労働者庶民は、多国籍企業とその株主たちのための捨て石、19世紀の家畜のような犠牲的労働請け負いが活きる本文であるかのように扱われてきた。わたしたち労働者には基本的人権など認めない、みたいな感じの非正規労働拡大。
 
おりしも、民主党政権時代に下野した自民党が作った改憲案には、「日本は活力のある経済活動によって」国のメンツを立ててゆくと公言し、そのために「個人の尊厳」は削除され、公けから認められる者のみ生存権を保障される、みたいな国の基本法になっている。
 
これが自民党の今の本音だ。社会というものがどのように成り立っているか、についての理解がまるでない、お金持ちに生まれついたボンボンの狭い視野でしか考えられていない思想。生活必需品からぜいたく品まで、それを造っている地味な労働者たちが存在するということが実感されていない連中が政治の主導権を握っており、そんな彼らが登用する人材は、運や協力してきた労働者たちへの感謝を失って、自分の才覚だけで成功してきたと勘違いした思い上がりに酔う若手経営者たち。
 
自民に安定多数を与えたら、わたしたち庶民は中世の北条氏時代の圧政にまで貶められてしまう可能性が高い。だが、領土ナショナリズムに酔いしれた日本国民は、外国への憎悪に駆り立てられており、自滅への道をまっしぐらに突き進んでいる…。






 

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (めぐみ)
2013-07-24 14:29:11
はじめまして!めぐみっていいます、他人のブログにいきなりコメントするの始めてで緊張していまっすヾ(=^▽^=)ノ。ちょくちょく見にきてるのでまたコメントしにきますね(*^^*)ポッ
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Unknown (めぐみ)
2013-08-01 04:16:09
このあいだコメントしためぐみです!覚えてますか?覚えていてくれた嬉しいですw(▼-▼*) エヘ♪せっかくなのでメールできませんか?私ブログとかやってないのでお話がしたいです、アドは makorakopuあっとyahoo.co.jpです、待ってますね!(*^^*)ポッ
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