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Luna's “The Humanities for Economics”

もはや世界はカジノだ。人間が生きるための明日を探そう。純粋経済学の欺瞞に気づき、政治経済学に帰ろう。

森永卓郎氏 自民党総裁選の決選投票に残らなかったら「その時点で日本は終わる」と考える候補者とは

2024年09月16日 | Weblog

 

 

 

 がんで闘病中の経済アナリストの森永卓郎氏(67)が16日、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」に生出演。自民党総裁選(27日投開票)に立候補している候補らについて語った。

 

 過去最多の9人が立候補した今回の総裁選。番組では、読売新聞社が党員・党友への電話調査と、国会議員の支持動向調査を行い、その結果、高市早苗経済安保担当相と、石破茂元幹事長、小泉進次郎元環境相が競り合い、上位2人が決選投票で争う公算が高くなっていると伝えた。

 

 森永氏はこれについて「私は見ててですね、どいつもこいつも経済音痴だと思ったのは、今本当に日本はデフレ再突入の危機にあるわけですよ」と明言。

 


 「業界ではコアコアって言うんですけれども、エネルギーと生鮮品を除いた消費者物価上昇率って、7月1・9パー(セント)まで下がってるんですね。日銀の目標2なので、つまり目標物価を下回るところまで。1年前4・3だったんですよ。物価上昇率が半分以下になってるんです。このまんまいくと、この後円高も重なりますし、流通業者の叩き売りセールも重なるので、どんどん物価が下がっていくんですよ」と言い、「その中で財政と金融緊縮したら恐慌になっちゃうっていのは、サルが考えたってわかるのに、この9人の中で8人が財政均衡主義、プライマリーバランス黒字化だって言ってるわけですよ」と続けた。

 

 「高市さんだけが、プライマリーバランス均衡至上主義はいけないって言ってるんですけど、じゃあ具体的に減税するのかなんとかっていうのは言ってないわけですね」とも語ったものの、それでも「ただ私は決選投票に高市さんが残らなかったら、その時点で日本は終わると思ってます」と言い切った。

 

 パーソナリティーのフリーアナウンサー・垣花正が「この中で高市さんだけが、経済のことを分かっているだろうと、モリタクさんの見立て。彼女は経済成長というのをフリップで出したりして、割とそこに全振りしてますもんね」と語ると、森永氏は「そうです」と一言。

 

 「実はね、増税で財政再建ができたなんて例は私は一つも知らなくて。たまたま経済政策が当たって、パイが増えて税収が増えちゃって黒字化することはあるんですけど。節約耐乏生活を国民にしいて財政が良くなることは絶対にないんです」と断言した。

 

 


スポーツニッポン新聞社

 

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みんな財務省の「注射」に染まってるから、プライマリー・バランス絶対主義の財務省の言うことに唯々諾々と従うだけ。なにせ、コスパが悪いから能登への財政支援はしないことを公言しているような省だから。

高市さんなんて、極右の時代錯誤派。増税は遅らせることができても、人権をどんどん押しつぶそうとするのは目に見えている。

 

自民党という選択がもうダメ。財務省の傀儡という観点から、今の立憲民主党ももちろんアウト。政党にこだわらず、とにかく財務省の「注射」に毒されていない候補者に票を。

 

 


「部下はあなたの思うようには動かない」恩師の言葉で救われた。見学殺到の工場、リーダーシップの本質

2024年02月11日 | Weblog

 

 

 

事務職しか経験のなかった「小娘」が赤字転落の危機の中、いきなりの事業承継で経営者に。待ったなしの場面で、真っ先に手を付けたのは組織づくりでした。5S運動に始まり、社員との接し方で大きな転機となったのが「社員が社長の言うとおりにやらないのは、普通のこと」という恩師の言葉。そこで考え方を変えた所からV字回復、会社の飛躍が始まります。株式会社田野井製作所 代表取締役の田野井優美さんに話を聞きました。

 

 

 

□こんな小娘に任せて大丈夫か?社長就任に周囲は猛反発

 


――経営に携わるようになった経緯について教えてください。

 

田野井優美さん(以下、田野井): まず、2009年の正月に社長だった父から「お前を役員にしようと思っている」と言われ、取締役副社長に就任しました。当時の私は33歳。主任という立場で、経営の「け」の字もわかりません。周り以上に私が驚きました。その後、2013年に社長に就任することになります。当時はリーマンショックの真っ只中。売上が8割も落ちていました。父としては、今までの体制を続けていてもどのみち厳しい。「100年に1度」の変化に対応して次の一歩を踏み出すには、全く違った考え方でもっと若い人が活躍できる組織に変えたほうがいい、という思いもあったのでしょう。そこで私が抜擢され、社内改革に奔走することになりました。

 

 

―― 社員や取引先の反応はいかがでしたか?

 

田野井:「こんな小娘に任せて大丈夫か?」「経営なんてできるわけがない」と、反対の嵐 でしたね。当然、改革を進める中ではさまざまな反発に対峙しました。経営者として未熟だった私が、そういった境遇を乗り越えられた大きな要因として、 環境整備の徹底や、師と仰ぐ小山昇さんからの数々のご指導 がありました。

 

――そもそも、田野井さんは4人きょうだいの2番目で唯一の女性です。お兄様と双子の弟お2人も会社に在籍しています。なぜ、田野井さんだったのでしょうか?

 

田野井: 家族で食事をした時、父が「会社を継ぐのは誰が適任だと思う?」と皆に聞いたんです。母をはじめ「そりゃ優美でしょ」「優美しかいない」と、皆がすぐに反応しました。振り返ってみれば、私は男兄弟の中で育ったせいか、男勝りで目立ちたがりの性格で、周囲もそれを認めていたんですね。私も躊躇しましたが、最後には「やらせてください」と前を向きました。

 

 

 

□環境整備だったら、自分にもできるかもしれない。

 

――リーマンショックの危機下の社内改革、何から手を付けたのですか?

 

田野井: まず父からは「製造、技術、営業、管理。これら4部門を統括しろ」と命じられました。私は海外部門の事務しかしたことがなく、4部門すべてが全くわかりませんでした。ですので 「感覚的に社内にとって良さそうなことには、とりあえずチャレンジする」 と考え方を変えてみました。そこで見つけたのが 「環境整備」 。環境整備とは、掃除や整理整頓をはじめ、仕事をやりやすくする環境を日々整え続ける活動のことを言います。当時、ホッピービバレッジ株式会社の石渡美奈社長の本をよく読んでいたんです。内容がまさにうちの社内とそっくりなんですよ。もうそのまんまなんじゃないかな、というくらいに類似していました。その本の中で石渡さんが重要性を説いていたのが「環境整備」でした。環境整備に取り組むことで、会社が少しずつ変わっていったと。「よくわからないけど、それって一体どういうことだろう?」と私の中にアンテナが立ちました。

 

さらにきっかけがもう一つ。石渡さんは中小企業のコンサルタントで著名な小山昇さんに師事されて改革を行っていました。偶然、小山さんの出版記念講演があって私も話を聞きに行ったんです。そこで、小山さんが環境整備の大切さをお話しされました。小山さんのお話を聞くや、 「そのやり方だったら現場経験がない私でもできるかもしれない」 とやる気が出てきました。私は熟練の技術者と同じように機械を動かして物を作ることはできませんし、アイデアを持って技術開発することもできません。でも環境整備なら、私にもすぐにできる。仕事をやりやすい環境を作る取り組みであれば、社歴の長さや技術力などと関係なくできる。社内改革に持ってこいじゃないかなと思ったんです。副社長就任の翌年には5S・環境整備を導入することを決め、また私自身も小山さんに師事するようになりました。

 


――当時の会社はどのような状態だったのでしょうか?

 

田野井: 恥ずかしながら、今とは比べ物にならないような惨状でした。「おはよう」も言わない社員がほとんどでしたし、コミュニケーションはなくて、陰鬱な空気が漂っていました。工場内や事務所内の整理整頓も全然ダメ。暗いし、物は多いし…。わかりやすい問題点でいえば、「時間を守る」ができていませんでした。会社としては「3分前集合を行動の基本とする」と掲げてはいるものの、当時は「何時から朝礼・昼礼を始めます」と言っても、だらだら…バラバラ集まってくるという感じでした。

 

――5S・環境整備を進めて変わりましたか?

 

田野井: 活動を始めて3年ぐらい経った頃には、始まる時間の3分前にはビシッと揃うようになりました。 やはり粘り強く言い続ける、根気強く働きかけ続けることが大事 ですね。それがだんだん習慣になって、今では会社の文化になったと言えます。毎日、始業後の20分間は整理整頓の時間です。もちろん、給料も発生しています。日ごとに計画表を作成して、場所ごとに担当を振り分け。月に1回、私や幹部がチェックするという運用です。整理整頓というと黙々と作業をこなすイメージですが、うちは「おしゃべりOK」。コミュニケーションを取ることも目的の一つだからです。陰鬱だった空気がだんだんと明るい空気に変わっていきました。

 

 

 

□「なぜやってくれないのか?」ではなく「どうすればやってくれるのか?」

 

――改革を進める中で、壁にぶつかることはありましたか?

 

田野井: やはり社員との関係性は難しかったですね。ただ、小山さんに教えを請う中でいくつか救われた言葉がありました。その一つは、 「会社が変化する時、一定数の社員は辞める」 。何もわからない小娘がいきなり経営者になって改革を進めることに、「やってられない」と感じた社員もいたでしょう。反発だってありました。しかし私自身の中では、会社にとって良くなると信じたことを実行しているだけですので、反発自体に対してへこむことはありませんでした。そして退職者が出た時にも、小山さんのこの言葉で、前を向いて進み続けることができました。

 

また、小山さんから言われてすっと腹落ちしたのが「社長が『やれ』と言って、やらない社員がまともだよ」 という言葉。社長が一方的に命令しても、社員はまず反発するか、あるいは何か他の目的があるんじゃないかと勘ぐるのが普通。だから「やらない社員がまとも」なんだと。続けて 「大事なことは、いかにやらせる仕組みを作るかだよ」 と教えられました。それ以降は「社員はなんでやらないんだろう?」と一瞬思っても、 「じゃあどうすればやってくれるんだろう?やり続ける仕組みが作れるんだろう?」と思考の転換 ができるようになりました。

 

 

 

□会社の調子が悪い時にこそできること

 

――リーマンショックの危機に際して、財政面ではどのような方策を?

 

田野井: 今振り返ると、本当にやっておいて良かったと思えるのが株の集中です。 小山さんとの個別面談の際に「実はうち、株主が200名ぐらいいるんです」と内実をお話ししたんです。創業者が上場を目指していたことがあり、株主が拡散していました。すると小山さんから「決算書を見せてください」と言われお見せしました。リーマンショックの時なのでひどい内容なのですが、小山さんからは思いがけない一言が返ってきました。「今が株を集中させる千載一遇のチャンスです。業績が悪い時だからこそできることもありますよ。今すぐ動きなさい」 とアドバイスをいただきました。「中小企業は経営判断が俊敏にできて、迅速に対応できるのが一つの強み。株を集中させて、経営者が大きな意思決定をスムーズにできるようにしておきなさい」、と。私は「なぜ今なのか?」が理解できていませんでしたが「赤字の今は株が安いからですよ」と説明いただき納得。すぐに株を買い集め始めました。その後、多くの株主の皆様にご理解・ご協力をいただいたお陰で、今では持株比率は100パーセントになりました。リーマンショック後、当社はさまざまな経営の舵取りをしていくのですが、それが本当にスムーズになりました。株が散らばったままだと、当社は中小企業としての経営のスピード感を発揮できず、今の姿はなかったかもしれません。小山さんのアドバイスには本当に救われました。

 

 

 

□社員がお客様を意識できる。見学希望者の絶えない工場

 

――売上などの数字についてはいかがですか?

 

田野井: 社内を良くしていけば、「仕事がやりやすい環境」ができる。そうすれば数字は自ずと上がってくる、という感覚ではいました。逆に言うと、数字だけを追い求めてしまうと、おそらく一過性の数字で終わってしまっていたと思います。実際、赤字転落から約3年で黒字転換し、V字回復を果たしました。粗利益率も大きく向上。現場の感覚としても「不良率が下がっている」「残業が減った」など目に見えて生産性が改善していきました。社員の意識としても、「お客様・市場にどう対応すべきか」「うちはどこで勝負するのか」という点について、 全員で同じ目標を考えられる組織 になりました。はじめは職場環境の改革だけでしたが、その積み重ねを経て「全体が変わった」という実感があります。

 

例えば、当社の何よりの強みともいえる「ドクターセールス」は、まさにその賜物かもしません。文字通り「営業マンの医者化」を進めたもので、お客様の課題に寄り添い一緒に解決していく活動です。これは確固たる知識・技術・経験だけでなく、お客様への思いや丁寧な対応力がなければ決してできないサービスです。近年どんどん生まれている新製品・オンリーワン製品の開発についても、まずはお客様のニーズを把握し、それを先取りする企画力や、形にする技術力・チームワークが必要です。それらすべての礎にあるのは、環境整備から始まった組織づくりだと感じます。

 


――今では「見学希望者が絶えない会社」になっています。

 

田野井: 以前だったら考えられない光景ですね。営業の社員がお客様に「よかったら工場を見に来てください!」なんて、絶対に言えませんでした。だけどいつの間にか、自分から「見に来てください!」って口にするようになっていたんです。そして見学の機会が増えれば増えるほど、工場の社員の意識も変わっていきました。最初は「見られるから、工場をいつもきれいに」というレベルだったものが、「お客様をお招きできるくらいきれいに」と。ここでもお客様に対する思いが根付いたことが、私としては本当にうれしいですね。最近では「人から聞いたんだけど、見学できますか?」と、人伝で興味を持っていただくお客様も増えています。実は、今日も工場にお客様がいらっしゃっているんですよ。これからも、 どんなお客様に見られても恥ずかしくない会社を、みんなで作っていきたいですね。

 

 

 


(取材・文:加藤 陽之 撮影:岡戸 雅樹)
BizHint 編集部
2024年1月26日(金)掲載


コラム:新型肺炎があぶり出した日本経済「4つの弱点」

2020年02月17日 | Weblog

 

 

 

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GDP10─12月期は年率‐6.3%、内需総崩れで5期ぶりマイナス成長

 

[東京 17日 ロイター] - 内閣府が17日発表した2019年10─12月期国民所得統計1次速報によると、実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス1.6%、年率換算でマイナス6.3%となった。5四半期ぶりのマイナス成長となり、減少幅は2014年4─6月期以来の大きさとなった。台風や消費増税による駆け込み反動減、米中摩擦による不透明感などから、消費、設備投資もマイナスとなるなど、内需が総崩れ。外需も寄与度はプラスとはいえ、輸出の落ち込みより内需停滞による輸入の減少が上回った結果であり、内容は悪い。

 

 

 

 結果はロイターの事前予測の年率マイナス3.7%を上回る落ち込みとなった。

 

 最も足を引っ張ったのは、民間消費支出で前期比マイナス2.9%となった。品目では、自動車、化粧品、家電、アルコール飲料の販売が下押しに寄与した。10月の台風などの影響に加えて暖冬で季節用品の販売が振るわなかった。消費増税前の駆け込み需要の反動も加わった。

 

ただ、前回14年の4─6月期の消費増税時の落ち込み幅マイナス4.8%と比較すると、減少幅は小幅だった。

 

 内閣府幹部は「今回は幼保無償化やポイント還元、自動車減税など効果もあり、全体としての駆け込み反動は小さかったとみている」との認識を示している。

 

 民間設備投資も前期比マイナス3.7%で、3四半期ぶりに減少した。建設、生産用機械の落ち込みが影響した。増税前のレジ投資などの一巡や、米中摩擦に伴う投資慎重化もあり、振るわない。住宅投資もマイナスだった。プラスだったのは政府最終消費支出と公共工事など公的固定資本形成。

 

この結果、内需の寄与度はマイナス2.1%だった。5四半期ぶりのマイナスとなった。

 

 他方、外需については寄与度はプラス0.5%で、3四半期ぶりのプラスとなった。輸出は前期比マイナス0.1%で、自動車、自動車部品、業務用機械などの輸出が減少した。前期よりマイナス幅は縮小したが、引き続き停滞感は強い。他方で輸入は同マイナス2.6%と落ち込みが大きい。

 

デフレーターは前年比プラス1.3%。前期よりプラス幅が拡大した。前期比ではプラス0.4%。

 

 10―12月期の実質GDPは市場予想より大きく落ち込んだが、内閣府は増税後の反動減や台風の影響などさまざまな特殊要因がマイナス成長につながったとみており、「景気の回復基調が変わっているとは思っていない」(幹部)とする。

 

 2020年1―3月期は新型肺炎の拡大による国内経済への影響が焦点になる。同幹部は「新型肺炎の影響は現段階では見通せない」と指摘しつつ、長期化すれば景気の基調に影響が出る可能性があるとの見方を示している。

 

 

 

(中川泉 和田崇彦 浜田寛子 編集:青山敦子 佐々木美和)

Reuters 2/17(月) 9:14配信

 

 

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コラム:新型肺炎があぶり出した日本経済「4つの弱点」

 


[東京 14日 ロイター] - 中国・湖北省武漢市から感染が拡大した新型肺炎が、日本国内にも広がり出そうとしている。ここで問題なのが、日本経済が抱えている「4つの弱点」だ。対照的に米国経済は相対的に安全とみられ、逃避資産としてマネーが流入している。日本国内で感染者が増え出した場合、東京五輪・パラリンピック開催への懸念が浮上するとみられ、一段と個人・企業の心理を冷え込ませかねない。日本は岐路に立たされている。

 

 


<高い対中輸出依存度>

 

13日の米株市場は反落したものの、最高値圏で推移している。一方、日経平均.N225は2万4000円を前に足踏みが続く。この背景には、日本経済が抱える「4つの弱点」が強く影響していると分析している。

 

1つ目の弱点は、高い中国依存度だ。2019年の輸出総額76兆9275億円のうち、対中は14兆6826億円と全体の19%を占め、国別では米国に次いで2位。商品別では、一般機械、電気機械の割合が多い。

 

新型肺炎で中国の製造業の生産再開が大幅に遅れており、この分野の企業の業績下振れが今後、鮮明になるとみられる。

 

実際、1月の工作機械受注は前年比35.6%減の808億円と単月としては7年ぶりの低さを記録。新型肺炎の影響が本格している2月は、さらに大きく落ち込むとみられている。

 

 

 

<30%占める中国観光客の急減>

 

2つ目は、足元の日本経済を支えてきたインバウンドへの大きな打撃。日本旅行業協会の推計によると、1月27日から3月末までに、中国人旅行客約40万人分の各種予約がキャンセルとなる見通しだ。

 

また、昨年2月─5月の中国からの旅行者数は289万7700人に上っており、5月の大型連休のころに新型肺炎の影響が下火になっていなければ、観光に関連するビジネスは幅広く打撃を受けることになる。

 

2019年の中国からの観光客は、前年比14.5%増の959万4300人と全体の30%を占めていた。韓国が反日感情の高まりで前年比25.9%減の558万4600人と落ち込んだ分を相殺した形になっていただけに、インバウンド関連の宿泊、小売関連の企業は、大幅な売り上げ減に伴う資金繰りの悪化にも備える必要が出てくる。

 

 

 

<消費増税でふらつく個人消費の足元>

 

3つ目には、昨年10月の消費増税後の個人消費のパワーダウンを挙げたい。典型的なのは自動車販売で、昨年12月の新車販売台数は前年比11.0%減の38万7525台にとどまった。11月が同12.7%減、10月が同24.9%減とマイナス幅が縮小しているものの、反転の兆しは見えない。

 

12月の全世帯消費支出は前年比4.8%減と大きく落ち込んだ。暖冬や少なかった休日日数を政府は要因としているが、昨年10月─12月と実質賃金が3カ月連続で減少していることも作用しているのは間違いないだろう。

 

つまり、今の個人消費の状況は、個人の体調に例えると、体力が弱っているところに強い感染力のある新型肺炎のリスクに直面していると言える。

 

総務省も消費支出の動向に関連し、新型肺炎の影響で人混みを避けるようになれば影響が出てくると警戒感を強めている。14日の段階で、国内での感染者が増えるリスクが高まっており、3つ目の弱点の影響力は強まる様相を見せている。

 

 

 

<GAFAのいない日本経済>

 

4つ目の弱点は、この10年間で日本経済と企業の新陳代謝が遅れた結果、米国では新型肺炎発の株安への防波堤となっているGAFAのような企業が、日本には存在しないことだ。グーグル(GOOGL.O)、アマゾン(AMZN.O)、フェイスブック(FB.O)、アップル(AAPL.O)などのプラットフォーマーの株式は、安全資産として世界の投資家のマネーの受け皿になっている。

 

一方、日本では政府発注の基盤システムをアマゾン傘下のクラウド企業に発注する調整に入ったと報道されるなど、IT(情報技術)システム分野で今、最も「収穫期」にあるクラウドに関して後れを取っている。

 

今年に入って、海外勢が東京市場でナスダック買い/日本株売りの注文を大々的に展開してきたとの話をよく聞くが、「さもありなん」と思わざるを得ない。

 

 

 

<国内感染拡大に備えを>

 

ここに挙げた4つの弱点を抱える日本経済は、中国の新型肺炎の患者数増が止まらず、拡大期が長期化すればするほど、ダメージが蓄積されていく構造になっている。

 

そこに国内で湖北省に関連しない感染者が複数、発生するという事態に直面してしまった。政府は、国内流行とする疫学的情報が現段階で集まっていないとの見解を示しているが、日本国内が「感染拡大期」に入る前兆と警戒感を強めている感染症の専門家も少なくない。

 

水際対策に重点を置いた現在の政策から、国内での重症化やパンデミックの抑制を最優先にしたシフトチェンジを求める声も出ている。

 

もし、国内での感染者が急速に増加した場合、7月からの東京オリンピック・パラリンピック開催への影響を考えざるを得ない。国際オリンピック委員会(IOC)がどのような判断を下すのかにかかっているが、仮に延期ないし中止が決定された場合、現在の想定を超える大きな影響が各方面に波及することは間違いない。

 

ここから先の日本政府による感染症対策のスタンスが、日本の未来を大きく左右することになる。

 

 

 

 

田巻一彦REUTERS 為替フォーラム  2020年2月14日 / 15:19 / 13時間前更新

 

(編集:田中志保)

 

 

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消費増やす政策こそ 田村政策委員長会見 「景気指数など不況深刻」

2020年02月08日 | Weblog

 

 

 

 日本共産党の田村智子政策委員長は7日、国会内で記者会見し、同日発表された景気動向指数と家計調査が連続で悪化したことについて「相当な落ち込みで深刻な不況が日本を襲っていることを示すものだ」と指摘しました。

 

 内閣府の景気動向指数は5カ月連続マイナス、総務省の家計調査では1世帯当たりの消費支出は3カ月連続マイナスとなりました。

 

 田村氏は、景気動向指数の5カ月連続マイナスについて、リーマン・ショックの2008年6月~09年4月の11カ月連続以来、10年ぶりの長期の悪化だと指摘。西村康稔経済再生担当相が同日の会見で、10~12月期の国内総生産(GDP)が発表される前に、「前期よりも低くなる可能性がある」と述べたことに言及し、「発表前にマイナスになる可能性を大臣が言わなければいけないというのは異例な事態だ」と述べました。

 

 さらに田村氏は、消費税10%増税の影響が鋭く表れていると指摘。安倍首相は施政方針演説で消費税について一言も語らなかったとして、「個人消費の落ち込みの現状を直視せず、個人消費をどう引き上げるかの政策が盛り込まれていない予算をこのまま通していいのかという大問題です。インバウンド(訪日外国人旅行者)、オリンピックで景気がゆるやかに回復という認識では、日本経済は大変なことになってしまうと厳しく指摘しなければならない」と語りました。

 

 


しんぶん赤旗 2020年2月8日(土)

 

 

 

 

 


消費不況の顕在化 安倍「失政」の責任は重大だ

2020年01月28日 | Weblog

 

 

 

 安倍晋三政権が2019年10月に消費税の税率を10%に引き上げてから、家計の消費が一層低迷し、新たな消費不況を招きつつあることが明らかになっています。政府の公式な景気判断である1月の月例経済報告(22日発表)も「景気は、輸出が引き続き弱含むなかで、製造業を中心に弱さが一段と増しているものの、緩やかに回復している」と述べつつ、「消費税率引上げ後の消費者マインドの動向に留意する必要がある」と言わざるを得ません。安倍政権は消費税増税が失政だったと認め、消費税率を緊急に5%に戻し、暮らしと経済の再建をはかるべきです。

 

 

 

■国民に冷たい安倍政治

 

 消費税増税後に発表された各種の経済指標は、全く振るいません。家計の消費支出は19年10、11月と2カ月連続で前年同月に比べマイナスです。内閣府の景気動向指数は直近の11月まで4カ月連続の「悪化」です。11月の商業販売額は前年同月比6・5%減の大幅な落ち込みです。19年のスーパーの売り上げは前年比で4年連続のマイナスとなりました。民間の信用調査機関「東京商工リサーチ」がまとめた企業の倒産統計(負債額1000万円以上)では、19年の年間倒産件数が11年ぶりに前年を上回りました。

 

 日本銀行が今月初め発表した3カ月ごとの「生活意識に関するアンケート調査」では、個人の景況感が6期連続で悪化しました。14年12月以来5年ぶりの低さです。

 

 消費税増税後、地域の商店街でも閉店したり倒産したりする中小業者が目立ちます。増税による売り上げ減に加え、大手の店舗やキャッシュレス決済でのポイント還元ができる店などに客を奪われ、複数税率の導入によって事務負担が増えるなど、三重苦、四重苦を押し付けられているからです。高知県では倒産したスーパーが、10%増税によって資金繰りが困難になったとの「おわび」の文書を、店頭に掲示するという事態までおきました。

 

 衆院の代表質問で日本共産党の志位和夫委員長は、こうした事実を具体的に示し、消費税増税が日本経済に新たな不況をもたらし、中小業者を深刻な苦境の淵に追い込んでいるとただしました(23日)。しかし首相は、「万全の備えを講じている」などと言い訳するだけで、まともに答えません。国民や中小業者の痛みには目を向けない冷たい姿勢です。

 

 12年の第2次安倍政権発足以降、消費税は14年4月に8%、19年10月に10%に引き上げられ、消費と経済を冷え込ませています。20年度予算案の税収見積もりでは消費税が最大の税目になりました。国民に大きな負担を押し付けながら、大企業を減税などで優遇し、アメリカからの兵器“爆買い”などの軍拡に巨額の費用を投じるのは、“逆立ち財政”というほかありません。消費税率を5%に戻し、国民を応援する政治への切り替えが重要です。

 

 

 

■国民の暮らし守る政権を

 

 消費税減税や暮らしを支える政策の財源は、大企業や大資産家の応分な負担や、兵器“爆買い”など無駄の削減で十分可能です。必要なのは政治の姿勢を根本から改めることです。国民に冷たい安倍政権を退陣に追い込み、市民と野党の力で、暮らしを守る政権を打ち立てようではありませんか。

 

 

 


しんぶん赤旗 2020年1月28日(火)

 

 

 

 

 

 


主要先進国で日本だけ実質賃金マイナスに玉川徹が「もう先進国じゃない」……それでも安倍政権は介護保険の負担増で国民追い詰め

2019年12月17日 | Weblog

 

 

 

いったい「社会保障の充実」という消費増税の理由は何だったのか。厚労省は本日16日、一部の低所得者が介護施設などを利用する際の負担額を増やす方針などを打ち出した介護保険制度改正案を社会保障審議会に示したからだ。

 

 

 たとえば、この介護施設利用時の負担増では、年金などの収入が年120万〜155万以下の低所得者でなんと月2万2000円を上乗せする案が検討されているという。月に2万2000円ということは年間26万4000円の上乗せとなる。単純計算でも月に10万円で暮らす高齢者に年間約26万円も負担増を迫るというのである。

 

 それでなくても消費増税によって低所得の高齢者の生活は大きな痛みを強いられている。なのに、増税の理由だったはずの「社会保障の充実」とはほど遠く、むしろ死活問題に直結する額の負担を強いるとは、はっきり言って鬼畜の所業ではないか。

 

 しかし、当の安倍首相はそんな国民の痛みなどまるで無視。11日に開かれた「年末エコノミスト懇親会」で挨拶に立った安倍首相は、こう言い放った。

 

「どうかここにおられるエコノミストのみなさんは、デフレマインドを払拭していただいて、もう今日このあとから、もう一杯飲みに行こうという感じで、もう年末に向けてどんどん財布のひもをグッと開いていただきたい。それによって来年の収入も増えていく。この好循環を回していきたいと思います」

 

 ようするに、安倍首相は「デフレマインドを払拭するためには財布のひもを緩めろ」と言うのである。あくまで「ここにおられるエコノミストのみなさん」に向けた発言とはいえ、消費増税によって国民に負担を強いておいて、挙げ句「財布のひもを緩めろ」とは、まったくふざけているとしか言いようがない。「デフレマインドを払拭」したいのであれば増税など実行すべきではなかったし、むしろ財布のひもを緩めてほしいのなら、いまからでも消費減税を検討すべきだ。

 

 実際、消費増税が国民の生活に大きな打撃を与えていることは、総務省が今月6日発表した10月の家計調査の結果からもあきらかだ。2人以上世帯の1世帯当たり消費支出(物価変動を除いた実質)は、前年同月比で5.1%減。マイナスに転じるのは11カ月ぶりで下落幅は3年7カ月ぶりの大きさ。前回の消費増税時(2014年4月)は4.6%減だったから、今回の増税は前回以上のインパクトになっているのだ。

 

 だが、安倍政権は消費増税の影響をまったく認めず、西村康稔経済再生担当相は「台風の影響」などと述べ、安倍首相は国民の生活も顧みずに「金を使え」と迫る。これでは現実を無視した無能総理だと自ら宣言しているようなものではないか。

 

 しかし、安倍首相のふざけた言動はこれだけにとどまらない。この期に及んで、さらに大企業優遇を打ち出したからだ。

 

 というのも、12日に決定した2020年度の与党税制改正大綱では目玉のひとつとして「オープンイノベーション促進税制」の創設を掲げたが、これは大企業が設立10年未満などの条件を満たしたベンチャー企業に1億円以上を出資した場合、出資額の25%を減税するという。さらに、次世代通信規格である5Gを整備する企業などにも投資額の15%を税制控除するというのだ。

 

 こうした措置を「内部留保を投資に回させるため」だの「中国や韓国に出遅れている5Gを国家戦略に」などと言うが、内部留保を溜め込む大企業も、やはり大企業である携帯大手も現時点で十分優遇されている。現に、ソフトバンクグループが2018年3月期の決算で連結純利益(国際会計基準)を1兆389億円も計上しながら、税務上の欠損金計上という合法的な“租税回避”をおこない、法人税がゼロ円だったことが発覚、ネット上でも話題となったが、日本ではこのほかにも研究開発減税などの租税特別措置によって多くの大企業が法人税を優遇されている。なのに、こうした大企業をさらに優遇しようというのである。

 

 本サイトでも繰り返し指摘してきたが、消費税の税率を上げつづける一方、安倍首相はアベノミクスの成長戦略として法人税率をどんどん引き下げてきた。大企業が税の優遇を受け、2018年度の内部留保は463兆1308億円と安倍政権下で過去最高を更新しつづけている反面、その穴埋めをお年寄りや子どもにまで課せられる消費税で強いる。これが安倍首相のやってきたことだ。

 

 

 

日経新聞も、『モーニングショー』では玉川徹も指摘した、日本の賃金の“後進国”ぶり

 

 そうして、安倍政権がどんどん大企業だけを優遇し、国民に負担を強いているうちに、日本の国民の生活レベルは、先進国から完全に取り残されてしまった。

 

 今月12日に日本経済新聞電子版は“アメリカの住宅都市開発省の調査が、サンフランシスコで年収1400万円の4人家族を「低所得者」に分類した”と衝撃的なニュースを伝えた。日本では年収850万円超でマスコミは「高所得者」と表現し、年収200〜300万円以下が「低所得者」と呼ばれるが、それがサンフランシスコでは1400万円でも低所得者になる……。頭がクラクラとしてくる話だが、記事によると日本人の給料は諸外国と比べても安く、たとえば「システム開発マネージャーの年収」だけを見ても、2007年を100として2017年を指数化して比較したところ、タイが210、インドが183、中国が176、アメリカでも119であるのに対し、日本は99で微減しているというのだ。

 

 だが、これはIT業界にかぎった問題ではない。きょう放送の『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でもこの日経記事をもとにして特集を組んだのだが、そこでは安倍首相が絶対に語らない、重要な指摘がなされたのだ。そう。実質賃金の問題だ。

 

 番組では経済協力開発機構(OECD)加盟国の実質賃金の推移を紹介したのだが、1997年を100とした場合の2016年の指数では、

 上位からスウェーデンが138.4、

 オーストラリアが131.8、

 フランスが126.4である一方、

 日本は89.7。

経済が成長するどころか衰退し、実質賃金は1997年よりマイナスに転じているのである。

 

 安倍政権は「いざなぎ景気超えの景気回復」だの「今世紀最高水準の賃上げがおこなわれた」だのと声高に喧伝してきたが、現実は生活実感に近い実質賃金が上がることもなく、他国が経済成長するなかで衰退しつづけている。さらに忘れてはいけないのは、昨年1月からは「毎月勤労統計」の調査手法を変更することで実質賃金を高くはじき出す“アベノミクス偽装”を施したという疑惑まであることだ。

 

 ようするに、安倍首相の詭弁にごまかされているうちに、この国は庶民の賃金が伸びず消費が冷え込み景気が悪化、そこに消費増税……という悪循環から抜け出せなくなっているのである。

 

 しかも恐ろしいのは、このまま日本が他国から見た「安い国」化が進んだときのことだ。『モーニングショー』では10月31日放送回でもさまざまなデータをもとに「日本はもはや先進国ではない」と特集を組んだが、きょうの放送でも玉川徹氏が“日本というのはもう先進国じゃない”と指摘した上で、日本が実質賃金で「一人負け」状態にあることを示すデータを指して「先進国じゃないって具体的に我々にどんな悪いことがあるのかと言えば、ひとつはこういうこと。日本だけが豊かではない。もしくは貧しくなっている。こういう状況」とコメント。さらに「長期的にみれば、このまま日本の地位が低下していけば円だって下がっていくわけですよね」として、こんな未来を予測した。

 

「日本はあらゆる資源を世界から輸入している国ですよね。で、給料が仮に変わらなくて、円だけがもし半分になったら、輸入品が倍になるってことですよ。そうすると物価は倍になると考えていいと思います、簡単に言えば。給料が変わらないのに物価が倍になったら、ようするに使い出が半分になるということですよ。このときに多くの日本人はたいへんな思いをするわけです」

 

 この玉川氏の話を極論だと果たして言えるだろうか。こうした最悪の未来を回避するには、賃上げによって消費を回復させること、そして消費減税によって経済を早急に立て直すほかない。しかし、増税後に「財布のひもをグッと開け」などと言い、大企業優遇をつづける安倍首相にはそんな考えはまるでない。ほんとうにこのままでいいのか。財布の中身を見て、国民はよくよく考える必要があるだろう。

 

 

 

(LITERA 編集部)
最終更新:2019.12.16 11:59

 

 

 


自民党が仕かける、労働権なき労働への危機感

2013年07月18日 | Weblog







「アベノミクス」の成否を握るのは、働き手への成果の還元、と言われてきた。だが、自民党の参院選公約を見ても、この問いへの答えは見えてこない。6月下旬に廃案になった「生活困窮者自立支援法案」の柱のひとつ、「中間的就労」のつくりも、そんな懸念を抱かせる。
 
「中間的就労」とは、生活保護を受ける前の「自立支援策」として、企業やNPO、社会福祉法人などが働く場を設けて生活困窮者に実地の職業訓練を行う「職場つき職業訓練」だ。自治体首長が認定すれば、初期経費の助成や税の優遇を受けられる。
 
グローバル化で製造業が低賃金の国々へ出てゆく産業構造の転換が進み、高い技能がないひとや対人サービスが苦手なひと、障害があるひとができる仕事が減り続けている。そんな人びとが働ける場を通じて、新しい技能や働く自信を身につけられる場づくりが、「中間就労」の趣旨だ。
 
だが、今回の案は、その趣旨と逆行しかねない危うさを含んでいる。清掃やリサイクル、農作業などの「簡易な作業」等の機会を提供する場合、申請して認められれば最低賃金以下でもかまわない「特例」が設けられているからだ。参加の場所を提供することが大切、という論理のようだが、…これはどこかで見た光景だ。
 
…そう、「外国人研修制度」だ。
 
外国人研修生は「労働ではなく研修」という名目で最低賃金の対象から外され、「時給300円の労働者」として問題になった。「中間的就労」も、「労働ではなく、福祉、訓練」を名目にして、この二の舞となりかねない。
 
最低賃金を守ることを原則に、野宿者の就労支援を行っている企業組合「あうん」の中村光男さんは、「最低賃金外しは、そのひとを労働者として認めない、ということ。労使交渉などの基本的労働権や失業手当てなどの、働き手の安全ネット外しにつながりかねない」、と心配する。

みずほ情報総研の調査では、すでに働く施設を持って、中間的就労を実施している支援団体の64%が労働契約を結んでいない。そこへ、国が最低賃金外しにお墨つきを与える、となると、その影響は大きい。というのは、一般の最低賃金制度にも穴があく怖れがあるからだ。そもそも、最低賃金も払えない働き方を前提にして経済的自立への態勢がほんとうに作れるだろうか。
 

 

2009年、英国で就職困難者をバスの運転手として育てて就職させる社会的企業を取材した。スタッフが受講者を励ましながら大型免許を取らせ、同社が運行する路線で運転手として働かせ、「経験者」としてバス会社に売り込む。行政からの職業訓練委託費も利用し、訓練段階から最低賃金は保障される。
 
そう、必要なのは、最低賃金外し、ではない。公的な仕事を優先的に発注するなどして、行政が最低賃金を固守することだ。
 

 

身体を壊すような長時間労働と、働いても生活できない低賃金の非正規労働の増加で、ふつうの働き手が労働市場に参加できる余地そのものが減っている。これを問わないままでの今回の案は、労働権から除外された働き手を囲い込んで見えなくする「社会からの追い出し部屋」としても機能しかねない。
 
7月22日には日本弁護士連合会が「中間的就労」をめぐるシンポジウムを開く。参院選での自民圧勝で困窮者に、より厳しい法案提出も予想される今、「中間的就労」の枠組みをめぐる再議論が必要だ。
 

 


竹信三恵子・和光大学教授/ 「週刊金曜日」2013-07-12号より転載
 

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小泉政権以降、大多数の労働者庶民は、多国籍企業とその株主たちのための捨て石、19世紀の家畜のような犠牲的労働請け負いが活きる本文であるかのように扱われてきた。わたしたち労働者には基本的人権など認めない、みたいな感じの非正規労働拡大。
 
おりしも、民主党政権時代に下野した自民党が作った改憲案には、「日本は活力のある経済活動によって」国のメンツを立ててゆくと公言し、そのために「個人の尊厳」は削除され、公けから認められる者のみ生存権を保障される、みたいな国の基本法になっている。
 
これが自民党の今の本音だ。社会というものがどのように成り立っているか、についての理解がまるでない、お金持ちに生まれついたボンボンの狭い視野でしか考えられていない思想。生活必需品からぜいたく品まで、それを造っている地味な労働者たちが存在するということが実感されていない連中が政治の主導権を握っており、そんな彼らが登用する人材は、運や協力してきた労働者たちへの感謝を失って、自分の才覚だけで成功してきたと勘違いした思い上がりに酔う若手経営者たち。
 
自民に安定多数を与えたら、わたしたち庶民は中世の北条氏時代の圧政にまで貶められてしまう可能性が高い。だが、領土ナショナリズムに酔いしれた日本国民は、外国への憎悪に駆り立てられており、自滅への道をまっしぐらに突き進んでいる…。






 

 


「異次元金融緩和」の基本的誤解

2013年07月15日 | Weblog






「アベノミクス」の「第一の矢」とされる大胆な金融緩和の内容は、
 ① 日本銀行が国債を大量に買い取ることにより、
    ゼロ金利の資金を無期限に市中銀行に供給すること、
 ② そうすることで金利を低下させ、円安・株高を誘導し、投資マインドを刺激する。
 ③ 円安局面で輸出を促進、同時に割高になった輸入品を増やし、物価の2%上昇を誘導。
 ④ そこへ大型公共事業を増やせば企業収益も増えて好景気を生みださせるし、
    労働者の賃金も増やせる…
…というものらしい。(「アベノミクス批判」/ 岡田知弘・京都大学教授ほか・談/ 「経済」2013年6月号より)
これは「デフレ不況脱却」のための決定打という宣伝で触れこまれている。



だがそも「デフレーション」は不況の原因のすべてではない。


デフレは経済学的な定義によると、「通貨収縮(通貨流通量が減ることで通貨価値が上がり、物価が下落する)に起因する物価の連続的下落」を指すらしい。安倍さんのブレーンである黒田日銀総裁と副総裁の岩田規久男・学習院大学教授はだから、ベースマネーを増やして上記の効果を狙おうとする。「リフレ政策」と言うらしい。つまり現在の日本の不況はデフレが原因=通貨の絶対量が不足しているために生じている現象である、という解釈にもとづいている。


だが、アベノミクス流リフレに批判的なひとたちに共通した意見は、現在の日本の危機的な不況は通貨収縮に起因するものではなく、非正規労働の拡大などによる賃金抑制が原因である、というものだ。厳密な定義にもとづくデフレーションは二次的に引き起こされた「症状」であるということだ。株主配当の支払いなどの目的で、賃金をおもいきり抑制したことが原因で生じている需要不足による不況である、という。


どちらがほんとうなのか。


少なくともリアベノミクス批判派の言い分がほんとうだとしたら、賃金をさらに抑制しようとする「限定正社員」制度や「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度、TPP導入などの政策はさらに不況を深刻化させることになる。わたしたちブルー・カラー系(製造業系)労働者は生存そのものが脅かされることになる。


しかも規制緩和政策は小泉政権時代を通じて、トリクルダウン効果をまったくもたらさないことが実証済みなのに、それがさらに推進されようとしている。まさに経済的ジェノサイドだ。


安倍の言う公約はウソだ。そも衆院選の際の「聖域なき自由化反対」の公約はあっさり反故にされた。領土問題や中国の挑発に幻惑されてはならないと思う。少なくとも今は、自民には下がっていてもらおう。飢え死にしたくないなら、今は自制心と鋭い観察力を発揮するべき時だと思う。



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アベノミクスが進めようとしている「異次元の金融緩和」とインフレ推進政策は、日銀によるマネタリーベースの供給不足を日本経済の「失われた20年」の原因とみなす点で根本的に誤っています。


今日の不況は、
  ①正規雇用労働者の非正規雇用への大規模な切り替えと、
  ②連続的な賃金水準の切り下げによる消費購買力の低下、
さらに、
  ③1980年代以降、輸出依存型の日本経済の成長を支えてきた輸出関連企業が、
    海外現地生産化と、
    国際下請け生産に重点を移したことによる雇用の海外流出に起因したものである。





(上掲書より)



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ボタンは最初から掛け違えているのではないか。ボンボンの安倍総理には庶民の暮らしの実態が見えないし見ようとしないし、ただ自分の脳内だけの思念にもとづいて政治を行っている。とんでもない幼稚さだ。だが幼稚でも無能でも、権力は彼の手にあるので、ボンボンの夢想が現実場面に適用されようとしている。これは狂気だ…。






やはりTPPは実質日米FTAだった

2013年06月08日 | Weblog






TPP交渉参加に向けた事前交渉では、日本政府はアメリカに対して死活線にかかわる重大な譲歩を繰り返しています。初めからの懸念通り、日本市場は日米多国籍企業の草刈り場と化し、日本農業は壊滅的打撃を受け、300万とも400万とも推計される失業者を生み出す可能性の方が現実になってきています。反対派の懸念は決して「ありもしないお化けを怖がるようなもの」ではなかったのです。さすがにのん気な方のわたしも恐怖を覚えます。TPP事前協議に最前線を論じた文章をほぼ全文ご紹介してゆきます。




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自民党は総選挙で「聖域なき関税撤廃を前提とする(という条件がある限り)TPP交渉に反対する」ことを公約としながら、TPP交渉参加を進めるための打開策を日米共同声明に託した。この日米共同声明が、多くのテーマを議題とした日米首脳会談のなかでランチをとりながら合意した経緯を見れば、水面下でアメリカ通商代表部(USTR)と日本の外務省が交渉を重ねてきた結果であることが覗える。


この共同声明は三つのパラグラフ(=段落)で構成されている。


第一パラグラフは、

「両政府は、日本が環太平洋パートナーシップ(=TPP)交渉に参加する場合には、すべての物品が交渉の対象とされること、および、日本型の交渉参加国とともに2011年11月12日にTPP首脳によって表明された『TPPのアウトライン(輪郭)』において示された、包括的で高い水準の協定を達成してゆくことになることを確認する」
…である。


この「TPPのアウトライン」外務省の仮訳が存在する。それによると、協定に重要な特徴として、

「関税ならびに物品・サービスの貿易および投資に対するその他の障壁を撤廃する」
…ことが明記されている。さらに条文案の「物品市場アクセス」の項目では、
「協定参加国がWTO協定上負っている義務を上回る重要な約束を含む参加国間の関税撤廃および貿易障壁となりうる非関税障壁の撤廃も扱われている」
…ことが明記され、さらに「市場開放パッケージ」の項目では、
「TPPの関税譲許表は約1万1000のタリフライン(関税分類上の細目)のすべての物品をカバーする」
…として、いっさいの例外や除外を認めないことが明らかになっている。
これに日本政府は合意したのである。

 



(「アメリカに日本を売りわたす、成算なきTPP参加」/ 小倉正行・日本共産党政策秘書/ 「前衛」2013年7月号より)



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これをみると安倍さんは当初から「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明らかになったので交渉に参加することにした」という発言がウソであることを知っていたわけです。これまで保護されてきていたコメ、小麦、砂糖、乳製品、畜肉、水産物などが初めから関税撤廃の対象となっていたのです。ですから事実上この共同声明は、日本製品とサービスのあらゆる保護の一切を解除します、という意思表示であるわけです。この無節操な意思表示、ごくごく一部の日本企業にとってのみ、しばらくの間利益が見込めるという成果しかなく、大多数の日本人にとって死活ラインが侵される協定参加に向けての交渉を端緒につけるという意思表示を、「聖域なき撤廃ではないことが明らかになった」という正反対の意味を持つフレーズで国民に宣伝されたのです。民主党と自民党にどんな違いがあるというのか。

 




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共同声明の第二パラグラフ(第2段落、の意)は、

「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ、両政府は、最終的な結果は交渉の中で決まってゆくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的にすべての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」
…である。


安倍首相はこの段落を根拠に「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明らかになった」としてTPP参加に突き進んでいったが、先の「TPPアウトライン」を全面的に認めておいたうえではその主張は成り立たないことは推進派の論者でさえ指摘しているところである。


むしろこのパラグラフは、日本政府が米国の一定の工業品(自動車)の貿易上のセンシティビティ(重要品目)を認めたことに、より大きな意味がある。


そのことは日米事前協議の結果における、アメリカ製自動車関税の後ろ倒しや、日米自動車TOR(=自動車貿易枠組み合意)の合意に結実しているのである。

 



第三パラグラフ(第3段落)は、

「両政府は、TPP参加への日本のあり得べき関心についての二国間協議を継続する。これらの協議は進展を見せているが、自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、およびTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている」
…となっている。


この時点では「その他の非関税措置」についてはまったく明らかになっていなかった。国会サイドで、政府に質問をしても現在交渉中であるので明らかにできない、という対応に終始していた。しかし、4月12日の日米事前協議合意文書(日米往復書簡)で、その全容が明らかになった。その非関税障壁は、

「保険、透明性/貿易円滑化、投資、知的財産権、規格・基準、政府調達、競争政策、急送便および衛生植物検疫の分野」…という広範囲な内容を持っており、関税分野を除けば、まさに日米FTA(自由貿易協定)交渉というべきものになったのである。結局、この日米共同声明は、非関税障壁撤廃に向けた日米FTA交渉ともいうべきものを進行させる合意でもあったのである。




 


(上掲書)



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つまり安倍さんが「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明らかになった」と言ったフレーズは、アメリカ側の製品のセンシティビティを保護するための文言であったのを、そこまで理解することができなかった、ということでしょうかね。何でも安倍さんの国会答弁用のアンチョコにはすべて振りがなが振ってあるとか。アメリカのご機嫌を取ることが日本の政治家の至上の使命だとでもいうべき誤った信念が、高い教育を受けた人間をもこんなアホにさせるのでしょう。


日本人の大多数が「救国の首相」と持ち上げている安倍総理ですが、こういう貿易外交でのふるまいを見れば、アメリカの笛太鼓に合わせて踊るちんどん屋さんに映る。職業としてのちんどん屋さんを見下しているのではありませんが、政治という高度な交渉能力が要求される場所でアメリカ人と握手するためにだけ行動する政治家がおちゃらけに見えてしまうのです。


第三パラグラフから明らかなように、TPPはアジアの活力を吸収するたぐいの貿易協定ではなく、はじめから反対されていた方々の言っていた通り、アメリカによる日本市場の収奪協定であったのです。こういうことを考えてみても、自民党にはしばらく引き下がっていてもらった方がわたしたち庶民の生存にはいいことなんですが…。


 




TPP交渉参加決定についての安倍総理による記者会見

2013年03月15日 | Weblog






【安倍総理冒頭発言】

 

 


 本日、TPP/環太平洋パートナーシップ協定に向けた交渉に参加する決断をいたしました。その旨、交渉参加国に通知をいたします。

 国論を二分するこの問題について、私自身、数多くの様々な御意見を承ってまいりました。そうした御意見を十分に吟味した上で、本日の決断に至りました。なぜ私が参加するという判断をしたのか、そのことを国民の皆様に御説明をいたします。

 今、地球表面の3分の1を占め、世界最大の海である太平洋がTPPにより、一つの巨大な経済圏の内海になろうとしています。TPP交渉には、太平洋を取り囲む11か国が参加をしています。TPPが目指すものは、太平洋を自由に、モノやサービス、投資などが行き交う海とすることです。世界経済の約3分の1を占める大きな経済圏が生まれつつあります。

 いまだ占領下にあった昭和24年。焼け野原を前に、戦後最初の通商白書はこう訴えました。「通商の振興なくしては、経済の自立は望み得べくもない」。その決意の下に、我が国は自由貿易体制の下で、繁栄をつかむ道を選択したのであります。1955年、アジアの中でいち早く、世界の自由貿易を推進するGATTに加入しました。輸出を拡大し、日本経済は20年間で20倍もの驚くべき成長を遂げました。1968年には、アメリカに次ぐ、世界第2位の経済大国となりました。

 そして今、日本は大きな壁にぶつかっています。少子高齢化。長引くデフレ。我が国もいつしか内向き志向が強まってしまったのではないでしょうか。その間に、世界の国々は、海外の成長を取り込むべく、開放経済へとダイナミックに舵を切っています。アメリカと欧州は、お互いの経済連携協定の交渉に向けて動き出しました。韓国もアメリカやEUと自由貿易協定を結ぶなど、アジアの新興国も次々と開放経済へと転換をしています。日本だけが内向きになってしまったら、成長の可能性もありません。企業もそんな日本に投資することはないでしょう。優秀な人材も集まりません。

 TPPはアジア・太平洋の「未来の繁栄」を約束する枠組みです。 関税撤廃した場合の経済効果については、今後、省庁ばらばらではなく、政府一体で取り組んでいくための一つの土台として試算を行いました。全ての関税をゼロとした前提を置いた場合でも、我が国経済には、全体としてプラスの効果が見込まれています。

 この試算では、農林水産物の生産は減少することを見込んでいます。しかしこれは、関税は全て即時撤廃し、国内対策は前提としないという極めて単純化された仮定での計算によるものです。実際には、今後の交渉によって我が国のセンシティブ品目への特別な配慮など、あらゆる努力により、悪影響を最小限にとどめることは当然のことです。今回の試算に含まれなかったプラスの効果も想定されます。世界経済の3分の1を占める経済圏と連結することによる投資の活性化などの効果も、更に吟味をしていく必要があります。

 詳細については、TPPに関する総合調整を担当させることにした甘利大臣から後ほど説明させます。

 TPPの意義は、我が国への経済効果だけにとどまりません。日本が同盟国である米国とともに、新しい経済圏をつくります。そして、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わります。こうした国々と共に、アジア太平洋地域における新たなルールをつくり上げていくことは、日本の国益となるだけではなくて、必ずや世界に繁栄をもたらすものと確信をしております。

 さらに、共通の経済秩序の下に、こうした国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にとっても、また、アジア・太平洋地域の安定にも大きく寄与することは間違いありません。

 日本と米国という二つの経済大国が参画してつくられる新たな経済秩序は、単にTPPの中だけのルールにはとどまらないでしょう。その先にある東アジア地域包括的経済連携/RCEPや、もっと大きな構想であるアジア太平洋自由貿易圏/FTAAPにおいて、ルールづくりのたたき台となるはずです。

 今がラストチャンスです。この機会を逃すということは、すなわち、日本が世界のルールづくりから取り残されることにほかなりません。「TPPがアジア・太平洋の世紀の幕開けとなった」。後世の歴史家はそう評価するに違いありません。アジア太平洋の世紀。その中心に日本は存在しなければなりません。TPPへの交渉参加はまさに国家百年の計であると私は信じます。

 残念ながら、TPP交渉は既に開始から2年が経過しています。既に合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは、厳然たる事実です。残されている時間は決して長くありません。だからこそ、1日も早く交渉に参加しなければならないと私は考えました。

 日本は世界第3位の経済大国です。一旦交渉に参加すれば必ず重要なプレイヤーとして、新たなルールづくりをリードしていくことができると私は確信をしております。

 一方で、TPPに様々な懸念を抱く方々がいらっしゃるのは当然です。だからこそ先の衆議院選挙で、私たち自由民主党は、「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉参加に反対する」と明確にしました。そのほかにも国民皆保険制度を守るなど五つの判断基準を掲げています。私たちは国民との約束は必ず守ります。そのため、先般オバマ大統領と直接会談し、TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認いたしました。そのほかの五つの判断基準についても交渉の中でしっかり守っていく決意です。

 交渉力を駆使し、我が国として守るべきものは守り、攻めるものは攻めていきます。国益にかなう最善の道を追求してまいります。

 最も大切な国益とは何か。日本には世界に誇るべき国柄があります。息を飲むほど美しい田園風景。日本には、朝早く起きて、汗を流して田畑を耕し、水を分かち合いながら五穀豊穣を祈る伝統があります。自助自立を基本としながら、不幸にして誰かが病に倒れれば村の人たちがみんなで助け合う農村文化。その中から生まれた世界に誇る国民皆保険制度を基礎とした社会保障制度。これらの国柄を私は断固として守ります。

 基幹的農業従事者の平均年齢は現在66歳です。20年間で10歳ほど上がりました。今の農業の姿は若い人たちの心を残念ながら惹き付けているとは言えません。耕作放棄地はこの20年間で約2倍に増えました。今や埼玉県全体とほぼ同じ規模です。このまま放置すれば、農村を守り、美しいふるさとを守ることはできません。これらはTPPに参加していない今でも既に目の前で起きている現実です。若者たちが将来に夢を持てるような強くて豊かな農業、農村を取り戻さなければなりません。

 日本には四季の移ろいの中できめ細やかに育てられた農産物があります。豊かになりつつある世界において、おいしくて安全な日本の農産物の人気が高まることは間違いありません。

 大分県特産の甘い日田梨は、台湾に向けて現地産の5倍という高い値段にもかかわらず、輸出されています。北海道では雪国の特徴を活かしたお米で、輸出を5年間で8倍に増やした例もあります。攻めの農業政策により農林水産業の競争力を高め、輸出拡大を進めることで成長産業にしてまいります。そのためにもTPPはピンチではなく、むしろ大きなチャンスであります。

 その一方で、中山間地などの条件不利地域に対する施策を、更に充実させることも当然のことです。東日本大震災からの復興への配慮も欠かせません。

 農家の皆さん、TPPに参加すると日本の農業は崩壊してしまうのではないか、そういう切実な不安の声を、これまで数多く伺ってきました。私は、皆さんの不安や懸念をしっかり心に刻んで交渉に臨んでまいります。あらゆる努力によって、日本の「農」を守り、「食」を守ることをここにお約束をします。

 関税自主権を失ってしまうのではないかという指摘もあります。しかし、TPPは全ての参加国が交渉結果に基づいて関税を削減するものであって、日本だけが一方的に関税を削減するものではありません。そのほかにも様々な懸念の声を耳にします。交渉を通じ、こうした御意見にもしっかり対応していきます。そのことを御理解いただくためにも、国民の皆様には、今後状況の進展に応じて、丁寧に情報提供していくことをお約束させていただきます。

 その上で、私たちが本当に恐れるべきは、過度の恐れをもって何もしないことではないでしょうか。前進することをためらう気持ち、それ自身です。私たちの次の世代、そのまた次の世代に、将来に希望を持てる「強い日本」を残していくために、共に前に進もうではありませんか。

 本日、私が決断したのは交渉への参加に過ぎません。まさに入口に立ったに過ぎないのであります。国益をかけた交渉はこれからです。私はお約束をします。日本の主権は断固として守り、交渉を通じて国益を踏まえて、最善の道を実現します。
  私からは、以上であります。

 

 

 

 

【質疑応答】


(内閣広報官)
 それでは、質疑に移ります。指名された方は、まず所属と名前をおっしゃってから質問をお願いいたします。
  それでは、高橋さん、どうぞ。


(記者)
 総理、共同通信の高橋です。よろしくお願いします。

  総理は、今、TPPの交渉参加を表明されて、その国益を守るという固い決意を述べられたわけですけれども、具体的に言いますと、米とか麦、牛肉、豚肉、乳製品、砂糖、こうした重要5品目と国民皆保険制度について、昨日も自民党がこれを聖域として最優先で確保してほしいと、こういう要望をされています。総理としても、この聖域を守り抜くという決意があるかどうか、そして守れない場合は、交渉を離脱するという可能性もあるというお立場なのかどうか、まず一つお尋ねしたいのと、もう一つは、詳しい政府の統一試算の結果については、後ほど甘利大臣の方からという御紹介でしたけれども、農業においては、その生産額が3兆円にもわたって減少するとも言われております。この点については、農業団体からは強い反発も予想されるということで、夏の参院選に与える影響についてはどのようにお考えになるか。そしてまた、農業支援策についての検討状況についてもお聞かせください。

 

(安倍総理)


 まず、離脱するかどうかという御質問がございましたが、我々は国益を守って、それを中心に据えて交渉を進めていくわけでありますし、だからこそ交渉に参加をしました。ですから、今ここで離脱するかどうかということを申し上げるのは、むしろ国益にも反するわけであって適切ではないと、このように思います。昨日、自由民主党からも守るべき項目について決議文をいただきました。我々はしっかりとそれを胸に強い交渉力をもって結果を出していきたいと、このように考えています。
  そして選挙についてでありますが、これは選挙如何にかかわらず、この時期しかないと私は判断して、本日交渉に参加をすることを決断しました。
  その上において、我々は長い間の農村、農家との信頼関係があります。そうした信頼関係を通じながらしっかりと説明していくことによって信頼をつなぎ止めていきたいと、信頼を獲得していきたいと考えています。
  そして農業に対するダメージについて、試算については後ほど甘利大臣が御説明をいたしますが、そもそも関税が全くゼロになって、全く対応をしていない、対策をしていないという前提の数字ですから、そもそもそういうことには絶対になりません。そのことははっきりと申し上げておきたいと思います。むしろ今、最初にお話をしたように、これを、ピンチをチャンスに変えていくことこそが求められているのだろうなと思います。
  同時に多面的機能がありますから、ですからその多面的な機能ということを頭に入れながら、守るべきものは様々な政策を駆使して守っていかなければならないと、このように考えております。
  対策についても、今日、交渉参加を決めました。これから、しっかりとした交渉を行っていくと同時に、強い農業、攻めの農業、そして多面的機能を守っていくための対策、メニューについて、しっかりと議論していきたいと思っております。

 

 


(内閣広報官)
 それでは、次の方。それでは、古田さん、どうぞ。

 

(記者)

 東京新聞・中日新聞の古田と申します。総理、よろしくお願いします。

  総理は今、国民に対して、交渉過程については丁寧に情報を提供していくということを約束するというふうに述べられましたけれども、今後の交渉過程及び交渉参加に関わる情報については、どのように公表をされていくおつもりか。例えば会見をなさるとか、定期的に報告を政府として出されるとか、どのような形で公表をされていかれるのか、その考えをお聞かせいただきたいというのと、先ほど総理は、既に参加を決めて、交渉に入っている国々、11か国ありますけれども、こちらで一旦合意したことに関しては引っくり返せない、そういうことが厳然たる事実だということは認めるというふうにおっしゃいました。こちらが聞いている限りでは、カナダ、メキシコが交渉参加を決める際には、今の合意したことを引っくり返せないというほかにも、例えば交渉を打ち切る権利は、最初の参加を決めた9か国にしか認められないといった不利な条件も受け入れさせられたというふうに聞いています。

  総理は、こういう不利な条件に関しては、参加をすることを重視して今後受け入れざるを得ないというふうにお考えになっているということなのでしょうか。今後そういう条件が提示された場合に、政府としてどのような対応をなされるのか、そのお考えをお聞かせください。

 


(安倍総理)

 まず、TPPに関する情報提供については、先の訪米において、首脳会談後に日米共同声明を発出をして、内外記者会見で説明するなど、我々はできる限りの説明を行ってきました。

  また、与野党の関係会合等でTPPに対する安倍政権の基本的考え方や交渉の進捗状況について、随時御説明をしております。交渉でありますから、相手国との関係で公表できることとできないことがありますが、交渉に参加すれば、今よりも大分情報が入手しやすくなると考えています。公開できることは、進捗の状況に応じて、しっかりと国民の皆様に提供していきたいと、このように考えています。

  そして、交渉について、今まで既に参加をしている国が決めたルールについて、これを後から入っていって、既に決まっていることを蒸し返すことは難しいということは十分承知の上でありますが、ただ、今まで、まだ、例えば関税等についてはほとんど議論がされていないわけでありまして、これから決めることもたくさんむしろあると言ってもいいと思いますね。むしろ、ここで交渉に参加しないことは、もうTPPそのものを事実上私は諦めなければならない。つまり、交渉に全く参加できないのですから、全く日本はルールづくりには参加できないということになってしまっては、そうなっては、そういうTPPは、参加は国益にかなわないという、よりそういう状況になっていき、かつ、そのまた先にRCEP、FTAAPという、このTPPで決めたことを核に新しい体制ができていく、それを全て手放さなければならないというところに今、来ているのだということは認識しなければならないと思います。

  その上で、報道にて、メキシコとカナダに送付されたとされているような念書については、我が国は受け取っていません。ですから、それがどうなのかという仮定の質問にはお答えすることはできませんが、可能な限り、早期に正規に交渉に参加をして、強い交渉力をもって、我々は国益を守っていきたいと考えていますし、何と言っても、世界第3位の経済力を持つ日本です。その存在感は大きなものがあるはずでありますから、我々はこの力をフルに活用していきたいと考えています。

 

 

(内閣広報官)
 それでは、次の方どうぞ。
  それでは、関口さん、どうぞ。

 

(記者)

 ダウ・ジョーンズの関口と申します。

  TPP交渉参加の論争では、日本の農業を守るための農産物関税の扱いが最大争点のような印象を受けますが、関税を撤廃することによって、消費者が受ける恩恵の優先順位はこれより下に位置するのでしょうか。大企業は所得増を次々に発表していますが、マーケットの好調が反映されにくい中小零細企業や年金生活者には、総理の掲げる物価上昇目的などは、生活を苦しくさせる面もあります。

  安い外国米や畜産物が入っていることを望む消費者と、農業の聖域化の狭間にある溝を総理はどのように受けていらっしゃるか御説明ください。

 

 

(安倍総理)

 まず、多くの関税が撤廃されていくことによって物の値段が下がっていく。これは消費者が享受できる利益だと思います。そして、その分、購買力が増すことによって、GDPにプラスの寄与をします。そうした計算も我々はしているわけでありまして、つまり、消費者の得る利益は我々も計算に入れているということであります。

  その上において、農業は多面的な機能を保有しています。水を涵養し、地域を守り、環境を保全し、そしてCO2を吸収する。これは都市の人々も、これによる恩恵には浴しているわけであります。つまり、この多面的な機能を考えれば、それは農業は一つの産業。そこで働く人はもう要らないのだということには決してならないわけでありまして、ですから、この重要性、この多面的な機能、そしてそれは日本のまさに文化にも通ずるものがありますから、これについてはしっかりと守っていくのが私は当然なのだろうと、このように思っているところでございます。

  また、今、私たちが進めている経済財政金融政策についてのお話がございましたが、もし我々が今の政策を行わなければ、毎年毎年国民の収入は減っていくのですから、更にどんどん収入が減っていくという状況になっていきます。年金は物価にスライドしていきますから、デフレになれば年金収入は減っていきます。株価が下落をしていけば、年金の運用損がどんどん出ていきます。例えば株を売却して、それを被災地のために使う、JTの株の売却も売却益は減っていきます。

  つまり、今やっている政策をやらなければ、受けるマイナスははるかにはるかに大きいということを考えていただきたいと思うわけでありまして、つまり、行き過ぎた円高によって根っこから仕事を失ってしまうという状況を今、変えて、まさに日本の経済を上昇させていくことによって、経済を活性化させ、そして職を増やし、雇用を増やし、賃金を上げていく、今そういう局面に入っていったわけでありますから、大切なことはさらにそれを多くの方々に均てんしていく、広げていくことではないかと思っています。

 

 

(内閣広報官)

 予定の時間が来ておりますが、もう1問だけ。
  それでは、佐々木さん、どうぞ。


(記者)
 時事通信の佐々木です。

  今回のTPP参加表明に当たって、これまで政府はアメリカと事前協議を行ってきました。特に米国製自動車に対する関税の段階的撤廃の受け入れなど、一定の進展はあったと思うのですけれども、このいわゆる事前協議、もう事前という言葉は取れるのかもしれませんが、この協議はもう終わりなんでしょうか。そんなことはないと思うんですけれども、いわゆる90日ルールというものを考慮すると、夏以降に始まると見られる交渉会合参加に向けて、ほかに自動車や保険など残る課題について、どのような姿勢でそのルールづくくりに関わっていくのか、そこのところを具体的にお聞かせください。

 

 

(安倍総理)

 まず、先般の日米首脳会談において、日米間の協議を継続していくことで一致をいたしました。そのことを受けて、今、協議を実施をしているところであります。我が国のTPP交渉に対する米国の同意が可能な限り、速やかに得られるよう、今後更に取り組んでいく考えであります。

 

(内閣広報官)
 それでは、以上をもちまして、総理会見を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

 

 


 


「税と社会保障の一体改革」のあゆみ

2012年02月08日 | Weblog






「社会保障と税の一体改革」の本命は消費税の引き上げにある。ただし、この構想は野田政権に独自なものではなく、その原型の登場は、福田政権期に遡る。福田内閣時の社会保障国民会議は、消費税増税の一石を投じて社会保障機能強化と財政健全化の二鳥を獲る、という一石二鳥の作戦を打ち出したが、これが今日の「社会保障と税の一体改革」の原型であった。ただし、この一石二鳥の作戦は、その意図に即して正確に言いかえると、社会保障をおとりに使って消費税増税の獲物をモノにする戦法、または、社会保障という小エビ(餌)で消費税増税という大鯛を釣りあげる作戦を意味していた。そしてこの作戦は麻生政権期の安心社会実現会議に継承された。


問題なのは、なぜ福田政権期になってこの「社会保障と税の一体改革」の原型が登場したのか、という点にある。それは、すでに福田政権期において、小泉政権が引き起こした新自由主義の病が深刻になっていたからである。「新自由的小泉病」ともいうべきこの病は、社会保障がぼろぼろになるという症状となってあらわれた。これが重症化したのは小泉改革が、
 ① 貧困・格差社会を加速させたこと、
 ② 社会保障に兵糧攻め作戦をしかけたこと、
主にこの二つに依っていた。


ここで、社会保障に対する兵糧攻め作戦というのは、小泉政権が、「社会保障予算を削りに削って、国民生活を社会保障に飢えた状態に追い込めば、その時にこそ消費税増税の好機が到来する」と見込んで、社会保障財政の圧縮に乗り出したことである。このような兵糧攻め作戦が成功すると、社会保障がぼろぼろになるのは当たり前である。実際に、福田政権当時、すでにこの「新自由的小泉病」は相当に深刻な状態に陥っていた。医療難民、介護難民、保育難民、ネットカフェ難民といった当時の「難民化現象」の続発がこれを物語る。


では、新自由主義の帰結としての「小泉病」から国民の暮らしを解放するには、どのようなことが必要になるか。言うまでもなく、その最良の妙薬は、国民自身が新自由主義路線をから別れを告げること、別の選択肢に乗り換えることである。話はしばらく後のことであるが、実際に国民は、新自由主義とは別の選択肢を求めて、09年の政権交代を実現することになった。福田政権期はこの前兆が現れはじめたころに当たる。


福田政権がとったのは、小泉政権以来の社会保障兵糧攻め作戦を先述の社会保障おとり作戦に切りかえる策であった。両者の違いは、前者が「ぼろぼろになる社会保障」を先行させたのに対して、後者が「機能を強化された社会保障」という看板を前面に掲げたことである。福田政権の下で、たとえおとり作戦に過ぎなかったにしても、「ぼろぼろになった社会保障」を「機能を強化された社会保障」に切りかえるという方針自体は、新自由主義の毒にあたった社会保障を治療する意味を持つものであった。


だが、福田政権の取った社会保障おとり作戦は、実際には「毒を以て毒を制する療法」のはしりを物語るものにほかならなかった。なぜなら、消費税増税によって社会保障財源を手当てするというのは、新自由主義の “毒薬的税制” をもって新自由主義の “毒あたり” (たとえば日本国民の “難民化現象” などの “症状” )を処方しようというブラック・ユーモア的な意味だったからである。税のなかでも消費税は最も逆進性がつよく、反福祉国家的性格をもったものとして新自由主義的税目の代表である。この消費税の増税を本命にした社会保障おとり作戦のいかがわしさは、国民の前では、「福祉の充実」という宣伝文句を、福祉思想に反する税目である「消費税」をもって達成しようというまぎれもないごまかしとなってあらわれた。


社会保障おとり作戦は福田政権から麻生政権にバトンタッチされたが、毒をもって毒を制する処方がもたらした生活苦と将来への不安に息も絶え絶えになった国民は、一縷(いちる; ①細い糸筋の意、転じて、②わずかにつながっているさま、を表すことば)の希望を託して、政権交代を選択した。だが民主党がその期待に応えようとしたのは鳩山時代のごく初期のあいだだけであった。







つづく



「社会保障と税の一体改革」という新自由主義ドミノ/ 二宮厚美・著/ 「経済」2012年12月号より








Interlude

2011年08月21日 | Weblog






更新を放置しているあいだに、多国籍企業の魔の手が伸びてきていた…。










毎日新聞コラム 「経済観測」 8月前半分

2011年08月21日 | Weblog

 


■「なでしこJAPAN」競争は善である=経営共創基盤CEO・冨山和彦

 


 上の世代がやれ格差だ、競争社会が日本をダメにしたと寝言を言っている間に、彼女たちはガチンコのグローバル競争に身を置き続け、何度も苦杯をなめながらも、ついに世界の頂点を極めた。それも体格面での劣勢を、チームワークとテクニックと粘り強さではね返すという、実に日本的なスタイルで。

 

 東日本大震災で見せた日本人の共助精神を曲解して、またぞろ「日本はやはり共同体型の社会で競争原理、市場原理はなじまない」という論調が幅をきかせ始めている。

 

 日本の企業や組織が共同体型で、チーム戦に強いという事に私は全く異論がない。世界で戦っていくには、まさにその遺伝子を大切にしない限り、ビジネスであれスポーツであれ、日本のプレーヤーに勝機はない。しかしそういう集団特性と、グローバルな競争原理をどこまで持ち込むかは全く別問題だ。

 

 人間は弱い生き物だ。だからこそ競争のプレッシャーがなければ、そして世界の多様な文化や社会から刺激を受けなければ、努力も成長もできない。弱いから競争がいけないのではなく、弱いから開かれた競争が必要なのだ。未来を生きる若い世代から、競争に挑み成長する喜びを奪う権利は誰にもない。

 

 「なでしこJAPAN」のメンバーが、逆境の中にありながらプロフェッショナルとして自立し、世界中に活躍の場所を求めていること。チーム内にさまざまな世代、異なる個性の多様性を持っていること。共通の目標に向かって、チームとしての努力を積み重ねてきたこと。そしてグローバル競争に真正面から立ち向かい、厳しい現実に対峙(たいじ)したからこそ、日本的な組織力サッカーを作り上げて勝利したこと。やはり競争があることは善である。

 

 

毎日新聞 2011年8月10日 東京朝刊

 

 


■シーレーン防衛の中国への対抗軸=国際公共政策研究センター理事長・田中直毅

 

 中国の海洋軍拡に歯止めがかからない。南シナ海ではこれが地域紛争要因となった。更には、インド洋にもミャンマーの港を手掛かりに進出する。こうした人民解放軍の膨張主義の背後には、経済安全保障の論理もある。

 

 21世紀に入ってすぐ、中国の国際政治経済関連の研究者との会合があった。そこには解放軍傘下の研究所員も参加していた。彼らは東アジアにおける中国の軍事的関与能力の拡大を当然視した。米軍との抗争を想定していたとは言えないが、近隣アジアの小国への配慮があるとは到底言えなかった。

 

 その時のテーマの一つは、日本の自衛隊の装備充実に関する理由付けの変遷だった。私の論点は次のようなものだった。

 

 東西冷戦が厳しかった時、対潜哨戒機P3Cの大量配備はソ連原潜の所在確定が主要な任務であり、それは米国からの強い要請だった。

 

 しかるに日本国民向けにはシーレーン・オブ・コミュニケーションの確保(シーレーン防衛)を唱えるのが日本政府の対応だった。実際には中東からの原油の輸送路は米第7艦隊によって防衛されていたにもかかわらずである。

 

 近い将来、このことが日本の苦悩につながる可能性がある。中国が中東原油への依存を高めた時、海洋軍拡に当たってシーレーン防衛の論理を持ち出した場合、これを批判する日本の論理付けはどうなるのか。

 

 主権国家の安全保障の見地から、近隣アジア諸国に対して高飛車な中国への批判は可能だ。しかし中国の姿勢を変えさせるためには、日本は総合的かつ一貫した世界への関与姿勢を確立することがまず前提となる。これを欠けば、中国への日本の対応はさらに追い込まれよう。

 


毎日新聞 2011年8月9日 東京朝刊

 

 

 

 

■米国債格下げの影響=日本総合研究所理事・翁百合

 


 8月5日、米国債の格付けが史上初めて引き下げられた。格下げしたのは大手格付け会社のS&Pで、この格下げは欧州の金融不安と相まって、国際金融市場の不安定性を増大させた。

 

 今回のS&Pの格下げは妥当だろうか。米国には次のような批判的な論調もある。

 

 まず、米国債は世界で最も流動性が高く信認の高い債券であり、格下げの必要はない、実際、他のムーディーズ、フィッチは格付けを据え置いている、というものだ。

 

 また、S&Pなどの格付け会社は、サブプライムローンを担保とする証券化商品に「AAA」、破綻直前までリーマン・ブラザーズを「A」と格付けし、金融市場を混乱に陥れる原因となった。その程度の能力の組織が米国債のリスクを評価する資格があるのか、といった批判も投げかけられている。

 

 マーケットの評価をみても、格下げ後初の営業日だった8日は、10年債価格が大きく上昇したのに対し、株式市場は大幅に値を下げた。このことは、米国債への信認低下よりも、米国の景気後退懸念の高まりに格下げが加わり、財政への縛りが一層高まったことで投資家のリスク回避的な行動が強まり、かえって米国債の値上がりを招いた、と考えるべきだろう。

 

 しかし、さまざまな批判にもかかわらず、今回の格下げは米国政府に対する財政赤字削減への圧力を大きく高めたことは間違いない。確かに、中長期的な財政健全化の取り組みは米国のみならず多くの先進国において不可欠であるが、今回の米国債格下げを契機とした市場の混乱は、金融緩和策も手詰まりの中、先進国の財政健全化と景気回復の両立が難しい綱渡りの状況にあることを改めて示したといえるだろう。

 

 

毎日新聞 2011年8月19日 東京朝刊

 

 

 

 

■「唐突」な政策と政治ダイナミズム=早稲田大教授・深川由起子

 

 今でこそ「自由貿易協定(FTA)先進国」と言われる韓国だが、その出発点は盧武鉉大統領(当時)による「無謀な」米韓FTA交渉だった。

 

 当時の韓国は、基地移転問題などで米国と摩擦が絶えなかった。しかも米韓FTAは政権の断罪する「財閥」系大企業を利する一方、自らの政権基盤であった労組、農業者、中小企業者に負担を強いるとされた。親米派の多い富裕層でさえ「唐突」と見た。

 

 「唐突」な政策が世界貿易機関(WTO)交渉の難航で「正しい政策」となったのは結果論かもしれない。だが、抗議の焼身自殺を図る者が出てもブレなかった大統領の姿勢は官僚たちの粉骨砕身の交渉努力を引き出し、エコノミストたちも根気よく国民への説得に当たった。「唐突」さはプラスに転じた。

 

 対米交渉の合意は「韓国は(日本とは違って)FTAに本気だ」とみた欧州連合(EU)との交渉に活路を開き、近年の投資誘致にもプラスに働いている。リーマン・ショック後のいち早い立ち直りの背景には「唐突」な政策があったのだ。

 

 菅政権が打ち出した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)加盟は同じく「唐突」ではあったが、関税や規制の多い新興国に市場を見いださねばならない時代にあって「正しい政策」である。交渉は既に始まっており、時間的猶予はない。しかし指導者は優先順位を定かにせず、メディアはいたずらに農業部門との対立をあおり、官僚たちは政権の寿命をうかがい、専門家はだんまりを決め込む。こんなことではTPPでなくとも新たな政策は何一つ成立せず、「唐突」な政策に政治的ダイナミズムは求めようもない。「政治主導」とは一体、何なのか--。問いかけだけが重い夏が過ぎて行く。

 


毎日新聞 2011年8月5日 東京朝刊

 

 

 


■コメの先物取引=農業ジャーナリスト・青山浩子

 


 今月8日からコメの先物取引が東京穀物商品取引所(東穀)と関西商品取引所で試験的に始まる。先物取引は江戸時代に始まったが、第二次大戦開戦の年に中止され、72年ぶりの再開となる。

 

 商品先物市場は世界全体ではここ4、5年で出来高が4~5倍に膨らんだが、日本では逆に4分の1~5分の1程度に縮小した。強引な勧誘がトラブルを起こすとして規制が強化され、積極的な顧客勧誘が禁止されたことが大きい。それだけに東穀では「コメという身近な商品が加わり市場に活気が戻れば」と期待している。

 

 農業界では賛否両論があり、農協組織は否定的だ。ここ数年の世界的な穀物相場の高騰は投機筋の穀物市場への流入が要因の一つと言われており、コメの価格が乱高下すれば、生産や流通、農家経営に混乱をきたすと懸念している。

 

 他方、独自で販路を持つ大規模稲作農家や卸売業者は「価格変動のリスクをヘッジできる」と前向きにとらえている。

 

 コメの消費量減少に伴い米価は下がり続けている。先物市場を活用し、自ら価格を決められるという点において生産者には参加するメリットがある。

 

 だが先物市場は、ヘッジを目的とする農業関係者ばかりでなく資産運用をもくろむ投資家が参加してこそ取引が活発になる。多くのプレーヤーが参加し、市場流動性が高まれば、価格の客観性や透明性が高まり、公正な価格形成が実現する。

 

 東穀によると先物取引で農家や流通加工業者など関係者の割合は10~20%にすぎず、残りは投資家だ。多くの投資家を呼び集めることができなければ、農業関係者にとって利用しづらいものになる。どれほどのプレーヤーが参加するのかが成功のカギを握る。

 

 


毎日新聞 2011年8月3日 東京朝刊

 

 


■資源配分における官民格差=国際公共政策研究センター理事長・田中直毅


 パナソニックは先日、子会社、三洋電機の白物家電事業を中国のハイアールグループに売却することを発表した。ハイアールに深い関心を示したのは、三洋電機のトップだった。「意思決定が早く業務実施のテンポも格別だ」との言葉を、02年に両社が業務提携する直前、井植敏会長(当時)から聞いたことを覚えている。ハイアールとの提携によって活性化が生じるのは三洋電機側だとの認識があったのだ。


 今回はパナソニックが経営資源の重点的配分を図るべく重複部分の切り離しを決めた。パナソニックの経営者はどこが挑戦の戦場かを、企業組織の内部に対しても明らかにしたといえよう。また株主に対しては、経営者が今後挑戦を行う分野に関して評価尺度の用意を迫るものだともいえよう。


 自動車に搭載するマイコンで圧倒的なシェアをもつルネサスエレクトロニクスは、自社の中心的業務から外れる音声処理半導体部門を、この分野に強い関心を示す村田製作所に売却することを決めた。東日本大震災によるサプライチェーン(部品供給網)の遮断からの回復過程で、焦点の一つとなったのが、ルネサスのマイコン製造用クリーンルームの修復だった。今後、ルネサスはマイコンに経営資源を集中させるという。


 他方、政府は政策の優先順位が思いつきのように次々と変わる。日本の雇用者数の今後の推移に影響が最も大きいはずのTPP(環太平洋パートナーシップ協定)への参加は、いつの間にか政策課題から消え去ったかのごとくである。


 経営資源であれ、政治資源であれ、限られた資源の活用という視点は、よき統治のためには不可欠のはずだが、日本政府にはこれが不在のようだ。

 

 

毎日新聞 2011年8月2日 東京朝刊


政府デフレ認定 値下げ際限なし

2009年11月21日 | Weblog

 


 政府は20日、日本経済は3年5カ月ぶりに「デフレ」に戻ったと認定した。輸出主導で戦後最長の景気回復を達成した日本だったが、金融危機で米欧の消費が激減すると、設備や人員の余剰が表面化。雇用不安などで消費が低迷し、値下げ競争に対応するため、国内生産拠点の廃止や人員削減に踏み切る企業も増えている。こうした動きが長期化すれば、物価下落が一段の景気悪化を招く「デフレスパイラル」に陥りかねない。【山本明彦、窪田淳、秋本裕子、高橋昌紀】

 


■繊維業、競争・雇用を直撃

 三菱レイヨンは豊橋事業所(愛知県)のポリエステル生産と、大竹事業所(広島県)のアクリル生産を来年3月で終了する。いずれも稼働率が生産能力の半分以下に落ち込んだためだ。両事業所では20~30人の従業員が配転などを迫られる。

 ポリエステルはスーツやシャツ、アクリルはセーターなどに使われる汎用性の高い化学繊維。幹部は「衣料品の価格がここまで下がると、中国製とは勝負にならない」と肩を落とす。同業大手の帝人も10年度末までに松山事業所(愛媛県)のポリエステル生産をタイに移管、契約社員は雇い止めになる見込みだ。

 日本化学繊維協会によると、化繊の国内生産は、中国が世界貿易機関に加盟した01年以降、急速に減り、07年は01年比で28%減少した。この間、中国の生産量は3倍近く増加。ユニクロをはじめ、低価格で勝負する大手スーパーも、人件費の安い中国に縫製などの工程を移管して安い製品を調達したのが要因だ。

 


■百貨店、「高級感」脱ぎ捨て

 昨年来の低価格化の波は、「高級感」「高品質」を売り物にする百貨店を直撃した。衣料品の売り上げは、各社とも前年同月比で2ケタ%以上の減少が1年以上続く。業界全体を危機感が覆う中、松屋銀座(東京都中央区)は年2回のセールで「9800円スーツ」を発売した。素材こそ「国内産ウール」を強調するが、縫製などの工程はすべて中国の委託工場に一括発注してコストを削減した。

 価格政策見直しを始めたそごう・西武の松本隆取締役商品部長も「消費者に受け入れられる価格にするためには、従来の取引先との関係も見直す必要がある」と話す。同社が9月につくった衣料品のプライベートブランド(PB)商品は、従来の百貨店ブランドより4割程度安い価格設定を実現したという。

 従来の取引先でなく、ショッピングセンター向け低価格衣料を手がけるアパレルメーカーと組んだ。同社が持つ中国の200以上の協力工場に大量に製造委託。売れ残った製品を返品する従来の取引方法でなく、すべて買い取ることで原価を大幅に引き下げた。

 


■飲食業、機械が接客代行

 外食激戦地の東京・新宿。飲み物、料理、デザートなど約170種類のメニューすべてを270円に統一して客足を伸ばすチェーン居酒屋「金の蔵Jr・」の成功の秘訣(ひけつ)は徹底したコスト管理にある。

 座席数が約350ある広い店内で、客はテーブルごとに置かれたタッチパネル式の画面を操作して注文する。メニューだけでなく、「灰皿交換」「取り皿」などの指示も厨房(ちゅうぼう)の端末に伝わり、客が大声で店員を呼ぶ姿はない。新宿西口大ガード店の相馬貴彰店長は「以前は客の注文を聞くサービス係がピークの時間帯で4人いたが、今は2人」と話す。

 10円を争う価格競争が続く都心部の牛丼チェーンでは、人件費の多くを占めるアルバイト店員の時給を抑えるため、接客担当の大半が外国人留学生という光景も一般的だ。従業員の出入りが激しい外食産業も、短期雇用の受け皿だった好景気時代とは様相が一変している。

 


■高まる悪循環(スパイラル)の危険

 物価が下落すれば、給料や年金で買えるモノやサービスが増え、暮らしが楽になるように見える。しかし、価格競争にあえぐ企業が賃金や雇用の削減に踏み切れば、家計は圧迫されて消費を絞り、景気をさらに悪化させる「デフレスパイラル」に陥って、日本経済が「二番底」に沈む危険性が出てくる。

 日本の7~9月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は年率換算で4・8%と2期連続のプラス成長を達成。昨秋のリーマン・ショック直後の10%超の大幅なマイナス成長から持ち直してきた。だが、消費者物価はマイナスが続き、物価動向を反映した名目成長率は7~9月期まで6期連続マイナスと水面下に沈んだままだ。

 リーマン・ショックで米欧も消費が低迷し、消費者物価は下落気味だ。だが、9月の消費者物価指数は、米国が前年同月比マイナス1・3%、ユーロ圏がマイナス0・3%にとどまっているのに対し、日本はマイナス2・3%と下落が激しい。

 デフレが米欧より深刻なのは、日本が輸出依存型の経済だからだと指摘される。また、非正規社員の増加で景気悪化が雇用・賃金の削減に直結しやすく、これが消費低迷を増幅し、物価下落に拍車をかけている。第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「日本はデフレが構造問題化しており、簡単に解消しない」と分析する。

 今回のデフレ局面で日銀は11年度まで3年連続で物価下落が続くと予測しており、デフレが長期化すると、景気回復の重しになりかねない。中国など新興国頼みで景気が持ち直してきたが、国内は景気対策による消費の下支え効果が息切れする懸念がある。

 鳩山内閣は景気腰折れ回避に向けた09年度2次補正予算の編成に着手する方針だが、税収低迷で財源は限られ、需要喚起には力不足は否めない。超低金利政策を実施している日銀も追加の金融緩和には慎重な姿勢で、デフレ克服の道筋は見えていない。

 

 
毎日新聞 2009年11月21日 東京朝刊

 


出口見えぬ消費不況 構造変化、対応策なく

2009年11月16日 | Weblog

 


 消費不況の深刻化と激しい値下げ競争で、小売業界の厳冬期が続いている。8月中間決算は、百貨店大手3社が大幅な減収減益で、イトーヨーカ堂やダイエーなど大手スーパーは営業赤字に陥った。9月の全国百貨店売上高も現行の統計では過去最大の下げ幅を記録、売り上げ減には歯止めがかかっていない。さらに、顧客囲い込みのための値下げ競争が小売り各社の収益を圧迫しており、苦境からの出口はまったく見えない。【宮崎泰宏】

 

■行き着く先はタダ

 21日夕のダイエーいちかわコルトンプラザ店(千葉県市川市)。夕食の買い物客でにぎわう2階食品売り場と対照的に、3階衣料品売り場の客は数えるほどだが、衣料品売り場の担当者は「値段が下がったジーンズは50歳代にも客層が広がり、週に120~130本売れる」と話す。

 大手スーパーの共通課題は赤字続きの衣料品部門の立て直し。得意分野だった肌着や下着もユニクロなどに客が流れ、9月の全国スーパーの衣料品部門の売上高は前年同月比6・1%減。客足回復のきっかけにと、各社が春から投入したのが格安ジーンズだった。

 ユニクロの兄弟ブランド「ジーユー」の990円に対抗し、ダイエーやイオン、ヨーカ堂などが800~900円台のジーンズを投入。「目標の年間5万本完売は確実」(イトーヨーカ堂)と売れ行きは好調だが、「価格競争の行き着く先はタダにするしかない」(ユニクロを展開する柳井正ファーストリテイリング社長)というのが厳しい現実だ。

 ジーンズに続き、値下げ競争の舞台になっているのが紳士服。大手紳士服量販店だけでなく、スーパーでも西友が1着5000円、ダイエーが2着1万4800円という安価なスーツを販売し、低価格化に拍車をかける。

 ウール市況はここ数年低迷し、スーツの価格競争を続ける小売り各社の追い風になってきたが、「中国などがまとまった買いを入れ反転傾向にある」(丸紅)という。秋冬もの衣料やスーツなどに使われる豪州産ウールの市況は先週、シドニー市場で前週比2%弱の上昇に転じた。だが、価格競争が続く中、原材料費上昇の転嫁は難しく、ダイエー幹部は「利益なき消耗戦をさらに強いられかねない」とため息を漏らす。

 

■落ち込み幅拡大も

 三越日本橋本店(前年比15・2%減)▽西武池袋本店(10・0%減)▽銀座松坂屋(29・9%減)▽日本橋高島屋(17・5%減)▽松屋銀座(14・8%減)。先週末、百貨店各社に届いた今月の21日までの店舗別売上高速報の実績値に業界幹部は衝撃を受けた。共通イベントなど百貨店に目を向けてもらう新たな取り組みを実施してはいるものの、落ち込み幅は広がっている。

 大丸や松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングの奥田務社長は13日の会見で「今の状況があと2年続いたら大変な状況になる」と危機感をあらわにした。「今回の不況で、日本の消費構造は完全に欧米型の『身の丈スタイル』に変わった。景気が回復しても、もう元の消費構造には戻らない」と強調する奥田社長だが、対応策は「頭を振り絞って考えているところだ」と明言できない状況だ。

 

■値下げ競争には追随せず--高島屋・鈴木弘治社長に聞く

 高島屋の鈴木弘治社長は毎日新聞の取材に応じ、「(物価下落と実体経済の縮小が相互に働き合って進む)デフレスパイラルのようだ」と足元の消費環境を分析。「低価格化を追求するのではなくサービスを含めた品ぞろえを充実させ、顧客をつなぎ止めたい」と語り、大手スーパーによる値下げ競争などの動きには追随しない考えを示した。【聞き手・宮崎泰宏】

 

 --8月中間決算は百貨店各社が大幅な減益になりました。

 ◆リーマン・ショックから1年過ぎたが、個人消費はさらに悪くなっている。百貨店だけではない。大型スーパーでは商品単価が下がって売り上げが増えず、利益も出ないデフレスパイラルのような状況に陥っている。

 

 --百貨店離れが進む中、顧客をどう取り戻しますか。

 ◆百貨店は商品の間口が広く、豊富な品ぞろえができなければ存在価値がない。(売れ筋商品に絞る)「ユニクロ」のような専門店を目指したら自殺行為。取引先とともに品質を維持しながら価格を下げる努力は続けないといけないが、値段だけで勝負することはできない。あくまで品質と価格のバランスだ。

 

 --収益を確保するために、どういう手を打ちますか。

 ◆売り上げ確保の努力は当然だが、コスト削減を進めないといけない。人件費も広告宣伝も例外ではないが、売り上げ減につながっては元も子もない。経営資源の組み替えを相当クリエーティブにやらないといけない。

 

 --将来の百貨店像をどう考えますか。

 ◆一部で淘汰(とうた)は避けられないが、百貨店がなくなることはない。来店の動機を増やすこと。地方店では行政機関や病院と同居することも必要。都心店ではもっと輸入商品を増やしたり、催し物の魅力を高め、「大人の遊び場」にしないといけない。単に物を売るだけではなく、「健康」や「環境」に着目したサービスの充実も考えている。間口を広げて少量で品ぞろえすることが百貨店の特徴付けにつながっていく。


 
毎日新聞 2009年10月25日 東京朝刊