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著作権とキャラクター

2008-10-08 18:33:55 | Weblog
→元URL(社団法人 著作権情報センター)

Q.
よく「商品化権」という言葉を耳にしますが、著作権とはどのような関係があるのでしょうか。人の名前やロゴマークなども商品化権の対象になると聞きましたが、こういうものにはどんな権利が関係しているのでしょう。

A.
商品にテレビやマンガで人気の登場人物の絵が描かれていたり、著名人の氏名や有名ブランドのロゴマークが入っていたりすると、その商品を購入しようとする者の注意を惹き、販売促進に大きな力を発揮するといわれます。

このようなテレビやマンガの登場人物の姿や著名人の氏名などは「キャラクター」と呼ばれる場合がありますが、「商品化権」や「マーチャンダイジング」とは、このようなキャラクターを商品の販売やサービスの提供のために利用することに関する財産権の一種である、ということができるでしょう。

ただし、商品化権という権利が、特定の法律に明記されているわけではなく、キャラクターの種類や利用方法などによって、著作権法や商標法、不正競争防止法などの各種の法律が適用されて、保護されているのです。実務上の慣用語ということになりましょう。

1.さまざまなキャラクター

まずキャラクターといっても、様々なものが含まれます。

代表的なものは、マンガ、テレビ、小説、脚本などに登場する架空の人物や動物などでしょう。「ドラえもん」や「マリオ」などの場合には、その容貌や姿態などが視覚的に表現されています(ファンシフル・キャラクター、Fanciful Character)。これに対して、「シャーロック・ホームズ」のように、視覚的な表現はなく、もっぱら言葉の上で表現されたもの(フィクショナル・キャラクター、Fictional Character)もあります。この他にも、実在する人物や団体の氏名、容貌、マークなどあるいは商品やサービスなどを表す名称やマークなどもキャラクターとして利用される場合があります。


2.著作権とキャラクター

著作権によって保護を受ける場合には利用されるキャラクターが著作物に該当することが必要です。ファンシフル・キャラクターの場合には、その容貌や姿態などが著作物として保護されると考えられます。つまり、マンガは、言語の著作物(ストーリーやせりふの部分)と美術の著作物(絵の部分)の両面を有すると考えられます(東京高裁平成4年5月14日判決など)が、登場人物等の容貌や姿態などの利用はその美術の著作物の部分を利用していると考えられ、著作権が及ぶのです。

マンガのキャラクターの利用についてはじめて著作権の侵害を認めた「サザエさん事件」(東京地裁昭和51年5月26日判決)では、マンガ「サザエさん」の特定のコマに表現された登場人物の特定の容貌、姿態などの利用に当たらなくても、連載マンガの中で恒久的にそれぞれの登場人物に与えられた容貌、姿態などに照らして、当該登場人物と認められれば、著作権侵害にあたると判断しています。

また、テレビ・映画の登場人物なども視覚的に表現されており、その視覚的表現をとらえて著作権が及ぶとされています(ただし、美術の著作物にあたるアニメーションの原画の著作権を根拠にする場合、映画の著作権を根拠にする場合など、ケースによって論拠は異なりますが。)。

いずれにしても、マンガやテレビ・映画の登場人物等の容貌や姿態などを商品化に利用する場合には著作権が及ぶとすることは、既に確立した判例であると言えましょう。テレビゲームに登場するキャラクターについても同様に考えられますし、最初から商品化のために創作されたキャラクターについても著作権による保護があります。ただし、キャラクターの名前は、著作物とは言えないため、それ自体は著作権による保護はありません。

なお、マンガなどのキャラクターの著作権は、そのマンガの著作権とは別個独立のものではなく、あくまでもマンガなどの著作権に基づくものですから、保護期間もそのキャラクターが登場するマンガなどの著作権の保護期間によって判断することになります。ただ、連載マンガや連続アニメの場合には次々に新しいマンガやアニメが創作されますから、そのキャラクターの保護期間をどう考えるのかについては様々な解釈がありました。例えば、「ポパイ」は1929年に新聞に掲載されて以来描き続けられていますが、ポパイのキャラクターだけを利用する場合、マンガが描き続けられているから保護期間は満了していないという判例もありましたが、平成9年7月17日の最高裁判決では連載マンガの登場人物が変わらない場合には最初に掲載されたマンガで表現されたキャラクターを以後のマンガでは利用しているにすぎないとして、キャラクターの保護期間は最初に掲載されたマンガの著作権の保護期間によるという判断を示しました。この判決は法人著作に当たるケースで公表時から保護期間を起算する場合ですが、著作者の死亡時から起算する場合でも連載マンガにおけるキャラクターの位置づけについては同様に考えられますから、元の著作者は死亡したものの同一のキャラクターを用いてマンガやアニメが描き続けられている場合でもそのキャラクターだけの利用に関する限りは元の著作者の死後50年と考えるのが適切ではないかと思います。

これに対して、フィクショナル・キャラクターの場合には、視覚的表現を伴うわけではありませんから、美術の著作物としてとらえるわけにはいきません。また、登場人物等の性格や役割などは著作物の創作においては大きな比重を占めますが、それ自体は「アイデア」の領域に属するもので「表現」を保護する著作権の対象にはなり得ないと考えられます。したがって、過去に創作された著名な小説の主人公のキャラクターを用いて全く新しい作品を創作したとしても、オリジナルの作品の著作権が及ぶとは考えにくいことになります。ただし、オリジナル作品のストーリーなどを使用するなど翻案に当たる場合は別で、この場合には著作権(翻案権)が及びます。


3.肖像権、商標権などとの関係

著作権以外の権利でキャラクターの利用と関係する権利を簡単にみてみましょう。

最初に、実在する著名な人物の肖像や氏名を商品化する場合には肖像権の問題があります。肖像権は、特にそれを明記した法律があるわけではなく、判例を通じて確立されてきた権利で、まだ不明確な点も多く残されていますが、少なくとも生存する人物の肖像や氏名を利用する場合には肖像権の処理が必要となります。最近は、「パブリシティ(Publicity)の権利」と呼ばれることもあります。テレビ・映画のキャラクターで俳優が演じている場合には、映画の著作権とその俳優の肖像権の両方に注意しなければなりません。

また、商品やサービスに付された著名なブランド・マークなどを利用する場合には、商標権が関係する場合があります。商標権は特許庁への登録が必要ですが、マンガのキャラクターの名前や有名人の名前についても特定の商品等を指定して商標として登録する場合も考えられなくはありません。

商標権は登録が必要で、また、対象となる商品等が一定の範囲で指定されていますが、商標権が及ばない場合であっても、既に広く知られた商品や営業の表示と混同を起こさせるような商品等の表示を用いる場合には不正競争防止法によって差止めや損害賠償の対象となる場合もあります。広く知られた会社や団体の名称やマーク、キャラクターの名称、商品や営業の名称やマークなどは、関係者の努力によって築き上げられた信用や名声を表すものであり、それを無断で利用することは他人の信用などに対するただ乗り(フリーライド)であり、不公正な競争手段であると考えられています。この考え方をキャラクターの保護に適用することも可能なわけで、「ディズニー」や「ミッキー・マウス」という名称を利用する場合などは、著作権の問題にはならなくても、不正競争防止法の問題となる可能性があります。

このように、キャラクターといっても多様であり、その種類や利用方法によって適用される法律も異なりますから、キャラクターの利用に当たっては多角的に検討することが必要です。

社団法人 著作権情報センター