167。
牛関係のお仕事の人なら、
この数字を見て”耳標”だな。とピンと来るでしょう。
耳標、耳についてる札で牛さんの整理番号です。
ホルスタインの名前はとてつもなく長い。
167ちゃんじゃないんだけど、
今記憶にある他の牛の名前は・・
○○○・サザンクロス・タイタン・マリナー
(↑うちの親方の名前が入ります)
どの牛も、これくらい長いかなー。
167ちゃんと、お別れする事になりました。
家畜の死の話です。
よろしければ反転して読んでください。
167は牛舎の南側の列の一番奥の牛。
とても食いしん坊で隣の牛の餌を鼻で寄せて、
自分でも届かないようなトコに投げ飛ばす。
それを僕に見つかるたびに鼻パンチされて怒られる。
そんな彼女がある日突然餌を食べなくなった。
熱も40度近くある。
獣医さんに見てもらうと、ケトーシスとのこと。
ケトーシスってのは何らかの原因で、
食べ物からエネルギーを得る事が出来なくなり、
体内の脂肪からエネルギーを消費しようとするんだけど、
肝臓が普段と違う燃料がくるとパニックになるんだってさ。
要は肝臓の病気、らしい。(詳しい方読んでたら教えてくださいっっ。)
産後にカルシウムとかミネラル不足だと立ち上がれずに
餌が食べれなくなるから、よく発病しちゃうみたい。
けど、、、167ちゃんは、ちょうどお産前の搾乳休憩期、
乾乳期に入ったばかりだったから”?”ですよ。
ケトーシスって言われた次の日だったかな。
熱は上がる一方で41度を超えるようになった。
おっぱいは張ってなかったんだけど、
検査薬で調べてみたら乳房炎になっていた。
獣医さんは、乳房炎の菌が体内に回っているんでしょうね。と。
臓器が次々にやられてる可能性が高いとのこと。
目は半開き。口からはヨダレが垂れ流し。
脈はとんでもなく速くて。。。
首に針刺して点滴するから、ロープで首を固定。
相当しんどいはずなのに必死で抵抗する。
ロープの先を引っ張るように言われて、
引っ張りながら鼻先をなでなで。
手に荒くて熱い鼻息がかかる。目線の高さも同じ。
充血した目を爛々とさせて僕を睨む。
『こんなことで死ぬんじゃねーぞー!』
お父さんがそう言った。
最近、ちょいと滅入ってた僕。
昨日投稿した”答”ってのはこの事なんだけどね。
苦しみもだえながら一生懸命生きてる167と、
お父さんの言葉、これがきっかけで、
最後の最後は自分自身で答が出せました。
今、芋の収穫前でその他の畑仕事の追い込み時。
牧草片付けたり、農薬散布したり、芋の準備したり。
だから僕は家の近くの畑で雑用をしながら、
獣医さんが来た時のお手伝いを任された。
毎日、毎日、彼女は僕を睨んだ。
今朝。
今思えば。笑っていたのかも。
すっかり痩せてしわだらけになった顔。
抵抗するチカラももう無くなったみたいで。
耳はぺったんこに垂れて牛っぽくない。
鼻をなでると目を細めた。
長いまつげを伏せて、ちょっとだけ首が伸びた。
坊が気持ちいいよーってやるのと同じようにね。
さっき。
お父さんが牛舎の外の電灯をつけて何かしていたので、
近寄ってみると・・・
『こんなとこで死なれても困るべ。』
・・・・・。
『体温低いんだ。もうだめだべ。』
・・。
『外出すから。押してくれ。』
『もう、だめなんだ。』
やっと出た言葉は、それだけだった。
彼女がいるのは牛舎の奥。
扉の側だけど死んじゃった時は、
ユニーク(よくトラックについてるちっちゃいクレーンね。)で
ひっぱって持ち上げて荷台に乗せるから、
なるべく牛の最期は牛舎の外にしているようです。
167にモクシをかけてお父さんが引っ張る。
僕はおしりを叩きながら押す。
骨がゴツゴツしていて。
あれだけ熱かったカラダは冷えていた。
牛舎の外の堆肥置き場の横に連れていく途中、
お父さんも僕も出た言葉は同じだった。
『がんばれ、がんばれ。』
逝くのにがんばれ、おかしいよね。
明日の芋の収穫に使うおっきなコンテナに167をつないだ。
お父さんは僕に麦稈(寝藁)を持ってくるように言った。
牛舎の扉の前でお兄ちゃんが167を見ていた。
『体温低いんだってさ。』
そう話しかけても無言だった。
こゆ時の無言、はきっと無口だからじゃなくて、
言葉が見つからないから、なんだろうな。
今晩、きっと死んじゃう。
明日の朝生きていても。
獣医さんに薬殺してもらう。
お疲れ様。167ちゃん。
今まで美味しいお乳をありがとう。
いつもプンプン怒ってごめんね。
天国にはきっと沢山大好きな牧草があるよ。
いーっぱい食べて、ゆっくり休んでね。
お産はベテランさんだから一人でも大丈夫だよね。
こっちの世界だと赤ちゃんと一緒に暮らせないんだ。
そっちで沢山愛してあげてね。
君のような立派な親牛に育ててあげてね。
乳房炎は人間のせいです。
最近めっきり搾乳の仕事をしていません。
訳あって詳しくは書けないんだけどね。
次の牧場では、牛を大切に扱う為の搾乳技術を身につけたい。
切に願ってます。もう淘汰は本当に無くしたい。
今夜は星が綺麗で良かった。
本当に、良かった。
牛関係のお仕事の人なら、
この数字を見て”耳標”だな。とピンと来るでしょう。
耳標、耳についてる札で牛さんの整理番号です。
ホルスタインの名前はとてつもなく長い。
167ちゃんじゃないんだけど、
今記憶にある他の牛の名前は・・
○○○・サザンクロス・タイタン・マリナー
(↑うちの親方の名前が入ります)
どの牛も、これくらい長いかなー。
167ちゃんと、お別れする事になりました。
家畜の死の話です。
よろしければ反転して読んでください。
167は牛舎の南側の列の一番奥の牛。
とても食いしん坊で隣の牛の餌を鼻で寄せて、
自分でも届かないようなトコに投げ飛ばす。
それを僕に見つかるたびに鼻パンチされて怒られる。
そんな彼女がある日突然餌を食べなくなった。
熱も40度近くある。
獣医さんに見てもらうと、ケトーシスとのこと。
ケトーシスってのは何らかの原因で、
食べ物からエネルギーを得る事が出来なくなり、
体内の脂肪からエネルギーを消費しようとするんだけど、
肝臓が普段と違う燃料がくるとパニックになるんだってさ。
要は肝臓の病気、らしい。(詳しい方読んでたら教えてくださいっっ。)
産後にカルシウムとかミネラル不足だと立ち上がれずに
餌が食べれなくなるから、よく発病しちゃうみたい。
けど、、、167ちゃんは、ちょうどお産前の搾乳休憩期、
乾乳期に入ったばかりだったから”?”ですよ。
ケトーシスって言われた次の日だったかな。
熱は上がる一方で41度を超えるようになった。
おっぱいは張ってなかったんだけど、
検査薬で調べてみたら乳房炎になっていた。
獣医さんは、乳房炎の菌が体内に回っているんでしょうね。と。
臓器が次々にやられてる可能性が高いとのこと。
目は半開き。口からはヨダレが垂れ流し。
脈はとんでもなく速くて。。。
首に針刺して点滴するから、ロープで首を固定。
相当しんどいはずなのに必死で抵抗する。
ロープの先を引っ張るように言われて、
引っ張りながら鼻先をなでなで。
手に荒くて熱い鼻息がかかる。目線の高さも同じ。
充血した目を爛々とさせて僕を睨む。
『こんなことで死ぬんじゃねーぞー!』
お父さんがそう言った。
最近、ちょいと滅入ってた僕。
昨日投稿した”答”ってのはこの事なんだけどね。
苦しみもだえながら一生懸命生きてる167と、
お父さんの言葉、これがきっかけで、
最後の最後は自分自身で答が出せました。
今、芋の収穫前でその他の畑仕事の追い込み時。
牧草片付けたり、農薬散布したり、芋の準備したり。
だから僕は家の近くの畑で雑用をしながら、
獣医さんが来た時のお手伝いを任された。
毎日、毎日、彼女は僕を睨んだ。
今朝。
今思えば。笑っていたのかも。
すっかり痩せてしわだらけになった顔。
抵抗するチカラももう無くなったみたいで。
耳はぺったんこに垂れて牛っぽくない。
鼻をなでると目を細めた。
長いまつげを伏せて、ちょっとだけ首が伸びた。
坊が気持ちいいよーってやるのと同じようにね。
さっき。
お父さんが牛舎の外の電灯をつけて何かしていたので、
近寄ってみると・・・
『こんなとこで死なれても困るべ。』
・・・・・。
『体温低いんだ。もうだめだべ。』
・・。
『外出すから。押してくれ。』
『もう、だめなんだ。』
やっと出た言葉は、それだけだった。
彼女がいるのは牛舎の奥。
扉の側だけど死んじゃった時は、
ユニーク(よくトラックについてるちっちゃいクレーンね。)で
ひっぱって持ち上げて荷台に乗せるから、
なるべく牛の最期は牛舎の外にしているようです。
167にモクシをかけてお父さんが引っ張る。
僕はおしりを叩きながら押す。
骨がゴツゴツしていて。
あれだけ熱かったカラダは冷えていた。
牛舎の外の堆肥置き場の横に連れていく途中、
お父さんも僕も出た言葉は同じだった。
『がんばれ、がんばれ。』
逝くのにがんばれ、おかしいよね。
明日の芋の収穫に使うおっきなコンテナに167をつないだ。
お父さんは僕に麦稈(寝藁)を持ってくるように言った。
牛舎の扉の前でお兄ちゃんが167を見ていた。
『体温低いんだってさ。』
そう話しかけても無言だった。
こゆ時の無言、はきっと無口だからじゃなくて、
言葉が見つからないから、なんだろうな。
今晩、きっと死んじゃう。
明日の朝生きていても。
獣医さんに薬殺してもらう。
お疲れ様。167ちゃん。
今まで美味しいお乳をありがとう。
いつもプンプン怒ってごめんね。
天国にはきっと沢山大好きな牧草があるよ。
いーっぱい食べて、ゆっくり休んでね。
お産はベテランさんだから一人でも大丈夫だよね。
こっちの世界だと赤ちゃんと一緒に暮らせないんだ。
そっちで沢山愛してあげてね。
君のような立派な親牛に育ててあげてね。
乳房炎は人間のせいです。
最近めっきり搾乳の仕事をしていません。
訳あって詳しくは書けないんだけどね。
次の牧場では、牛を大切に扱う為の搾乳技術を身につけたい。
切に願ってます。もう淘汰は本当に無くしたい。
今夜は星が綺麗で良かった。
本当に、良かった。