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宇宙な幌馬車隊チックの大作戦が好きだ。

カーク船長に、あひみての のちのこころにくらぶれば むかしはものをおもわざりけり の心境で描き殴っているおばかブログ。

このカテゴリー“ツッコミのぺぇじ”のご案内

2028-10-29 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
このページは古炎のTOS関連の感想の置き場です。

2010.8.29より、検索ロボット対策として、最新14編のみここに置き、あとは"【過去ログ】ツッコミ"のカテゴリーに移し、パスワード制を導入しました。もし、ここに載っている以外の駄文を見たいというありがたい方がおいでであれば、コチラをクリックして、パスワードをご入力の上、ご覧下さい。パスワードは左袖<GUIDE>をご覧下さい。ご不便をおかけして本当に申し訳ありません。

宇宙大作戦 2009 シリーズ 彼方を超えて の感想

2016-11-18 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
イラスト、別人28号過ぎて申し訳ないです…一応カークとジェイラちゃんのつもり…(涙)

さて。
リブート3部作の中で、一番面白かったです。
違う時間軸の、全く別人のカークとして、素直に楽しめました。

さらばの冒頭の古代くんのように自分のアイデンティティの危機に陥るカークに始まって、スターシップトゥルーパーズな展開からのジェネレーションズのごときエンタープライズの破壊っぷりに、永遠にのデザリアムが鏡像世界に存在したような圧倒的なスケールの宇宙基地が登場し、実は敵の大ボスがジャミラだったというまさかの展開と、ダークサイドからホワイトアウトしてきたら女性になっていたダースモールみたいなステキで可愛いヒロインが、チャーリーと大活躍して、ついにカークが自分の立ち位置を確信したところで、昇進を止めて30代半ばにして、人生は楽しいと悟って終わるという、なかなか盛りだくさんな内容でした。

オリジナルのタイムラインにある作品を知っていればより楽しめ、知らなくても大冒険活劇として十分楽しめる内容だったと思います。

ただ、ここまでキャラクターの性格、生い立ちを変えてしまうなら、オリジナルにあったようなカークとスポックの友情には敢えて拘らなくても良かった気がします。カークが繰り返しスポックに「お前がいないと俺はダメだ」というセリフを言うのですが、とてつもなく唐突に思えてしまいます。
そして、オリジナルのスポックとマインドメルドしたはずな割に、カークはオリジナルのスポックに対してあまりにも淡々としすぎており、ただ、違う世界の自分であるというだけのスポックの方がよりオリジナルのスポックに惹かれているのも、中の人の事情が反映されすぎていているのか、ちょっと違う気がしました。

そして、イントゥダークネスに続いて今回も敵がただの地球人であったというのも、仕掛けとしてはドラマチックではあるのですが、やはりスケールが小さくなってしまったかな、と思いました。元々のスタートレックが未知の知性とのファーストコンタクトの中で、現実の人間社会が抱えている様々な問題を扱っていったのに対して、リブートのシリーズは内輪もめ感がどうしても否めません。
とても面白かったのですが、以上の点から、ワタシは他のファンの方のように諸手を上げて賛美するには至りませんでした。

あとは、日本のパラ山の宣伝があまりにも酷過ぎて、そちらに腹が立ちます。
今回のBEYONDは、本当に映画としてかなり出来もよく、日本人受けしそうな内容がてんこもりでした。
公開時期が世界最遅でも、十分一般のひとを呼び込めた内容だったと思うし、それだけの力のある良い映画なのに、全くその良さを生かそうとしないばかりか、理解もしていなかったように思います。
前回よりはまだマシですが、とんちんかんなタイアップに、関係者しか呼ばない試写会、本当に作品を愛して、一番の宣伝部隊として利用できるファンは置き去りな対応に、もう馬鹿じゃないかというか、バカというのもはばかられるような無能ぶり。
これじゃどんな作品だってヒットするわけがないと思います。

リブートシリーズの中で、初めて面白いよ、と人に勧められる内容だっただけに本当にそれが悔しく、残念でなりません。
せっかくの50周年記念の年だったのになぁ。酷過ぎだよ、日本のパラ山。

あと、シャトファンとして、作中で彼の頭髪サイボーグなことをネタにするのも正直どうかと思います。カーク船長とシャトさまは別人だし、TOSのカーク船長の頭髪は一応天然毛なんだから!!(苦笑)

宇宙大作戦ってどんなもの?を考えてみた。

2016-03-10 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
去年、とあるギャラリーでイラストのグループ展をした時に考えていた「宇宙大作戦」に関する草稿が出てきたのでサルベージ。
データ的な部分が未完成のままだけど、まあ、これはこれでいいかなっと。

宇宙大作戦 (原題 STAR TREK) とは、昭和42年 月から、昭和 年 月まで日本で放送されたアメリカ制作の本格的なSFテレビドラマの日本語吹き替え作品である。

当時の日本では、様々な外国製のテレビドラマが輸入され放送されたが、まだまだサイエンスフィクションという概念は一般的ではなく、毎回 ワープ など今では誰もが知っている言葉の用語解説なども日本オリジナルとして付け加えられていた。
また、初回放送当時は主役の吹き替えの矢島正明氏によるナレーションが入った日本独自のオープニングもあった。

オリジナルは、ベトナム戦争、東西冷戦による宇宙開発競争の最中に、プロデューサー 、ジーン・ロッデンベリーが、大人の鑑賞に耐えられる本格的なサイエンスフィクションとして作り上げた、アメリカでは伝説的なテレビ番組のひとつ。
脚本もSF界を代表するような錚々たる作家が名を連ね、使われた小道具一つ一つも斬新なデザインが施されており、現代で日常と化した携帯電話や、タブレット端末、カード型の記憶媒体など、全ての原型がここにあるとさえ言われているほど。
カラー放送が開始されたばかりの黎明期に、毎週のテレビ放送で制作できる特撮技術の限界に挑んだ画期的作品と言えるかもしれない。一説には、その特撮にかかる費用が嵩み、結果的に僅か3シーズンで打ち切りにならざるを得なかったと言われている。

当時のアメリカという国が抱える様々な社会への問題提起をしつつも、人類の希望に満ちた理想的な未来を描いている。
コスチュームをはじめ、画面がやたらカラフルなのは、モノクロフィルムからカラーにようやっと切り替わったばかりであり、カラーであることをより鮮明にアピールするための意味もあったと言う。
また、この宇宙大作戦は、劇場映画と同じ64mmフィルムで撮影されていて、今のハイクオリティなデジタル画像に変換しても十分に鑑賞に耐えうるクオリティを持っている。近年デジタルリマスター版が制作、放送されている。

ある意味主役と言える宇宙船U.S.S.エンタープライズ号は、現在スミソニアン航空博物館に展示されている全長 の大型モデルと、 の小型モデルの二つが作られている。主要なシーンはほぼこの大きなものが使われているのだが、制作費の都合なのか、第二船体の向かって左側面は未完成のまま。正面からのショットをよく見ると、左右のバランスが微妙に違うのが確認できる。また、この二つのモデルは、エンジンナセルの後部の形が違うため、シーンによってエンタープライズ号の形が実は違っていたりする。
経費削減のため、エンタープライズ号が周回軌道を回る惑星は、白黒のボールを一つだけ用意し、あとは様々なフィルムを合成し、毎回違う惑星である演出をしていた。

製作者のジーン・ロッデンベリー氏は、未来の科学技術でロケット噴射はないということで、宇宙船のエンジンなどから火を吹く、という描写は敢えて無くしている。
また、あくまでも未知の生命体の探索、ファーストコンタクトものというテーマもあり、武器や武力的なデザインは極力排されているのも特徴のひとつ。

乗組員がスムースに異星人の惑星と宇宙船とを行き来できる画期的なアイデアである転送装置。人が光の粒子になって別の場所に移動する様は、まさに未来の技術。ほとんどの話で登場する特撮シーン。


【カーク船長を考える 5】スポックのキャラクターの変化とカーク

2015-03-15 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
去る2015年2月27日(日本時間では28日)スポック役のレナード・ニモイさんが亡くなってしまいました。
そのことと、シャトさまとニモイさんのお誕生日が近いということもあって、今回は、カークとスポックというのキャラクターの変化、二人の関係について、色々と考えてみたいと思います。
毎度とりとめもなく意味もなく長いです。

スタートレック=宇宙大作戦 がまだ企画段階だった当初から、ロッデンベリー氏の頭の中には“スポック=異星人と地球人のハーフ”というキャラクターが存在していたようです。実際、ファーストパイロットから存在し続けているキャラクターは、スポックだけです。

スタートレックが生まれた時代、世界は二度の世界大戦を終え、しかし今度は核を軸とした冷戦時代を迎えており、アメリカは泥沼のベトナム戦争中。そして世界のあちこちでは、内戦が続いていました。
二度にわたる世界大戦、ベトナム戦争は、キリスト教の教義を中心とするものの考え方が浸透していたアメリカ社会に大きな影を落とす結果をもたらしました。
それは、『人は神がその姿を模して創った、この世で最高の神の作品であり、神が愛する子羊である』という考え、つまり、人間賛歌への自信喪失、です。人は決して善き存在などではなく、悪しきことを平然と行う悪の存在なのではないか、という自問自答の時代に入ります。
これはワタシが美術史で学んだことの受け売りなんですが、それまで、人は最高に美しい存在として己の姿を描いてきましたが、この時代から首のない姿や醜く歪んだ人体表現など、人の姿がルネッサンスのように神々しく自信に満ちて描かれることが無くなっています。
つまり、これまでの戦争とは大きく違った、世界を根本から変えてしまうほどの大きな力を得た人類は、それに見合う善の心を持ち合わせていないのではないか、自分たちの存在は果たして神から愛されていた存在だったのかという、自問自答と葛藤の時代に、スタートレックは、それでも人類は善の存在であって欲しいと言うロッデンベリー氏の願いとともに生み出された物語だと思っています。

当時のアメリカのテレビ業界では、社会で日々起こる様々な問題、事件、それを正面切って訴えることは難しく、しかし、ひとたびSFというフィクションにしてしまえば、いとも容易く人々の目に触れさせることができた時代でした。
あの頃頻繁に創られた「アウターリミッツ」や「ミステリーゾーン」などは、そう言った作品の急先鋒でした。
スタートレックも、もちろんそう言った部分を多分に含んでいますが、大きく違うのは、そこに人類という生命に対する絶対的な信頼と人間は素晴らしい存在なんだと言う希望が色濃くあることです。

核の技術が生まれ、宇宙開発時代を迎え、人々は機械化していく社会に突入していく漠然とした不安も抱えていた時代。
人間という感情を持つ生命体が引き起こした恐ろしい戦争、戦争によってもたらされた核技術という大いなる力に対する不安と期待。
資本主義と社会主義の対立。
しかし、物事はすべて対立だけで成り立つのか?対立する事象ははたして、その一方が善でもうひとつが悪だといっていいのか。
勧善懲悪のものの考え方が変わりつつある時代だったと言っても良いと思います。
そんな対立の構図のアンチテーゼとして作り出されたのが、異星人と地球人とのハーフであるスポック、というキャラクターだったと思いますが、当初のスポックのキャラクターは、普通に笑い、怯えたりする、外見こそちょっと違うものの、その内面は人類とはさして違わない存在でした。

ところで、クリストファー・パイク船長の登場するファーストパイロットでは、当時のアメリカでは考えられない斬新な設定をロッデンベリー氏は採用しています。それは、M・リー・ハデック、後のメイジェル・バレット・ロッデンベリーさん演じる、冷静沈着な女性副長=ナンバーワン というキャラクターでした。彼女は非常に有能で、冷静な頼れる副官という設定でした。

繊細な脆さを持ちつつも、勇敢で冷静沈着な大人の男であるパイク船長、
冷静沈着で有能な、美しい容貌を持ちつつもどこか冷たさを感じさせる謎めいた女性副長ナンバーワン、
どこかコケティッシュでセクシーさも持つパイクの秘書コルト
甲羅を経た人間が持つ独特の包容力を持った優しい医療主任ボイス
そして、地球人と異星人とのハーフである若い士官スポック

この5人が当初考えられていたキーパーソンでした。
しかし、女性の社会進出にまだまだ理解のなかった時代、この“ナンバーワン”というキャラクターは時代を先取りしすぎていたのでしょう、テレビ局からあまり良い反応が出ず、次に制作されたセカンドパイロットでは、このナンバーワンのキャラクターと設定がそのまま異星人とのハーフであるスポックというキャラクターが引き継ぐことになったのです。
冷静沈着、どこか謎めいて冷たく近寄りがたい副長スポックが、ここに新たに誕生したわけです。

そして、パイクの固すぎる生真面目な性格設定は、スポックのキャラクターの変化と、シャトさまのキャラクターを得て、勇猛果敢な熱血漢でありながらもそれを上回る理知的で優秀な頭脳を持った明るく前向きな、けれどもどこか繊細さを併せ持つカーク船長に変化していくわけです。

主役であるカークは常に決断を余儀なくされます。
決断は様々な葛藤の上になされていくわけですが、その決断に至るプロセスをより分かりやすくする役割を、このスポックというキャラクターと、ボイスよりもずっと若く設定されることとなった、情に厚い医者、マッコイというキャラクターが担っていくことになったと思います。

スポックはある意味近未来的な機械化文明の象徴的な存在であり、論理的で感情に左右されない一種理想的な人類の象徴でもありますが、そこにニモイさんは、人間味、二つの世界で葛藤し続けるものが持つ優しさや思いやり、無垢さを付け加えることによって、スポックというキャラクターを唯一無二の素晴らしい存在に作り上げていったんだと思います。
そして、スポックがそういった“優しさ”や“思いやり”を持つことを自分に許すきっかけは、カークとの友情だったりするわけです。

カークは決して完全なヒーローではありません。常に悩み、苦しみ、迷い、そして誰よりも孤独です。
その孤独を誰よりも理解し、常に側にいて彼を助ける存在として、スポックとマッコイはどんどんとその存在感を増していくことになっていったと思うんです。それが例えば単発のドラマだったら女性でも良かったのかもしれないというか、女性の方がドラマチックだとは思うのですが、連続ドラマだと、そこで話が終わってしまい、あとは子供が出てくるかホームドラマ化してしまう可能性もあるので、男性同士の友情にシフトしていく方が得策であることは間違いないと思います。

そんなこんなで、あの伝説的とも言うべきトリオの関係が出来上がっていったと思うわけです。
とりわけ、スポックのカークに対する友情、想いは、セカンドパイロットのときから顕著です。
なにしろ、ミッチェルとカークの関係を良く理解した上で、スポックはミッチェルをこのままにはしておけないという決断をしなければならないカークのために、敢えて自分から“ミッチェルは殺すべきだ”と進言し、汚れ役を買って出ているのですから。
どうも、ナンバーワンの秘めたパイク船長への想いまで、スポックは継承してしまったのではないかとワタシは密かに思うのですが、どうですかね?

【カーク船長を考える 4】カークは苦悩する主役の走りだ!

2014-09-11 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
*すんげー長いです

カークは、色々なものに、よくステレオタイプなヒーロー主人公のように言われたり、表現されることが多いのですが、TOSのシリーズを良く知っているファンからすれば、それは分りやすく誇張したパロディであるというのは、共通の認識だと思います。

カークというキャラクターを本気で、横暴で自分勝手、自己顕示欲が強い何の悩みもないただの強くて勇ましいだけの主人公だと思っている方は、それは全くTOSを理解していないか、ちゃんと見ていないか、のどちらかではないかと思います。
カークはまだ若く、未熟で、けれども必至で指揮官たろうとする、実は悩み多き人物であるというのは、特に第1シーズンでは繰り返し繰り返し表現されています。

スタートレックという企画がロッデンベリー氏の頭の中に出来上がり、クリストファー・パイクという主人公が出来上がった時には既に、主人公である若き航宙船の船長のキャラクターの中に、史上初の若さでコンステレーション級の宇宙船の船長に就任した人物の、人の上に立つものとして苦悩する姿が出来上がっていました。

「タロス星の幻怪人」の中のシーンで、パイクが医療主任のドクター、フィリップ・ボイスに自らの不安、苦しみ、悩みを吐露するシーンがあります。
この悩み・苦しみの吐露は、カークにも引き継がれ、同じ様な内容を「宇宙基地SOS」で、ロミュランの宇宙船と中立地帯で対立するシーンで、マッコイに対してその苦しい胸の内を語っています。

以下、ワタシの聞き取り書き出し。
まずは、パイク船長とドクター・ボイスとのやりとり


自室に戻って来たパイク。コミュニケーターで医療主任のボイスを自室まで呼び出すと、イライラした神経が立っている様子でベッドに乱暴に横になる。間もなくしてボイスが大きなカバンを持ってパイクの部屋にやってくる。

パイク
「何だそれは?具合が悪いと言った覚えはないぞ」

ボイス
「遭難信号をキャッチしたとか聞きましたが?」
カバンの中から液体の入った器具を取り出し、何かをビーカーの様なものに注ぐ。

パイク
「そうだ。(ベッドから起き上がり、脇に在る棚のファイルを取り出しながら) しかし、さらに具体的な手掛かりがない限り、乗組員を危険に晒したくはない。この私の判断について、君はどう思う?」

ボイス
「(何かの支度を整えながら) 全面的に賛成ですな」

パイク
「見ていたファイルを閉じ、ボイスに一瞥するとふたたびベットに向かって近寄り、腰掛けながら)それで安心した。ベガ植民星へ行き傷病者を収容するのが我々の任務だ。そして…」

パイクがふたたびベッドに腰掛けファイルに目を落とした瞬間、グラスに氷が落ちる音がカランと響いて、ん?と顔を上げてボイスの方を見るパイク。

パイク
「氷など入れてどうする?」

ボイス、すっとグラスをパイクに差し出す。

ボイス
「マティーニは冷たくしないと」

パイク
「(フッとしながら) 私に飲ませるつもりか?」

ボイス
「時には旨い酒でも飲んで、バーテンと話しをするのもいいでしょう?」

自分にも一杯注いでいたグラスを手にとり、優しく微笑みながらパイクに近付く

ボイス
「ライジェル7番星のことで悩んでいるんですか?」

パイク
「(持っていたファイルを乱暴に放る) 当然だ。戦死3名負傷7名の犠牲を出した」

ボイス
「しかしあれは船長の責任ではありませんよ」

パイク
「いや、彼らの剣と鎧を見て、危険を感じていれば、事前に処置をとれたはずだ。戦いになったのは、私が彼らに捉えられたからだ」

ボイス
「(顔を顰めて) 船長はあまりにも自分に対して厳し過ぎます! 自分も他人並みに人間として扱ったらどうですか。…お陰でこんなに疲れて…」

その言葉にキッとボイスの方を睨むパイク。

パイク
「それは確かだな! …クタクタだ。203名の命を預かるのに疲れきったよ。それだけじゃない。ことある度に、どの任務に一番危険が無いかを考えたり、上陸班を編成したり、誰が残って…誰が死ぬのか…」

パイク
「私にはもう絶えられん…」

ボイス
「私が勧めていた休養を取る時期のようですね」

パイク
「いや、引退する時期じゃないかな」

ボイス
「…それで、何をするんですか?」

パイク
「家に…帰れるだけでもいい。(その言葉にボイスが同情するように目を伏せる) 小さな街で、周りに自然公園があってね」

パイク
「(気持を持ち直すように) 馬を飼っているってことを話したかな?私がエサをやって、いつも乗り回した」

ボイス
「それは、楽しいでしょうな。毎日弁当を持って遠乗りですか」

パイク
「その頃には未来に夢を抱いていた。やがてレギュラスかオリオン植民星に行って商売をしようって…」

ボイス
「(飛び上がるようにして) なんです?船長がオリオンの商人になって奴隷を売り飛ばすんですか?!」

パイク
「私が言いたいのは、人生はこれだけじゃないということだ。宇宙には無数の人生が待ってる」

ボイス
「それはちがいます!」

ボイス
「人間というものは、偶然歩むことになった今の人生を強く生き続けるのが当然です。それに背を向ければやがて消え去るでしょう」

パイク
「(複雑な笑みを浮かべて) 医者の様な口調になってきたな、バーテンさん」

ボイス
「どっちを選ぶか、それは自由ですが、ふたつにひとつ、生か…死です」



次ぎに、「宇宙基地SOS」から、カークとマッコイのやりとり


カーク
『恒星日誌補足。9時間47分経過したが(ロミュランの船の)反応は無い』
自室で静かに、何かを耐えるようにベッドに横たわるカーク。そこに、カークのことを心配するジェニーが様子を見に入ってくる。

ジェニー
「少しでも何かお食べになったら…」

何も言わず、視線と、微かな首の動きと微笑みだけで拒否するカーク。

ジェニー
「じゃ、コーヒーでも…」

ベッドから起き上がるカーク

カーク
「いや…ありがとう。ブリッジへ運んでくれ。すぐに行く」

ジェニー
「…はい…」

ジェニーの背後でドアが開き、マッコイが入ってくる。
マッコイに視線だけでカークへの気遣いの気持を伝えるジェニーに、黙って応え、カークの方を優しく見るマッコイ。それに複雑な笑みを浮かべて応えるカーク。
優しい表情のままカークに近付くマッコイをあとに、ジェニーはカークの部屋から出て行く。

カーク
「(何所か諦めたような笑みを浮かべながら) どこかにのんびりと旅でもしたいな…任務や責任から開放されて…人生を楽しみたいよ…」

優しく黙って聞き続けるマッコイ

カーク
「…なぜ、私が…指揮を、とらなきゃいかん…みんな息を詰めて私の命令を待っているんだ。万一…」

縋る様な表情で腰掛けたベッドからマッコイを見上げるカーク。思わず目を伏せるマッコイ。

カーク
「…判断を間違えたら…」

じっと不安な表情のままマッコイを見つめるカーク。

マッコイ
「なあ、カーク…」

何かを吹っ切るようにベッドからすっくと立ち上がるカーク

カーク
「慰めてくれなくてもいい」
そう言いながらマッコイの横を通り、ブリッジに向かおうとするカークの肩を、しっかりと掴むマッコイ。

マッコイ
「慰めじゃない。一人の人間として言いたいんだ。地球人として…」

このあとマッコイは、自分の主義・主張を押し殺して、「侵略者とは戦うべきだ」とカークの判断を支持します。

多少のキャラクターの違いはありますが、主人公である指揮官の苦悩と、それを優しく受け止める医者との関係がしっかりと受け継がれているのがわかると思います。
もともと、主役である指揮官には、彼を誰よりも理解をし、支えるべきキャラクターとして医者である立場のキャラクターが側にいるべきである、というのがロッデンベリー氏の当初からの考えでした。
しかし、セカンドパイロットの時は、ドクター・パイパーという人物は出てきますが、彼のキャラクターにはそこまでの重要性は無くなってしまいました。代わりにカークを補佐し、助けるキャラクターとして、機関主任のチャーリーが設定されたらしいのですが、結局ロッデンベリー氏は前の番組で気に入ったケリー氏を起用することにより、ドクター・マッコイというカークの親友であり、且つまた医療主任と言う唯一無二のキャラクターを創り出すことに成功しました。

これはワタシの考え過ぎかも知れませんが、マッコイのミドルネーム=ホレイシォというのがとても象徴的な気がしてなりません。
カークのキャラクターのモデルのひとつ、シェイクスピアのハムレットに、彼の唯一無二の親友として、ホレイシォという人物が出てきます。
このホレイシォというキャラクターは実に面白いキャラクターで、ハムレットが自分の激情を一人で処理し切れなくなった時に何故か傍に現れ話しを聞いているんですね。
そして、次に主役が進むべき道を見ている方に自然と理解しやすい形にもっていく。
ボイスにしろ、マッコイにしろ、得にマッコイのキャラクターによってカークのみならずスポックも随分と理解しやすいキャラクターになっていったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

また、カークの指揮官としての気丈で堂々とした振る舞いの陰に隠れた一人の人間しての苦悩を表すシーンとしてもうひとつあげたいのが、「二人のカーク」のシーン。
この話は、カークという人物を知るのに非常に重要なセリフや描写が多く、また「人間の強さ、弱さ、そして人間の持つ希望的な可能性」を描いたTOSの話しの中でも良作と言ってよいものだと思います。

本能に忠実で粗野で粗暴、野生のままの悪意に満ちたカークと、知性と理性、思いやりと優しさに溢れた善意に満ちたカーク。この二つに分離されてしまったカーク。
善意のカークは、悪意のカークと分離したことで、強い判断力と決断力がどんどんと失われていきます。

善カーク
「(自分が転送装置の故障によってふたつに分離されてしまった事実と、その片割れが非常に危険な人物である事実を知った上で) いかなる場合も殺してはならん。緊急事態で、武器を使う場合が会っても殺してはならん」
このセリフには、本来のカークが、いかに生命の命を尊重して大切に思っているかが現れています。
彼が、相手の命を奪うことになった時には、それ相応の覚悟と辛さを持って対峙している訳ですね。

善カーク
「ミスター・スポック。今後私の判断がつきかねたら…代わりに…君が…命令してくれ」
たとえ船長としての職務に固執していようとも、自分が指揮を執り続けることで、船や部下に危害が加わる可能性があると判断した時には、躊躇なく自分を罰する勇気があることをこのセリフは表していると思います。

善カーク
『恒星日誌 宇宙歴0401.6091 私に変化が起こった。複製が現れてから、意志の強さが失われていく様な気がする。以前のように素早く正しい決断を下せないのだ』
このセリフにも、ショッキングな事件の当事者ながらも、自分自身を的確に分析する冷静な姿勢が見て取れます。

善カークが艦内放送で、悪カークのことを偽物と呼び、捉えるよう命令するのを自分の部屋で聞く悪カークは、怒り狂い、「カーク船長はこのオレだ!」と叫びます。
彼は最後までエンタープライズを、ジェニーを求め続けます。つまりカークが心の奥底で求めているものをハッキリと主張している訳です。
そして、このカークは、例え自分自身であっても善カークを殺すことに躊躇しません。そして、持てる全ての知識は、自分の欲求を満たすあらゆる行動に利用することができるのです。
しかし、最後のシーンで、「死にたくない! 殺さないでくれ!」と叫びます。
理性を持たず本能のまま行動する悪カークは、その知識を生かす術がないため事態を正確に理解することが出来ません。
本能のまま、生きることを望み、理解の出来ない恐怖として死を恐れています。
その上で、ジェニーから手ひどく拒絶されたことなどから、自分の存在が、もう一人の自分よりも望まれていないことを、ハッキリと感じ取っています。
だからこそ、善カークがいる限り、自分は偽物として抹殺されるのではないかという本能的な怯え、つまり危害が加えられるかもしれない=殺されるかもしれない、という野性的な防御反応で執拗に善カークの抹殺をしようと企んでいたということがこの言葉から分る訳です。

ここが、同じワルカークであっても鏡像世界のカークと決定的に違う部分かもしれません。

所で面白いのが、初めて自分の片割れである善カークと対峙したとき、人の善意を信じて疑うことが出来ず、フェイザーをどうしても構えることが出来ない善カークに対して、悪カークは、フェイザーをフルパワーにして「オマエなんか必要ない!」と射ち殺そうとする訳なんですが…
今まで、自分の部下に対して躊躇なく暴力を振るい、優位に立とうとしていた悪カークなのに、ナゼか自分を追って善カークと共に来たスポックに対しては、敵意を表していません。
これまでの悪カークなら、まずリスクの高いスポックを殺すなりしてから、善カークを襲った方がリスクが少なく優位に立てるはずです。
しかし、初めから悪カークのターゲットは、スポックが常に付き従う善カークなんですね。
腐的な視点から言えば、カークにとって、スポックが特別な位置づけである様な気もしますね。

さて、話しを戻して、次に注目したいシーン。

まずひとつめ。
エンジニアリングデッキに逃げ込んだ悪カークをスポックと共に追跡する善カーク。
「応援を呼んでからの方が…」と助言するスポックに対して
「いや、誰にも見られたくない…こんな…!!」といい、「船長、代わりに私が命令を(して悪カークをフェイザーで射って捉えます)」というスポックに対しては、
「ミスター・スポック。私はまだ船長だ。船長らしく行動したい」と告げるシーン。
このシーンでは、弱っていても、どんな状況であっても、自分の弱さと醜さを他人には知られたくないと言うカークの人としてのプライドと意地が垣間見えます。

次に、
スポックのネックピンチにより悪カークは失神し、ついにシックベイのベッドに拘束されます。
横たわる悪カークを見つめ呆然とする善カークの姿。それは、自分が分離してしまった事実を目の当たりにするショックもさることながら、本能のままの自分は、もしかしたら躊躇なく人を殺すことが出来るのではないかということを目の当たりにしたショックも大きいのではないかと思わせられます。

マッコイ
「(スポックに向かって) その内意識を取り戻すだろう。体の状態も分らずに精神安定剤を与える訳にはいかないしな」

マッコイ
「(二人に近付いてくる善カークに向かって) 縛った方がいいだろう」

カーク
「そう…その方がいいね…」

心配そうにカークを見るが、まずは悪カークを拘束するためにベッドの方にいく。残されたスポックは気遣わし気にカークを見つめる。

カーク
「(苦悩と困惑を露にした表情で)ああ…どうしたんだろう、私は…」

スポック
「私の観察によりますと、船長には決断力がどんどん無くなっていきますね」

マッコイ
「また一言ありそうだな」

スポック
「これは、ドクターも聞いておいて下さい。これは人間の心を観察するまたとないチャンスですよ。地球でよく言われる人間の善と悪の役割を調べられる訳です。否定的な面は、敵意、あるいは暴力、欲望に代表され…肯定的な面は、熱意と、愛と、親切で代表されていますね」

マッコイ
「(怒った様子で) 君は、人の前で船長の人格を分析するつもりなのか?」

スポック
「(熱っぽい表情で) そうです。優れたリーダーとしての資格は一体なんなのか、船長に決断力を与えていたのは否定的な面のようですね。つまり、悪の要素は、もし正しく導かれ、コントロールされるなら、人間に強さを与えるんだ」

スポック
「(善カークに向き直り) だから悪の要素が逃げ出したあなたには、決断を下す力が消えて来た」

カーク
「つまり何を言いたいんだね?」

スポック
「今後、もしこの状態が続くなら、あなたに船長は勤まらなくなる。その時に備えて下さい」

マッコイ
「(カークに向かって) 君には知性がある! 知性に頼ればいい!!」

カーク
「(スポックに向かって) いつまでだ?」

スポック
「船長の行動に何か不合理なことを発見したら…その時は…私が代わります」

このあと、極寒の惑星に取り残されたカトウ達上陸班から、助けを求める通信が入ります。しかし、元々の分離してしまう故障に加え、悪カークが放ったフェイザー光線で破壊された転送装置は、修理が遅々として進まず、まだ彼らを収容することが出来ず、善カークは修理を急いでいる部下への思いと、死にかけているカトウ達の間でどう言う決断も出来ず苦悩します。
そんな中、複製の影響で体の機能が低下していた悪カークは、自分の精神も体もコントロールが出来ずパニックになり危機的な状況になるものの、善カークが「生きることを考えるんだ!」と聡し、二人は無事にこの危機を乗り越えます。
そんなカークにマッコイは、「今こそブランデーを飲む時だよ」と言います。

善カーク
「もし…彼(悪カーク)に死なれたら、分身の私は…生きていけなくなっただろう…野獣のように凶暴で冷酷な男でも、私には必要な人間なんだ。私の一部だ。私の…!!」

マッコイ
「(ブランデーのグラスをカークに差し出しながら) さ。…私たちもみんな君と同じだよ。誰にでも悪の面はあって、それは必要なんだ。それで生きていけるんだよ。醜いことはない。それが人間じゃあないか」

善カーク
「それが…?」

マッコイ
「そうだ。それが、だ。彼と君を合わせてはじめて人間になるんだ。さっきはスポックと争ったが、彼が言ったことは正しいよ。否定的な面がなければ、君は船長になる資格はない。それは分っているはずだ。君のあの強い決断力は彼が持っている」

善カーク
「…じゃあ、私は?」

マッコイ
「いい面を持っているさ」

善カーク
「役に立たん! この船を指揮するのには…!!」

マッコイ
「君のその知性、理論は、これまた無くてはならないものだ。人間の本当の勇気は、恐らくそこから生まれてくるんじゃあないかな?…強いはずの彼にしても、怖がってたよ…」

やがて転送装置の修理が終わり、いよいよカークが再結合できるかどうかというシーンになります。しかし、先に分離していた一角獣は再結合のショックに耐え切れずに死んでしまい、分離の恐怖の上にさらに再結合による死の恐怖が二人のカークに襲いかかります。
その上、上陸班のカトウ達はもはや凍死寸前。
苦悩する善カークの前で、カークの身を医者として友人として気遣うマッコイの主張と、副長として部下と船の安全を守ろうとするスポックの主張が真っ向から対立します。

マッコイ
「(死んだ一角獣のことに関して) 何故だろうな…君(スポック)が言ったようにショック死かもしれんし…」

スポック
「初めて意見が一致したか」

マッコイ
「かもしれない、と言っただけだ。検死の報告が来るまでは決定は下せん」

スポック
「検死の報告など待つ迄もありませんね。あの動物は急に二つに分けられ、またひとつにされて、それに適応できなかったんです。ショックですよ。未知の恐怖が引き起こした」

善カーク
「私も恐らくそうだと思う」

スポック
「しかし船長は人間です。理解できる。恐怖をコントロールする知性を持っているでしょう」

善カーク
「…転送装置の準備をしてくれ」

マッコイ
「それはただの理論に過ぎないんだぞ! 実際にはどんな結果が出るか分からん。私の言う事を聞いて検死報告を待ってくれ。その間にもう一度装置をチェックすればいい」

善カーク
「確かに君の言う通りだ。慎重にことを運ばないと…」

スポック
「大事なことを忘れてませんか?」

善カーク
「…いいや…?別に何も…?」

スポック
「上陸班はどうなります?したで凍死させるつもりですか?」

善カーク
「…そうだ…上陸班が…!チェックしている暇は無い。凍死する!」

マッコイ
「もし、ショック死でなかったらどうする? 転送装置の異常作用が原因だったらどうなるんだ?君も死ぬぞ! 君の方が大事だ! 理論に命をかける様なバカは止せっ!」

スポック
「…二つに分かれるのは、私にとっては単なる理論じゃあ無い。私は半分地球人で、あとの半分はいわゆる宇宙人で、この二つは常に争っている。これは偽りの無い経験で、それを乗り越えて生きられるのは、知性がこの二つに勝ち、協調させるからだ。
船長に知性がある限り死ぬことは無いでしょう!」

二人の主張の板挟みになり、対に耐え切れなくなる善カーク。

善カーク
「誰か…助けてくれ! 私は…どうしたらいいんだ…!!!」

スポック
「船長の責任を放棄するつもりですか」

ハッとする善カーク
「…いや…! そうじゃない!」

マッコイ
「誰にも助けられんな。君が決めることだよ」

善カーク
「…転送ルームに準備をさせてくれ」

黙って立ち去るスポック。そして、席を外そうとするマッコイに「あ…ドクター…検死も続けるように…」と心細気に言う善カーク。

このあとひと騒動起こって、無事大団円となる訳なんですが、この三つの場面からカークというキャラクターの内面の分析をするスポックの描写を通して、人の心の善悪について、実に興味深い主張を繰り広げています。そして、それはそのあとのスポックのキャラクターへの言及にまで及び、この二人のキャラクターを実に自然に視聴者に対して説明をし、なおかつ、カーク、スポック、マッコイのこの三人の関係性まで実にわかりやすく描かれている訳です。

一般的に言われている様な、能天気で自分の掲げる正義だけを振りかざして直情的に突き進む様な、そんな子供じみた単純なキャラクターではカークは決して無いということが、本番では第7話、本国では第5話でもう既にきっちりと描かれているんですよね。

そして、カークはむやみに女性に手を出す様な男ではないことも、この話でのジェニーちゃんとのやりとりで分ります。
本能に従順な悪カークは、その感情のままにジェニーを襲いましたが、理性的な善カークはそのような自分の個人的感情一切表さず、ただの上官としての自分の立場を貫いています。

ジェニーへの思いはこの他にも「魔の宇宙病」で内に秘めた感情が暴走したときに、エンタープライズの船長であるという道を捨てない限り、どんな女性とも関係を持つことは出来ないとカークは苦しい胸の内を吐露しています。
また、マッコイとの会話の中で、ジェニーのことに関して「司令部はとんだお目付役をつけたものだ」と愚痴るカークに「自分を抑える自信が無いのか?」とマッコイがからかっています。

一番身近にいる美しく年頃で、まして自分に好意を寄せている部下に対して、カークは決して手を出すまいと誓っているんですよ?
そして、本能のままにジェニーを襲ってはいても、悪カークはジェニーに対して、「命令」してはいないんです。もし、本当にカークが女好きで片端から喰っちゃう様な男であったなら、理性が無くなってでも知恵が回るあの状態だったら、絶対に「命令」して相手が抵抗できない状況に追い込んだ上でことに及んでいたはずです。

本当に、世間一般に、それもロクにTOSを見たことも無い様な人達の、知ったかぶりなカークの批判にはほとほと呆れるし、腹立たしい限りです。
また、それを肯定した様なJJTREKのやんちゃカークの描写にも実は納得いってないワタシですが、まぁあれは同姓同名の異世界の別人だと思うことにしたので、もうお願いだからシャトさまが大事に育てて来たカークと混同しないで欲しいです。

【カーク船長を考える 3】タルサス4番星での悲劇

2014-09-04 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
前回は船長のキャラクターが出来上がるまでの話しでしたが、今回は、ワタシの中の船長にとって、とても重要な出来事だと思っている“タルサス4番星”での大量処刑事件について、考えていることを述べていきたいと思います。

カークは、わりと早い時期に視聴者に“こういうキャラクターだよ”ということを示すためか、様々な内面を見せるエピソードが用意されていたように思います。それは、“スポック”という非常に個性的なキャラクターがサブキャラクターとしていた所為かもしれません。
しかし、そうは言っても彼の過去については、あまり明確に語られるエピソードはありませんでした。この話「殺人鬼コドス」で初めて彼の過去の出来事が明確に描かれることとなります。

放映順としては、ワタシはアメリカ本国より日本の放映順の方がわかりやすいと思うので、まず、タルサス4番星の話しに至るまでのエピソードを上げていきたいと思います。

第1話 「光るめだま」
    ・カークにはミッチェルと言う士官学校時代からの親友がいる
    ・ミッチェルは、カークを庇って瀕死の重傷を負ったことがある
     =カークはミッチにとって命を賭けても惜しくはないと思っている人物である
    ・ミッチェルのイタズラで、あわや結婚まで考えた女性が部下にいる
     =カークが非常に真面目であることが分る
    ・スポックとのチェスのシーン
     =二人の関係が良好でありかつ、カークの方がスポックより一枚上手
    ・ミッチェルとじゃれあうカーク
     =カークが年相応の若い青年の部分もあることが分る
    ・ミッチェルの変化と彼との対決
     =カークの苦悩と思い、愛情、決断するものの辛さ、信念が描かれる

第2話 「謎の球体」
    ・カークがリスクを回避するためにはハッタリをかますことが得意であることなど、
     ピンチの時には非常に頭の回転が早い、決断することを恐れない人物であることを
     面白く描く。
     また、まだ船長として未熟な部分も多いことも描かれる。

第3話 「M113の吸血獣」

第4話 「コンピューター人間」
    ・カークというキャラクターが論理性だけになると非常に面白くない冷たい人物になる。
    ・スポックが偽カークの言葉に少しのショックと違和感をみるシーンから、
     二人の信頼関係が非常に親密であることが分る。

第5話 「魔の宇宙病」
    ・カークの船長としての孤独、船長であるが故に人としての平凡な幸せを犠牲にしている
     苦しさ、ジェニーちゃんに寄せる仄かな思いをさりげなく描いている

第6話 「宇宙基地SOS」

第7話 「二人のカーク」
    ・理性的なカークと本能的なカークの二人を描くことで、“カーク”というキャラクターの
     内面をこと細かく描く。
    ・カークがエンタープライズの全乗組員の顔と名前を殆ど全て把握していることなど
     カークというキャラクターの基本的な部分がほぼ把握できる。

第8話 「セイサス星から来た少年」

第9話 「400歳の少女」

第10話 「ゴリラの惑星」

第11話 「殺人鬼コドス」
    ・カークのショッキングな過去が初めて明かされる話

この「殺人鬼コドス(原題・王たるものの良心)」で、カークは地球の植民惑星であるタルサス4番星で、13歳の時に、むごたらしい虐殺事件に巻き込まれつつも辛くも生きのびた9人のうちの一人であることがスポックとマッコイのやりとりで描かれます。
*以下セリフはビデオからのワタシの聞き取り書き起こしです

スポック
ライブラリーのデータによると、地球植民星タルサス4号の食料が、謎の細菌に冒され、殆ど腐敗した事件が記録に残っていますが、その結果8000人に上る住民は飢えに苦しみました。問題のコドス知事が絶対的な権力を握り、戒厳令を宣言したのはこの時です

マッコイ
「その話しなら聞いたよ」

スポック
「まだ先があります。やがてコドスは人々を分類した。選ばれた者へは僅かな食料でも分け与えられ、残った者はただちに死刑に処せられました。独自の優生学理論を持っていたんですな」

マッコイ
「それは…なにも彼だけとは限らんだろう」

スポック
「かもしれません」
「しかし、自分が決めた条件を適用し、誰が生き残り、誰が死ぬかを気まぐれに決定した極悪非道な人間は彼だけです。しかもこの決定は冷酷に実行され、子供の目前でも平然と処刑が行われて4000人以上が死に追いやられました。死は苦痛もなく訪れましたが、死に変わりはありません。救援物資が着いた時には既にもう手遅れでした。そして、コドス…彼の死体を確認した者はひとりも居りません

マッコイ
「それと俳優となんの関係がある?」

スポック
「カリディアンが現れたのは、コドスが行方不明になったのと殆ど同じ頃です」

マッコイ
「じゃあ、カークはカリディアンを疑っているのかね?」

スポック
「でしょうね。コドスを実際に見たことがあり、彼だと証言できる人間は9人しか生き残りませんでした。船長はその一人です」
「現在生存しているのは、ライリー少尉と船長だけで、あとの7人は全員死亡しています。しかも、ライブラリーコンピューターによれば、彼らが死亡した時、場所を問わず、地球であれ、植民星であれ、彼らの傍らに必ずカリディアンの劇団が姿を現しているんです」

マッコイ
「信じられん…」

この後毒物によるライリー殺人未遂事件が起こります。
危険な状態のライリーを見守るスポックとマッコイ。
この後の展開で、スポックが如何にカークを大切に考えているか、カークが日々の決断の中で実は如何に葛藤しているのか、また、自分の命よりも船と部下の命の安全を考えて行動しているのかが描かれていきます。

スポック
「殺してはなりません」

マッコイ
「あまり自信はないな」

スポック
「もし死んだら、コドス本人だと証言できるのは船長だけになる。船長が狙われるでしょう」

この後、事故かもしれないというマッコイをスポックは半ば強引に説き伏せて、カークのキャビンへ二人で向かいます。
自室で、何かメモを書いているカーク。(後の場面でこれがコドスの死刑宣告文だと分る)
来訪者を告げるブザーが鳴り、カークはスポックとマッコイを自室に入れます。

マッコイ
「ライリー少尉に関する報告だ」

カーク
「助かるか?」

マッコイ
「望みはあるね」

スポック
「船長も助かる望みはありますか」

カーク
「どう言う意味だ?はっきり言いたまえ」

スポック
「ライリー少尉は証人ですね?船長と同じ」

カーク
「(深く溜め息をはきながら)…それで?」

スポック
「誰か命を狙っています」

マッコイ
「いや、事故かもしれんよ」

スポック
「これだけの事実を目前にして、まだ我を張るつもりですか」
「(カークに向き直り)実はライブラリーコンピューターでチェックしたところ、ある情報を得ました」

カーク
「(かなりムッとした様子)少し脱線気味じゃないかね、君は。これは個人的な問題だ!」

スポック
「船の活動に支障を来す様になれば、私の個人的な問題にもなります」

カーク
「支障を来たしているのか!?」

スポック
「やがて来します!!」

カーク
「個人的な問題に干渉するな! 副船長でも例外ではない!」

マッコイ
「(見かねて)カーク!! スポックはただ君のことを…」

カーク
「ともかく干渉されるのは嫌だ!」

マッコイ
「彼の任務だぞ!! …分っているくせに」

カーク
「(少し思い直すようにして)…断っておくが、証拠は何一つないんだ」

スポック
「ここ銀河の果てでも、2プラス2は4と答えが出ます。次に船長が狙われるのは明白だと思いますが、死を望むんですか?」

カーク
「(無表情になり)とんでもない。私が望むのは正義だ」

マッコイ
「…そうか?これは復讐じゃないのか?」

カーク
「復讐に徹しきれたら…悩みはない。徹し切れないために優柔不断な態度を取る結果になったんだ。今後速やかにカリディアンがコドスかどうか、判断しなければならん」

スポック
「明らかです」

カーク
「(少し驚いて)自信たっぷりだな。…羨ましいよ。行動を起こす前に確信を得たい。彼を見たのは20年前だ。20年間には、記憶も薄れ、人も変わる。相手は扮装の名人だ。今は、理論が全てではない。私なりに手掛かりを得て、絶対の確信を持ちたいのだ」

マッコイ
「もし、コドスだとしたらどうなる?どうする! 神に代わって制裁を加え、彼の首を持って凱旋するのか?そんなことで死んだ者は生き返らん!!」

カーク
「…そうだ。…しかし、安らかに眠れる…」

しばらく後、カークの部屋で、さらに口論を続けるスポックとカーク。

スポック
「明らかです。レイトン博士はカリディアンの劇団がいる時に殺されました。そして、劇団がこのエンタープライズに乗り移ったら、今度はライリー少尉です」

カーク
「ライリーは殺人未遂かどうか分らん。まぁ、焦らず待て。私にも…」

スポック
「船長、聞こえますか?あの音はなんでしょう?」

カーク
「フェイザーだ」

スポック
「オーバーロードしています!!」

カークの居室のワードローブの引き出しからカークの衣服を引っ張り出したり、ベッドのマットをめくったり、ともかく様々な場所を探し始めるスポック。
カークは冷静に艦内放送を始める。

カーク
「船長から総員へ。私の部屋でフェイザーがオーバーロードしている。爆発すればデッキごと破壊されるだろう。至急該当地域から避難! 総員非常体勢に着け!」

直に非常警報が鳴り響く。

カーク
「君は早く行け!」

スポック
「私が残ります!! 早く行って下さい」

カーク
「(カークの居室でなおも探そうとするスポックの腕を掴んで押し出すようにして)早くここを封鎖しろ!! 私が見つける!」

スポックはそのカークの命令に後も振り返らず、直にカークの部屋を出る。

スポック
「(廊下を行き交う乗組員達に)当該地域から避難して封鎖しろ! セクションC-4からC-5から避難!!(そのままブリッジに向かう)」

オーバーロードする異音に耳がつんざけそうになりながらもついにカークは、フェイザーガンを見つけ出し、ダストシューターのような場所に投げ込み、なんとか事無きを得る。これにより、いよいよカリディアン=コドスであると確信したカークは、ついに疑惑の人物、アントン・カリディアン本人と対峙することを決心する。

エンタープライズ内のカリディアンの居室。
ひとり、ハムレットの台本を手に、寝台に腰掛けセリフを唱える様にしているカリディアンの元に、カークが無遠慮に入ってくる。

カーク
「…話し合いが遅過ぎたようだな」

カリディアン
「船長と言えどもプライバシーは尊重して欲しいですな」

カーク
「今、何者かの仕業で船長室を含むデッキを危うく破壊されるところだった。その前には部下が毒殺されかけている」

カリディアン
「恐ろしいことですな」

カーク
「覚えがあるだろう」

「お前は“コドス”かっ?」

カリディアン
「・・・」

カーク
「質問が聞こえんのか?」

カリディアン
「そうだと思っているのかね?」

カーク
「思っている」

カリディアン
「では、そうしておけばいいだろう。それで気が済むならどうぞ。私は俳優だ。その役を演じよう」

カーク
「俳優になる前は?20年前は何をしていた?」

カリディアン
「…若かったね。血気に溢れて…」

カーク
「私もだ。しかし覚えているぞ。(カリディアンに先程書いていたメモを手渡しながら)テストをしてもらう。壁の通信機に向かってこれを読みたまえ。声を録音し、ファイルに保存されているコドスのボイスフィルムと比較照合する。お前がコドスか、俳優カリディアンか明確な回答を出してくれる。それで全てはっきりするわけだ」

カリディアン
「(メモを受け取り読み始める)
 革命は、成功した。
 しかし、更に過激な手段に訴えなければならない。
 今後被告が生存することは、社会の福祉を脅かすだけではなく
 より価値のある市民の命を徐々に奪っていく結果をもたらすのだ。

 (メモを視界から外し、虚空を見つめるようになるカリディアン)
 従ってここに被告に死刑を宣告せざるを得ない。
 処刑は速やかに行うものとする。

 (カリディアンの様子が変化することに気が付くカーク)
 地球植民星タルサス4号知事・コドス

カーク
私はこの言葉を一生忘れない

お前はコドスではないかと詰め寄るカーク。そんなカークに対してカリディアンは反論する。

カリディアン
「君は今ここに、我が機械文明の象徴として佇んでいる。機械化され、電子工学化され、人間味を失っている。君達は人間が偉大なことを成し得るために最も必要な、人間性を捨て去ってしまったのだ」

カーク
「確かに機械化はされている。それに欠点があることは認めよう。しかしコドスは…!」

カリディアン
「…コドスは。どんな男か知らんが」

カーク
「ここにいる!!」

カリディアン
「聞きたまえ。コドスは命に関わる決定を下した。誰かが死ななければならなかったんだ。決定を下す立場に入るあなたなら分るはずだ

カーク
分っているのはただ一つ! 4000人の罪のない人間が虐殺されたことだ!

カリディアン
あとの4000人を救うためにしたことだ。もし、補給船が予定通り遅く到着していたら、コドスは歴史上の英雄として、今もなお、称えられていただろう!

カーク
違うな。歴史は既に判決を下した

カリディアン
「私がコドスだと信じるなら、なぜ早く殺さんのだ!! 私を殺して血塗られた復讐をここで遂げたらどうなんだ!! それで君の宇宙が変わるかどうか試したまえ!! 」

そう言われてもなお冷静さを失わず、カリディアンを追及する手を緩めないカーク。

カリディアン
「…人間誰でも、嫌な思い出がある。思い出が薄れて喜ぶこともあるものだ。私はもう人生にあまり価値を認めない。…私はもう、疲れ果てた…!!!」

カリディアン
「過去は…白紙だ」

カリディアン
「(カークの瞳をキッと睨みつけながら)探り出したいことは、これで全て分ったかね?」

カーク
「(カリディアンの視線を毅然と受け止めながら)全てが分って、確信が持てたなら、既にお前を殺していたかもしれん

一人出て行こうとするカークを。カリディアンの一人娘のレノアが呼び止め、カークをなじる。父親に会うために自分を利用したのかと。そして、「初めはそのつもりだったが、“あとになって”そうもいかなくなってしまった」と言うカークの告白に、レノアは、「あと。すべてあと。もう手遅れよ」と答えている。

レノア
「どうするつもりなの、父を?」

レノア
「あなたは、この船のように強くて権力があるけれど、人間の心を持ってないのよ」

カーク
彼がコドスなら、私は人間の心を持つ必要がない。もし違うなら、予定通りベネシアで降ろそう。なんの処置も取らず…」

その後カリディアン劇団による、エンタープライズ艦内での特別公演として、「ハムレット」が上演されることとなる。
その舞台裏では、カリディアンがコドスだと知った回復したライリー少尉が、両親の敵を討とうとフェイザーを手にカリディアンに迫っていた。
舞台に先立っての挨拶でハムレットを紹介するレノア

レノア
「ハムレットは、人命より野望が尊いとされていた時代に作られたドラマです」

その裏では、カークとスポックがカリディアンとコドスの声紋の照合を進めている。

スポック
「いよいよ決勝戦ですね」

カーク
「いやあ、これは一般のゲームとは違う。…人間の…命が掛かってる。機械に判定は下せんよ

折しも、舞台ではカリディアン演ずるハムレットの実父の亡霊が、ハムレットに自分の死の顛末を語り、自分を亡き者とした者は、ハムレットの叔父でもあり、今やその妻さえも妃とした実の弟クローディアスであることを告げ、復讐せよとハムレットに憎しみの心を焚き付けている場面であった。

ハムレットの父の亡霊として、過去の罪を懺悔する言葉を言うカリディアンの背後で、フェイザーを向けるライリー。
そのライリーに向かい、止めるよう説得するカーク。そのカークの命令を聞き、その場を去るライリー。
しかし、舞台上のカリディアンの耳にライリーの放った「あいつは人殺しです!!」という一言が突き刺さる。

カリディアン
「(父親の演技に称賛を送るレノアに)わしは過去の亡霊の声に悩まされ、うなされ続けて来た。お前には話したことがなかったが、わしは大昔にある芝居を演じ、今またそのカーテンが上がろうとしているのだ。ついに運命の時が来たのだ」

レノア
「大丈夫よ。そんなもの来ないわ。今夜、この公演が終わったら、パパを苦しめる最後の二人はいなくなるのよ」

カリディアン
「…なに? もう一度言ってみろ」

レノア
「(誇らし気に)9人いたの。でも残りはたった二人よ。その二人もこの公演が終わったら…」

娘のしたことにようやっと気が付くカリディアン。哀しみと怒りで娘に迫るが、レノアは仕方がなかった、父親を苦しめるものは全て敵であり、死んで当然だと言ってのけるのだった。愛する父親を悪い9人の存在から守ったのは自分だと…

カリディアン
「七人…七人も…もう血を見るのは沢山だ…。なんということをしてくれたんだ…!! これで最後の望みも消え去った!! お前だけはわしとは関係なしに清く生きてもらいたかった」

しかし、父親を愛するあまりに人殺しも厭わなくなってしまったレノアの狂った心には、もはや父であるカリディアンの声すら届かなくなっていた。
全てが明るみになった二人を、カークはただ冷静に連行しようとする。そのカークにカリディアン=コドスは言う。

コドス
立場上仕方がなかった。嫌でもしなければならないことがある。
人殺し、略奪、自殺…狂気の沙汰だ。わしの手を染めた血はお前にだけは付けたくなかったのに」

父親を守ろうとする愛の狂気に駆り立てられたレノアのフェイザーはついにカークを射ち抜こうとするが、その光線は身を挺して娘を止めようとしたコドスの体を貫き、コドスは絶命し、自らの行為の結末にレノアは発狂してしまいます。
この悲劇の結末にカークは何を思ったでしょうか。


さて。この物語の中で分ることは、
・当時13歳だったカーク少年が、何らかの理由で地球植民星であるタルサス4番星にきていたこと。
・父親も母親も兄も一緒ではなかったこと
・復讐したいと思うほど、親しい誰かを目前で殺されているらしいこと
以上の三つです。

父母が一緒ではない、という推理が成り立つのは、その後の話でカーク(とその兄)が孤児であるという描写がなされていないためです。
また、カークの田舎である農場という設定が過去のものとして明確に描かれていない点もあります。

13歳の少年が、死刑宣告を受け、まして目の前で親しい人々が次々と殺されていく光景を目の当たりにしたら、その心の傷はいったいいかばかりのものでしょうか。
そして、その死刑宣告を受ける前には、空前の食糧難がおこり、略奪、人殺しも起こっていたとコドス自身が語っています。

ここからワタシは以下の様なことを考えます。

カークがまだ子供でありながら単身、地球から遠く離れたこの植民星に来たのは、両親に何か重大なことが起こり、一時的に預けられたのではないか
(ワタシはスターフリートの士官であった父親の突然の死に、母親が一時的に精神不安定に陥ったために遠い親戚に預けられたのではないかと考えています。また、兄のサミュエルJr.は、既にアカデミーの寄宿舎生活になっていたのではないかと思います)

幼いカークの心に、コドスの死刑宣告は「お前は生きる資格がない、死んで当然の人間だ」という自分を徹底的に否定する言葉が刻み込まれてしまったのではないか。
(カークが、必要以上にエンタープライズの船長に固執してしまったのは、自分の生きる価値をそこに見出してしまった為なのではないかと思います)
第3シーズンの「悪魔の弟子達」の中で、カークへの攻撃として選ばれたのは“エンタープライズを失う”という心理攻撃でした。
誰も自分の言うことを聞こうとしない。誰も自分を認めてくれない。エンタープライズを失うことは、自分の全ての世界を失い一人ぽっちの孤独な闇に落ちることとして描かれています。
つまり、カークは自分が生き続けることに対して、罪の意識を植え付けられてしまっているのではないかと思う訳です。
だから、自分が生き続けるためには、他者が生き続けてるために必要な存在としての意義が必要だったのではないかと思います。

カークの自信満々に見える姿の裏では、常に「他者が生きるために、死ななければならなかった存在」としての自分と必至で戦っていたと思うんです。

だからこそ、後のエピソード“危険な過去への旅”で、スポックがカークに言う「その心の赴くままに彼女を助けたとしたら、死なずにすんだ何万もの人々が死ぬことになるのですよ。エディス・キーラーは、死ななければなりません」という言葉は、誰よりも重く、辛くカークの心に伸しかかったに違いありません。
エディス・キーラーがカークにとって忘れえぬ人となったのは、こう言ったことがあるためではないかともワタシは思うんですよ。

【カーク船長を考える 2】ジェイムズ・カーク誕生前夜

2014-08-20 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
このパソコンが生きているうちに、自分なりのジェイムズ・T・カークというキャラクターについて、そろそろこのブログに残しておこうかと思います。
後日、これらを本にまとめられたらなぁと思っています。が、限りなく低い確率なので、とりあえずここでポチポチ書いていくつもりです。

先日、ワタシなりのカーク船長の生い立ちについてまとめてみましたが、今回は、その“ジェイムズ・カーク”というキャラクターがどのようにして生まれたかのワタシの超偏った知識をまとめてみたいと思います。長いですよ。



ジーン・ロッデンベリーが最初にスタートレックを考え、16ページに及ぶ企画書を作り、テレビ会社に持ち込んだ1964年3月11日の時点では、船長の名前は、"ロバート・T・エイプリル"(別の資料ではロバート・M・エイプリル)でした。(船の名もUSS.ヨークタウンだったりと今とはだいぶ違いますがそこら辺は割愛)

「不屈の強さと多彩な個性を持つ船のリーダー。宇宙時代のホレイショ・ホーンブロワー艦長である」

この企画書に書かれた一文。それがもっとも初期の、そしてもっとも根本的なカークのキャラクター性の原点となりました。
この時点で既に、“年齢は34歳。アカデミーを卒業し、階級は海軍大佐。常にリーダーとして自分に厳しく、故に彼個人は非常に孤独な存在である”ということまで、ロッデンベリー氏は決めていたようです。
そしてこれが、その後の長いエンタープライズの冒険を指揮する船長・艦長達のもっとも重要で基本的な個性となっていく訳です。

後にこの企画だけで消えたエイプリル船長は、エンタープライズの初代船長ということで、実写ではファーストパイロット版の制服を着用したロッデンベリー氏ご自身の写真が使われることとなります。


また、アニメシリーズの最終話では、エンタープライズの建造から深く関わった初代船長として、エンタープライズの医療施設の設計者であった奥さまと共に登場し、カーク達を危機から救います。
この話の中で、エイプリル元船長が、艦隊の高官となったものの自分の老いをコンプレックスに感じていること、エンタープライズを今でも我が子のように思い、何気にカークに対抗心を燃やしていること、カーク達を救った後に自分の心の妄執から開放され、カーク達にエンタープライズを託して去っていくこと、そしてこれがアニメシリーズの最終話であったことなど、非常に象徴的な物語になっていると思います。

さて。
紆余曲折を経て、この「スタートレック」…宇宙時代の幌馬車隊の物語…は、NBCの目に留まりテレビ番組として制作されることが決定します。
いよいよ、ファーストパイロット版が作られる事になり、この企画書を元にさらにブラッシュアップされた脚本が作られ、船長はロバート・T・エイプリルから、クリストファー・パイク船長に変更されます。

まず、パイク役に白羽の矢が足ったのは、当時西部劇で名を馳せていたロイド・ブリッジズ。
しかし、当時テレビドラマは俳優達にとって、とても卑しいというか、食べるために仕方なく出演している様なそんな認識の上、ましてSFとなれば子供騙しの低俗な番組というイメージが蔓延していました。そんな訳で、早々にブリッジズには断られてしまい、次に決まったのが、ジェフリー・ハンターでした。
ハンター演じるクリストファー・パイク船長のもと、スタートレックは最初の映像作品として仕上げられていきます。パイク船長は、ハンターの持つ個性と相まって、典型的な碧眼の美丈夫で、男らしく、且つまた勇敢ですが、その内に深い孤独を抱えた酷く神経質で真面目なキャラクターとなりました。
残念ながらこのパイロット版はNBCのご重役には不評だったものの、当時としても非常に異例なことにセカンドパイロットを作るようロッデンベリー氏は要請を受けることとなります。
ハンターの演じるパイク船長は、実の所ロッデンベリー氏の理想とする船長そのものであったので、このままパイク船長でセカンドを撮る予定もあった様なのですが、やはりテレビ俳優になることへの抵抗と映画出演への強い希望を持っていたジェフリー・ハンターは、ファーストパイロットにダメ出しが出たことを機に、パイク役から降板してしまいます。
ちなみに、ブリッジズとハンターの写真を見ると、ロッデンベリー氏にとって、理想のハンサムがどう言う顔立ちなのかがよく分って面白いです。

こうして、ファーストパイロットの反省点を踏まえ、ロッデンベリー氏は脚本の見直しはもちろん、主役の船長のキャラクターの見直しをも再度せざるを得なくなりました。
そうして、次に主役の候補として上がったのが、後にハワイ5-0の主役、スティーブ・マクギャレット役で勇名を馳せることとなるジャック・ロードでした。
しかし、これもSFドラマということに偏見が強かったのか、彼が要求した出演料があまりにも高いなど様々な理由で出演はならず、とあるつてから、当時ミステリー・ゾーンやアウターリミッツなど、人気の在るSFテレビドラマや、恐怖映画などに主演、出演実績の在るシャトさまにオファーがいくことになったのでした。
この時点で、ハンターやブリッジズのような顔立ちから、少しソフトなやんちゃっぽい二枚目に、キャラクターがシフトしつつある様な感じがしますよね。たぶん、アラン・ドロンなどの甘いマスクで少年の様な面差しの在る男優が人気を博していた時期だったのかもしれません。

とにもかくにも、ちょうどその時、シャトさまは「検事コースター」が終了したばかりで、次の仕事を探しているというグッドタイミングでもあったようです。
オファーを受け、直にシャトさまはロッデンベリー氏と会い、ハンター演じるパイク船長のファーストパイロットを見たそうです。
「確かにこの作品はとても素晴らしいものだと思う。けれど、あまりにも真面目で固過ぎる。もし、ボクに意見を言わせてもらえるのならもっと面白いものに出来るかもしれない」
そうして、シャトさまは、セカンドパイロットを作るにあたり、様々なことをロッデンベリー氏に提案したそうです。
つまり、この時点で、ジェイムズ・カークというキャラクターに、シャトさまの考える個性が付け加えられていった訳ですね。
シャトさまは、当時ロッデンベリー氏に「何事もユーモアがなければいけない」と言ったそうです。
真面目一辺倒では見る方が疲れてしまうし、どんな真面目な物語の中であっても、一片のユーモアは在ってしかるべきだ、と。この言葉は現在も仰っていますから、シャトさまのクリエイターとしての理念なんだと思います。
そうして、ロッデンベリー氏の描いた、宇宙時代のホレイショ・ホーンブロワーは、ロバート・T・エイプリル、クリストファー・パイクとなり、ウィリアム・シャトナーという俳優の個性を付け加えて、ジェイムズ・R・カークというキャラクターとして、セカンドパイロットで産声を上げたのでした。(ファースト・パイロットの時点では、ジェイムズ・R・カークなんです)


スタートレック "ジェネレーションズ" もう一つのエンディング

2014-08-09 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)

ノベライズ版は、これを元に書かれているのが分りますよね。
当初はこのエンディングの予定だったらしいのですが、撮ってみて、スタッフ、キャスト全員があまり良くないと思った結果、公開バージョンのようになったということらしいです。

しかし、だ。
公開バーションの方が確かに派手だし、結果的にはいいとは思う。思うけど、あの橋が崩壊するシーンはあの描写でいいのか!!!!
もっとカッコいい崩壊の仕方があったはずだと私は思うぞっっっ(泣)

【カーク船長を考える 1】TOS船長の生立ちについて

2014-02-19 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
JJSTのFFをアチコチにで目にするようになり、“カーク船長”というキャラクターの認知度が上がる事に日々嬉しさを募らせている訳ですが、反面、TOSの船長についてのみなさんの認識に若干違和感を覚える事もあるので、ここでもう一度ワタシが理解しているTOSのカーク船長の生立ちについて、改めて述べてみたいと思います。長いですよ!



2233年3月22日にアメリカ、アイオワ州、リバーサイドという町でご生誕
父ジョージ・サミュエル・カーク、母ウィノーナ・カークの次男として生まれる。
兄はジョージ・サミュエル・カーク Jr. (カークだけが「サム」と呼んでいた)
カークの実家は農場を経営している。
・非公式の設定の中では、カークの父親はスターフリートの士官で、
 カークの幼少期に任務の途中で死亡、もしくは行方不明という説もアリ。

2246年頃(13歳) 地球植民星タルサス4番星の親戚の元にいた時、
細菌による食料の汚染が起きた。
壊滅的な被害を受けたタルサス4番星では、当時の知事コドスによって、
選ばれた市民だけが生き残るべきという選民思想の元、
4000人以上に上る大虐殺が断行された。
カークもその死刑リストの一人であったが、辛くも他の8人と共に生き延びる。

宇宙艦隊アカデミーに進学
 当時指導教官を務めていたベンジャミン・フィニーと
 生徒と教え子という間柄を越えた友情を育む
 フィニーは生まれた娘に、カークの名をとって“ジェイミー”と言う名をつけた
 2250年頃(17歳頃) USSリパブリック号に少尉として勤務していた時、
 当直をフィニーと交代したカークは、
 船を吹き飛ばす可能性の在る原子炉回路のスイッチの切り忘れに気が付き、
 それを日誌に記録したことにより、二人の中に亀裂が入った。
 (年若いカークの昇進を妬む周囲の讒言に耳を貸し、カークを深く恨むようになったフィニーは
 記録士官として後年カークの指揮するエンタープライズに乗り込んだとき、
 コンピューターの情報を書き換えることによりカークの地位を失墜させようとした)

 上級生のフィネガンに「カーク坊や」と呼ばれ、ことあるごとにからかわれ
 いじめにあっていたらしい。それはエンタープライズの船長になった後も
 引きずっていた。

 ルースと言う年上の少女と初恋に落ちるが、多くの時間を宇宙で過すカークを
 待つ事に耐え切れなかったルースはカークに別れを告げる。

 ジャニス・レスターと1年ほど付き合うも、
 自身が女性である事を強くハンデに思い、カークの才能に嫉妬したジャニスが
 艦隊士官である事を断念したことが原因で破局。

 この頃、レナード・マッコイと出会い、一生を通じた友情を育む事となる。

 アカデミーで講師を務めていた頃、教え子の中にゲーリー・ミッチェルがいた。
 真面目なカークとどこか破天荒なミッチェルは親友となり、後にカークがエンタープライズの
 船長に抜擢された時、カークはミッチェルを自らの副長に推薦している。

 時期は不明なものの、ミッチェルはカークと共に任務でデモラス星に降り立った時、
 カークを庇って毒矢を受け、瀕死の重傷を負っている

 アカデミー時代のカークは“本の虫”“歩く書架”と言われる程真面目で、勉強熱心であった。

 誰も攻略不可能なプログラムだった“コバヤシマルテスト”を
 独創的な発想でクリアしたただ一人の士官候補生となる。

 艦隊アカデミー史上上位3番に入る超優秀な成績で卒業。
 
宇宙艦隊に入隊
 ガロヴィック船長の指揮するUSSファラガット号に乗り組む。
 2254年(21歳) 初任務のひとつに、タイリーの住む惑星の調査団の指揮があり、
 ここでタイリーとの種族を越えた友情を育む。

 2257年(24歳) ブリッジで砲術士官として勤務中ガス怪獣にファラガット号が襲われた。
 ガロビック船長を含む大多数の乗組員がこのガス怪獣の餌食となった時、
 大尉だったカークは辛くも生き延びるのだが、
 この犠牲は自分の責任だと深く心に刻んだ。

 ヴェガ星脈絡髄膜炎を発症。死にかける。

 後のジャネット・ウォレス博士と恋に落ちるも、ジャネットはカークとの愛よりも
 穏やかで安定した愛情と生活が送れる26歳年上のウォレス博士との結婚を選んだ。

 宇宙艦隊検察官・アリール・ショウと出会いお互いに魅かれつつも
 カークの心は常に艦隊と自らの任務にあったため、深い関係になる前に
 なんとなく別れている模様。

 キャロル・マーカス博士と恋人同士になるも、二人の生き方の違いから破局
 (息子・デヴィッドをもうけるが
 キャロルの意志でカークは後年まで知る事はなかった)
 
2264年(31歳) 史上最年少でエンタープライズの船長に就任。5年間の調査飛行へ
 アカデミーからの友人、ミッチェルを自らの副長に推薦するも聞き入れられず。
 船医にドクター・マッコイを希望するが、何らかの理由で最初からの乗組員としては
 マッコイは乗船していない。

 ゲーリー・ミッチェルがけしかけて付き合う事になった秘書官と
 あわや結婚するところまで行きそうになる。

 銀河系外宇宙の調査時に接触したエネルギーにより、超感覚能力が暴走した
 ミッチェルは、自らを神と名乗り、人類に危害を加える存在と化してしまったため
 やむなくカークは彼を殺さざるを得なかった。

 デネバ星を襲った謎の精神寄生体により、兄・サム・カークとその妻オリーランを
 殺されてしまった。
 ・兄夫婦には3人の子供がいるが、恐らくカークの母親が引き取って
  養育したものと思われる非公式設定あり。

 カリディアン劇団と言う一座が巡業する所、タルサス4番星の知事であるコドスを
 証言できる大虐殺の生き残りの人物が必ず死亡している事を知ったカークは
 カリディアンがコドスではないかと疑念を持ち
 カリディアンの娘レノアに近付くが、彼女の知性とミステリアスな魅力に魅かれてしまう。
 しかし、真実は父カリディアンの正体がコドスである事を知ったレノアが
 父を守るために、父の過去を証言できる生き残りの人物達を殺害していたのだった。
 カークを殺そうとするレノアを止めようとしてカリディアンはレノアの放った銃弾に倒れ
 レノアはそのショックに耐え切れず発狂してしまい、
 カークの心にはいい知れぬ苦い思いだけが残る。

 誤った細菌兵器のため子供だけ生きる事が出来ない惑星で、
 思春期を迎えたミリという少女に初恋の思いを抱かれる。

 カーク専属の秘書であった下士官、ジャニス・ランドに好意を持たれていると知りつつ、
 かつカーク自身も彼女に特別な感情を抱き始めている事を自覚していたが
 船長である事を誰よりも自分に賭していたカークは、人としての愛よりも
 エンタープライズを選ぶのだった。
 (その姿勢は、ジェネシス事件によってスポックを失うまで続く)
 ジャニスはその後、自分の思いが通じないことを悟りカークの元を離れていった。

 ベン・フィニーの策略によって、軍法会議で窮地に陥れられた時、
 カークが年若くどんどんと昇進していく事に妬みを持つものが多く
 カークを心配、味方するものは殆ど居なかった。

 永遠の守護者という謎の物体の調査中、
 事故によって過去に行ったマッコイが歴史を変えてしまった。
 自分達が存在する筈の元の歴史に戻すため、過去に行ったカークは、
 社会事業家エディス・キーラーと出会い、心魅かれていく。
 しかし彼女こそが変わってしまった歴史の転換点であり、彼女の死が
 自分達の生きる歴史の流れには必要である事を知ったカークは
 彼女の死を目の前で見過ごすしかなかった。

 7年に一度のバルカン人の生殖に関わる生理的周期に襲われ、
 死にかけているスポックのため
 カークは自分の地位も何も投げ出してスポックのためバルカン星に向かう。
 そこで待っていたスポックの婚約者に、結婚の儀式のための決闘の相手に指名され
 発情によって正気を失いかけているスポックに殺されかける。
 生か死かの決闘であったが、マッコイの機転で危機を脱した。
 スポックはカークの死のショックで正気に返り、以後7年に一度の筈の発情期は
 スポックには起こっていないようである。

 惑星コリードの連盟加入についての重要な会談が行われるため
 各連盟加盟惑星の代表者達を小惑星バーベルの会場まで乗せる任務で、
 バルカン大使夫妻がスポックの両親と知りカーク達は驚く。
 エンタープライズに乗船して間もなく
 スポックの父大使サレックは、心臓に重篤な病を抱えており倒れてしまう。
 時を同じくして連盟の不和を目論むオリオンのスパイによって
 カークも重傷を負わされてしまう。
 エンタープライズを破壊しようとするオリオンの工作員を倒す事と、
 サレックの命を救うため、重傷の痛みを耐え、見事やり抜いたカークは
 心臓の手術を終えたサレックの居る同じ病室に3日間以上入院を余儀なくされた。
 
 コンピューター科学第一人者であるディストロム博士が、革命とも言える画期的な
 コンピューターシステムを作り上げた。
 それは1台でコンステレーション級の宇宙船を操船できるものであり、
 そのシステムを艦隊で採用する為の最後の実地試験の対象として
 カークの指揮するエンタープライズが選ばれた。
 カーク達上級士官以外全ての乗組員は下船させられ、指揮権すらも
 M-5に任せるよう命令を受け、技術の進歩は歓迎するべきだがと複雑な心境のカーク。
 この演習試験の指揮を執るウェズレー准将はカークの良き同僚であり上官であるが
 カークのことを「名誉在るキツネ狩りのキツネ」と呼び、
 ディストロム博士の新システムM-5の優秀な成果を評し、
 「ダンセル=必要の無い部分 船長」と揶揄した。
 もともと、危険な宇宙探査任務から不必要に失われる人類の命を救い、
 更に有意義な人類にしかなし得ないことをするためにと開発されたM-5システム
 であったが、“人間のように”思考するシステムのために採用したディストロム自身の
 思考パターンが、不安定な感情部分をも増幅してしまうことになってしまった結果
 演習に加わっていたエクスカリバーを大破させ、艦隊に甚大な被害を
 与えることとなった。
 結局、M-5の採用は見送られ、M-5のことで精神にダメージを負った
 ディストロム博士は病院送り、カークは無事に指揮権を取り戻した。
 コンピューター技術に対して、非常な信頼と興味を寄せていたスポックは
 それでもカークに「コンピューターは優秀な召使いたりえるが、指揮官にはなりえない。
 人が人に尽くすからこそ価値がある。一人の人物に対する忠誠が艦隊を支えている。
 決して機械が、人を支配してはならない」ということを言うのである。
 このダンセル船長と揶揄される場面に、カークの艦隊の中での周囲の扱いが
 垣間見える。

 かつて訪れた平和だったタイリーの惑星に、クリンゴンが介入を始めたため
 タイリーの率いる山の民と村の民との間に諍いが絶えなくなっていた。
 カークはなんとか元の平和な星になるよう、タイリーと協力しようとするも
 村の民に対して憎しみを持つタイリーの妻、魔術を操るノナが
 カーク達の持つ武器を得ようとカークを魔術によって幻惑し、
 武器をカークから奪い地の民に戦いを挑むもあっけなくなく嬲り殺されてしまう。
 ノナの最後を知ったタイリーは、ついに憎しみに心を染めて
 カークに武器を渡すように要求する。
 二つの種族を共存共栄させる手段が憎しみによって
 潰えてしまったことを知ったカークは、苦渋の決断として、
 両種族の勢力が均衡を保てる程度の武器を渡すしかなかった。

 小惑星の接近により危機に陥った惑星を調査するため降り立ったカークは、
 事故で記憶を失い、そこに住んでいた太古のインディアンに似た文明を持つ種族に
 助けられる。
 記憶はないものの、先進的な知識を持つカークは、 
 様々な“奇跡”の技を使って彼等の生活を助けていく。
 彼等の長の娘であるミラマネは、カークに心魅かれ彼こそ伝説の救世主だと信じ、
 やがて二人は結婚し幸せな時を過し始める。が小惑星の接近により天変地異が始まり、
 救世主ならばその事態を何とかしてみせろと元々カークを快く思っていなかった
 かつてのミラマネの婚約者が人々を煽動し、ついに二人はリンチにあってしまう。
 そのとき、カークを探し当てたスポック達が現れ、スポックの精神融合の力を借りて
 記憶を取り戻したカークは、スポックと共に接近する小惑星を破壊する装置を発見、
 これを使用して危機を脱した。
 しかし、カークの子供を妊っていたミラマネは
 カークとの幸せな生活を夢見つつカークの腕の中で絶命するのだった。
 ・ミラマネは、唯一カークと正式に婚姻関係を結んだ女性となった。
 
 惑星連盟の加入国家でありながら、長く戦争状態にあったトロイアス星とエラス星が
 このままでは共倒れの道しか無く、それならば和平を結び、共存の道を模索していく事になり
 それぞれの王族同士で婚姻関係を結ぶ事になった。
 カークは、エラン星の王女エランをトロイアス星に無事に送り届ける命を受ける。
 しかし、我が儘勝手なエランは、トロイアスに対しての敵意や侮蔑の気持を隠そうともせず
 自分の境遇を嘆き、不満を募らせ、トロイアスの王族としてのしきたりを教える教育係に
 重傷を負わせてしまう。
 やむなく、エランの教育係にされてしまったカークは、それでも自分の置かれた立場には
 果たさねばならない責任がともなうものなのだと彼女を諭す。
 そんなカークに反発し、憎しみすら持っていたエランは、エラス人特有の媚薬効果のある涙を
 カークに触れさせ、カークを意のままにしようとするが、強力な媚薬効果によって
 エランに魅かれているにもかかわらずカークはいついかなる時であっても
 その強固な意志の力で以て、エンタープライズの船長としての責務を果たそうとするのだった。
 そんなカークの姿に、エランは一人の人間として尊敬と愛情を抱くようになるが、
 カークに教えられた、自分の立場とその責任という言葉を重く心に受け止め
 トロイアスのエランとなるべく去っていくのだった。

 6000年以上も生き続けて来たフリントという男が、自分の生涯の伴侶として
 自らの持てる知識全てを掛けて作り上げたアンドロイドの女性、レイナ・カペック。
 しかし、全てが完璧にも関わらず、ただひとつ、フリントが求める愛に応えられる感情だけが
 どうしても生まれない。
 そんなとき、船の事故でカークが彼等の元にやって来た。
 見た目は壮年でも甲羅を経たフリントとは違い、若く活力に溢れ情熱的で美しい青年のカークに
 レイナは今までにない反応を見せ始める。
 そんなレイナのカークへの反応に、可能性を見出したフリントは、カークを当て馬にし
 レイナを自分の愛に応えられる状態にしようと画策する。
 レイナの正体に初めから薄々気付いていたスポックは、
 レイナへと急激に魅かれていくカークをなんとか止めようとするが、
 フリントと言う男の絶望的に孤独な心が作り上げたレイナという女性は、
 カークの孤独の心にさえも強く入り込んでいく。
 カークの出現によって、愛という感情を急激に目覚めさせてしまったレイナは、
 父として尊敬し、肉親として愛するフリントと、異性として魅かれ、愛してしまったカークとの
 愛情の相克にどちらを選ぶ事も出来ず、ついにその機能を止めてしまう。
 カークは、自分の愛と情熱の無惨な結果にただ打ちのめされるしかなかった。
 ・カークの心を思いやるマッコイがスポックにこの悲しい出来事をカークの心の中から
  消し去るように頼むが、果たしてスポックが本当にそれを実行したのかは疑問である。
  ニモイ氏は、この行動はスポックらしくないと、この脚本には最後まで反対したという。

 惑星ケイマス2の遺跡調査隊から救助信号を受けたカークは、そこでかつての恋人
 ジャニス・レスター博士と再会する。
 瀕死の状態だと言うジャニスは、実はその遺跡で発見した人格を交換する装置を使って、
 自分が女であるがために得る事の出来なかった地位にいる
 カークと自分の人格を入れ替えることを画策し、カーク達を誘き寄せるために
 協力者のコールマン博士と共に他の調査員を殺害していたのだった。
 カーク体を手に入れ、自分の体の中にカークの人格を閉じ込める事に成功したジャニスは、
 忌むべき女の体である自分の肉体と共に、全ての憎しみの対象であるカークという人格を
 葬り去ろうとする。
 しかし、肉体だけ手に入れても所詮は望むものは何一つ手に入れる事は出来ず、
 ジャニスの心は崩壊し、装置の効果は解除され、カークは元の肉体に戻る事が出来た。
 カークは、女性であるというアイデンティティをどうしても受入れる事ができず
 他のもっと優れた才能を持っていたにも拘らず全てを否定し続けたジャニスに
 哀れみを感じつつも理解に苦しむのだった。
 しかし、もっともカークの資質と適正、その才能を理解し認めていたのは、
 他ならぬジャニスだったのかもしれない。

2269年(36歳) 5年間の調査飛行終了

2270年(37歳) 提督に昇進
 艦隊司令部士官のロリ・シアニと恋人関係になるが、
 ロリの後ろに司令部の意図を感じた事や、 自らのエンタープライズへの未練などから
 ヴィジャー事件を期に破局。
 しかし、ロリはカークの身を案じヴィジャー事件が発生した時
 エンタープライズに乗艦しようと転送した時事故で絶命している。

2271年(38歳) ヴィジャー号事件発生
 この後、次の5年間の調査飛行に飛び立っているらしい

2276年(43歳) 二度目の調査飛行終了、一度目の引退?
 ・この辺りから、艦隊に復帰する辺りでアントニアと出会っているという説あり。
 
2284年(51歳) 提督として艦隊に復帰。地上勤務のデスクワークに縛られる
 宇宙艦隊アカデミー指導教官になる。

2285年(52歳)~ カーン・ヌエニン・シンがカークへの復讐のため
 ジェネシス装置を奪う事件が発生。
 かつての恋人、キャロルと再会。自分にデヴィッドという息子がいた事を知る。
 スポックが危機を救うため殉職。魂の半分をもぎとられたような哀しみを覚えつつも、
 自らの生き方を顧み、そして息子デヴィッドと和解を果たす。

 スポックがバルカン人の伝統に倣い、カトラをマッコイに託していた事、
 ジェネシス装置の効果を確実にするためにデビッドが母に隠れて禁断の技術を用いていた事で
 ジェネシスに葬られたスポックの肉体が再生を果たしていた事などから
 スポックの復活のために全てをかける決心をする。
 
 ジェネシスのことを知ったクリンゴン人のクルーグは、その秘密を奪おうと画策し、
 ジェネシスを調査していたカークの息子であるデビットを殺害した。
 またエンタープライズを奪おうとしたため、カークは乗り込んできたクルーグ一派諸共
 エンタープライズを自爆させ危機を脱し、クルーグが載って来たバードオブプレイを奪取、
 スポックを復活させるためバルカン星に向かった。

 スポックは無事復活を果たすが、カトラと新しい肉体、バルカンでの再教育などにより
 完全に全てを取り戻しては居らず、カークとの友情にも微妙なずれがあった。

 スポックの復活に関する一連の罪状の裁判を受けるため地球に向かう途中
 謎の探査船により地球が危機的状況に陥った事を知り、その事態の解決のためには
 絶滅してしまったザトウクジラが必要なことを突き止めたカーク達は、バードオブプレイで
 20世紀の地球へタイムスリップし、ザトウクジラのつがいを
 23世に連れてくることにより地球を危機から救う。
 これにより、カークは罪状の殆どを免除され、提督から大佐に降格、エンタープライズAの
 船長として、現場に戻る事になった。

 ニムバス3で起きたスポックの異母兄、サイボックによる事件に巻き込まれる

2293年(60歳) クリンゴンと惑星連盟との和平会談のため、
クリンゴンのゴルコン宰相を迎える任務を命ぜられるが、息子デヴィッドを殺された事などから
心に蟠りの在る自分は適任ではないと異を唱えたが、聞き入れられず不本意ながら任務に就く。
ところがクリンゴンと惑星連盟の和平に反対な一派により、
ゴルコン宰相暗殺の犯人の濡れ衣を着せられ、クリンゴンのルラペンテ刑務所にマッコイと共に
収監されてしまう。その時にこの和平会談を決裂させようとする陰謀に気が付き、
命がけでこの歴史的な会談、キトマー会談を成功に導いた。

このキトマー会談の三ヶ月後、カークは2度目の引退をした。

引退後、エクセルシオール級になった新造エンタープライズBの進宙式に
ゲストとして招かれるが、その処女航海中に謎のエネルギーリボン、ネクサスに巻き込まれ
エンタープライズと乗組員を守るため殉職

2371年(年齢不詳) 時間連続体ネクサスの幸せな幻影世界にに取り憑かれたソラン博士により
引き起こされたヴェリディアン3号星での悲劇的な事件を防ぐためにネクサスリボンに入り込んだピカードによって発見されたカークは、ピカードと共に
現実世界に戻り、ソランの計画を阻止するため崖から転落。死亡がピカードによって確認された。
・ネクサスの中にいたピカードによって発見されたカークが、
 果たして本人そのものであったかどうかは、かなり疑問。
 ネクサスの中には、ガイナンがいたが、彼女は自分自身はこの世界に残された幻影であり、
 本人自身ではないと言っているからだ。
 また、ネクサスは一度取り込んだ生命体を記憶し、再生する事も可能であり、かつまた、
 取り込まれた生命体が一番望む幸せな幻影を見せるものであるらしい。

参考文献 スタートレックエンサイクロペディア、SVマガジンスタートレック大研究1~3 それにワタシの妄想。

TOSのカークがJJSTのカークに比べ幸せである、という記述を見たことがあるのですが、それは絶対にないと思うのですよ。
どちらが不幸であったかは分りませんけど、13の少年が、目の前で親戚や友人知人が殺されていく光景を目の当たりにし、なおかつ自分も殺される運命であると告げられる経験は、JJSTのカークの生立ちに比べて遥かに悲惨な経験だと思うんですよね…
でも、TOSのカークはそれでひねくれる事もなく、宇宙艦隊アカデミーに進学し、様々な経験を積み、史上最年少の31歳でエンタープライズの船長の地位を得る訳です。
この生い立ちは、ウィキとかちょっと調べれば容易に分る筈なんだけどなぁ…
ちなみにTOSの中の出来事は、ワタシがポイントとして考えているものをピックアップしているので悪しからずです。

また、カークのキャラクターとして、ホレイショ・ホーンブロワーとハムレットが上げられています。ワタシはホーンブロワーシリーズは未読なのですが、ハムレットというのはとても頷けます。
シャトさま自身がシェイクスピア劇団であるストラスフォード劇団出身という事もあるし、スタートレックの制作者はどうもシェイクスピアになみなみならない思いがあるようで、度々シェイクスピアが題材やモチーフとして使われています。
ST6でも、クリンゴンのチャン将軍が度々シェイクスピアのセリフを言っていますよね。

さて、ハムレットとの共通点を上げてみましょう。
まず年齢設定が30ということで近いこと、船長と王子という違いはありますが、人々から敬われる立場であり、かつまた他者からは理解されにくく孤独な存在であること。
またずば抜けて頭脳明晰であり、繊細でいてかつ行動は大胆であること。
敵を追い詰めるのにハッタリをかます所も似ていますよね(笑)
ハムレットが復讐を遂げ、敵の毒に倒れる時に、後を追おうとするホレイショを禁めて止め、自分のために生きて欲しいというのも何となく…
またハムレットを囲む人物設定にも共通点が多いです。
ハムレットを常に理解し、彼がその心のうちに悩みを抱え切れなくなると、そっと現れ、彼を導き助ける存在であるホレイショというキャラクターがいますが、これ、スポックとマッコイですよね?ちなみにマッコイのミドルネームは“ホレイショ”というんですよw
話自体もハムレットを題材としているものがあります。「殺人鬼コドス」はまんまハムレットですよね。また、「6200歳の恋」のヒロイン、レイナ・カペックはそのキャラクターがこれまたまんまオフィーリアです。
シャトさまもそこら辺をとても良く理解して演じているような気がしてなりません。

そう言う意味で、JJSTのカークはちょっと違うと思うんですよね。確かにネロの所為でカークは父親を失っていますけど、ネロとカークの間にクローディアスとハムレットのような関係性は見えません。また、オフィーリアを思わせるヒロインもいません。
今回のSTIDのヒロイン、キャロルにもオフィーリアのような父と恋人との間の葛藤は全然ありませんでした。
JJSTには、良くも悪くもシェイクスピア的なニュアンスは皆無なんですよね。
そこら辺も、ワタシが今ひとつJJSTに馴染めない一因なのかもしれません。


【蛇足の追記】
念のためですが、上記船長の生立ちについては、公式に発表されているもの+私の妄想もかなりあります。
あくまで、ワタシが船長達を妄想するときの個人的な基準です。
もし、ここを訪れてくださっている皆さまがご自分でFanFicを書こうと思われたときには、必ずご自分自身で必要なエピソードを見るなり、公式のデータを調べるなりしてくださいね。
二次の二次が楽しいことはワタシもとても良く承知していますが、マモーも言っている通り(←古い)、コピーを重ねていけばどんどんと劣化していきます。
オリジナルこそがやはり一番だとワタシは信じて疑いません。
ワタシの駄作で少しでも萌えて頂けたなら、ぜひオリジナルをもう一度見返して頂ければ幸いです。

究極のラブシーンだと思うもの

2013-10-31 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
カークとスポックの究極のラブシーンだと信じて疑わない場面があるですよ。
ひとつは伝説の5年間の調査飛行を終えて、2年のブランクを経てお互いにお互いの本当の気持ち、正直な自分に気づいた瞬間。↓

カークは自分の中にある野心、嫉妬、あらゆる負の感情と対峙し、スポックは自分の中にある純粋なバルカン人にはない部分を認め、自分らしい生き方とは何かをあらためて考え始める訳です。

「スポック。何故君はたった一つの世界の一部になるために、それほど激しく戦うのかな?どうせなら両方の最良の一員になろうと勤めたらどうだ?」

このカークの言葉の意味を、スポックはこの瞬間にしっかりと心から理解したと思う訳です。
そして、自分のカークへの気持ちが、ただの上官への忠誠心でも、親友と言う友情というものでもなく、怯えて逃げ出してしまったくらいの大きな感情だったと認めてしまったんだと思います。
だからこの後のスポックはもう迷いはナイですよね(腐笑)
カークはまだこの時点では多分、スポックに対してハッキリと恋愛感情は意識していないのではないかと思うんですけどね。まだまだ友情だと信じて疑ってなかったと思います。

そして、15年の月日の中で、二人の関係も徐々に深く穏やかなものになっていく中で、カークは自分の本当の望みを押し殺して、組織の良き一員であろうと生き続けている。カークにとってその生き方が「多数の利益は少数のそれに優る」という言葉の答えだったのだろうと思います。
しかしスポックはそんな彼の選択が間違いであると、ずっと思い続けていたし、カークにもう一度宇宙船の指揮をするよう進言をマッコイとし続けています。
そんな時に、カーン・ノエニン・シンが突如として復讐と言う言葉と共に彼等の前に現れる訳です。
そして、カークと、彼の何よりも大切なエンタープライズを守るためにスポックはその命を犠牲にしていく。↓


「私はこれまでも、これからもずっとあなたの友人だ」
「多数の利益は少数のそれに優る」
「ひとりの…です」

このやりとり、表面上はエンタープライズの乗組員など多数の命のためには、スポック自身の命の有無など問題はナイ、と思えるんですが(勿論そう言う意味で言っているとは思いますが)腐った目で見るとですね、カークという一人の個人の利益のために、スポックはその他全てを犠牲にしても構わなかったのだ、という風に言っているのではないかと思えてくるんですよ。
スポックにとって、カークという存在だけが全てで、他には何も要らない。
多数の利益よりも、自分たった一人の満足のために行動したのだと。
そうして初めてスポックは、カークが存在するための糧として彼という存在の一部になっていく。
そこで初めてカークは、自分の中にあるスポックへの感情が本当はなんであったのかハッキリと自覚し、「若返ったよ」という言葉に結びついていく。

スポックを失って初めて、その存在の大きさに気付き喪失に打ちのめされていたカークに、突如スポックの父サレックからスポックを取り戻せるかもしれない可能性があることを知らされたカークは、そのスポックの愛に応えるように、自分の人生全てを捧げてきたエンタープライズを自らの手でやむを得ないこととは言え破壊してしまいます。↓



「これで良かったのだろうか…?」と言うカークの問いかけにマッコイは「君は絶望を生きるチャンスに変えたんだ」と答えます。
スポックを失った絶望を彼が生き返るチャンスに変えたんだよ、と聞こえて来ませんか?(大笑)

もうその後はリア充爆発しろ!!ってなイキオイで二人はひと目も憚らず、蜜月を迎えていくんですよねーwww
「あなたを一人にはしません」↓
まぁ、結果的に一人にしちゃってカークは死んじゃいますけどねww

次がこれ。顔近けーよっっっ↓


というわけで、この二人については、その死が二人を分ったとしても、そんなこと関係なく未来永劫イチャコラしていて欲しいとか思うのでありました☆
JJTREKのパラレルに飛ばされちゃったスポックの所に、時空を超えて"彼の"カークが迎えにきてくれる話が出来ないかなぁ。無理だろうけど。
幸せになって欲しいよ、スポックには。カークはどんな時もがっつりやることやりきって生きているから、意外と幸せなんじゃないかと思うから、敢えてわざわざ幸せになって欲しいとは思わないんだよね(笑)


宇宙の幌馬車隊 闇の世界へ IMAXで見てきた

2013-09-14 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
あれだけけなしているにも関わらず、3回目も見てきました。
こんどはIMAXで。

以下ネタバレばりばり含むので、未見の方は自己責任の上お読み下さい。
なお、トップページでもお断りしています通り、ワタシはオリジナルシリーズ信者です。
新作がお好きな方には非常に腹立つことを言うと思います。
それによってご不快な思いをした場合について、一切ワタシは責任は持ちません。
新作が好きな方に対する配慮は一切しません。

それでもという方はどうぞ。


IMAX、高いけど良かったです。
3Dで見るなら、IMAXがいいと思いました。どうせ3Dは割引もきかないなら多少高くなってもIMAXの方が見る価値はあると思いました。
何より画面が明るいので見やすいし、大きいので迫力が全然違います。
JJSTは迫力が見せ場のひとつですから、IMAXで見る方が視覚的にもより楽しめると思います。

あれだけ宣伝ぶったわりに今回も大コケのようです。

大体世界公開が5月だったって言うのに、なんで日本だけこんな遅らせたのか。
全世界一斉公開にあわせていたなら、もっと違ったんじゃないかと思います。
それに、カンバーバッチさんの役柄は、別に世紀の悪役でも何でも無いただの可哀想な人だったし。
人類最大の危機どころかただの宇宙艦隊地球本部の危機でしかなかったし。
悪い奴他に居たし。
人類最大の弱点は愛だって言ってるけど、あ、それは合ってるか。

前回の時は、サイラー役で人気のあったザッカリー・クイントのスポックを前面に押し出した宣伝で、今回はシャーロック役で人気のあるカンバーバッチを前面に押し出した宣伝で、肝心の主役のクリス・パインの存在がなんて希薄。
スポックに人気をかっさらわれたシャトさま・カーク船長より気の毒にさえ思えてしまう。
もっと主役の俳優に敬意を払えよ、日本のパラマウント宣伝部。
インタビューでもちゃんと監督もカンバーバッチも主役の話をしているにもかかわらず、同時通訳でははその部分割愛していたし。
酷過ぎるんじゃないかと思った。

それから、いくら今度の映画をよく思わせたいからと言って、過去のスタートレックシリーズ、TOSを、しかもシャトさまを貶めるような記事を書かせるなと思った。まぁ、これは雑誌の記事だからパラマウントは関知できる事ではなかったかもしれないけど、逆に自信の無さの現れだとも受け取れてしまうぞ。

そんなわけで、今回の映画は、ひたすらスコッティがいい味を出していると思いました。
見所はスコッティです。

スポックは相変わらずウフーラとチュッチュ、チュッチュとイチャコラしていて論理どころではなかったですね。
むしろカークの方がよほど冷静。マッコイは逞しくなっていましたが、医者とは思えないほどの技量を各方面で発揮。
ウフーラはスボックとイチャコラする他は、職場放棄としか思えないほどアチコチに出現していました。
エンタープライズ、真剣に人材不足なんではないかと言う位、ブリッジのメインクルーしか働いていません。
いっそのこと、主任通信士官は、パルマー中尉がなればいいと思う。
転送主任のカイル中尉は何所に行ったんだろう。
ドクター・ムベンガも。
あ、クリスチン・チャベルはこの世界では、ロジャー・コービー博士と共に例の氷の惑星に行っちゃっている模様なので、スポックに恋する乙女としては出てくる予定はなさそうです。
そして相変わらずエンタープライズ号のメインエンジンは水冷式です。
エンジンルームには原子力マークガンガンついているタンクがいくつもあって、正体不明の蒸気が吹き出し、最終的にはエンジンルームはそのタンクから漏れたような液体で水浸しです。
ワープコアは、ヴィジャーみたいで、足で蹴飛ばすと直っちゃうと言う20世紀のブラウン管のテレビなみの性能です。
あ、あと、ワープ中は何となく異次元に行っているみたいです。ワームホールとかではなく。
デフレクターは光る吸気口になってました。ここに異物が入ると、ジェットエンジンよろしくエンジンがバーストしてしまうみたいです。怖いですねぇ。


ということで、あとは日本語吹替えが見たいけど、見られるかなぁ…(まだ見るのか)

宇宙の幌馬車隊 闇の世界へ 2回目を見た

2013-09-13 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
ええ、堕ちてましたね。
見事なくらいダークサイドに。
スポックが。

と、いうことで、先日STIDの2回目を2Dで見てきました。

以下ネタバレばりばり含むので、未見の方は自己責任の上お読み下さい。
なお、トップページでもお断りしています通り、ワタシはオリジナルシリーズ信者です。
新作がお好きな方には非常に腹立つことを言うと思います。
それによってご不快な思いをした場合について、一切ワタシは責任は持ちません。
新作が好きな方に対する配慮は一切しません。

それでもという方はどうぞ。


やっぱり、これがスタートレックというベースを元に作られている物語でなかったなら、素直に面白いスペオペだと思いました。

隅々まで画面を見るなら、やはり2Dの方が見やすかったです。
画面のあちこちに旧作ファンへのサービスが散りばめられており、知っている人はニヤリとしてしまうでしょう。

でも、いくら人の普遍的な問題を扱っていたとしても、やっぱりこれがスタトレだと、私は言いたくありません。

逆に、何もかもがTOSとは違ってしまっているのが救いのような気がします。

ジョン・ハリスンと名乗った人物を果たして例のキャラにする必要があったのか。
別にそのままでも良かったのではないかという気もします。

また、ST2でスポックがなぜ死ななければならなかったのかという説得力の強さに対して、今回のカークのシーンは、ただのヒロイズムでしかなく、またその復活はもはや御都合主義でしかありません。
おとぎ話としてはとても良くできているのですが、人魚姫が死なずに幸せになってしまうような、ネロとパトラッシュが、死ぬ前に発見されてコンクールでも優勝してしまう大団円のラストにしてしまったような、そんな感じすら覚えます。つまり、原作が言わんとしている根本を全く理解せずに作られてしまった二次創作みたいな感じ?

原作としてのTOSがなかったなら。
いい加減なように見えて、実はTOSの世界は実に綿密に科学的な根拠に基づいて構築されています。その小道具一つとっても実によく考えられているのです。
事実、フロッピーディスクや携帯電話、iPadなど、すでに類似したものがTOSの中には日常的に出てきています。
これらからも、TOSの世界設定がいかに綿密に考えられていたかがわかろうものです。

JJSTに、そこまでの世界設定は感じられません。
見た目の分かり易さを優先した派手さと、華やかさだけで、23世紀と言う未来のリアリティがない。
今の時代に宇宙船があったら、と言う感じしか受けません。
スタートレックの基本は人間讃歌ですが、それもない。

スタートレックじゃない。
まだギャラクシークエストの方が、よっぽどスタートレックと言えると思います。

というところで、続きはまた次回。(まだ続くのか)

宇宙幌馬車隊・闇の世界へ を見てきた訳だが。(やっぱりカークは“カーク船長”ではない)

2013-08-28 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
とりあえず急遽時間が出来たので、STAR TREK INTO DARKNESS を3D上映で見てきました。

以下ネタバレばりばり含むので、未見の方は自己責任の上お読み下さい。
なお、トップページでもお断りしています通り、ワタシはオリジナルシリーズ信者です。
新作がお好きな方には非常に腹立つことを言うと思います。
それによってご不快な思いをした場合について、一切ワタシは責任は持ちません。
新作が好きな方に対する配慮は一切しません。

それでもという方はどうぞ。


さて、まだ1回しか見ていないので、細かい所までは読み切れていないのですが、とにかく“スペースファンタジー”かもしくは“スペースオペラ”として考えるなら、非常にエンターテインメント性に富んだ面白い映画ではないかと思います。
派手なアクション、わかりやすい筋立て、宇宙船での派手なドンパチ、吹き出す炎に、撒き上がる水しぶき、セリフより動き、見た目に重点をおいた演出。
頭を使わなくてもどんどんと進むストーリー。
2時間と言う僅かな時間をひたすら観客を飽きさせず、楽しませる映画だと思いました。

そう。
スターウォーズなんですよ。まさに。

元からスターウォーズは「映画」として作られた物ですから、当然ストーリーも映画として作るのにふさわしい内容です。
ヒットする要素も沢山あり過ぎるほどある。
逆に言えば、スターウォーズのような内容にすれば、観客はある程度満足する事をこの映画は奇しくも証明してしまった気がします。

でもそれは、スペースオペラであって、サイエンスフィクションであったスタートレックではないんです。
スタートレックの真骨頂は、確固としたキャラクター性を持った様々な個性的な人物達の会話によって創り出される深いメッセージ性であって、そこに派手なドンパチは、あまり必要ではないんです。
だから、最初の映画、The Motion Pictureはもっともスタートレックらしい内容であったがため、ヒットしなかったと思うんです。

ということで、繰り返しになりますが今回の映画は、映画としてスタートレックの世界を作り上げるのは非常に困難だという事がより明確になった作品と言えないでしょうか。

カークの持つ知性に裏付けられた勇気、スポックのもつ知性に裏付けられた論理性、マッコイの持つ知性に裏付けられた情。
この三人に象徴される人間性の“善良な”心が、それぞれの性格によって色付けされてセリフとして語られる時、SFという形をとりつつ人としての普遍的な問題を浮かび上がらせた上で、希望を提示してくる。それが宇宙大作戦、オリジナルのスタートレックだったと思うんですよね。

さて。
前回の映画では中途半端にオリジナルのキャラクターのイメージを引っ張っていたので、ワタシはとても抵抗を感じていたのですが、今回はいっそ清々しいほどオリジナルのキャラクターとは別人格になっていたので、実はワタシは嫌な感じは全く覚えませんでした。

なぜなら宇宙船USSエンタープライズ号3代目船長、ジェイムズ・T・カークは、この映画で描かれているような、自意識過剰で短慮な若者だったわけではありませんから。
それに彼はプレイボーイと言われていますが、それはスグに誰とでも寝るような、そんな浅はかな男でもありません。
女と寝るのがプレイボーイではありません。
女でも、男でも、そうでなくても、「その気にさせてしまう」「惹き付けてしまう」のがプレイボーイなんです。
そして、カークはその自分の魅力も武器も良く知っていて、必要であればそれを使っているに過ぎません。
自分は本気になれないにも関わらず、相手が自分に対して本気になりそうだと感じた時は、きちんと逃げています。
自分が相手に対して本気になってしまった時は、カークは自分自身も深く傷ついているんです。
そして、自分の船長という立場上、恋愛がいかにリスキーな事になるかを良く知っているんです。
彼が本気で愛した時、何時も彼は「船か恋人か」を迫られています。
そしていつも「船」より恋人をとろうとするけれども、運命がそれを許す事が無かったというだけなんですね。

宇宙大作戦を注意深く見れば、カークがまだ青年だった頃は、非常に真面目で内気な青年であった事がよく分ります。
あんなスグにオネエちゃんとよろしくやる事に快楽を見出し、感情の赴くまま殴り合いをしたり、直感だけで行動したりするような人物ではないんです。

オリジナルシリーズでのカークは確かに良く「勘だ」といいますが、それは論理的に様々なことを検討しても活路が見出せない時に初めて使うんです。
闇雲に自分の思う事を行動に直結している訳ではなくて、勘を勘として行動に移す前にちゃんと検討しているんです。だから成功する事が多い。
経験と知識に裏付けされた論理的な方法では、どうしても突破できないような困難な状況に立たされた時に発揮される「勘」が、カークを宇宙艦隊一の問題児ながらも、事件を最良な形で解決して行く英雄=カリスマたらしめた訳なんです。

そう言う意味で、今回の新作カークには、カリスマ性も知性も感じられないんです。つまリホントに別人。

クリス・パインのカークは今時の本当にカッコいい若者です。
でも、カリスマ的な魅力を持ち、敵からであっても尊敬と畏怖の念を籠めてその名を呼ばれる“カーク船長”ではないんです。
この映画のラスト、5年間の調査飛行に彼等は飛び立ちます。
そこで、様々な文明と生命達に出会い、果たして本物の“カーク船長”になれるのか、そうなれたらいいねという希望を持ってこの映画の最後を私は見ていました。
なので、実は一番ジンとしたのは、ラストのお馴染みのファンファーレが流れた時だったんですよねー。

さて。長くなっちゃったので続きはまた。




咳で寝られないので船長萌え語り~ジェネレーションズ編~

2012-08-19 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
「カーク船長が出る」
ジェネレーションズが公開されるとき、こう言う情報を手に入れたワタシは、TNGにはまーったく興味がないまま、映画館へと行きました。

正直ショックでした。
ええ、色々な意味で。
何よりもあの死に様!!! 何という情けない…!!

公開当初あの「体重の重さに耐えかねた橋が崩壊して船長ごと崩落して挙げ句死亡」という画像に、船長が死んでしまったことを見せつけられたショックと共に憤りを覚えたものです。
もっと、カークらしい、カッコいい死に方があってもいいじゃないかと。
まあ、歴史上の公式の死亡は、エンタープライズBでの救出行動中の事故となっているので、ソレはソレでカッコいい部分もちゃんとあった訳でございますが。

しかしですね、あのサイッテーなシナリオの中でも、シャトさまはちゃんとカッコいい、カークらしさを演じていたのだと最近やっと気づきましてん。
船長はちゃんとカッコ良かったんですよ。
どんなに情けない死に様を用意しようと、シャトさまの船長はちゃんと輝いておったんです。

ピカードと協力して、ネクサスという永遠の楽園を後にする時、カークは実はもう自分の死を覚悟していたと思うんです。
自分らしい人生の締めくくりを、自分の意志で選ぼうとしている、そう言う意志が、馬上のカークが最後に恋人の幻影に向けた時に感じられるんですよ。


絶対にあれは未練で振り返っているのではなく、幸せな幻想に決別を告げているんです。

果たしてネクサスを抜け、狂気にかられたソラン博士の野望を打ち砕くため、ネクサスのエネルギーリボンの軌道を変えるために博士が開発した装置を破壊しようと戦うことになります。
何とか装置を自爆する様に設定したものの、最後の起爆の設定は、ソラン博士によって厚いバリアーがはられてしまい、阻まれて起動できない。バリアーを解除するためのスイッチは、崩れかけた橋の先に飛ばされてしまう。
ピカードが最後の起爆の設定を完了させるためには何としてでもバリアーを解除しなければならない。
リモコンを何とか取り戻し、バリアーを外し、起爆装置のスイッチを入れなければ全ては終わり。
その時に、それまで激しく戦っていた「動」の演技から、すぅっと「静」の演技にシャトさまは切り替えるんですよ。
強い日差しの中、目を細め、壊れたいつ崩れ落ちるかもしれないボロボロの橋の先に在るリモコンを見つめるカークの顔のアップ。
その瞬間に、もうカークは全てを受入れる覚悟を決めたんだなって思えるんですね。


ただ、自分に与えられた目の前の使命を全うする。
その先には死ぬかもしれない、とか、もうそんなことは全て思考の中から消え果てて、達観してしまった様な、そんな感じ。
実際、その後のカークの行動には全く迷いがないんです。
ソラン博士と戦っている時には、まだどうやったら相手を出し抜いて上手くことを運べるかとかという計算が見え隠れしているのですが、ここから先のカークの行動は、ただリモコンを手に入れ、バリアーを解除し、ピカードに最後の起爆の設定をさせる、その為にギリギリまで努力し続ける、それだけ。
カークは、リモコンを手にし、バリアーの解除ボタンを押した瞬間、勝利を確信し、その刹那、無情にも崩れかけていた橋はカークの重量に耐えきれずにカークを乗せたまま崖下に崩落していく訳です。

カークは見届けることはできなかったけれど、バリアーはギリギリで解除され、ピカードは起爆の設定を完了し、ソランの野望は露と消えます。

最後にピカードと交わす会話の中で、「楽しかった」と自分の人生を振り返る言葉が出て来ますが(吹替え版のセリフはこの際無視だ無視!!)、ほんの僅かなカットの中でシャトさまが演じきっている所作に気が付けば、このセリフは、より一層重みを増して生きてくるんですよ。
本当に限られたカットの中で、精一杯生ききった、というカークの人生、生き方にものすごい意味が与えられる様に、シャトさまは演じていたんです。

ピカードに微笑みながら、最後事切れる時に「oh my...」と言うのですが、このセリフの後、魂が抜けてカークが、ただの亡骸に変わるんです。
ここの演技も、物語の王道としては、もっと綺麗な死に顔にするものかもしれないのですが、シャトさまは敢えてそうせず、あの一瞬で、「カーク」というものの全てが死という世界に飲み込まれたことを演じていた様に思うんです。
この人本当に、観客を色々な意味で裏切ってくれる!!

TOSの頃のカークは、観客が望むカッコいい主役であろうとシャトさまは演じていたと思うんです。
どうしたら見ている側に美しくてカッコいい、誰もが憧れる存在として注目を集められるか。計算して計算して演じていた。
でも、このジェネレーションズでは、特にカークが死に至るあの橋の上で覚悟を決めた演技をしてからは、死ぬということがどう言うものなのか、ヒーローだって死ぬ時はただのモノでしかないということをやってのけていると思うんですよー。
それは、カッコいいヒーロー、主役を演じようとしていたTOS時代の演技をある意味裏切って、そして更に先を行ったという風に思えてならないんですよね、最近。

たぶん、TOS時代のシャトさまがそのままこのシーンを演じていたとしたら、同じセリフでも、きっと誰もが感動するとても劇的でカッコいい死に顔を見せていたと思う。
けれど、年齢を重ね、様々な経験をして来たシャトさまが出した答えはあの演技だった。

最初は全然カッコ良くない死に様と死に顔に愕然としていたのですが、何回も見ているうちに、こんな考えになったというただのバカ話でございましたぁ。

船長のキャラクターについて

2012-06-12 | ☆ツッコミのぺぇじ(My Impressions)
なんか、このカテゴリーに書くの久しぶり。

先日本当に半年ぶりくらいに「スタトレ貴腐人の会(仮)」に行って来ました。
その時に、原語版のカークと吹替え版のカークとは性格が違う、という話が出ました。

実際、その通りです。

これは吹替え物の宿命ですが、吹替えの場合、それを制作するプロデューサーや演出家などの思惑、そして声をあてられる声優の方の個性も加味されていきますから、もともとのオリジナルとはどうしても違った物になるのは仕方のないことです。
また、(特に宇宙大作戦の初回放送された時代などは)制作された国と、日本との文化や生活習慣などの違いから、視聴者に解りにくい、難しい、あるいは理解できないと行った部分は進んで改変されています。

今は、原語+字幕という視聴の仕方を選択することもでき、オリジナルの俳優さんの作り上げた世界を直接知ることも出来ますが、昔は吹替えが全てでした。
(もっとも、字幕も相当端折られた訳になっていることも多く、やはり訳した方の個性や考え方が相当に反映されてしまう物なのですが)

ワタシは宇宙大作戦は、ずっと吹替えで見ていました。
シャトナーのビジュアルと仕草に、矢島さんの理知的な声で・日本語をしゃべる・カーク船長に惚れたんです。
矢島さんの吹替えには、シャトナーの持つ独特なセリフ回しもなく、駄々っ子の様な子供っぽさはあまり感じられません。
そのため、オリジナルではちゃんと「演じ分け」をしていた部分が分りにくいという事もあります。

たとえば、「変身! カーク船長の危機」の話しの中で、体を女性に乗っ取られたカークの演技では、シャトナーはちゃんと「中にいるのは女性」という実に微妙な演技をセリフの言い方などでもちゃんとしているのですが、矢島さんのしゃべり方にそこまでの配慮は残念ながら感じることは出来ません。

でも、ワタシは矢島さんの声の持つ、上品さ、力強さ、理知的な雰囲気がある、そして、リーダーの持つカリスマ性を感じさせつつ、どこかに孤独も感じさせる演技が加味された、日本語版のカーク船長が大好きなんです。

日本語版の演出がとても好きなんですねー。
もちろんオリジナルも好きではありますが、刷り込みもあるのか、やっぱりワタシの中に在るのは、STAR TREKではなく、「宇宙大作戦」なんです。

ということで、ワタシのここに書いたり、描いたりしている彼等は、全て日本語吹替え版、「宇宙大作戦」という作品のキャラクターです。
だからきっと、原語版だけを見ている方達からすると、イメージが合わない部分も多いと思います。

でも、どうか吹替えを否定しないで欲しいんです。
だからと言って、原語版が悪いわけでもないんです。

TAS(STAR TREK The Animated Series)と、MAD(まんが宇宙大作戦)が、同じ映像を使っているのに、ビックリするくらい内容が違った印象になっていても、それでも両方面白いのと同じように、TOSも英語圏ではない我々日本だからこそ、言語と吹替えと一粒で2度美味しい様な楽しみ方が出来る、そう考えて頂ければ良いなと思います。

だって、スポックを翻弄する、子供っぽい船長と、理知的で張りつめた船長と2つの萌えが同じ画像で楽しめるんですよ?
幸せじゃあありませんか!!