占星術への道-誕生史、星見の作法

・占星術の基礎-星見の作法とは?
・今も多くの人を魅了する占星術
・いつ、どこで、どのように生まれたのか?

西洋占星術の原典「テトラビブロス」日本語版、ついに出版!

2022-07-16 09:01:59 | 占星術いろいろ

 西洋占星術の原典ともされる「テトラビブロス」日本語版がついに出版された(2022年6月、説話社)。

 西洋占星術にいくらかでも関心がある方にはなじみの書籍であり、西洋占星術で何をかしようという方には必読の書であるが、まずは英訳から、というのがこれまでで、決して取っつきやすいとは言えなかった。それが日本語で読めるようになったのだから実にありがたい。

 ざっと見るだけで、古代ギリシャ・ローマ時代の占星術とはこんなものか、と納得がいくと思う。ストア派の哲学に依拠しているそうだが、宇宙と人間界は結びついているという哲学が根拠とされ、現在の占星術に比べてずっと自然寄りで、実際の星空や天体がわからないといけないようだ。

 仕事や結婚などの人生上のできごとを扱っている第4巻を読むと現代の私たちと同じだな、と思ってしまう。1900年前の記述なのだが。

 価格が5000円+税と、決して安いとは言い難いが、出版に厳しい昨今のことだから仕方がないのだろう。

(2022.7.16.)

 


占術大集成-古代インドの前兆占い

2022-03-01 08:53:40 | 占星術いろいろ

■東洋文庫(平凡社)589、590(1995)

■占術大集成1,2 古代インドの前兆占い

■ヴァラーハミヒラ著

■矢野道雄、杉田瑞枝訳注

●インド占星術史ではおなじみの矢野先生と共同研究者杉田先生になる一書。約300ページが2巻という大部。関心がなかったせいか、発行後27年目にして知った。

 「本書は占いだけを目的として書かれたものではない。占いという器の中に当時のあらゆる知識が取り込まれている。したがって百科全書的な色合いが濃く、六世紀のインド文化を知るうえで貴重な材料を提供している。」「・・宮廷占星術師のマニュアルである。・・・数理的な天文学については『五天文学書綱要』という書物を別に著している」ということであるから、何となくプトレマイオスのテトラビブロスに似ていて、アルマゲストとの関係とも似ている。

 手にとってはみたものの、読む機会はいつになるか・・・

(福島、2022.3.1.)


<4>夕陽の味わい / 傾斜角=緯度 / 天の赤道と平行圏 / 赤緯

2021-03-18 14:22:12 | 星読みの作法-占星術のための-

■傾斜角

 太陽位置を図化したところで、ここに太陽の軌跡をざっと引いてみましょう。写真のようにきれいに並んでくれたら良いのですが、そこは測角器+人間の目の本領発揮、というわけで、でこぼこ! ですから、だいたい真ん中を通るように引きます。言わずとも、大抵そうしますよね。

 図の矢のような感じになるでしょう。 次の作業は地平線とこの矢印の間の角度θ(シータ、なぜか角度を示す記号にこのθがよく使われる)を測りましょう。今度は少しマシな道具が必要です。分度器です。

 分度器、懐かしい響きですね。永いこと、ご無沙汰だったのではないでしょうか? 手元にない、という方もおられるかも知れませんが、占星術には必要なものですから、揃えておきましょう。三角定規とのセットで100円です。

 このグラフに重ねて測ってみると、52°になっています。これに何か意味があるんでしょうか?
 はい、意味がないどころではありません。これ、北海道で測ると46°ほど、沖縄では64°ほどになるからです。「ほど」というのは、厳密なことを言えば、時期によって微妙に違うからです。
 このように、この傾斜角は南北で違います。北では低く、寝そべった格好になりますし、南は屹立です。緯度によって異なるのです。ここでの観察例は東京を想定していますので、北緯は36°ほどとして、
 
  傾斜角=90°-緯度=90°-36°=54°
 
の筈ですが、少しずれているのはご愛敬というところです。
 
 赤道では太陽が真上に上り、真下に降りる。中緯度の日本では緯度の分だけ傾斜する、というわけですが、これもご存知でしたよね? その机上の知識を自ら体験した、ということです。
 北海道や沖縄で同じように測ってみる、なんて余裕ができたら良いですねえ。旅の値打ちがぐんと上がるというものです。
 この傾斜角はヘリアカル・ライジングで見える星が場所によって変わることなどと関係しますので、ホロスコープを問題にしようという方には必須の知識です。

 
■天の赤道と平行圏、時角
 この夕陽の観察を3月21日の春分の日や9月23日の秋分の日にやってみるとどうなるでしょうか?
 これも観察から、とは申し上げません。推論でいきましょう。
 春分の日や秋分の日の太陽はそれぞれ、春分点秋分点にありました。
 では、春分点、秋分点とはどういう点でしたか?
 これは占星術の基本中の、きほんの、キホンでした。黄道天の赤道との交点ですよね。ですから、この日の太陽は黄道上にあるだけでなく、天の赤道上にもありました。
 この天の赤道上にある太陽は、左図の赤い線のとおり、右下54°の傾斜角で真西に沈みます。この日の太陽の軌跡が天の赤道です。
 
 ただ、この図は真西が90°になるよう予め調整されていたので、このように描くことができました。でも、皆さん方の図では残念ながら、ここまで描くことはできないと思います。
 
 でも、できなくても構いません。ここで把握して戴きたいのは、太陽は日々、天の赤道に沿って、平行に運行している、ということです。天の赤道からの離れ具合は季節によって変わりますが、常に天の赤道に平行です。ですから、まとめて平行圏と言います。
 
 天は丸く見えますね。天球です。そのお腹の真ん中が天の赤道。ここの一周が一番長く、平行圏は赤道より短くなります。しかし、共に24時間で一周しますから、赤道から離れるにつれて時間当たりの運行量は少なくなります。運行量は少なくなっても時間は同じなのですから、何とかそれを表現したいと思いませんか? それを保証する概念が時角と言うものです。答えを言ってしまえば、天の北極から見れば、天の赤道も平行圏も同じ時間に同じ角度だけ回転します。その角度を時角と言っています。これは太陽のみならず、星の南中などで重要な役割を果たしますので、後で詳しく紹介しましょう。
 
 いやー、次から次といろいろ出てきますね。夕陽を見るだけでも大変です。どうも「意識的に」見る、とはこういうことのようです。私たちの夕陽観望には、残念ながら、ロマンティシズムの欠けらもないようです。

 
■赤緯、オクシデント-最後に
 では、最後に天の赤道と今回引いた日没線との間の長さを測ってみましょう。天の赤道に対し直角になるようモノサシを当てましょう。だいたい10~11cm、つまり10~11°ではありませんか?
 この値を赤緯と言います。記号はδ(デルタ)です。夏場は天の赤道より北に行きますからδは+、冬場は南へ移りますからδを-ととります。
 今回は δ=+10~+11° というわけです。
 
 ただ、赤緯を得るには天の赤道の位置か、西点位置がわかっていなければなりません。西点も占星術では重要なポイントですから、皆さんのご自宅なりから見た時の位置は把握しておきたいものです。最近はスマホに精密なコンパスが入っていますから、さほど難しいことはないでしょう。
 
 こうして、夕陽の測定から太陽の赤緯の値を求めることもできました。
 
 第1回目に、4月20日の太陽位置をスターチャートにプロットして貰いました。再掲しておきましょう。
左から右へと横に伸びる罫線が入っていますね。中央の罫線は赤く表示されています。天の赤道です。そして、1本上が赤緯δ=+10°。4月20日の太陽はちょうどこの10°線あたりにあるようです。
 測角器の「偉力」です。バカにできませんね。太陽の赤緯を計測するーなかなかできる芸当ではありません。
 
 西点を見たついでにオクシデントを意識しておきましょう。上のグラフで横軸が90の点、つまり、天の赤道が交差する点、ここが西点で、地平線上の真西の点に他なりません。占星術ではこれよりも、太陽が地平線と交わる点、つまり黄道と地平線との交点の方が重要です。上のグラフでは点線上の矢印の先です。ここをオクシデントと言います。日常的には両者を区別することはありませんが、占星術ではオクシデントの方が重要なので、必ずしも西点ではないことを意識し、区別しています。オクシデントを中心とした周りの領域が西方(オクシデンタル)です。
 東の方では同じように、東点アセンダント東方(オリエンタル)と言います。
 オクシデント、アセンダント位置を求めるには赤緯、緯度を元に計算します。ホロスコープを作成する際に欠かせませんね。
 
 さて、いかがだったでしょうか。ちょっとややこしい夕陽の観察でしたが、占星術に重要な概念が次々に登場しました。もっと発展させることもできます。が、ひとまずここで終えて、本題の星見の作法へと移りましょう。
福島 憲人(2021.3.18.)

<3>夕陽の変身 / 1時間に15° / なぜにラジアン! / 測角器の正統性

2021-03-18 11:41:14 | 星読みの作法-占星術のための-

測ったら

 では、4時30分から6時までの1.5時間の測定で7点のデータが取れたとしましょう。今度はそれをグラフ化します。

 何だか学校の勉強のようですね。そうです、皆さん方は占星術をやるため学校へ行き、嫌な勉強をしたのでしょう? こうしたワザが必要になるので、学校で習ったのです。全ての学びは占星術へ通じる! 今度はその努力を成果に結びつける番です。

 学校と言えば、上では縦、横といった表現をしましたが、学校用語ではY座標、X座標の値でしたね。

 さて、縦は縦軸、横は横軸で左のようにプロットします。測定値をそのままのcmで描くと大きいなあと思う場合は1cmを半分の5mmに縮めるとか、それなりの工夫はして下さいね。

 ここで真西が90になるよう横軸を調整していますが、こんなことをせずに測った長さを目盛って戴ければ結構です。

 要は、右下に下がっている、ということがわかれば良いのです。

 これで終わり? いいえ、本番はこれからです。


移動量を求める / 1cm=1° ラジアンの秘密 / 手尺

 左上が4時30分、右下が6時でした。では、左上の点から右下の点までの長さを、今度は、モノサシで測りましょう。測角器がモノサシに変身です。

 ざっと測ると24cm、1時間あたり16cm、つまり角度の16°です。

 おっと、待って下さい。cmが°(度)に変身していますよ。

 上で申し上げました。測る時は57cm離して見ると。この57が秘密のカギで、1°という角度で広がっていくと、57cm先で1cmになるのです。10°なら10cmです。人間の腕の長さが57cm位というのは偶然でしょうが、だいたいそうなっています。本当かどうか、暇な時に、一度、測ってみて下さい。

 それで、「手尺」というものが作れます。「手酌」じゃあ、ありません。左の図のように、軽く、握りこぶしを作って左右を測ってみるとほぼ10cmです。これも実際にどの程度の力でこぶしを作れば10cmになるか、確かめておくと良いと思います。

 この「手尺」では10°という角度が測れます。

●ラジアン

 実は、57はラジアンにまつわる数字でした。皆さん、学校で弧度法、ラジアン、を習いましたね。半径と同じ円弧の長さを見込む角度が1ラジアンでした。1ラジアン=57°、忘れてましたか? 忘れていても結構です。そういう用語があることを知っていることが大事なのです。

 したがって、1°=1/57ラジアン、つまり57cm先の1cmというわけです。

●太陽の日周運動 15°/時

 さて、話はこれからです。先ほど1時間に16°としましたが、本当は15°ですね。太陽は24時間で一周するのですから、360°÷24時=15°/時 です。

 太陽の日周運動は1時間に15°と、多くの方はご存知でしょうが、実際、測ったという人はそうはいないでしょう。今回、手持ちの測角器では16°になりましたが、これを皆さんはどう評価されますか? 道具がちゃちい、測り方が下手、不真面目、などなど、いくらでも批判できるでしょう。しかし、どうでしょうか? やったことがない人から批判されたいと思いますか? そんな批判を受け入れようと思いますか? たとえ精度の悪いデータにしろ、まぶしい太陽を相手に涙を流しながら、震えるウデを押さえて、長い時間かけて得られたデータです。「そんならお前がやってみろ」と言いたくありませんか?

 さ、これでまた一歩、前進です。

 なお、この15°/時という角度単位は黄道帯の分割によってできたサインハウス等に反映されていますから、占星術では最も重要な単位の一つと言えます。占星術に関心を持たれている皆さんがこれを体験的に把握しておくことはとても大切なことです。


*)備考:円周とラジアン、360°は2π=6.28ラジアン

 円周=2πr、にいぱいあーる、と覚えていますよね。rは円の半径でした。半径と同じ弧長になる角度が1ラジアンで、円の一周が半径の2π倍ですから、円の一周360°が2π=6.28ラジアンです。

*)備考:弦の表との関係

 57cm先の1cmを1°としましたが、この1cmは厳密には円の一部ですから曲がっています。曲がっているのを測るより、真っすぐな尺の方が楽なので、円弧を真っすぐに結び、その長さを測るようにしました。その長さと角度を結びつけるのがアルマゲストの弦の表です。ここでは真っすぐに線分長を測っていますので、測角器は正確には弦の長さを測っていますから、測角器を使うことはアルマゲストに従った正統的な西洋古典占星術の実践ということになります。

福島 憲人(2021.3.18.)


<2>夕陽のこころ / 測角器 / 夕陽を測る

2021-03-17 21:32:34 | 星読みの作法-占星術のための-

■なぜ、夕陽を見るか-夕陽のこころ

 前回は星見の出発は夕陽を見ることと申し上げました。その心は「黄道星座」、ゾディアックを天に描けるようになること、でした。

 でも、それには1年かかります。毎日ではなし、意欲のある皆さんですし、それほど負担ではないでしょう。

 で、その間に、いやその後でも良いので、1回で結構ですから、1回だけ、ぜひ、測角器を使って夕陽を測って下さい。

 「測角器?」、知りませんよね。そりゃあ、そうでしょう。私の造語ですから。発明したわけではありません。これ、皆さんのお家にあるものですから。


■測角器とはこれ!

 「バカにするな!」と叱られそうですが、測角器とはこれです。モノサシと言う方がおられますが、それは測りたいものに当てて使う場合ですよね。でも、ここで測るのは角度-ものに当てるのではなく、はるか遠方に離れたものの見かけの角度を測るのです。ですから、測角器! 

 そう、これがこ私たちのアストロラーベ、トランシット!です。ちょっとばかり精度が悪いだけ。でも、これで良いのです。

 占星術は2000年前に誕生し、完成した技法ですから、当時の精度があれば十分。もちろん、中には立派な計測器を持っていた人もいましたが、それは例外。これだって、あるのとないのとでは大違い! 安上がりの割には実に強力な助っ人です。

 30cm長が平均的ですが、もう少し長い方が使い勝手が良いので、100円ショップに走って下さい。

 使い方は簡単です。が、少しだけコツがあります。それは目から57cm離して見ること。別に測る必要はありません。目いっぱい腕を伸ばせばそれ位になります。多少長かろうが、短かかろうが、気にすることはありません。ただ、いつも同じ長さになるよう努めて戴ければ最高です。

 これで太陽や満月を見ると、5mmです。まあ、太陽は見ない方が無難だと思いますが、自信のある方はどうぞ、本当に5mmか、確かめてみて下さい。

 「長さを測るんじゃないと言いながら、長さじゃないか!」と仰るかも知れませんが、実はこれはプトレマイオスの大著「アルマゲスト」の最初の方にある「弦の表」を実践しているのです。円周に張った弦の長さから角度を求める表が「弦の表」。これを使いこなせるようになる。これが当時の占星術師の第一歩でした。

 測角器をバカにした方はどうぞ「アルマゲスト」を開いて下さい。第一巻第九章です。現代のことばではサイン関数ということになるので、これが私たちの三角関数表か電卓代わりというわけです。

 いかがですか? 測角器、バカにできませんね。


■夕陽の何を測る?

 太陽の縦と横の長さです。

 は地平線から太陽までの長さ。地平線なんて見えませんから、こんなもんだろうというところで結構です。測角器を上に向け、下端を地平線に当て、太陽の見えた場所を片手の指で押さえて、ハイ、目盛りを読みましょう。15cm、20cm、結構でしょう。

 は遠方の山頂やら木、建物の角など、目立つものを基準にします。斜めにしてはいけません。基準点から水平にしたまま上げて、太陽位置を押さえます。

 横方向は適当な基準点を見つけるのがポイント。これが悪いと測角器の目盛りから外れてしまいます。太陽は右下に動いて行くことから見当をつけましょう。

 測り終えたらメモします。「4:45、27、83」、時刻、縦、横です。

 測定は日の入り2時間前にスタンバイ! 適当な基準点を見つけ、地平線の見当がついたら準備オーケーです。日の入り時刻が分からない? 春3月や秋9月は6時頃でしょう? 夏は7時15分、冬は4時45分あたりですから、だいたい分かりますね。

 さあ、測りましょう。測定日は4月20日としましょう。4時30分から、15分ごとで、1時間半で7回です。これだけあれば結構です。

 いかがですか、こんなに真剣に夕陽を見たことがありましたか? これでまた後輩に水を空け、専門家=エキスパートにまた一歩近づきました。

福島 憲人(2021.3.18.)