現在、日本学生支援機構(JASSO)は奨学金の返還を3ヶ月以上延滞した者の個人情報(名前、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先等)を個人信用情報機関に登録するという措置(ブラックリスト化)を行なっています。
そして、3ヶ月以上返還を延滞している21万人以上の内、2386人に対してブラックリスト化の措置が実施されています。
ブラックリストに登録されると、クレジットカードが作れなくなったり、住宅ローンが組めなくなったりします。また、登録された情報は、奨学金の返還が完了した場合でも5年間登録され続けることになります。
■奨学金の猶予制度を知っていますか?
奨学金制度には返済期限の猶予制度があることをご存知ですか?
JASSOが願出の事由としてあげている項目に該当する者はJASSOホームページ上にある「奨学金返還期限猶予願」を、猶予を希望する2~3ヶ月前に提出して認可されれば、それぞれの項目ごとの返還猶予が受けられます(猶予の条件、必要な資料についてはこちらを参照してください。http://www.jasso.go.jp/henkan/yuuyo/#ippann)。
延滞者の中にはこの猶予制度を知らない者も少なからずいると思われます。JASSOはホームページや各大学を通して返還者や貸与者に、この制度の認知を広げようと邁進していますが、まだ猶予制度が広く知れ渡っているとは思えません。
返還困難事由には「傷病」、「生活保護受給中」、「入学準備中」、「失業中」、「経済困難」があります。
この中で「傷病」、「生活保護受給中」の項目に当たるものは当該事由が継続する限り返還が猶予されます。
また特に「経済困難」の中で挙げられている「災害」に当たる者も同様になります。
しかし、「入学準備中」、「失業中」、「災害」以外の理由による「経済困難」に当たる者については、猶予が認められたとしても上限が5年間ということになっています。
ここでの返還困難事由の中の「経済困難」にあたる収入・所得金額の目安は年間収入金額が300万円以下(賃金収入のない場合は200万円以下)です。
■猶予申請のサポートをします
私たち奨学金ワーキングチームでは、奨学金猶予申請のサポートをしています。
現在返済中で経済困難の方、猶予を受けようと思っている方、これから奨学金を受けようと思っている方などからの相談を随時受け付けています。
他にも疑問や困ったことなどがあればご連絡ください。
TEL:03-5779-1890 Mail:soudan@npoposse.jp
■猶予制度の問題点と奨学金返還の現状
JASSOが統計を出している延滞理由の上位に並んでいるのは「低所得」や「無職・失業」です。
さらに、現在延滞者の84%が年収300万円以下であることがJASSO自身の統計よりわかっています。
以上のデータから明らかなように、延滞者の大多数は「経済困難」の猶予認定水準以下の収入しか得ることができていません。
これらの返還者は最大でも5年間しか猶予を受けることができず、それ以降は生活保護を受けない限り全くの無保障となります。
つまり、現行の制度のままでは猶予を受けた後に返還できるあてがない者はブラックリストの措置をうけることになります。
定期昇給のほとんどない非正規雇用で自らの生計費を稼ぐことすら難しい若者や、正社員で働いていても低収入で生活に困窮している若者からの労働相談が増え続けている現状を見れば、安定した職業に就くまでに5年間というのはあまりにも短い期間です。
しかし、JASSOの担当者は、5年間で安定した職業を見つけられずに延滞してしまうような場合は自己責任であるという認識です(ヒアリングの詳しい内容は『POSSE vol.6』を参照ください)。
若者の雇用が不安定で低賃金になっている現状を、理解できていないと言わざるをえません。
■よりよい奨学金制度を!ボランティア募集しています
このまま債務の取立てに力を入れ続けると、貧しい人ほど借りることを恐れてしまい、教育機会の平等も失われてしまいます。
今後もこのような制度で奨学金事業を続ける限り、新たなブリックリスト登録者や延滞者は増加し続けることになるでしょう。
私たち奨学金ワーキングチームは、猶予の申請サポートを行うとともに、猶予制度でもカバーしきれない多くの人の貧困の問題を考えていくべく、様々な活動を行っています。
具体的には、猶予申請のサポートなどの相談活動、特設ホームページの作成、調査活動、学習会、政策提言などです。
奨学金問題について取り組みたい方、制度がどうなっているか知りたい方など一緒にこの問題に取り組んでくれるボランティアの方を募集しています。
関心のある方は是非ご連絡ください。
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
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