20世紀後半の吹奏楽界を長年引っ張ってこられたA.リード氏が亡くなられたことは先日の記事で書きました。やっとネットニュースにも流れました。
米の吹奏楽作曲・指揮者のアルフレッド・リードさん死去 -asahi.com
今日は、私がいちばん好きなリード作品である「『ハムレット』への音楽」について書きたいと思います。
この曲は、タイトルのとおりシェークスピアの「ハムレット」からいくつかの場面を抜き出して描写したものです。曲は4つの楽章からなります。
第1楽章:プロローグ、エルシノア城とクローディアス王の宮中
闇夜のお城に雷がズドドドンと爆弾のように落ちてきたかのような出だし。デンマーク王(ハムレットの父)が弟クローディアスに殺されるという劇の始まりと、これから始まる悲劇をイヤでも予感させる重々しさと激しさです。
それに続くファンファーレのかけ合いもミュートを付けた悲しげなもの。王の幽霊が出る場面ということで、トリルや半音階的なパッセージ、そしてバスドラムの静かな鼓動やロールでおどろおどろしさが増します。
また、管楽器の中に味付けで入るヴィブラフォンのアルペジオの金属音が非現実的な風味を出していておいしいです。
後半は、打って変わって堂々としたお城の音楽。クローディアスの戴冠式の場面です。
これがかっこいいんだってば♪
チャイム、グロッケン、ヴィブラフォンで埋め尽くされた鐘の中に登場するトランペットのファンファーレ
。堂々としたメロディーは新しい王を迎えるのにふさわしい風格を備えています。
最後に厚みを増しながら広がっていくファンファーレにはマジでシビれますよ
。中学生の時に初めてこれを聴いた時は、音楽室のどでかいスピーカーで聴いたことと相まって鳥肌
が立ちましたね。
第2楽章:ハムレットとオフィーリア
ハムレットに好意を寄せるオフィーリアの優しく美しい心と、それをハムレットに冷たくされ悲しむ心が描写されています。
優しくたゆたうようなメロディが非常に印象的な曲です。
この曲では当時の吹奏楽オリジナル曲では珍しくハープが使われていて、その丸い音色のアルペジオが曲を柔らかくするいい効果を出しています。
このハープに乗せて歌われるオーボエ・クラリネットのメロディは甘美でいてメランコリック。
クライマックスでのホルンのメロディにも深い悲しみが見えます。リードの緩徐曲の中でも屈指の名曲だと思います。
第3楽章:俳優たちの入場
城を訪問してきた劇団の俳優たちが入場してくる時の音楽です。ファンファーレに続いて軽く明るいメロディが奏されます。
悲劇の合間のほっと一息的な音楽です。
実際は、ハムレットは彼らを利用してクローディアス王が自分の父を殺害したのかどうかカマをかけるわけで、どこまでもドロドロしてますが(笑)
第4楽章:エピローグ、ハムレットの死
劇のクライマックス。ハムレットがオフィーリアの兄レアーティーズとの決闘で倒れる場面の音楽です。
曲は、毒が塗られたレアーティーズの剣を受け倒れながらも、レアーティーズとクローディアス王を刺し、そして自らも息絶えていく様が重々しくそしてドラマティックに描かれています。
中盤のトランペットの下降音形は、後に作られた「オセロ」冒頭の動機と共通するものがありますね。
そして、第1楽章前半のメロディが次々と奏され「死」を印象づけ、バスドラムの鼓動も止みます。
最後には皆が倒れ全てが時を止めたような空気で終わります。
しかし、「ハムレット」って人死にすぎ(^^;)
冒頭でハムレットの父親が死に、次にオフィーリアの父親が死に、オフィーリアも死に、ハムレットの友人たちも死に、最後の決闘ではハムレットの母親、レアーティーズ、クローディアス王、ハムレットと、もう主役脇役みんなまとめてご臨終(苦笑)
そして最後には主を失った城も隣国に取られてしまう。「ここまでするか
」の一言です。
しかし過去の例を見ると、いろんな国がこういう権力争いで総崩れになったりしてるんですよね。自分のちょっとした欲のために全てを失うことになる。人間って悲しい生き物ですね。
自分が中学生の時、当初はコンクールでこれをやる予定だったのですが、顧問の先生が八田先生という超大御所先生を招いた時に「このバンドの色は『アルメニアンダンス・パート1』がいい」と変えさせられてしまいました(苦笑)
で、これは市民音楽祭みたいのでやる結果となりました。
「アルメニアン…」もいい曲なのですが、どちらかと言えば「ハムレット」やりたかったなぁ
悲しいことにこれはオススメCDが無いんですよねぇ。佼成のはあんまり面白くない…。
ただ、これは凄かった。天理高校の吹奏楽コンクールでの演奏。
第1楽章の前半と後半の間に第3楽章を挟むという「超荒技カット」な演奏ですが(どうしても第1楽章のファンファーレで終わりたかったんだと思います。コンクール的にはやっぱり盛り上がって終わった方がいいですから。ちなみに私がやった時もこのカット)、この迫力はただ者ではないです。
冒頭のあまりの大音響に思わず赤ん坊も泣き出します(というか、コンクール会場に赤ちゃん連れてこないで…
)。
米の吹奏楽作曲・指揮者のアルフレッド・リードさん死去 -asahi.com
今日は、私がいちばん好きなリード作品である「『ハムレット』への音楽」について書きたいと思います。
この曲は、タイトルのとおりシェークスピアの「ハムレット」からいくつかの場面を抜き出して描写したものです。曲は4つの楽章からなります。
第1楽章:プロローグ、エルシノア城とクローディアス王の宮中
闇夜のお城に雷がズドドドンと爆弾のように落ちてきたかのような出だし。デンマーク王(ハムレットの父)が弟クローディアスに殺されるという劇の始まりと、これから始まる悲劇をイヤでも予感させる重々しさと激しさです。
それに続くファンファーレのかけ合いもミュートを付けた悲しげなもの。王の幽霊が出る場面ということで、トリルや半音階的なパッセージ、そしてバスドラムの静かな鼓動やロールでおどろおどろしさが増します。
また、管楽器の中に味付けで入るヴィブラフォンのアルペジオの金属音が非現実的な風味を出していておいしいです。
後半は、打って変わって堂々としたお城の音楽。クローディアスの戴冠式の場面です。
これがかっこいいんだってば♪
チャイム、グロッケン、ヴィブラフォンで埋め尽くされた鐘の中に登場するトランペットのファンファーレ

最後に厚みを増しながら広がっていくファンファーレにはマジでシビれますよ


第2楽章:ハムレットとオフィーリア
ハムレットに好意を寄せるオフィーリアの優しく美しい心と、それをハムレットに冷たくされ悲しむ心が描写されています。
優しくたゆたうようなメロディが非常に印象的な曲です。
この曲では当時の吹奏楽オリジナル曲では珍しくハープが使われていて、その丸い音色のアルペジオが曲を柔らかくするいい効果を出しています。
このハープに乗せて歌われるオーボエ・クラリネットのメロディは甘美でいてメランコリック。
クライマックスでのホルンのメロディにも深い悲しみが見えます。リードの緩徐曲の中でも屈指の名曲だと思います。
第3楽章:俳優たちの入場
城を訪問してきた劇団の俳優たちが入場してくる時の音楽です。ファンファーレに続いて軽く明るいメロディが奏されます。
悲劇の合間のほっと一息的な音楽です。
実際は、ハムレットは彼らを利用してクローディアス王が自分の父を殺害したのかどうかカマをかけるわけで、どこまでもドロドロしてますが(笑)
第4楽章:エピローグ、ハムレットの死
劇のクライマックス。ハムレットがオフィーリアの兄レアーティーズとの決闘で倒れる場面の音楽です。
曲は、毒が塗られたレアーティーズの剣を受け倒れながらも、レアーティーズとクローディアス王を刺し、そして自らも息絶えていく様が重々しくそしてドラマティックに描かれています。
中盤のトランペットの下降音形は、後に作られた「オセロ」冒頭の動機と共通するものがありますね。
そして、第1楽章前半のメロディが次々と奏され「死」を印象づけ、バスドラムの鼓動も止みます。
最後には皆が倒れ全てが時を止めたような空気で終わります。
しかし、「ハムレット」って人死にすぎ(^^;)
冒頭でハムレットの父親が死に、次にオフィーリアの父親が死に、オフィーリアも死に、ハムレットの友人たちも死に、最後の決闘ではハムレットの母親、レアーティーズ、クローディアス王、ハムレットと、もう主役脇役みんなまとめてご臨終(苦笑)
そして最後には主を失った城も隣国に取られてしまう。「ここまでするか

しかし過去の例を見ると、いろんな国がこういう権力争いで総崩れになったりしてるんですよね。自分のちょっとした欲のために全てを失うことになる。人間って悲しい生き物ですね。
自分が中学生の時、当初はコンクールでこれをやる予定だったのですが、顧問の先生が八田先生という超大御所先生を招いた時に「このバンドの色は『アルメニアンダンス・パート1』がいい」と変えさせられてしまいました(苦笑)
で、これは市民音楽祭みたいのでやる結果となりました。
「アルメニアン…」もいい曲なのですが、どちらかと言えば「ハムレット」やりたかったなぁ

悲しいことにこれはオススメCDが無いんですよねぇ。佼成のはあんまり面白くない…。
ただ、これは凄かった。天理高校の吹奏楽コンクールでの演奏。
第1楽章の前半と後半の間に第3楽章を挟むという「超荒技カット」な演奏ですが(どうしても第1楽章のファンファーレで終わりたかったんだと思います。コンクール的にはやっぱり盛り上がって終わった方がいいですから。ちなみに私がやった時もこのカット)、この迫力はただ者ではないです。
冒頭のあまりの大音響に思わず赤ん坊も泣き出します(というか、コンクール会場に赤ちゃん連れてこないで…

![]() | レジェンダリーコレクションズ 谷口真一(*)、新子菊雄/天理高等学校吹奏楽部 ジェイガー:吹奏楽のための交響曲より(*)、ネリベル:二つの交響的断章(*) リード:ハムレットへの音楽より、ホエアー:ストーンヘンジ交響曲より リード:オセロより、池上敏:変容=断章、スミス:フェスティヴァル・ヴァリエーション 真島俊夫:波の見える風景、ヒル:セント・アンソニー・ヴァリエーション 三善晃:吹奏楽のための「深層の祭」、F.シュミット:ディオニソスの祭 このアイテムの詳細を見る |
企画発起人のogalynと申します。
ドラマティックですよね!>ハムレット。
ogalynのお気に入りの演奏は、'89の市立川口高の演奏です。最後にカリヨンを加えるなど改変に賛否両論あるとは思いますが、あのドロドロ感はたまりません!たまたま全国大会をライヴで聴きましたが、鳥肌が立ちました。(冒頭でミストーンが多くて銀賞に終わってしまいましたが…。)
これからも、リード作品を愛していきましょう♪
ぜひ、みなさんもご参加ください。
【BlogPeople】思い出のアルフレッド・リード作品
http://tbp.jp/tbp_3896.html
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川口高校はカリヨン好きですからね~(^^;)
…ってogalynさん全国を聴きに行ってるんですね!あのチケット取れるなんてすごいです。
吹奏楽ファンとしては、全国まで行っちゃったら賞なんて関係なく楽しんで聴きたいですけど(どこも上手ですから)、雰囲気的にはそうもいかないものなのでしょうね、きっと(笑)
>リード作品を愛していきましょう♪
もう体に染みついちゃってますから、愛さずにはいられません(笑)
こういうトラックバックの場を作って下さってありがとうございました♪
がんばって取っていましたね>チケット。(笑)
会場に行くと、聴き手はそれぞれの思いで聴いていると思います。
最初の何年かはそれこそ審査員気分で聴いていましたが、数年聴きに行くともうどうでもよくなってきて、この音楽を作るためにどんな練習をしてきたのかな、とかそれぞれのバンドのドラマを勝手に想像してみたりしてました。
ここ最近全国大会で演奏される機会がめっきり少なくなってしまったリード作品ですが、いろんな場で演奏され続けてほしいですネ。
亀レスなんて何の問題もありません♪
こういう昔の記事がたまにコメント欄に顔を出してくると、かえって嬉しくなっちゃいます(笑)
>それぞれのバンドのドラマを勝手に想像してみたり
そういうのも楽しそうですね♪
ある意味、所さんの「吹奏楽の旅」の内容を自分で作っちゃってるみたいな感じでしょうか(笑)
>リード作品
当然もう新曲は増えないわけですから、リード氏の遺産を大切にしていきたいですね。