職人の手は、魔法の手だ。
ナイフを持ち、貝を傷つけないようにシュルシュルと開けた。
貝の内面は輝いていた。
「ここが卵巣。ここにこうして・・・」と、
おじさんの口からは、真珠の生態や核入れの仕方など、いろいろな話が次々と飛び出す。
おじさんが若い頃から長年かけて培ってきた技術や勘を、誰が受け継いでくれるのだろうか・・・。
魔法の手は、誰でもが持っている訳ではない。
日本のアコヤ真珠の火を絶やさ . . . 本文を読む
久しぶりに養殖場へ行った。
おじさんは、にこにこして迎えてくれた。
元気そうで嬉しかった。
養殖場は、核入れ作業のまっただ中だ。
仕事が終わった養殖場は、静かだった。
いかだを歩いて、海の上の作業小屋に渡った。
ゆらゆらして、スリル満点だ。
綺麗に掃除され整然とした小屋で、3年ものの貝を見せてもらった。
貝は今太っている時期だ。
肉厚だった。
卵巣の中に卵が入っていた。
核入れの時には、卵を除 . . . 本文を読む
長崎の養殖場のおじちゃんからお知らせが来た。
去年は海の状態が悪くて、浜揚げは一部のみした。
その後試験むきに養殖場を訪れた時には、無傷で綺麗な
真珠を確認した。だけど、まだ巻きは薄かった。
「あれから、綺麗に巻いてきたよ。」
「この分じゃ、9月か10月の浜揚げが期待できそうだ。」
と言った。
真珠は、海水が28度以上になると死滅してしまう。
それに近い水温でも病気になってしまう。
デリケートな . . . 本文を読む