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場合の数を恒等式に利用できるか

2008-09-14 12:31:03 | 数学

場合の数や確率の問題を解く際、
「もっと簡単に求める方法があったか!」と感じることがあると思う。

ちょっとしたことに気づくだけで、立式はいたって単純になるはずだったのに、
それに気づかなかったせいで無駄に多くの計算をしてしまう。場合の数や確率の計算時に多く見られることだ。
もちろん、それも丹念に計算をしていけば、確かに正解にたどり着くだろう。

このことにちょっと注目してみたい。
というのも、ある日ふと思ったのだ。
「…これで恒等式ができはしないか?」



具体的に、こんな例がある↓
【問題】n個の区別できる球を、箱Aか箱Bにそれぞれ入れる入れ方は何通りか?

【解答1】
1つ1つの球に注目して、それぞれが箱Aに入るか箱Bに入るかの問題はそれぞれの球ごとで
独立しているので入れ方の総数は 2n 通り

【解答2】
Aに入る球の数aに注目して場合分けする
a=0のとき 全ての球がBに入るから入れる方法は 1通り
a=1のとき n個の球のうち1つが箱Aに入るのだから入れる方法は nC1 通り
a=2,3,4…nの場合も同様に考えるとそれぞれ
nC2,nC3,nC4,…nCn  である
よって入れ方の総数は nC0 + nC1 + nC2 + nC3 +...+ nCn 通り


この2つの解答、もちろん同じものを求めているわけだから
この問題を通して
 n
 Σ nCk = 2n   が得られたことになる。
k=0


このように、
場合の数や確率論から、新たな恒等式を得られる可能性、また、
すでに知られている恒等式が、組み合わせや確率の観点を使うことで覚えやすくなる可能性

が望めるわけだ。これは耳よりではないか。

好きなように問題を想定してみてどんな恒等式ができるか考えてみるのも面白いし、
ちょっと覚えにくい恒等式を、場合の数や確率の観点で導き出せないか考えて、思いつくことができたら便利だと思う。



簡単な例を一つ見つけた。(また場合の数から導く例になってしまうけれど…)
★ an - bn = (a-b)( an-1 + an-2b + an-3b2 + … + abn-2 + bn-1 )

整数問題なんかでよく使うことがある、身近な恒等式。
左辺の-に注目してこんな状況を思いつける。

男子b人、女子a-b人、計a人で構成されるクラスがnクラスある。
各クラスから一人ずつ選出してn人で構成されたグループを1つ作るとき、
少なくとも女子が一人いるようなグループの作り方は何通りか。


男女を考慮しないグループの作り方がan通りで、
男子のみで構成されるグループの作り方がbn通りだから、作り方の総数はan - bn 通り
これで答えが an - bn になる問題が作れた。


では右辺を導くための考え方を探る。
各クラスを1組,2組,3組,・・・n組 と呼ぶことにして、
「女子が選出されたクラスのうち一番数字が若いクラス」によって場合分けするとうまくいきそうだ。

◆1組で女子が選出される場合◆
 1組からの女子の選出の仕方がa-b通り、
 2組以降のn-1クラスでは男女問わない(すでに女子が選ばれているから)ので各a通り
 よって      (a-b)an-1 通り

◆1組では男子、2組では女子が選出される場合◆
 1組からの男子の選出の仕方がb通り、
 2組からの女子の選出の仕方がa-b通り
 3組以降のn-2クラスは男女問わないので各a通り
 よって    b*(a-b)*an-2 通り

◆2組までのクラスでは男子、3組では女子が選出される場合◆
 2組までの2クラスからの男子の選出の仕方が各b通り、
 3組からの女子の選出の仕方がa-b通り
 4組以降のn-3クラスは男女問わないので各a通り)
 よって   b2*(a-b)*an-3 通り



◆n-1組までのクラスでは男子、n組では女子が選出される場合◆
 n-1組までのn-1からの男子の選出の仕方が各b通り、
 n組からの女子の選出の仕方がa-b通り
 よって     bn-1*(a-b) 通り

以上により求める組み合わせの数は
(a-b)an-1 + (a-b)an-2b + (a-b)an-3b2 + … + (a-b)abn-2 + (a-b)bn-1   となり、
(a-b)でくくって
(a-b)( an-1 + an-2b + an-3b2 + … + abn-2 + bn-1 )  (=★の右辺) が導かれた。



ただこうして導かれた等式ではaとbが自然数という条件つきなのは難点かも?
――まあこの場合は任意の実数mでも使って、両辺にmnをかけてやれば
am =k , bm =ℓ とおいて
kn - ℓn = (k-ℓ)( kn-1 + kn-2ℓ + kn-32 + … + kℓn-2 + ℓn-1 )
が成立するから、適用が実数の範囲まで広げられることになると思うけれど――


今回はすごくシンプルな例だったけれど(わざわざ場合の数で考える必要もないようなorz)、
これをステップに、もっと面白いものが生まれることを期待して、今後恒等式を見たり、場合の数や確率の問題を解いたりするたびにちょっとでも考えてみたい。
思いつき次第また記事にしようと思う。


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