こんにちは、司法書士・ペット相続士の金城です。
犬の帰巣本能については、しばしば驚くべき事例が報告されていますが、最も有名で驚異的な事例は「名犬ラッシー」のモデルとなったボビーの例でしょうか。
驚異的な出来事は今から100年ほど前に起こりました。
1923年、アメリカ・オレゴン州シルバートンに住むフランク・ブレイザーさんは、生後6ヶ月のコリーのミックス犬「ボビー」を連れて、インディアナ州のウォルコットという町に夏の休暇に訪れました。
ウォルコットは、ブレイザーさんの自宅から直線距離で3,400キロも離れた町です。
その休暇を過ごしていたある日、ボビーは、ブレイザーさんが運転する走行中の車から飛び出し、行方不明になります。
ブレイザーさんはボビーを見つけるべく、数日間に渡って辺り一帯を捜索し、地元の新聞紙にも捜索広告を出すなどして八方手を尽くしましたが、ボビーの行方は分かりませんでした。結局、ボビーを見つけられないまま、ブレイザーさんはシルバートンの自宅に帰宅せざるを得ませんでした。
しかし、その6ヶ月後、信じられないことに、ボビーがブレイザーさんの前に現れます。6ヶ月にも及ぶ旅をして帰宅したボビーは、全身がボロボロに汚れ、ガリガリに痩せ細っていたそうです。
ボビーのこの奇跡の帰還をシルバートンの地元新聞局が【the Silverton Appeal】に掲載し、多くの人々が知ることとなります。
ボビーのことが話題になるにつれ、ボビーの身体的特徴を覚えている人たちから、「ボビーが歩いているところを見た」「餌をあげた」などという情報が多く寄せられるようになりました。
この驚異の帰還を受けて、オレゴン州の動物愛護協会が、ボビーの足取りを調査するため、帰宅を目指す旅の途上にいたボビーと実際に出会い、餌を与えたり、寝る場所を与えたりした人々の証言を集めます。
そして、数々の人々の目撃情報や証言から、ボビーの帰路を目指す足取りは、インディアナ州から始まり、イリノイ州・アイオワ州・ミズーリ州など8つもの州をまたいだものだったことが判明したそうです。ボビーは厳冬の２月に、険しいロッキー山脈を越え、大きな川なども泳いで渡ったようです。
最終的に、オレゴンの動物愛護協会は、ボビーは4,800キロもの距離を旅して自宅にたどり着いた、との調査結果を公表しています。
ボビーが迷子になった時は生後６ヶ月の幼犬でした。
ボビーがどのような感覚に頼って、日本列島の距離よりも遥かに長い4,800キロもの旅をして自宅にたどり着いたのか、まったく謎ですが、飼主の匂いをたどって帰宅することは不可能だったはずです。
一説では、犬が遠距離移動する際に、地球の磁場である地磁気を感知しているのではないか、ともいわれています。
遠大な旅を終えた3年後の1927年、ボビーは息を引き取ります。
ボビーは４才か５才で命を終えたことになりますから、短命だったといえるでしょう。ボビーは、オレゴン州の動物愛護協会のペット墓地に埋葬されました。
ボビーの奇跡は今も語り継がれていて、シルバートンにある会社の壁には、1924年2月22日に【the Silverton Appeal】に掲載されたボビーの記事が、壁画として描かれています。
また、このボビーの奇跡の物語は、【5000キロを旅した犬ボビー 北米大陸を横断した奇跡の犬の物語】《川手真砂 著 日高康志 画 1998.09.30 発行 ハート出版》として刊行されていますし、【名犬ラッシー】としてもドラマ化・映画化されています。
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