人間が言葉を習得するうえで聴覚はおよそ不可欠の感覚である。その聴覚が機能しなければ、人は言葉を習得し話すことが出来ない。言葉が習得される過程で聴覚の機能はどんな働き方をするのか?。そして日本語は世界の多くの言語と共通性を持つのか?それとも異質なのか?などのテーマが思い浮かぶ。なぜなら日本語は世界各国の言葉の系統から離れる特異な言葉であるとされているからです。角田理論は耳鼻科のお医者であった角田忠信博士が1970代の初期に提唱された仮説であった。角田先生の最後のご著書を拝見すると永いご研究の歴史が説明されている。
ここでは角田理論のもたらした言語観と日本人観について少し私見を述べてみたい。数学という分野では世界共通という認識が一般的だが、それでは本当にそうなのかと問うた場合は幾分の違和感がある。西欧の数学が科学的な業績の上に立ったために現代では西欧式の数学が主流である。しかし西欧数学が主流になる前には、各文化を背景とした数学が有った。古代には志那の数学が有り、日本にはその影響を受けた数学が有り、江戸時代には日本数学である和算の流行を見た。和算は独特なものがあり現在の日本数学は洋算の系統に属します。和算をみると200年くらい前の数学なのに我々が習った数学とは何か少し違った数に対する感覚があるようです。明治期に教育が和算から洋算に替えられて、その感覚は特に学ばない限り消失したように思います。
さて角田理論の言語観、それは発展して宇宙観まで到達するわけですが、先生が最初に日本人の感覚とそれ以外の人々の感覚が、なにか根本的な原因で少し違っているのではないか?と思われた切っ掛けが有ったらしい。外国での学会で確かブラジルか?そこで日本人以外に、なかなか虫の声が聴き分けられないと、謂う経験を為さった。それが不思議に思えて、先生はその原因を探ろうとされたようです。幸いなことに角田先生の専攻分野が耳鼻科であり、特に聴力障害者の治療と難聴リハビリの分野であった事が研究を進めるのに大いに幸いした。然しどうして言語の差異が虫の声の認識を左右しているのかに気が附いたのだろうかと思いますが、角田先生はそこの説明を丁寧になさっている。日本語は母音を意味として認識している。こんな言葉は世界中探しても日本語とポリネシア語系のコトバだけだという事です。他に探せば見つかる可能性があるかも知れない。この一事を取って、日本語は日本人と共にごく古い言語に相当するのではないか。日本語はいろいろな言葉が被さって出来て居るという説を昔時枝正記氏が提唱しているが、基層になるなる部分には、遠く古代の言葉の痕跡が残っていて、それが日本語の土台になっている。その土台に建物を建てたとしても土台の特性は消える事は無い。この部分の展開は多くあると思います。
そしてこれ以外にも驚くべき提案を為している。それは脳の惑星系との連動(時間)や、地球という環境での磁場の影響(磁場の逆転)、地殻の歪み(地震)、太陽フレア(磁気嵐)個体の成長時間(寿命)、生命体は銀河系内のある惑星系の一部で発生して、様々な重合と環境に対する適応で変化してきた。それが進化と云う物の実態です。現在私達は、謂わばこの変化の頂点にありますが、我々の内部には今も古代から受け継いだ様々の備品が隠され残されています。隠されているという言い方は少し大袈裟ですが、「忘れている或いは知らない」、という言い方の方が適切かも知れません。原始細胞体としてうまれたコアセルベート(オパーリンはこういう言い方をしている)が、やがて真核細胞になり外界から受けた情報をため込むようになる。そしてため込んだ核酸情報自体が自己変化し始める(遺伝情報の分子進化)。この二つのメカニズムで遺伝情報の自己内進化、と外界への適応による変化で爆発的に変化の速度が増した。
もう一度同じことを書きます。我々は多くの点で古代の備品を受け継いでいる。初期の生命体は生存環境とダイレクトにつながったものです。その中で獲得した能力は、変化の過程で捨てられるか退化して消えた物だ。それが謂わば進化と云う物の実体です。この辺の事柄については三木成夫の研究は興味深い。角田忠信氏の角田理論は、我々が生命体の初期のような古代の備品(能力)を受け継いでいる事を改めて認識させました。惑星系の影響は生命体に強く作用し多くの痕跡を残しており、磁場逆転、天変地異、宇宙時間、季節の変化、等々、退化という話題の一つに脳の中枢部に在る松果体があります。
これはDescartesが魂の宿る器官であるなどと書いて居るので有名ですが(勿論、Descartesの、この様な神学的な見解が正しいはずはないのですが)、人間ではその脳内に小さな器官として、退化した松果体は過去の両生類か爬虫類の時代には、その器官は頭頂部に出ていて、太陽光の紫外線を感知し有害な光線に反応してメラミンを形成する役目を果たした器官であったのでしょう。この松果体は体細胞のメラミンを調節する機能をもつ器官であった云えるのではないか。メラミンという物質は体を黒くして細胞を紫外線から守る色素ですが、太陽光線には多くの有害な波長が含まれていて、例えば紫外線の影響で老年になると水晶体の白濁である白内障が生じます。白内障に成らない人も居ますが、それは生まれて以来の紫外線を浴びた総量で決まるものかも知れません。ただ目の弱い人と比較的強い人も居ます。生命体が視覚を持つに至った経緯は何であったのか?。また聴覚を持つに至った経緯は何であったのか?。面白い進化の過程でも、この二つの感覚は謂わば基本的な能力の獲得になります。
角田忠信先生の角田理論は日本語という言語の特性を探求し、初めは自然の音に反応するのは文化的な聴力の差異なのか?と思われたらしい。不思議に思われた先生は、是は何に起因する現象なのだろうと更に原因を突き止めようとされた。この様な広範でたんに個体の現象だけではなく、それが惑星系とか太陽系の作用に連動している可能性を提案している未知の世界です。これは脳神経科学の重要な分野であると認識しています。この研究はまだ深く広い世界の入り口の突破口を開いた記念碑的業績です。虫の声がわかるのは日本語環境の中で育ったゆえの効果でしょう。脳幹の音に対するスイッチ機構が形成されるのはごく幼年期から7~9歳くらいまでの間だと言われています。それは不思議にも母語の形成時期にあたる。逆に言えば脳幹スイッチ機構が形成されるのは脳内に於ける音の処理機構、つまり母語の獲得の別な表現なのです。日本語はいわば古代のコトバと言って好いのではないかと思う。日本語というのは古い古い過去を持っているらしい。分子進化学に於ける日本人の30%を占める核酸の塩基配列から言えば、現生人類のなかではかなり古い人類に相当するのではないでしょうか。
太陽系と連動する脳幹の時間的systemが在るのなら、それは取りも直さず天体の力が自己組織能力を生んでいる事に他ならない。ではその「天体の力とは何か?」であり、端的のその答えを言うのならば天体の力とは「重力」、つまり「万有引力」である。その他にいったい何が考えられると謂うのか??。質量間に働くのは引力であり、その質量内部で働くのは電磁気力でもある。もちろん電磁気力は外部空間にも放出されている訳だが、万有引力が生命体を生んだし、生命体はそのシステムを体の中に取り入れている。また自然環境を通じて体細胞の進化にも深く関わっている。こう言う天体の力が我々の深い無意識や覚醒意識など、無意識や顕在意識にも確実に影響を及ぼしていることを自覚するとき、つい300年ほど前に、ヨハネス・ケプラーが、一生懸命に遣っていたのが「占星術であることを」、何と馬鹿げた事をと、笑えなくなる。もちろんケプラーの方法論が正しいとは思えない。個人の運命や人生決断を星の運航から占う事は完全に間違っており、現代の科学観から謂えば、気違いじみた事である。だが明らかに太陽系の不気味で不思議な重力のsystemは、生命体の自己組織系に決定的な影響を与えていることは確かな事なのだ。この事は言語とも深く関係していることを思うとき、角田理論はこれは単なる一発見に止まらず、自然を理解するうえで根本的な自然観であることに気が附く。角田先生の発見は、異なる分野から今後再発見されて、その正しさが再確認される事であろう。
何よりも、角田理論は実験に基づいて得られた知見であるという事だ。これは過去の神憑りのシャーマンに拠って得られたものではない。太陽系を構成する惑星の運航が、その惑星に生きている生物の生理機構と遺伝子の創造に関与しないという事など考えられないことだ。波動は個体に大きな影響を与えている。最小の単位である量子の世界では、物質は波動であり、波動はまた物質である。我々の思考は、物資と波動の二重性の、そのどの次元にあるのか?興味は尽きない。
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