むかしぁ、下の歯が抜けりゃぁ、縁の下に投げ込んだものよ。
で、今度は上の歯が抜けりゃぁ、屋根目がけて高く放り投げる。
しまったぁー、って、ちょっと失敗して2階の窓んなかに入っちゃったりしてな。
自分の歯が抜けた今から遡ること30年以上前の話。生えかわった歯も、いまじゃ、きらびやかで華やかに装い、奥の奥まで削りに削られアイスなんて食べた日にゃ歯の奥の神経に冷たさ直撃で思わず頬に手をあて顔をゆがめる次第。ジジイになったものだ。80歳で20本の歯を残そうなんてことは程遠く8本くらい残りゃいいかも。
最近ムスメの歯が抜けた。
歯が抜けて・・・・さて、どうしよう。世界各国でも歯が抜けたときの伝承があることをムスメが借りてきた絵本(「せかいのこどもたちのはなし はがぬけたらどうするの?セルビー・ビーラー文/ブルーベル館」)で知った。
中国、韓国等のアジア圏はだいたい似たようなもの。
アメリカでは抜けた歯を枕の下にいれておくと、寝ている間に歯の妖精が来て持っていってくれる、しかもお金まで置いて。という具合らしい。
ジャマイカでは、歯が抜けた晩にゴロゴロウシという怖い牛がくさりをジャラジャラ鳴らして歯を取りにくるので、缶に歯を入れてうるさく振りまくり牛を追い払う。
コスタリカでは、抜けたはをお母さんが金メッキを塗ってオリジナルイヤリングを作るとか・・・・
どこでも歯が抜けたら何かしらやっているということだが、実際問題、マンション住まいのこのご時勢、どすりゃいいのか。
生活の変化や住宅事情によって伝承も変わる、というより勝手に変えてみよう。縁の下なんてものは戸建てじゃなきゃないし、いくら小さい歯とはいえ、地上40mにもなるマンションの屋根に届くはずもない。なもんだから、ルーフバルコニーでムスメの耳元でそっとササヤイタ。
下の歯は屋根向かって投げると真っ直ぐな良い歯が生えてくるって昔から言われてるんだぞ。屋根があれば良いけど、ここはマンションだから上のおうちのルーフバルコニーに投げちゃおう、そっとだぞ。※
せぇーのっぉ!
カチッ、カチカチカチ・・・・
歯は階上の柵の手前の壁にあたり自分の足元の数メートルに転げ落ちてきた。
※ルーフバルコニーの端から柵までの距離、柵から壁面までの距離の図面で確認、およびムスメの力量、歯の投法を十分に考慮したうえで行っております。危険ですのでまねをしないでください。
というのは全くの空想の中の話であって、実際は・・・・
自分の体の一部であった一本の歯との別れが惜しく、涙ならがに訴えるのであった。
おとうさん、この歯、取っておきたいの(涙)
でもって、フィルムケースにて現在保管中。
へその緒じゃないっつうの、いつまで取っておくのやら・・・・