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_この世は猫のみる夢_

2019.8.17【★小島毅|天皇と儒教思想_伝統はいかに創られたのか?/光文社新書2018.5

2019年08月17日 | 《こ》 _読んだ本・人・ブログ
 多分、この小島毅のような歴史観がこれからのし上がってくると思う。日本の新右翼の一翼を担うリベラル保守があたかもリベラル左派であるかのような錯覚の時代になってる。彼が醸し出す社会思想史が歴史だとする一派。「乃木殉死までしか書かん」と言った「司馬史観」に取って代る新史観。
 思想がこれほどまでに嫌われる時代になったのも、思想に内在する主義(イズム)、イズムと言えばアカ、マルクス、共産主義、主張(デペートだとの勘違い)、科学的勘違いは科学の名において許されると思い込む近代科学主義の成れの果て。

 東アジア海域に漕ぎ出す 全6巻/東大出版会 これを監修した前後、彼は東大教授に成り、中国思想家から歴史学者に変身した。思想が歴史を創る一派が形成され、教科書出版で大きな影響力を持つ山川出版に食い込んだ。

 社会心理学(社会が個人を作る)。デューイやジェームス、ミード、ハクスリーなどアメリカプラグマティズムは、戦間期、戦後のマッカーシー旋風頃には、コミュニケーション論、メディア論に成って行った。もう一つの心理学はビート族がヒッピーを生むようにサブカルチャー論に沈んだ。フロイト、ユングに示された心理学は、臨床心理学、個人の領域を扱う心理学から社会を見る世界観(個人が社会を作る)を醸成した。
 社会学の中で、このコミュニケーション論は(ましてサブカルチャー論は)、歴史学にさしたる影響力を持たないまま戦後を過ごした。そしてそのまま歴史観を試されないまま、歴史学になだれ込んできた。その一例が梅原考古学だし、、(まだ言えないが、日文研の、、)、、。

 私は、小島毅のような文体が読めない。体が拒否する。

 ただ、彼の着眼、海洋、東アジア海域は、海賊の歴史の読み替えをうながしているのは確か。中国の海禁、日本の鎖国は、時の権力による私掠船の禁止、私交易の禁止、幕府と一部藩による交易の独占は、ポルトガル・スペイン・英国・フランスなどの蛮侵への対抗であるのは間違いない。西欧から見て海のかなたのアメリカ大陸は東インドに比す西インドであった訳で、米国は早くに独立を得た海洋国家だった。むしろ広大な大地を版図にした歴代の中国支配者が北京と杭州を結んだ大運河の支配とその攻防こそが、海域の支配権だったかもしれない。
 オランダ、イギリス、ポルトガルがさらに東進するにあたって、大陸と台湾の間の海峡の安全を求め、大陸側に租借地を要求した時、中国の支配者は初めて台湾の重要性を認め、台湾に征服のための軍隊を送ったそうじゃないか。
 宋の時代に興った宋学、日本では朱子学になる。その一派の陽明学は、時代に合ったがゆえに実学と言われた。そして朱子学は復古学とも修辞学とも呼ばれ守旧派のよりどころになった。そういう風に、小島毅は言ってるようだ。だけど、だからと言って、思想が歴史を創るかのような錯覚をしてはならない。社会思想史が歴史だというなら、ヘーゲルの亡霊じゃないか(ヘーゲルが浮かばれない)。

by龍隆2019.8.17


天皇と儒教思想_伝統はいかに創られたのか?/小島毅|光文社新書2018.5 /長浜/滋賀ほか

放送テキスト|朱子学と陽明学/小島毅/放送大学教育振興会2004  //高島市  125.4 
   (改訂版|朱子学と陽明学/小島毅/ちくま学芸文庫2013  //滋賀ほか 125.4 )

シリーズ|東アジア海域に漕ぎ出す 全6巻/小島毅監修/東大出版会2013∼2014 //見当たらないどうしたことだ
東大出版会:紹介 http://www.utp.or.jp/book/b297532.html

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