法律情報

行政書士で大阪市内で開業している北東 聡(きたひがし さとし)が、気になる法律情報を提供します。

株式会社の定款作成、設立における問題点について (第6回研究会)

2012年05月25日 | 研究会
 平成24年5月23日に大阪市中央区内で、第6回研究会を行いました。
 以下は、その研究会で報告された内容です。

Ⅰ 事例について

【事例 1】
甲より、甲と乙の二人で100万円ずつ出資して株式会社を設立したいとの相談を受ける。

問題点  株主総会で何も決められない。


【事例 2】
香港にある〇〇有限公司の代表者Xより、100%子会社を設立したいとの相談を受ける。

問題点  発起人は発起人の口座に出資金を振り込まなければならないのに、法人格のない海外法人は銀行口座を開設できるのか。


【事例 3】
発起人のうちの一人が、公証人による定款認証後出資金を振り込まない

問題点  認証済みの原始定款は無効となり、再度定款認証を要するのか


【事例 4】
株式会社設立後すぐに支店を設置予定

問題点  本店と同一管轄でない登記所の管轄内に支店を設置すると登録免許税が   
     69,000円も余計にかかる。




Ⅱ 上記の事例に対する対処方法について

【事例 1】
1. 出資比率を2:1にする。(株主総会特別決議が可能)
2. 株主総会における議決権を甲は有り、乙は無い等の旨を定款で定める。(§109-II)
3. 議決権制限種類株式を発行する旨を定款で定める。(§108-I-3)合わせて会社法第322条第2項の定めを定款で定める。

発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容
  A種類株式  100株
  B種類株式  100株

B種類株式を有する株主は、株主総会において議決権を有しない。

会社法第322条第1項各号の行為をする場合において、B種類株式の株主に損害を及ぼすおそれがあるときであっても、法令に別段の定めがあるときを除き、B種類株式の株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない。

上記は登記事項である。(§911-III-7)


たとえ会社法§108- I-3により、ある種類株主の株主総会での議決権を制限したとしても§322-IIの定款の定めがなければ種類株主総会での議決権を制限できない。
§322-IIの定款の定めがあっても。



§322-I-1
   イ 株式の種類の追加
   ロ 株式の内容の変更(単元株式数を除く)
   ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
§111-I
   取得条項付種類株式の設定        当該種類株主全員の同意
§111-II
   譲渡制限株式の設定         当該種類株主総会(特殊決議)
   全部取得条項付種類株式の設定    当該種類株主総会(特別決議)
排除できない


【事例 2】
1. 日本在住の1人(日本人に限らない)を発起人として1株を引き受けてもらい、その発起人の口座に出資金を振り込む。会社の成立後その1株を買取り100%子会社とする。
2. 発起人が設立時代表取締役の口座に振り込む旨を設立時表取締役に委任し、設立時代表取締役の口座に出資金を振り込む。この委任状は設立登記の添付書面となる。


【事例 3】
再度定款認証を要する。(別紙 日本公証人連合会のホームページより抜粋を参照)


【事例 4】
会社設立と同時に支店を設置すれば、他管轄の場合登録免許税が69,000円も安くなることを説明する。

以前は本店での登記完了後2週間以内に、登記事項証明書を添えて支店設置の登記を申請していたが、現在は本店設立と同時に本店を経由して、支店設置登記ができるようになった。
登記事項証明書は要らなくなったが、手数料として300円必要。


執筆:神藤 正一

財産分与、代物弁済、遺言執行者の責任、任意後見人の取消権等の疑問点について  (第5回研究会)

2012年05月02日 | 研究会
 例えば次のような事例では、どのような手段をとることができたのか?

・A(男)B(女)は元夫婦である。

・A及びBは、婚姻中、A名義の甲土地とその土地上に昭和57年に建てられたA名義の建物(乙建物とする)に住んでいた。

・ 平成元年1月に昭和63年12月保証委託契約による求償債権を原因として甲土地及び乙建物に抵当権の設定がされた。債権額1000万円、債務者A。

・平成5年に裁判上の和解で離婚(原告A、被告B)。

・判決の内容・・・Aは甲土地及び乙建物の所有権の半分を財産分与としてBに移転する。BはAに対し、Aの債務のうち約790万円を負担することになり、平成26年まで毎月3万円余をAに直接支払うこととし、滞納があった場合、残金を一括で支払う。

・平成5年4月財産分与を原因とし、Bの持分を2分の1とする所有権一部移転登記がなされた。

・しかしBはAに対して離婚から1年間、Bの負担部分の支払いをしなかった。

・平成6年頃、Aの弁護士から通告書が届いた。内容は、Bが支払義務を果たさなかったのでAは以降のローンの支払いをしないというもの。

・通告書受取後、Bは現在に至るまでAの負担額に自身の負担額を加えた額(ローン全額)をAの口座に送金し続けている。

・Bがローンの全額に相当する額をAに対して返済してきた理由は、

 ①自身にローンの全額につき返済する責任があると思っていた。  

 ②返済しなければ、抵当権の実行などにより家を明け渡さなくてはならなくなると思っていた。 

 ③ローンの全額を支払えば最終的にAの持分は自動的にBに移転すると思っていた。

 などがある。

・土地の路線価、約420万円。建物の評価額、約100万円。

・Bからの依頼内容・・・Aの分までローンを支払ってもAの持分は自分に移転するわけではないとわかった以上、なんとかして甲土地及び乙建物をすべてB名義にしたい。(最終的にローンの全額を支払うことになってもよい)

仮にAB間でA持分移転について合意がなされたときは、どのような契約書(登記原因)にするのが妥当か?など考えたいと思います。

その他、遺言執行者の責任、任意後見人の取消権、死後の事務委任契約等の疑問点について、発表した。

執筆:竹中 永健