貝がらの小舟

短歌のことや日々のことなどを徒然と。

未来詠草 7月号

2014-07-07 20:08:03 | 短歌
転生のことを


敷地内地図は楕円に描かれて動物園という小宇宙

ライオンに近づきてまた遠ざかる時はためきぬカモメの影は

春霞 呼ばれたようで見上げれば木蓮の木はいまだつぼみだ

つがいとはうつくしき語仏文のワシの生態きみは読みおり

ゾウガメの寿命のことを言いながらハーシーチョコを等しく分ける

ああ風はひかりの速さ 方舟に乗りそこねたるいのちを思う

Malawi湖と付されし水槽に泳ぐのは魚ではなくて音楽である ※水槽=みず

転生のことを話そう木にもたれ海という字を名に持つきみと

この先は夕闇の森 群れ持たぬガゼルのようなきみを守りたい




工房月旦にて、桝屋善成さんに「夕暮れの書架をめぐればこんなにもふかくしずかに満ちてゆく海」、
本多真弓さんに「くちびるを離れれば鳥になるようなうたをいくつも持っているひと」にそれぞれ評をいただきました。
ありがとうございました。

うたつかい 7月号

2014-07-06 20:17:57 | 短歌
空だけの地図


どの春がわれの最後の春だろう 歌集に銀の栞を置いて

目薬のように西日は差し込みて左目透けてゆく帰り途

春は闇 浅きねむりを眠るときあなたは胸に砂漠を宿す

いけないと否むあなたの胸元に火が点るようアゲハが止まる

遠くまで来てしまったね空だけの地図を砂地にふたり描けば

out of range

2014-07-02 20:13:18 | 短歌
out of range


岸はもう遥かになって観覧車はくびながりゅうの標本のよう

わらうたび肘がふれるね甲板に二人称すぐあいまいになる

朝毎にきみの窓辺にクローバーを届けるような暮らしがしたい

なんだってすぐに栞にする癖のきみの本には風切り羽が

エビアンを飲む横顔のあかるさよ いつ圏外を抜け出せるだろう

並び行く自転車 声をさらう風 あのね、なあにとくりかえしたね


以前、ネットプリントに出したうたです。