帰ってきたスタンドバイミー

~あいつとあいつの青春慕情~

研究会

2006年04月27日 | Weblog
1, 定款の「株主総会議決権代理行使を株主に限るとの代理権制限」の効力

論点:①株主総会における議決権行使の代理人資格を株主に制限する定款13条は無効である。
②仮に当該定款が有効な場合においても、議決権代理行使を理由に株主権行使を拒絶する行為は違法である。
③株主総会における議決権行使を株主以外に認めない行為は財産的損害にあたる。
④株主総会における議決権行使を株主以外に認めない行為は精神的損害にあたる。

①商法239条2項は、株主の議決権行使に困難を伴う場合、代理による議決権の行使を認めている。なぜなら、議決権は財産的性格をもつため「代理」という制度に馴染み易く、さらに株主の個性が重視されないため「代理」という制度に馴染むからである。かつ、同条は、株主の議決権行使を民主的社団としての株式会社制度存立の基礎として確保するための強行規定であり、これは、民法65条3項と同様の規定が商法に規定されていない点からも裏付けられる。
    しかし、多くの上場企業は、定款をもって代理人を株主に限定している。これは第三者による株主総会の攪乱を防ぐことを目的として広く行われているものである。ここで問題となるのは、株主の中に代理人を見つけられない場合には議決権を行使できないことである。しかし、株式上場企業であるという性質上、攪乱を目的とする(いわゆる総会屋)は市場を通して株式を購入し正規の株主として総会への出席が可能であり、この点についての代理人資格の制限には実効性がない。
加えて,代理人資格の制限は棄権や白紙委任を増加させ、それらを利用した経営者支配を助長せしめるなどの弊害が顕著となる。また、利益供与の厳罰化がなされ、社会的非難が高まっている現状において、総会屋は減少しており、第三者による攪乱防止という合理的理由は、失われつつある。
従って、定款による限定は、商法上株主に認められた代理出席を当然に含む議権代理行使の権利を不当に制限するものであり、無効である。
②当該定款が有効であるとしても、それは議決権代理行使が個人的利益追求の道具あるいは第三者に攪乱されるという目的に合理性があることを根拠として、その限度の範囲内において適用が許容されるべきである。よって、無限定に議決権代理行使を制限することは、商法の規定の趣旨に反する。これに関し、最高裁判例は、代理人資格を会社の株主に限定する定款規定は、原則的には有効と解してよいが、その制限を認めることについて、合理的な理由があるか否か、またその制限が株主の議決権行使の機会を事実上奪うに等しい結果にならないか否か等を考慮して、定款の効力が及ばない場合を認めるとしている。(最判昭和43年11月1日判決・昭和51年12月24日判決)更に、最判平成12年3月28日判決において、議決権代理行使の「申出を拒絶することは、本件総会がこの者の出席によって攪乱されるおそれがあるなどの特段の事情の無い限り、合理的による相当限度の制限とすることはでき」ないと判事している。
総会を攪乱させる意図があったとは、到底理解できない場合、議決権の行使を拒絶するに足りる理由が認められない。                
さらに、51年判決は、「株主と指揮命令関係にある職員・従業員の議決権代理行使を認めている」これは、当該株主と代理人との間の委任関係においても、「信頼関係」という点で、共通するものであると解するべきである。加えて、平成12年3月28日神戸地裁判決は、「受任者である弁護士が本人たる株主の意図に反する行動をとることは一般的には認めがたい」と述べ、弁護士に議決権の代理行使を認めている。明らかに総会屋とは区別でき、また受任者の意思に反するとは通常考えられない者の代理行使を肯定すべきである。
以上の理由から、被告が原告の議決権代理行使を定款13条を根拠に拒絶したことは、違法である。
③行為が財産的損害を発生させる財産的侵害という不法行為にあたるためには、以下に述べる民法709条の要件を満たす必要がある。)故意または過失によること)侵害(違法性)のあること)損害が発生していること)被告の行為とその侵害の発生に因果関係が認められることの四つである。以下、問題となる2点について検討する。
)被告の行為により、原告は議決権を代理行使することができず、それによって原告が被告の株主総会に出席し、議事に対し質問したうえ判決に加わるという重要な権利、すなわち原告の共益権が侵害されている。この共益権とは、神戸地裁平成12年3月28日判決で、「営利社団法人の株主会社において、株主の会社加入の目的である経済的利益確保の機能を果たすいわゆる自益権を補助し、確保するものとして機能するものであるから財産権」であると解されている。したがって、被告によってなされた原告の共益権である議決権への侵害は、財産権にあたり、財産的損害が発生しているといえる。
)被告が議決権の代理行使を拒絶したこと・総会に参加できなかったことによりうけた損失と原告の議決権が侵害されたこととの間に因果関係が認められるか否かに関しては、被告が議決権の行使を代理行使以外の方法でなしえたかという問題になるが、被告は代理人を株主総会に出席させ巨額の損失発生に関する経営責任と危機管理体制に関する事項に関して問い正すことを強く求めており、その目的はほかのIT制度や書面質問、書面による議決権の行使などでは果たせず、代理権行使を拒絶することによって、議決権そのものが否定されたことになる。したがって、議決権の代理行使拒絶と、原告の議決権が侵害されたことには因果関係が認められる。
以上より、被告の行為は、原告の財産権侵害による不法行為であり、また被告の行為によって発生した損害は財産的損害と認められる。