前回、新ユニットを予告しましたが、まだ手元にありません。
このスタンドはコンパネ長そのままで、高さが1.8mあります。
そこで先に過去編を記事に上げます。
当時と現在では認識が異なっていますが、敢えて当時の視点で書いてみようと思います。
(2式魁1a型、最初のタイプ。この状態からスタートです。)
このスピーカーで、真っ先に考えなくてはいけなかったのは、「スピーカースタンドをどうする?」問題でした。
そして、なぜ低音が増強するのか、謎を解きたいと思っていました。
スピーカースタンドの方は、なかなか良い方法を思い付かなかったので、まずは謎解きから取り掛かりました。
最初に行ったのは、1a型(前半丼+ゴム板)の後ろを塞ぐ実験です。
以前のブログ記事でも少し触れましたね。
具体的にはゴム弾性板の振動を妨げないように、リング状のスペーサーを介して壁に押し付けました。
本当に背面のゴムで低音が増強されているのか、確認しようと思ったからです。
ところが結果は、全く予想を裏切りました。
ほとんど音が変わらなかったのです。
これには私は ??? となりました。
音の出口を塞いでも音が変わらなければ、これはバックロードホーンではない。
ではどうして低音が増強する?
なぜ?
当時の私にはわかりませんでした。
謎解きは一番最初から、いきなり挫折したのです。
狐につままれた気分でしたが、それでも考えを進めました。
後ろを塞いでも音が変わらないのならば、そのまま密閉型にしてしまえばいい。
こうすればバッフルボードは必要ないし、「スピーカースタンドをどうする?」 問題も解決するじゃないか!
実は先ほど出てきたリング状のスペーサーは、スピーカースタンド問題を解決すべく、コンパネ(12mm厚の建築用規格合板)を切り抜いたものです。
(ホームセンターでジグソーを借りました。)
後ろを塞ぐとなると、前半丼と同じ直径のものがあれば簡単です。
そしてすぐに思い付きました。
この丼は100円ショップの大量生産プラ製丼、同じ丼を買ってくれば即ピッタリ!
すぐに100円ショップから同じ丼、大小2セットを買ってきました。
そして前半丼と同じ箱鳴り対策を行いました。
大小丼の間にモルタル(≒コンクリート)を挟んで硬化です。
こうして後半丼が完成しました。
前半丼と後半丼をくっ付ける方法もすぐに思い付きました。
ビニールテープです。
黒のビニールテープを通常版、幅広版2種類買ってきました。
丼も黒なので、目立たずに、きれいに仕上がります。
こうして2式魁1b型、密閉タイプ完成です。
さっそく試聴してみました。
そして愕然としました。
「全く低音が増強されていない!」
スペーサーを付けて壁に押し当てると低音が増強するのに、いざ密閉型にすると増強されない!
なぜ?
今度は本当に頭を抱えました。
全く意味不明だったのです。
どう対策したら良いのか全くわからず完全に五里霧中でしたが、とにかく何か手掛かりが無いか、動いてみる事にしました。
1b型を分解、ゴム製弾性板を取り外し、代わりに様々な物を入れて、低音が増強しないか試します。
すると、低音を増強するものがありました。
発泡断熱シートです。
保冷バッグなどに使われる、アルミが蒸着してある、あれです。
この結果にも驚きました。
密閉型エンクロージャーの真ん中に、こんなペナペナの膜一枚を挟んだだけでなぜ低音が増強する?
本当に不思議で不思議で仕方がありません。
ともかくもこれを取り付け(張り)、丼2つをビニールテープでくっつけました。
こうして改めて魁1b型、完成です。
さて、今度は難問だったスピーカースタンド問題です。
これも密閉型になった事で目処がつきました。
実は良い物があったのです。
リング状のスペーサーを作ったときの、余った木片です。
丼のRに合わせて切ったので、木片も同じRで残っています。
これを前後に2枚、横を別の木材で繋いで簡単なスタンドを作りました。
適当な高さの台が無かったので、旧メインスピーカーを降ろして、その上に載せました。
でも、もう少し高さが足りない。
そこで、そこらに転がっていた前半丼の失敗作を載せ、その上にスピーカーを設置しました。
これで高さもちょうど良くなりました。
しばらくはこの状態でしたが、この魁1b型を見ていて思いました。
なんかサイクロプス(一つ目の巨人)みたいだ。
せっかくだから、ネクタイを着けてやろう。
こうして(おそらく)世界で唯一の、蝶ネクタイを着けたスピーカーが完成しました。
このブログの最初の回、ごあいさつの見出し写真にこの1b型を使ったのは、これが最もキャッチーな外観だったからです。
それでは肝心の音質評価です。
密閉型になったので、低音の回り込みによる減衰が無くなったはずです。
でも、あまり低音が伸びません。
容量が小さくて、空気バネが硬いせいでしょうか?
結局、1a型と大差のない低音でした。
そして音に少し癖が出てきました。
容量が倍増して1.5L程になったので、定在波の影響が出てきたのだろうと思われます。
それでも音が良いのは間違いありませんが、私的には今一歩、1a型のような感動はなかったです。
比べてみると、少し窮屈なイメージでしょうか。
その後どう改良したものか方針が定まらず、魁スピーカーはしばらくそのままでした。
その頃私が読んでいたのが、㈱薩摩島津 代表 島津知久氏のブログです。
(当時は A&CオーディオのMr.Hippo氏でした。)
私が書いた小難しい話のうち、吸音材はふわっふわの最高級ダウンが良いという話と、ユニットはエンクロージャーにがっちり取り付けるよりもフローティング構造で浮かせて取り付けるべきだという意見は、島津氏の主張がオリジナルです。
吸音材は、私が様々な種類を揃えて実験した訳ではありません。
フローティング構造の方は、島津氏が独自に開発したDSS振動板の特長を生かすために開発したものです。
一般的な箱に固定する取り付け方だと、木の響きで厚み感がでるものの、これは同時に音が濁る原因になる。
解像度が極めて高いDSSユニットには余計な響きは不要で、そのためには箱から浮かす構造の方が正しい。
島津氏はこの結論に基づき、高度で本格的なフローティング構造を採用しています。
私の方はもちろん一般的なユニットですが、P波ノイズが音に悪影響を与えるという観点から、やはりフローティング構造の方が望ましいという考察に至っています。
まあ、どちらも結果が同じと言えばそのとうりなのですが······。
でも、宣言しておきます。
私の方は完全な素人工作です。
とても同列に並べられるものではありません。
ここから少し個人的な宣伝をします。
島津知久氏のブログは、ぜひ読んでみる事をおすすめします。
スピーカー自作派にはとても参考になると思います。
スピーカー購入を考えている人は、リストの中に薩摩島津を入れる事を検討してみてください。
小型ブックシェルフで安くもありませんが、それ以上の価値があると思っています。
私自身も欲しいと思いますが、かすりもしません。
だからこういう安スピーカーのブログを書いているのですが。
実際にその音を聞いてみたいですね。
でも地方在住者のハンディで、ちょっと無理です。
話が遠回りしました。
魁スピーカーに戻ります。
島津知久氏のブログを読んだ私は、先に出た2つ、フローティング構造と吸音材の追加を考えました。
魁1b型の音が今一つなので、これを取り入れたら改善するかもと思ったのです。
フローティング構造は以前に書きましたね。
ユニットと箱の間にゴムパイプを挟み、ビスで止めました。
ビス止めなので完全ではなく、セミ・フローティングですが、コンクリートの箱を加工する訳にもいきませんので、ここは妥協です。
吸音材ではもちろん最高級ダウンを使いたいところです。
当時のA&Cオーディオでは、これを単品で販売していました。
当然これを購入したかったのですが、かなりのお値段です。
最高級なので仕方ありません。
でも、魁スピーカーは雑誌の付録ユニット、100円ショップの材料で作られた激安スピーカーです。
「このスピーカーで最もコストを掛けたのは何ですか?」との質問に、「吸音材です。」などと答えたら絶句されそうです。
いや、うけるかな?
とにかく最高級ダウンは諦めて、身の回りにある手近なものでふわっふわな物がないかと考えました。
そして目を付けたのがティッシュです。
これを細かくちぎって、ふんわりと詰め込もうという作戦です。
もちろん最高級ダウンには及びもつきませんが、相当軽量かつ音響特性も素直だろうと思います。
ただ、実際にやろうとなると、かなり根気のいる作業です。
最初は細かくちぎっているのですが、次第に大雑把に。
スピーカーの右と左で音響特性が異なってしまったかもしれません。
(細かい事を気にしてたら、頭が薄くなるぜ、兄貴!)
それと、カウンターウェイトを追加しました。
具体的にはZ角座(木造住宅用のZ規格に基づいた角座)1/2インチをそのままマグネットに貼り付けました。
こうして完成したのが魁1c型です。
ではその音質評価はというと、これもあまりパッとしません。
若干は良くなりましたが、やはり何となく1a型には及ばないのです。
そしてある日、とうとうぶちギレました。
魁1c型を分解、吸音材を取り出しました。
そしてゴム製弾性板を取り付けました。
つまり、1a型に戻したのです。
ただし、セミ・ フローティング構造とカウンターウェイトはそのままですので、魁1a改型とでもいうべき状態です。
そして新しく準備したスピーカースタンドに取り付けました。
このスタンドはコンパネ長そのままで、高さが1.8mあります。
上を重くする事で、前後に振られにくくしようという発想からです。
でも、このボルトとナットの取り付け方では効果は無さそうです。
結局今になって振り返ると、最初の魁1a型でスマッシュヒットを飛ばしたものの、その後は泣かず飛ばず、迷走を重ねていただけだったと思います。
これは魁スピーカーの謎が解けず、小手先の対応しかできなかったのが原因です。
どうして低音が増強されるのだろう?
振動板になったつもりで考えてみよう。
こうして、やっとたどり着いた結論が、低音再生編に出てきた三文芝居です。
そしてバックロードホーンの原理に思い至ったのは、その応用です。
ここからは現在の私の視点から魁スピーカーを論評しようと思います。
過去、私は魁1a型の後ろを塞ぐ実験を行いました。
リング状のスペーサーを介して壁に押し付ける方法です。
その結果、音が変わらず ??? となった訳です。
でも考えてみればこれは当然です。
壁に押し付ける方法では、隙間があって空気が漏れます。
ゴム弾性板はあまり影響を受けず、ホーンロード効果は維持されます。
でも完全密閉型になればこうはいきません。
空気が漏れないので、空気バネが働きます。
それも強く、です。
容量が小さいので、硬いのです。
これではゴム弾性板は強く制動されて動けません。
結果、この箱は小さすぎる密閉箱となってしまったのです。
このような状態では、弾性板は発泡断熱シートのような「ゆるい」素材の方が向いています。
重いゴムよりはまだ動けるので、ホーンロード負荷を掛ける事が出来ます。
でも後半丼の容量が小さいので、発泡断熱シートでもまだ動きが渋い(大振幅で振動できない)と思われます。
そのため、低音を伸ばすには、容量を増やす(大きくする)必要があります。
でも、仮に大容量化したとしても、ホーンロード効果はゴム板の方が大きいと考えています。
なぜなら発泡断熱シート+空気バネは軽量です。
通常のバックロードホーンと同じく、周波数が下がればホーンロード効果が効かなくなります。
重いゴム板の方が、ユニット振動板を振り回す(ホーンロードが掛かる)のです。
改めて過去を振り返っても、あまり参考になる話はありませんね。
実は思い立って、魁1a改型に本格的なバッフルボードを追加してみました。
当初はコンパネで製作予定だったのですが、昨今の値上げのせいで、2枚3000円。
魁スピーカーの場合、100円ショップの素材という意識が働いて、どうしてもコスパに厳しくなります。
ルビコン川を渡れなかった私は、ダンボールで妥協しました。
2枚で500円です。
実際に製作に取り掛かってみると、ここでも問題になったのはやはり
スピーカースタンド問題です。
元々の構想では、次のスピーカーで考えた方法を使う予定だったのですが、1a型とは形状が異なっていて使えなかったのです。
やむを得ず、元のスピーカースタンドのままバッフルボード(というより後面開放バッフルボックスと言った方が正確か?) を被せました。
一応計算上は、65㎐くらいまでバッフル効果が出るはずです。
ではその結果です。
ではその結果です。
低音が伸びてはいるのですが、程度は若干です。
そして副作用として音像定位が悪化しています。
これではあまりメリットがありません。
実際にダンボールに触れてみると、振動を感じます。
内部損失の大きい素材ですので、共振というよりも自然振動でしょう。
後面開放で音圧が掛からないから大丈夫、と思っていたのですが、甘かったようです。
振動が透過するのではバッフルの役目は果たせません。
もしもダンボール以外のもっと硬くて重い (振動しにくい) 素材を使えば改善するとは思います。
でも感触として、劇的に変わるとは思えません。
もちろん現状の低音でも8㎝フルレンジとしては優秀だろうと思っています。
(実際にバスレフBOXを作って比較すれば良いのですが、タイパが悪いとか理屈をこねてサボってます。)
ここに来て、私も本格的に低音を増強する方法を考えてみようと思い立ちました。
魁スピーカー、中高域は素晴らしく、低域も質は高いのですが、量は普通です。
いろいろとアイデアはあるのですが、どの方向が良いのか考察してみようと思います。
次回 上記のとうり、低音増強の考察
まとまらなければ次のスピーカーネタかも。