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精子DNA断片化率(DFI)はART妊娠の予後に影響する

皆さま、こんにちは 

2011年12月にパシフィコ横浜にて日本生殖医学会が開催されました。
当院からも3名が演題発表させて頂きましたが、
今回は中原が担当したポスター発表の内容をご紹介させて頂きます

タイトルは
『精子DNA断片化率(DFI)はART妊娠の予後に影響する』です。



『精子DNA断片化率』とは、当院で実施している精子特殊検査(ハロースパム検査)のことです。
精子を特殊な試薬に漬け、染色することで各々の精子頭部に入っているDNA(遺伝物質)が壊れていないかどうかを調べる検査です。この断片化率が30.0%以上あると、受精卵の発育に影響があるとされています。この検査は『精子の染色体異常』を調べるのではありません。『精子の質』を詳しくみる検査になります
『ART』とは『Assisted reproductive technique:生殖補助医療』の略です。つまり『ART妊娠』とは『体外受精や顕微授精による妊娠』という意味になります



今回の研究の目的は、まさにタイトルに書いてある通りです。
精子DNA断片化の値が高いとARTによる妊娠の予後に悪影響(特に流産)があるとの報告が、諸外国で複数行われています。しかし、日本では『精子DNA断片化検査』を行っている施設がまだ少なく、そのような報告がありません。そこで、当院のデータを使って、精子DNA断片化率とART妊娠の予後との関係性を調べました



2007~2011年の間に当院で新鮮胚(受精卵)と凍結融解胚を移植した250症例(483周期)を対象としました。女性の年齢が高くなると流産率も高くなる傾向があるため、対象となる女性年齢は39歳以下に限定しています。
精子DNA断片化率はARTの治療前に検査した値を用いています。値に応じて、L群:9.5%以下、M群:10.0-29.5%、H群:30.0%以上にグループ分けを行い、各々の『移植個数あたりの着床率』、『流産率』について比較しました。



グラフの上が着床率、下が流産率です。H群(30.0%以上の高値群)では、着床率が低く、流産率が高い傾向がみられました。ただし、統計学的有意差はありませんでした。



つまり精子DNA断片化率が高い場合、妊娠しにくく、妊娠したとしても流産しやすい傾向にあると考えられます。
治療前に精子DNA断片化検査を行って高い値が出た場合は、男性への治療が必要になります。検査値を改善させてから、体外受精・顕微授精を始めることをお勧めします
ちなみに、人工授精でも同様の内容が報告されています。治療のステップに関わらず、検査を受けられた方が良いと思います


以上が、今回発表させて頂いた内容です。疑問・質問等がございましたら、胚培養士までお声かけ下さい

また、当院では男性泌尿器科医師による男性不妊症外来を設けており、不妊症専門医との連携のもとに、男性不妊症の治療を行っております。診療予定など詳しくは、HPでご確認ください
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