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クルーガー検査 : 精子正常形態率

皆さまこんにちは
今回のラボ通信は『クルーガー検査』についてお話させて頂きます。

この検査は精液の特殊検査(オプション)です。
タイミング・人工授精でなかなか妊娠できない
体外受精・顕微授精にステップアップする予定
精液所見が悪い
などの場合にオススメしている検査です。

通常の精液検査では、精子が動いている状態で観察して精子数を数えています。しかし、その状態では形まで観察することが難しいのです

そこで、クルーガー検査の出番です
精子の形を詳しく診る検査で、
Kruger’s strict criteriaを基準として判別するので、クルーガー検査と呼ばれています。

検査方法は、
精液をスライドガラスに薄く引き伸ばし、乾燥させた後に染色します。
光学顕微鏡下で1000倍という高倍率で精子を観察します

精子の頭部(あたま)、中片部(くび)、尾部(しっぽ)の形や大きさを200精子観察し、正常な形の精子がどれだけあるのか(精子正常形態率)を調べます。WHO(世界保健機構)では4.0%正常形態率下限基準値とされています。
*下限基準値:1年間に自然妊娠したカップルの精液検査値の最低ライン

この4.0%とはつまり、『100精子のうち正常な形をした精子はたった4精子』ということになります。以前は15.0%以上で正常とされていましたが、2010年にWHOのマニュアルが改訂されました。昔の男性と現代の男性とでは精子濃度や形態がかなり悪化しているようです。

では正常な形、異常な形の精子とはどのようなものでしょうか

正常な形の精子
異常な形の精子:頭部肥大、尾部が2本
異常な形の精子:頭部が複数

なぜ精子の各部を細かく見るのでしょうか
精子の各部には様々な働きがあるからです
頭部(あたま)には、先体(せんたい)や精子の核(染色体)が含まれています。先体とは精子が頭にかぶっている帽子みたいなもので、卵子の殻(透明帯)を通るために必要な酵素が蓄えられています。頭部の形に異常があると、『先体がないために受精することができない』、『精子の核そのものが傷ついている』ことが考えられます。

中片部(くび)には、ミトコンドリアや中心体などが含まれています。ミトコンドリアとは精子が元気に泳ぐためのエネルギーを供給する、車のエンジンみたいなものです。中心体は受精のときに卵子と精子の核が融合するときに非常に重要な器官です。これも形に異常があると、この機能がうまく働かないことが考えられます。

尾部(しっぽ)は主に運動機能を担っています。車でいうところのタイヤでしょうか。まれに精子の頭部に尾部が巻きついている精子があり、このような精子は動けません。逆に頭部がなくても中片部と尾部さえあれば精子は動けます。しっぽだけで動く精子…見つけた時はちょっと怖いです

長くなりましたが、以上がクルーガー検査についてのお話でした
ご質問等がございましたら、いつでも臨床検査技師・胚培養士にお声かけください
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