(前回より続く)
私は最初にEPSがIllustratorのネイティブ・ファイルのように錯覚するのは問題だと書きました。何が問題なのかを抽象的な文章で説明するより、トラブルの実例を体験していただいた方がわかりやすいかと思います。前回の記事(書き直し前)のコメントでMM岩手さんから面白いサンプルを教えていただきましたので、ここで紹介しようと思います。
手順(一部引用者加筆)
1. Illustratorで太い線を使って円を描く。(例:半径の5分の1程度)
2. EPS形式で保存する(PDFでも可)。
3. InDesignのドキュメントに先程保存したEPSをリンク配置。
4. 配置した画像に変倍をかけて楕円にする。
5. InDesignからEPS形式で書き出す。
6. このEPSをIllustratorで編集しようとしてみてください。
どうでしょう? ちなみに5.のEPSをDistillerに送ると正常なPDFが出力されます。InDesignのEPSが不正ということではないのです。Illustratorで正常に開くことができると言い得るEPSは同じバージョンのIllustratorで作成したEPSに限られると思っていた方が無難です。InDesignを含め他のアプリケーションで作成されたEPSは正常に開けないか、開けたとしてもそれは偶然でしかありません。なぜなら再三書いている通りEPSはIllustratorのネイティブ・ファイルではないからです。
さらに6.からそのままIllustratorで上書き保存をしたとします。そのEPSを「イラレの鬼」等で作成アプリケーションを確認するとIllustratorになっているはずです。このファイルを何も教えずに後工程に流したらどうなるでしょう? 後工程でこの不具合に気がつく手がかりはありません。
非常に怖い状況だと思えませんか? しかしこういった危険は顧みられずに、今日もどこかでIllustratorで他のアプリケーションで作成されたEPSが無理やり編集されているのでしょう。
私がよく見たのはQuarkXPressから書き出したEPSをIllustratorで開いてフォントのアウトラインを取ろうとしたものです。その手のファイルは気がつきにくいところで部分部分が飛んでいたりします。しかしファイルをくれる人は平気で「Illustratorのファイルだよ」と言って渡すのです。もうこうなると卓越した洞察力が無ければ出力業務を無事にこなすことは不可能です。出力業務に負担をさせているこの状況が私は問題だと思っているのです。
最近ではスクリーンも富士もハイデルも、ソリューションとしてPDFワークフローを中心にラインナップを揃えています。それはPDFワークフローが、今までのPostScriptワークフローでは解決できないこれらの問題に対して、有効だと考えているからでしょう。PDFワークフローを正しく運用できれば、制作側にも出力側にも負担が少なく、かつ今までより多彩な展開が可能になるといいます。私も大まかな方向性についてはそれに賛成しますし、おそらく業界の進んでいる方向もPDFワークフローです。
先に書いたようにIllustratorでしか出力データを作れない人が増えています。そこからPDF/Xなどを作成できるくらいの知識を持っていてくれれば問題は無いのでしょうが、そうではなくただ習慣でEPSでファイルを作成しているという方は、ぜひ自分のワークフローをもう一度振り返り、うやむやな理解でやり過ごしている部分を勉強し直してみてほしいと思うのです。そしてMacOSXやInDesignやOpenTypeフォントやPDFワークフローなど、新しい技術を試してみてほしいのです。
無理に新しい技術に乗り換えろということではありません。新しい技術を勉強することで自分の今のワークフローを客観的に評価することができるようになろう、と言いたいのです。
EPSとは?という本題から逸れてしまうのでこれくらいで。EPSとはどういうファイル・フォーマットなのかということの要点をこの至らない文章で掴んでもらえるか疑問ではありますが、このあたりで締めようと思います。
この文章への質問や問題提起は大歓迎です、全部に応えられるかはわかりませんが。必要と考えればもしかしたら再度取り上げ直すかもしれません。DTPにおいてのEPSというファイル・フォーマットの存在意義は、簡単に説明できるものではないと書きながらあらためて思い知らされました。
私は最初にEPSがIllustratorのネイティブ・ファイルのように錯覚するのは問題だと書きました。何が問題なのかを抽象的な文章で説明するより、トラブルの実例を体験していただいた方がわかりやすいかと思います。前回の記事(書き直し前)のコメントでMM岩手さんから面白いサンプルを教えていただきましたので、ここで紹介しようと思います。
手順(一部引用者加筆)
1. Illustratorで太い線を使って円を描く。(例:半径の5分の1程度)
2. EPS形式で保存する(PDFでも可)。
3. InDesignのドキュメントに先程保存したEPSをリンク配置。
4. 配置した画像に変倍をかけて楕円にする。
5. InDesignからEPS形式で書き出す。
6. このEPSをIllustratorで編集しようとしてみてください。
どうでしょう? ちなみに5.のEPSをDistillerに送ると正常なPDFが出力されます。InDesignのEPSが不正ということではないのです。Illustratorで正常に開くことができると言い得るEPSは同じバージョンのIllustratorで作成したEPSに限られると思っていた方が無難です。InDesignを含め他のアプリケーションで作成されたEPSは正常に開けないか、開けたとしてもそれは偶然でしかありません。なぜなら再三書いている通りEPSはIllustratorのネイティブ・ファイルではないからです。
さらに6.からそのままIllustratorで上書き保存をしたとします。そのEPSを「イラレの鬼」等で作成アプリケーションを確認するとIllustratorになっているはずです。このファイルを何も教えずに後工程に流したらどうなるでしょう? 後工程でこの不具合に気がつく手がかりはありません。
非常に怖い状況だと思えませんか? しかしこういった危険は顧みられずに、今日もどこかでIllustratorで他のアプリケーションで作成されたEPSが無理やり編集されているのでしょう。
私がよく見たのはQuarkXPressから書き出したEPSをIllustratorで開いてフォントのアウトラインを取ろうとしたものです。その手のファイルは気がつきにくいところで部分部分が飛んでいたりします。しかしファイルをくれる人は平気で「Illustratorのファイルだよ」と言って渡すのです。もうこうなると卓越した洞察力が無ければ出力業務を無事にこなすことは不可能です。出力業務に負担をさせているこの状況が私は問題だと思っているのです。
最近ではスクリーンも富士もハイデルも、ソリューションとしてPDFワークフローを中心にラインナップを揃えています。それはPDFワークフローが、今までのPostScriptワークフローでは解決できないこれらの問題に対して、有効だと考えているからでしょう。PDFワークフローを正しく運用できれば、制作側にも出力側にも負担が少なく、かつ今までより多彩な展開が可能になるといいます。私も大まかな方向性についてはそれに賛成しますし、おそらく業界の進んでいる方向もPDFワークフローです。
先に書いたようにIllustratorでしか出力データを作れない人が増えています。そこからPDF/Xなどを作成できるくらいの知識を持っていてくれれば問題は無いのでしょうが、そうではなくただ習慣でEPSでファイルを作成しているという方は、ぜひ自分のワークフローをもう一度振り返り、うやむやな理解でやり過ごしている部分を勉強し直してみてほしいと思うのです。そしてMacOSXやInDesignやOpenTypeフォントやPDFワークフローなど、新しい技術を試してみてほしいのです。
無理に新しい技術に乗り換えろということではありません。新しい技術を勉強することで自分の今のワークフローを客観的に評価することができるようになろう、と言いたいのです。
EPSとは?という本題から逸れてしまうのでこれくらいで。EPSとはどういうファイル・フォーマットなのかということの要点をこの至らない文章で掴んでもらえるか疑問ではありますが、このあたりで締めようと思います。
この文章への質問や問題提起は大歓迎です、全部に応えられるかはわかりませんが。必要と考えればもしかしたら再度取り上げ直すかもしれません。DTPにおいてのEPSというファイル・フォーマットの存在意義は、簡単に説明できるものではないと書きながらあらためて思い知らされました。
「面白いサンプル」の「どうでしょう?」の結果を教えていただけますか。
「Illustrator CS」と「InDesign CS」で試してみましたが、
変倍のかかっていない太い罫線で、サイズは変倍のかかった楕円のデータが開きました。
Illustratorでも「EPS」ファイルをリンク配置し変倍をかけた後、
その「EPS」ファイルを埋め込むと、
「線幅/効果も拡大・縮小」のチェックをはずして変形した状態と同じように、
「線幅」は変形される前の太さで埋め込まれます。
そういう状態になるということをいっているのでしょうか。
普通、この世界で「大日本」と言えばそれはDNPのこと
を指す。
「大日本スクリーン」の略称は「スクリーン」です、普通。
なーんか、つまらない書き損ないが多いですね。
>BGM for Creater
>Createrという言葉に食傷気味
Creatorが正しい、もちろん。
PostScriptのレファレンスなどでなく、EPSの規格書を
紹介すればいいのに。なんでしないんだろう。
以下の記述がある:
--------------------引用開始-----------------------
Note that EPS files are a
final-form
representation. They cannot be edited
when imported into a document. However, the imported EPS file as a whole
may be manipulated to some extent, including transformations such as
translation, rotation, scaling, and clipping.
--------------------引用終了-----------------------
編集ができない旨、ちゃんと記述されている。
回転したり、大きさを変えたりはできるが、
それはIllustratorで言えば「配置」した場合を想定
しているものと思われる。
そうです。その際、横がクリップされてしまうのは多くの人は意図していないと思いますので。
http://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/06/2c1194fc4f0ce9a6febcf268c475def0.png
>ななしさん
ありがとうございます、直しておきます。
ところでこのコメントの内容であれば名前を隠される必要はないかと思います。
他の方のコメントでもおわかりになるかと思いますが、私のサイトでは管理人に向かって厳しい言葉がかけられるのは日常茶飯事ですので、こちらは気にしておりませんのでご遠慮なく。
名前を明かされたほうがいろいろな意味で有意義になるかと思います。
> なんでしないんだろう。
知らないから&英語が苦手だから、です。
> なーんか、つまらない書き損ないが多いですね。
周知のことかと思っていましたが…すでに修正は数え切れないくらい行っています(^^;)
どうも誤解されているように思うのですが、私はそんなに達人、エキスパートではありませんよ。
そこに皮肉を書いても的外れですし、わずかでも労力の無駄だと思います。
Illustratorのバージョンによっても違いがあるのかもしれませんが、
線幅の情報を含むオブジェクトのEPSやPDFのデータをIllustratorにリンク配置して
「拡大/縮小」を実行。その後、そのリンク配置データを埋め込みをしたとたんに
「拡大/縮小」する前の線幅に変わってしまう現象があったので、
リンク配置したデータは「拡大/縮小」はしてはいけない、
する場合には「パスのアウトラインが必要」と思いこんでいました。
このサンプルはさらにその理由まで理解するのに適している感じがします。
あらためてMM岩手さんに感謝です。
ただし、いまでもファイルの汎用性という意味ではEPSに価値があるし、当分使用されると思うので、使い方についての主張があってもよいのでは。
私も書く前はあれもこれもと書きたいことはあったのですが、意図がボケてしまいそうなので削った部分はあります。
私としては外からいろいろコメントがついてくれると本文を膨らませずに読者に多面的な見方を示唆することができて有難いです。
本来「EPSとは」という説明だけならron.さんやななしさんが書いている通り数行ですむでしょうが、そこから派生するテーマは幅広くあり、いろいろなテーマで私にも一意見はありますがそれはまだ付録的に書き足せるほど簡単明快なことではありません。
たとえばネイティブファイルのやり取りでも実際の運用面で未解決な問題があると思っています。
そのあたり、いっぺんに欲張るとまとまらないのです。
書くネタを取っておくというのもブログには必要なことなのでご容赦ください(^^;)
大変参考になりました。