Le Tombeau de Aga1ychnis Callidryas

ホームページの更新が億劫なのでこちらで準備。
DTPについての技術的な話や、仕事中に聴くBGMの紹介や、その他諸々。

〔Windows DTP関連〕オフィス・データのPDF変換(その1)

2008年01月22日 | DTP Reference

<まず再現が大事>

前回より続く)
 前回の前書きで精神論を書きましたので今回は技術論を。

 持ち込まれたオフィス・データを印刷用のPDFに変換するにあたっては、まず通常のDTPアプリと一般的なオフィス・アプリではアプリの性格に違いがあることを認識することが必要です。
 IllustratorなどのDTPアプリは体裁の維持が優先されています。環境が違うことで体裁が変化することがないように、ファイルを開いた時にいろいろな警告を出してくれます。これに対してMS Officeなどの一般的なオフィス・アプリでは情報の維持が優先されます。Aの環境で4ページに収まっていた書類がBの環境では5ページになってしまう、といったことも日常茶飯事です。そして怖いことは体裁が変化しても警告を出してくれることがないことです。

 ですから、オフィス・データをそのまま使用することになった場合、先方の環境ではどのように表示されていたかを把握することは重要です。厳密には先方の環境をそっくり再現しなければいけないのですが、それは非現実的ですから実際には先方の環境で印刷出力されたものを預かることになります。これを横着して先方との間に入る営業マンが自分の環境で印刷出力したものでこっそり代用しようとすることがあるので、よく重要性を理解してもらって基本的なルールとして守るように努力しましょう。(私もこれであわや刷り直しになるような事故にあったことがあります。)事故というのは多かれ少なかれヒューマン・エラーから発生するものです。

 先に書いたとおりオフィス・アプリでは体裁の変化に対して警告が出ませんから、先方の環境で印刷出力されたものとこちらの環境での表示結果をよく見比べて確認します。ただ、たとえばWordではWYSWYGと言っても画面表示ではフォントはビットマップになったりしますので、印刷出力して確認したほうがいいと思います。

 おそらくほとんどの場合、Mac版ではWindows環境で作られたオフィス・データの体裁は維持されていないと思います。(私の経験が少ないので断定はできませんが。)MS明朝やMSゴシックは付属しているとはいえ、その他のWindows用フォントが使われていることも多いし、GDIとQuickDrawという根本的な部分で異なるMac版では再現が難しい部分もあるでしょう。ですのでWindows環境を用意しておくことが必要になるかと思います。幸いなことにMacも新しい機種はIntel搭載マシンになり、Windowsとの併用もできるようになりましたから以前よりは敷居は低くなっているかと思います。

 こちら側の環境で十分に再現できているのを確認できたらPDF変換の作業にかかりますが、再現できない場合も出てきます。その場合にいくつか試したりする点があるのですが、次回はそれらをいくつか書いてみようと思います。
(次回に続く)


〔Windows DTP関連〕オフィス・データのPDF変換(前書き)

2008年01月22日 | その他(DTP)
 更新が滞ってしまって申し訳ないです。次のDTP関連の記事はラスタ画像の扱い方について取り上げようかと思いましたが、うまくまとまらないので後回しにして、だいぶ前にWindows DTP BBSのTipsで書いて以来、特に書いたことがなかったオフィス・データのPDF変換について書こうと思います。

<オフィス・データの印刷用PDF変換の位置づけ>

 近年ではパソコンの普及によって、今まで印刷業者に制作一切を頼んでいたような印刷物を顧客自身がパソコンでデータを作成して持ち込むケースが増えています。また、制作を依頼される場合でも、ケースによっては顧客が用意したデータをそのまま使うこともあるでしょう。
 特に印刷業者にとってはその対応に苦慮する場面が多いと思います。DTPの技術的なレベルが高くない、あるいは単一的な制作システムでしか対応できないような中小業者では、受けたくてもそれを適切に扱えない、断れば顧客が他所へ流れてしまう、ということで判断が難しくなります。まして今まである程度の金額が見込めた制作代の売上も削られることになるわけです。

 印刷・デザインに携わる人たちの間には以前からMacが普及していたこともあり、オフィス・データで主流のWindowsへの対応には消極的だった感があります。私はもっと積極的にオフィス・データへの対応をしていくべきだと以前から主張をしてきました。ひとつにはこれだけパソコンが普及すれば顧客もそれを利用して営業しているのは当たり前で、印刷業者が受け皿にならないなら他業種がそこに進出し、引いては業界の先細りの原因のひとつになる可能性があるからです。そしてもうひとつ、こういうことを言う人を見かけないのですが…
 顧客が作成したオフィス・データには顧客が持っているその印刷物への願望が詰まっているのです。私はDTPに触れる前には普通にWindowsでWordやExcelをいじっていましたから、データを開けば「あ、制作者はこういうことをやりたかったんだな」というのがすぐ理解できます。たとえそのままでは使えないにしろデータを受け取って見てみることで、顧客が何を考えているか、下手な打ち合わせを重ねるよりも大きなヒントをもらえるのです。

 そしてデータを受け取ってから、「うちではこれをそのままでも出せますが、もっと効果的にお作りすることもできます。」と言うのと「うちではこれは使えませんが、もっと効果的にお作りいたします。」と言うのとでは営業的な威力が全然違ってくると思います。後者の方はどうしても言い訳じみたニュアンスを感じさせてしまいます。そして顧客は前者の方が後者よりも顧客の意図を尊重してくれそうだという期待感を抱くはずです。(もっとも制作の力量に明らかな差がある場合は別ですが。)
 「顧客が作ったオフィス・データなんてそのまま商業印刷には使えない」ということは確かなことかもしれませんが、それが「できない」ことへの言い訳になっているならそれは間違いだと思うのです。「できる」ことを示さない限り「できない」理由が単なる言い訳でないことを相手に納得させるのは難しいでしょう。相手が苦労して作った思い入れのあるデータを持ち込んだ場合ならなおさらです。

 私はオフィス・データへの対応についてそのような観点で考えているので、印刷用のPDFに変換する場合でもあまり細かい所まで修正する必要はないと思っています。(例えばMS OfficeのXP以降では表の罫線を墨のみに変換するのは難しいと思います。)ただ、例えば文字の黒が墨のみになっていないとか、線が消えてしまうとか、変換の設定次第で容易に避けられることはきちんと処理するべきでしょう。難しい点はオフィス・データの多くはPostScriptとは違う体系で作られているので、状況に応じて最善の処理の仕方が変わってくることです。そのあたりの例を、DTP Referenceのカテゴリーで続けて書こうと思っています。
次回に続く)