Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

東野圭吾「ダイイング・アイ」

2015-02-20 00:12:19 | 読書感想文(国内ミステリー)




図書館でまとめて本を借りるとき、そのうちの一冊はさくさくと軽く読める本を借りることにしてるですが、今回は読みやすさでは評判のある東野圭吾の、「ダイイング・アイ」にしました。もちろん未読でした。

あらすじは、


深夜の東京で、自転車に乗った若い女性が自動車にはねられて死んだ。
それから一年後、とあるバーで働くバーテンダーが、閉店直後に現れた客の男に鈍器で頭を殴られる事件が起きる。
加害者は、一年前の事故で無くなった女性の夫だった。そして被害にあったバーテンダー・慎介は、その女性をはねた加害者だった。
殴られたショックで事故の記憶を無くした慎介は、記憶を取り戻そうと当時のことを知る人々を訪ねるが、詳しいことを話してくれる者はいなかった。
そんなある日、慎介の勤めるバーに謎の美女・瑠璃子が現れ…



えー、感想を率直に言います。

なんじゃこりゃ。

東野圭吾ともあろう人が、まるでやっつけ仕事のような作品でした。

冒頭の、自動車ではねられた女性の最期の瞬間の描写はなかなか凄まじくて、「これから何が起きるの!?」とわくわくしたのですが。
中盤で瑠璃子が現れて以降は、ホラーなんだかミステリーなんだかわからない状態で話が進んで、読んでるこちらのテンションは徐々に下がっていきました。しかも途中でSFに飛んでいきそうになるし。「秘密」とか「分身」とか、東野圭吾には他にも非現実的な作品はありますが、それらに比べるとこの「ダイイング・アイ」はその非現実的な部分に説得力がなくて、物語をうまく回すために利用してるだけのような感じがしてがっかりしました。
瑠璃子の正体がアンドロイドじゃなかったことだけが救いです。アンドロイドじゃなくても十分「ありえねー」正体だけど。

あと、東野作品にしては珍しく、激しい濡れ場が何度も出てきたのに驚きました。しかも必要性があるんだかないんだかわからない濡れ場。
瑠璃子は慎介を誘惑して何がしたかったのか?詳しいことは描かれないので想像するしかないですが、まじめに考えるよりもこの謎はむしろ「名探偵の掟」に出てくる天下一大五郎的発想で解いたほうがいいかもしれません。ほら、いわゆる「大人の事情」ってやつですよ。きっと。

冒頭の交通事故の真相は、序盤であっさりわかってしまいましたが、それが探偵役の主人公の正義感によるものではなく、少し捻ったやり方で暴かれたのは東野作品らしくてよかったです。クライマックスの展開が唐突過ぎて落ち着きがなかったのは残念ですが。なんだろうこの感じ。急に打ち切りが決まった連載漫画の最終回みたいな…。

この小説の登場人物は、ひとくせもふたくせもある奴ばかりでしたが、気の毒なのは冒頭で死んだ事故の被害者と、慎介に関わってとんでもない目にあった刑事・小塚くらいです。小塚なんて、利用されるだけ利用されて、いつのまにか退場させられて…小塚って名前に無駄に反応してしまった分、悔しいです。小塚くん、この悔しさをばねに世界選手権頑張るんだぞ!!(←意味不明)

もし万が一映像化するとしたら、男を意のままに操る目を持つ瑠璃子の役は誰でしょう。肉感的な女性だから、やっぱ深キョンかなー。慎介役は、いっぱい候補が思い浮かぶけど。でもこの小説の内容の薄さだと、ドラマや映画にしても面白くならなそう。いっそ濡れ場の多さを活かして、Vシネにしたほうがいいかも。哀川翔か竹内力主役で…ってそれだとまったく違う作品になってしまうか。見てみたいけど。




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