4日に京都府舞鶴市で開催された大相撲春巡業の土俵上での人命救助への“物言い”が、ネット上で「信じられない」と驚きを呼んでいる。「女性の方は土俵から下りてください」。日本相撲協会のトップが謝罪コメントを出す事態に発展したが、人命より大切なのかとの疑念さえ呼んだ角界の“おきて”とは――。 舞鶴文化公園体育館で行われた春巡業「舞鶴場所」がアクシデントに見舞われたのは、午後2時すぎだった。あいさつをしていた多々見良三・舞鶴市長(67)が突然倒れ、市内の病院に搬送されたのだ。 会場に居合わせた日本相撲協会関係者や地元関係者によると、市長が倒れた直後に警察官やスタッフらが土俵に上がり、心臓マッサージなどを施した。その中に観客とみられる複数の女性が含まれており、協会側は場内放送で「女性の方は土俵から下りてください」と数回促したという。土俵から下りた女性は医療関係者との情報もある。 あり得ないようなアナウンスがあった場面は、SNSを通じて動画がネット上に拡散。救命措置にあたったのは女性だけではないものの「信じられない発言」「命を救うことが第一」「土俵で起こっていること(市長が倒れたこと)が見えていなかったのではと思いたい」と疑問を投げかけるコメントが動画視聴者らから発信された。 事態を受けて相撲協会の八角理事長(54=元横綱北勝海)は「行司が動転して呼びかけたものでしたが、人命にかかわる状況には不適切な対応でした。深くおわび申し上げます」と協会を通じて謝罪のコメントを発表した。場内放送は行司が担当している。 このコメントによれば行司は、女性が土俵に上ったことに「動転」したとみられる。神事である大相撲で土俵上が「女人禁制」であることは一般にも知られているところだが、角界の“おきて”とも言える慣例が、いかに関係者に染み込んでいるのかを改めて浮かび上がらせた。 女人禁制を巡っては2000年の春場所前、開催地・大阪府の太田房江知事(現参院議員)が、千秋楽の土俵上で優勝力士に府知事杯を自ら手渡したいと発言し、女性であることを理由に協会側が反対して断念する騒動が起きている。 「女性差別」として協会側を批判する声も世論から湧き起こり、論争と化した。1990年には当時官房長官だった森山真弓氏が内閣総理大臣杯を授与したいとしたが、同様の理由から実現しなかった。 一方で00年に女性初の横綱審議委員となった大相撲に造詣の深い作家の内館牧子氏は06年、「女はなぜ土俵にあがれないのか」という著書を上梓している。 その源流は神話の時代までさかのぼり、五穀豊穣を祈る「土俵祭」も場所前に行われる大相撲は神事でもある。一方で、土俵上は仏教の世界で言われる「結界」にもしばしば例えられる。勝負俵で囲われた内側は、単なる「競技場」ではなく、連綿と続く神事・相撲の伝統に基づく「聖域」という考えだ。その伝統の一つが「女人禁制」ということになる。 もっとも、女性が土俵に上れないことについて日本相撲協会が公式にその具体的な根拠を示したことは、これまでなかったとみられる。月経が起こる女性は「不浄」視されるからという見方も俗説の可能性がある。いずれにせよ「伝統」が強調され、土俵上の女人禁制が続いてきた。 土俵祭のほか、千秋楽に行われる「神送りの儀式」(行司の胴上げ)に参加する行司は、伝統儀式に深く関わる立場になる。そのため、舞鶴の事態に「動転」して、行きすぎの“条件反射”となってしまったのか。 八角理事長は、救命処置に関わった複数の女性には「とっさの応急処置をしてくださった女性の方々に深く感謝申し上げます」と謝意を示すとともに、「市長のご無事を心よりお祈り申し上げます」ともコメントした。 市によると、多々見市長は意識があって会話はできているといい、命に別条はないとみられる。 (東スポweb) |
やはり相撲協会というところは、世間とかけ離れたところにあるようです。