廃墟賛歌ブログ

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廃道リポート:萬世大路~後編

2013-02-27 02:37:08 | プロダクション・ノート
オープロジェクト新作DVD『廃道クエスト』
そのロケを振り返りながら、
一つ一つの廃道を取り上げてアップしています。

前編、中編とアップしてきた萬世大路。
その道程でもっとも旧道と現道のルートが異なるのが、
栗子山を越えるルートです。

廃道・萬世大路

地図で言うと、
右側の国道13号マークから少し西へ移動した地点と、
米沢スキー場と書かれた辺りを、
現道はV字型に通っていますが、
かつての萬世大路は、
ほぼ直線で結ぶ様に造られていました。

そしてその最も標高の高い所にあったのが、
国内初の近代隧道であり当時国内最長だった、
栗子山の中腹を貫通する栗子隧道です。
その隧道を目指して、
本来右の国道13号マークの付近から旧道に入る予定でしたが、
あいにく旧道への進入路付近が工事中だったため、
急遽米沢側から旧道に進入し、
隧道へアプローチすることにしました。





廃道・萬世大路

かつての萬世大路は、舗装こそされていないものの、
かなり高い標高まで、ちゃんと道としての機能を残しています。
しかも轍があるのを見ると、車の走行もあるようですね。
と言っても現役の車道ではないので、
ほどなく道幅が狭くなり、車での走行はできなくなり、
途中からは徒歩で栗子隧道を目指します。





廃道・萬世大路

徒歩で隧道を目指す途中の林の切れ目から、
栗子山を抱く奥羽山脈が見えます。

平沼さん曰く、
国内に隧道あまたあれど、
分水嶺を貫通するトンネルは少なく、
しかもそれが明治中期に造られたことは、
とても驚くべき事だそうです。
今回平沼さんと3ヶ月に渡って
いろいろな廃道を撮影して来ましたが、
その中で平沼さんが最も興奮していたのが、
この光景を目にした時でした。





廃道・萬世大路

だんだんと細くなる萬世大路を歩くこと小一時間。
遂に栗子隧道が薮のむこうに見えて来ました。





廃道・萬世大路

目の前に来ると、
昭和の隧道(左)と明治の隧道の、
2つの入口がある異様な光景に圧倒されます。





廃道・萬世大路

昭和の隧道の上には、今も扁額が残っています。
当時の有力者による書でしょうか、
バランスも悪く決して上手とは言えませんが、
その筆致から、隧道への強い想いは伝わります。
下には昭和十年三月竣工と彫られています。





廃道・萬世大路

平沼さんの提案で、隧道の上へ登ってみました。
間近でみる隧道入口の表面は、
あたかも古代遺跡の壁面の様相ですが、
実はこれ、石ではなくブロック・コンクリートだそうです。
長年の風雪にこれだけ変質してしまったということでした。





廃道・萬世大路

隧道の上からの光景。
手前が広くなっていますが、
かつて明治時代に隧道が竣工した際には、
この広場に明治天皇も陣取って、
その落成を祝ったそうです。





廃道・萬世大路

陽が沈み、あたりには夕闇が迫り出しましたが、
せっかくなので隧道内も少し探索。
まずは明治隧道から。
隧道は20~30m程進むと行き止まりになります。
行き止まり付近から入口方向を見た光景。
地面に積もる瓦礫は、崩落というよりは、
むしろ昭和隧道を掘削した時の不容石ではないでしょうか。
というのも、明治隧道の突き当たりは、
崩落や人工に閉塞したものではなく、
昭和隧道の外壁によって行き止まりになっているからです。





廃道・萬世大路

左に見えるのが昭和隧道の外壁。
明治隧道は入口から数十メートルだけクランク状に造られ、
あとは一直線の隧道でしたが、
昭和の隧道はその殆どを再利用しながら、
入口部分をクランク状にせず、
そのまま直線状に造った為に、
明治隧道の中に昭和隧道の外壁が現れ、
こういった極めて奇妙な光景が生まれたわけです。

明治隧道が何故入口部分をクランク状にしたかは、
定説としては、猛吹雪の隧道内への進入回避だそうですが、
前回の記事の殉職之碑のところで触れた様に、
やはりこの道路にとって雪との戦いは、
過酷なものだったんだと思います。





廃道・萬世大路

そしてこちらが昭和隧道の入口から数十メートル付近。
この付近だけ天井が崩落し、瓦礫が積もっていますが、
その奥は、見える限り、崩落の様子もなく、
現役でも使えそうな程奇麗な状態でした。
ただし、平沼さんにうかがうと、
かなり奥で大きな崩落があり、
福島側へ抜ける事は殆ど無理な状態だという事でした。





廃道・萬世大路

天井の崩落部分を見ると、
なんと剥落したコンクリートの中に、
木柱状のものがいくつも見えます。
かつては木柱を補強材として使っていたのでしょうか?





廃道・萬世大路

DVD『廃道クエスト』は、廃道の魅力を
<美しさ><奇妙さ><歴史性><冒険性>
の4つに分けてまとめています。
廃道リポートの最初にアップした越床峠は<美しい>廃道、
そしてこの萬世大路は<歴史性>のある廃道です。
DVDの順番では3番目に収録してますが、
実際は越床峠の次に訪れた廃道。
少し、廃道の魅力がわかって来た頃です。



廃道クエスト




◆廃道サイトの決定板『山さ行がねが』◆




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