入賞発表/1月20日(水)~1月26日(土)

2008-01-28 09:48:51 | 入賞発表
■1月20日(水)~1月26日(土)
□高橋正子選

【最優秀】
★山からの水音聞きつつ冬菜採る/井上治代(信之添削)
冬菜を採りはじめて、気づくときれいな水の音がしている。山から流れ出る小さい流れの音。青々と育った冬菜も山の水音も自然が育んでくれたもの。そこに人の静かで慎ましい暮らしがある。(高橋正子)

【特選/5句】
★雪雲の垂れて越後の匂いおり/大給圭泉
低く垂れた雪雲の向こうに越後の山々の気配を感ずる冬の大きな風景がみえるようです。 (丸山草子)

★日脚伸ぶ雑木林も軽く晴れ/あみもとひろこ
寒さの厳しいこのごろですが、「軽く晴れ」た雑木林に優しい日差しがそこにあることを感じ、春が近いことへの期待感があります。少しずつ伸びる日脚がうれしいです。(池田多津子)

★やわらかに伊予路菜の花黄を点す/おおにしひろし
温暖な伊予路の穏やかな春の風景を感じさせてくれる菜の花の優しい色合いです。
菜の花のやわらかな黄色に心も明るく点されるようです。(藤田洋子)

★風花や見慣れし窓の広がりぬ/矢野文彦
見慣れた窓の外を舞う風花を見ていると、心も風花のような自由さを得て、広々とした世界に旅するかのようです。(臼井愛代)

★しんしんと粉雪の積む窓明かり/小西 宏
風もなく粉雪がひたすら降る夜には、おだやかな静けさがあります。積もりゆく雪は窓の明かりとなって、心に語りかけるようです。(池田加代子)

【入選Ⅰ/15句】
★生家なり大き炬燵に足伸べて/池田加代子
何歳になっても生家は心やすらぐ所です。「大き炬燵に足伸べて」は、その気持ちを十分に詠まれていると思います。 (黒谷光子)

★雪や雪向こうの窓にも子らの顔/飯島治蝶
暖かいところでは、雪は珍しいもの。降り始めた雪に歓声をあげて校舎の窓から見つめる子どもたちの顔が並びます。 (多田有花)

★流氷へ窓の曇りをひろく拭く/志賀たいじ
窓いっぱいに見えてくる、接岸した流氷の雄大な光景が伝わってきます。 (藤田裕子)
★雪を吹く遥かな富士の風をみる/安藤かじか
近くにあっても眺めることしか出来ない冬の富士山。雄大な富士の景と地上の人の小ささの対比がはっきりして好きな句です。 (上島笑子)

★朝霜のきらきら佳き日の始まりぬ/多田有花
朝一番、外へ出たときに霜が輝いていると、それだけで幸せな一日が過ごせそうという、前向きな感覚が感じられて好きな句です。 (高橋秀之)

★雲行きを仰ぎつ友と梅探る/篠木 睦
春を待ちわびる作者の心が「梅探る」を通じ読者に良く伝わってくる。好きな句。 (まえかわをとじ)

★降る雪の空に枝張り桜の木/藤田洋子
空に枝を張り泰然としている桜の木、雪が降れば雪をそのまま受けいれる、そのような桜の木に寄せる作者の思いが、木をとりまく景とともに清澄に伝わってきます。 (小川美和)

★雪の日の近くに鵯の声響く/甲斐ひさこ
雪の日の戸外に響く鵯の声が、殊更近く、親しく聞こえてきます。鵯の声によって、雪の日の静けさが際立ちます。(臼井愛代)

★枯芝の広ければ児等駆けにけり/まえかわをとじ
広々とした場所を目の前に、子供達は駆け出します。子供のエネルギーを存分に受け止める枯芝の広がりを頼もしく感じます。(臼井愛代)

★枝先の雪の軽さや深深と/藤田裕子
雪の降り積もる日には、見慣れた庭の木々も新鮮な表情がありますね。細い枝先にも雪が載り、今日の雪の軽さ、春を待つ枝先のみずみずしさを、ありありと見せてくれます。(池田加代子)

★初凧の空に繋がる細き糸/上島笑子
凧はぐんぐん揚がり、もうすっかり空そのもののようです。頼りないようでも凧糸の端をしっかりと握れば、空と繋がる確かな手応えがありました。一筋の細い糸に心を寄せて、一月の空を親しく感じさせてくれる楽しい御句ですね。(池田加代子)

★日向ぼこここは天国らしき所/宮本和美
天国と思えるほどの心地よき場所に、やわらかい冬日を浴びる日向ぼこの心楽しさが十分伝わってきます。(藤田洋子)

★寒暁の海苔棚朱に染まりけり/國武光雄
寒気の一層身にしみる夜明け、染まりゆく海苔棚の一際極まる朱色が、美しく澄みきった寒暁の情景です。(藤田洋子)

★凩に富士きらきらと近づきぬ/かわな ますみ
凩の吹きすさぶ寒い日。冷たい空気の中で、見慣れた富士山がいつもより美しく、近くに感じられたのでしょう。冷たい空気の中で凛とある富士山が印象的です。(池田多津子)

★寒の陽に温さというものありにけり/碇 英一
日差しの温かさを改めて実感し、思わず頷きました。日差しの温かさがうれしい、それほど厳しい寒さなのだと、「寒」への思いを強くしました。(池田多津子)

【入選Ⅱ/19句】
★多摩川をひろびろ見せて寒晴るる/臼井愛代
青空を映しながら流れる多摩川はすっきりと広々と、佇む者に安らぎを呉れているように思われます。寒晴れの透きとおった感じが伝わり好きな句です。 (甲斐ひさこ)

★食卓に冬薔薇一輪誕生日/高橋秀之
誕生日の食卓に飾られた一輪の冬薔薇が伝える祝意の温かさを思います。 (臼井愛代)

★蝋梅の枝を透かして須磨の浦/小河原宏子
一足早い春を告げる蝋梅の黄色と、遠くに見える須磨の海の青との対比が鮮やかである。寒さの中にも蝋梅の花を透かして、内海を見晴るかす穏やかな風景に早春の明るい息吹を感じている作者である。(かつらたろう)

★赤み差す梅の小枝のういういし/大山 凉
★湖西線雪かき分けて北へ伸び/河野啓一
★龍の玉見とれておれば暮色立つ/吉河豊子
★サイネリア鉢抱えて義妹のマスク顔/堀佐夜子
★天草のデコポン届く寒波の日/丸山草子
★水湛う川活きいきと鴨の陣/小川美和
★二つ三つ白梅咲けば去りがたし/古田けいじ
★睦月晴れ木々の芽立ちに水透る/竹内よよぎ
★朝時雨冷え冷えの磴降りてゆく/松本千恵子
★二歳児の屈む庭先福寿草/渋谷洋介
★探梅や鳥居のそばの寄席の小屋/祝恵子
★風花やぽっかり開きし青い空/かつらたろう
★春を呼ぶ花の咲き初む丘のぼる/尾 弦
★寒晴れの空にポンと物干せり/岩本康子
★雪帽子こんもり並ぶ村の墓/黒谷光子
★牡蠣の身の白きを透いて海香る/笠間淳子
★飛機雲の細く伸びゆく寒の晴/池田多津子

34 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お礼 (臼井愛代)
2008-01-30 11:00:33
正子先生、「寒晴るる」を入選Ⅱにお選びいただきまして、ありがとうございました。
お礼 (吉川豊子)
2008-01-30 12:35:44
  正子先生

 この度のブログ句会で、
 龍の玉見とれておれば暮色立つ を、入選へ
お加えいただきまして、有り難うございました。
お礼 (まえかわをとじ)
2008-01-30 13:14:10
正子先生
「枯芝」の句を[入選Ⅰ]にお選び下さいまして有り難う御座います。
お礼 (大給圭泉)
2008-01-30 13:52:49
正子先生
「雪雲」の句を[特選]にお選び下さいまして有り難う御座いました。 丸山様素敵なコメントを添えてくださり有難うございます。


お礼 (黒谷光子)
2008-01-30 14:17:31
正子先生、「雪帽子」の句を入選Ⅱにお選びいただきまして有難うございました。
お礼 (志賀たいじ)
2008-01-30 15:55:17
正子先生、"流氷"の句を入選Ⅰにお選び戴きまして、誠に有難うございました。
お礼 (あみもとひろこ)
2008-01-30 16:49:44
正子先生、「日脚伸ぶ」の句を、特選にお選びいただき有難うございました。日脚が伸びたと実感するこの頃です。
多津子様、あたたかいコメントをいただき有難うございました。とても嬉しく読ませていただきました。
お礼 (小河原宏子)
2008-01-30 17:32:29
正子先生「蝋梅」の句を入選Ⅱにお選び頂き有難うございました。
お礼 (碇 英一)
2008-01-30 18:01:11
正子先生「寒」の句を入選Ⅰにお採り上げいただき有難うございました。
お礼 (多田有花)
2008-01-30 18:37:31
正子先生、
「朝霜のきらきら佳き日の始まりぬ」を入選Ⅰにお選びいただきありがとうございます。