■2月20日(水)~2月23日(土)
□高橋正子選
【最優秀】
★島椿どっさり船に積まれおり/竹内よよぎ
剪られたばかりの、みどりの葉も、花もゆたかな島椿の、いきいきした実在感がよい。(高橋正子)
【特選/5句】
★梅の花海の夕日のとどきけり/大給圭泉
正に海へ沈もうとする夕日と清冽な梅の花の取り合わせによって、茜色に染まる大自然の中の小さな抒情を浮き立たせて巧みだと思います。(おおにしひろし)
★椎茸のこま打つ音の春山に/井上治代
寒気の緩んできた山に椎茸の種駒をうつ音が響く。その音が春を呼ぶような気さえする、そんな晴れやかな気持ちにさせてくれるようです。(尾 弦)
★梅東風のさわさわ森を渡りけり/多田有花
冬の風がゆるんで、東風が吹き始めました。梅を匂いおこす風が、柔らかく、ときには強く、森をさわさわと吹き渡ります。古来からの美しい季語が、森を渡る風に実感として生きています。(池田加代子)
★対岸の明るきところ花李/小西 宏
すももの白い花はひとつひとつは小さいけれども、遠景に「明るきところ」となって咲き満ちました。早春の広々とした水辺に立って、爽やかな景です。(池田加代子)
★咲くほどに光傾きヒヤシンス/上島笑子
たくさんの小さい花が咲くにしたがって、花の重みで傾いていくヒヤシンスの様子を「光傾く」と詠まれたところが素敵です。花が纏う春の光の量感がたっぷりと感じられます。(池田加代子)
【入選Ⅰ/15句】
★麦踏まれ緑生き生き根を張りぬ/大山 凉
春ですね、「緑生き生き根を張りぬ」収穫が楽しみです。生き生きと根を張る麦に、目をむける作者の感動を思いました。(吉川豊子)
★竹林をさらさら越ゆる春夕陽/かわな ますみ
竹林の青を照らし落ちてゆく夕陽の、春らしいあたたかさを感じます。「さらさら」という言葉に、竹の揺らぎ、春の夕陽のやさしさを思いました。(あみもとひろこ)
★今日もまた新たなる春耕の畝/池田多津子
何時も通る道の向こうに春耕の畠の畝が美しく見えました。寸時の事でしたので多津子さまのお句で思い出しました。(堀佐夜子)
★湯煙は星へ星へと春待つ夜/藤田荘二
星の夜、湯煙がそこここに上がっている。春の気配がどこか近い湯の町が美しく詠まれていて素敵です。(竹内よよぎ)
★太陽に芽ぐむ欅のどっと立ち/おおにし ひろし
冬の空に細かい線画のようにそびえる欅の姿もいい。春先、その枝枝が小さく芽を吹く。その数は無限。どっと立ちはその感じをうまく表現していると思う。(古田けいじ)
★花菜束ほぐして水へ放したる/祝恵子
水へ放たれた花菜のさみどりがとても鮮やかに目に浮かび、早春のみずみずしさを感じさせてくれます。(藤田洋子)
★春障子真紅に染めて日の昇る/渋谷洋介
春障子の白を鮮やかに染める日の力強さに、春を迎えての日差しの明るさや暖かさを感じ取れます。(藤田洋子)
★春土を流し真白き蕪漬ける/藤田裕子
春の土を付け洗われた蕪の白さがとても新鮮で、生活の中に見出された季節の喜びを感じます。(藤田洋子)
★紅梅の枝の触れ合い日のやさし/小河原宏子
咲きそろった紅梅のうえに春の日が差しています。白梅とは少し違う紅梅ならでの華やかさ、艶めき、そういうものを感じます。(多田有花)
★猫柳陽を包みつつ放ちつつ/尾 弦
猫柳が日差しに包まれています。日を浴びているのですが、まるで猫柳自身からも暖かい光が溢れているような、そんな猫柳の様子を詠んでいらっしゃいます。(多田有花)
★草青む季(とき)さっくりと土起こす/小川美和
「さっくり」が春の土のやわらかさをあらわしていて、句全体からやさしさを感じます。この時季の胸ときめくようなそんな思いも感じられます。(多田有花)
★纏いつく春光をはねかえしつつ/矢野文彦
光の春といわれるこのころの陽光のさまを的確にとらえて詠んでいらっしゃいます。弾けるような軽やかで明るい春の光です。(多田有花)
★幅広もたのし千切り春キャベツ/臼井愛代
やわらかな春キャベツをざっくりと切る。千切りの幅も気にしない、新鮮なキャベツがお皿に盛られます。さみどり色のキャベツは春のうれしい色と味です。(池田多津子)
★笹鳴の移りし藪のかがやけり/池田加代子
まだ寒いころ鳴き始める鶯ですが、きれいな声にはなりません。でも、もうすぐ暖かな春が来るという予感に笹鳴の藪が輝いて感じられるのでしょう。(池田多津子)
★楠高く吹く早春の風を聞く/藤田洋子
高い楠の梢を吹く風は春のもの。澄み切った青空に立つ楠に待ちに待った春の風を感じ、作者の心も弾んでいるようです。(池田多津子)
【入選Ⅱ/17句】
★剪定の庭師鼻唄春近し/國武光雄
★根深汁山々白くなりにけり/宮本和美
★どの屋根も明くれば白し細雪/吉川豊子
★ほっこりと雪原ゆるみ月まるし/丸山草子
★子どもらの縄跳びの声うららかに/まえかわをとじ
★まだ冬やね両の耳朶が痛いもの/堀佐夜子
★庭先へ朝の春光透き通る/古田けいじ
★春光や色彩豊かに絵を描く子/飯島治蝶
★春そよぐやさしき気息(いき)に触れにけり/おくだみのる
★二度曲がる石段ぬくし春の寺/甲斐ひさこ
★青空を流れる雲や冴え返る/高橋秀之
★星一つ動かぬ余寒酒二合/篠木 睦
★ふるさとの京菜ずしんとふかみどり/あみもとひろこ
★大仏に紅梅白梅咲き初める/黒谷光子
★乙訓の野の風青し犬ふぐり/かつらたろう
★ぽっかりと大きく円く春の月/岩本康子
★ふんわりと山葵花のせ荷を閉じる/安藤かじか